コラム
苗が徒長したらどうすればいいの?原因と対策を解説します
公開日2022.06.06
更新日2022.06.07

苗が徒長したらどうすればいいの?原因と対策を解説します

一般的に農家さんで育苗を行う場合には、苗をそのまま買ったり、購入した種を育苗ポットやセルトレイなどにいれて発芽させたりしているかと思いますが、育苗ステージにおいて苗がモヤシのようにヒョロヒョロした状態になって困っていることはないでしょうか。このような苗になってしまうと、定植できたとしても、病弱で枯れやすく花や実がつきにくくなり、最終的には品質や収穫量が低下するという状態に陥ります。今回のコラムでは、苗が徒長する原因とその対策についてお伝えしていきたいと思います。

徒長とは?

肥大生長*より伸長生長**が勝り、苗の茎が必要以上に細長くなり、葉と葉の間隔が間延びすることです。順調な生育においては、肥大と伸長がバランスよく成長しますが、徒長では伸長生長が優勢になっているため、見た目はひょろひょろと弱々しい形で伸びてしまい、葉は茂らず全体的に隙間が多いような印象になります。徒長した部分をもとに戻すことはできません。

*肥大生長:茎が太くなる生長
**伸長生長:茎の生長点となっている先端部分が縦方向に伸びる生長

徒長苗のデメリット

徒長した苗は、葉っぱの緑色が薄くなり、効率的に光合成を行うことが難しくなります。葉や枝の組織の密度が低く柔らかいため、害虫の食害を受けやすくなったり、病原菌が植物体に侵入しやすくなったりするなど、病害虫に対する抵抗力が著しく低下します。また株元がぐらついて支えきれず簡単に倒れやすくなります。定植後の成長は悪く、花や実がつきにくくなるため、収穫量が落ちる原因になります。病弱であるがゆえに病害虫からの攻撃や、気温の変化や光の強弱など環境変化に過度に反応してしまうというデメリットがあります。

育苗ステージの苗の生育状態は大変に重要で、この段階での苗の状態が定植後の生育にも大きな影響を及ぼします。育苗ステージにおいて健康な苗を育てられれば、定植後の根圏の発達と栄養吸収を安定化させることができ、減肥しても品質と収量を確保できるという考え方もあるようです。

徒長苗が発生する原因と対策

日照不足

光合成を行うための光エネルギーが不足すると、太陽光を求めて伸長生長が促進されます。日当たりの良い場所でも、雨や曇天などの天候不良が続くと徒長することがあります。徒長している苗は、既に病弱な状態となっていることから、いきなり強い光を浴びると葉焼けをおこすなど、ダメージを受ける可能性があるため注意が必要です。日当たりの良い場所で育てることが基本です。

関連コラム:野菜の日照不足による影響とは|生育不良を軽減する方法

水分の与えすぎ

根・茎・葉に分化し維菅束を持つ高等植物は、およそ80%~90%は水分で出来ているため、水をやり過ぎると水分を吸収しすぎて、水膨れのような状態になり過剰に伸長してしまいます。常に土壌が湿っている状態はさけましょう。曇りや雨の時や、太陽がない夜間に土が湿っているとより徒長を促してしまいます。天候が悪い日は水やりの量を調整したり、潅水作業は夕方以降の土が乾き気味になるように、朝に行うようにしたりすることが大切だとされています。

苗床が高温

苗床が高温になると徒長が発生しやすくなります。ビニールハウスなどの施設栽培において高温が予測される日は、早めの換気操作や遮光シートを設置するなど、ハウス内の苗床が高温にならないようにしましょう。

栄養素(特に窒素)の与えすぎ

生育の初期に欠かせないとされる窒素肥料は葉肥え(はごえ)とも呼ばれ、タンパク質を合成するために根から吸収しますから、不足すると葉の色が薄くなったりサイズが小さくなったりするなどの生育不良を発生させます。しかし、過度に施肥すると葉や茎の成長に勢いがつきすぎて徒長しやすくなることがあります。少なすぎや多すぎ、どちらでも生育不良が発生しますので育てる植物体にあった施肥量(吸収量)を見極める必要があります。窒素が多い場合は潅水量を多めにして窒素を流すようにします。

風通しが悪い

主に肥大成長を促す植物ホルモンのエチレンは、植物が適度に風を受けると適応反応により分泌されるとされています。風通しが悪いとエチレンが分泌されず肥大成長しにくいようです。風で動くだけでなく、手で触るなど物理的な接触があってもエチレンが発生するようです。一説によると、倒伏の危険を察知し倒れにくくなるために成長ホルモンを発生させ肥大成長や茎の硬化を促し、伸長成長を抑制すると考えられています。風通しはカビや細菌の発生を抑えるというメリットもあります。施設栽培においては、換気扇や循環扇などを使い、風通しを良くするという方法があります。

 

徒長苗を発生させないためのおすすめの資材

まずは前章の徒長の原因となる環境を作らないことが大切です。加えて、太く短いガッチリした苗に育てるためにおすすめの資材をご紹介いたします

薬液を均一に葉面散布できる噴霧機|モーターフォグ

葉面散布による栄養補給(追肥)は、過湿や日照不足といった環境条件により徒長が発生したり、根の働きが弱まったりしている場合に有効であると考えられています。特にケイ酸は、植物体の葉っぱを分厚くさせる作用があるとされ、これにより受光能力が向上し、植物の光合成活動を活性化させることとなります。また細胞組織を硬く丈夫にする作用もあり、ひょろひょろとした苗の発生を抑制する効果が期待できるというわけです。モーターフォグは重量が軽く手軽に葉面散布作業を実施することができ、動噴に比べて体力的な負担も少なくなります。

動画:葉面散布に最適な『モーターフォグ』

徒長しない苗づくりを目指しましょう

皆さんが実践されている栽培方法と比較して、取り入れられそうな部分はありましたでしょうか。健全な苗づくりが定植した後の生長にも大きな影響をあたえますので、今回ご紹介した対策や注意点を活用し、徒長しない苗作りの参考になれば幸いです。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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