野菜にとって天候の状況は最も大切な要素の一つです。しかし近年は日照不足・大量降雨・高温障害など目まぐるしく変化する異常気象が発生し、それに伴い野菜の生産も安定せず、市場価格にも変動を起こすことが多くなってきました。今回のコラムでは野菜の日照不足による影響を解説し、生育不良を軽減する方法を考えていきたいと思います。
日照不足とは
日照不足とは、太陽が照った時間(=日照時間)が少ないことが続く状態のことを言います。日照不足の大きな原因は、太陽光が何らかの理由で地表まで届かないことです。あたかも太陽と地表との間に自然の遮光カーテンを引いたようなもので、最も多くは雲が原因となっています。日照不足というワードが最も頻発する時期といえば梅雨の時期です。梅雨は北海道と小笠原諸島を除く全国各地でみられる曇りや雨の多い期間のことを指し、1カ月~1カ月半程度の間続く期間は太陽があまり出ない状態が続きます。
では日照が不足するとどうなるのでしょうか。植物は太陽の光エネルギーを使い光合成をすることで栄養をつくり出します。太陽の光エネルギーがないと栄養をつくり出すことができないので植物の生長が悪くなってしまいます。なお植物の種類によっては日照不足に比較的強いと言われるニラ、青シソ、ミョウガなどの「陰性植物」もありますが、ほとんどの種類は日光を必要とする「陽性植物」ですので、植物にとって日照という要素は生きていくためにはなくては、ならない重要な存在であることがわかります。
日照不足が野菜の生育にもたらす影響
植物にとって光エネルギーを利用した光合成は二酸化炭素と水を原料にし、炭水化物を中心とした有機物を作り出し酸素を放出しています。この時活躍するのが主に葉の中にある「葉緑体」と言われています。
光合成により作り出された有機物と、根から吸収した窒素が結合するとたんぱく質のもとが出来ます。そしてほかのミネラル類と結合することで植物の体が作られていきます。根の活動や、茎、芽の成長に必要なエネルギーも光合成で作られた有機物が利用されます。有機物を構成する炭素と呼吸によって取り込んだ酸素が反応し、二酸化炭素ができるのと同時にエネルギーが発生します。自然界で炭素と酸素を高温状態で反応させ燃やした時と同じような現象が細胞内の低温環境で科学的に反応し、生命維持に必要なエネルギーが24時間作られています。この化学反応を支えているのが細胞内の「ミトコンドリア」だと言われています。ミトコンドリアは植物・動物の細胞内に存在する器官です。
もし日照不足により光合成が十分できなくなるとどうなるでしょうか。有機物の生産ができない、つまり生命維持に必要なエネルギーが生産できないので、正常な生命維持活動が継続できなくなると予想できます。
光合成が十分にできなくなると
● 生育が遅くなる・・成長に必要な有機物が不足
● 草勢低下・・・・・株の勢いが悪くなる
● 軟弱徒長・・・・・モヤシのような成長
● 免疫力低下・・・・病原菌への抵抗力低下
結果的には、野菜の体が丈夫になりにくく、害虫の食害を受けやすくなったり、免疫システムが低下し、病原菌やカビ類の侵入を許し罹患しやすくなったりします。圃場全体で野菜の免疫力の低下がみられると短期間で病害虫が広まってしまい、収量が大幅に減ってしまうこともあります。
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日照不足への備えと対策
天候はコントロールすることができないので以下のような備えと対策をしていきましょう。
軟弱徒長 対策
徒長を防止するために整枝摘葉を早めにします。潅水や追肥は控えるもしくは一回当たりの施肥量少なく(少量分肥)し多回数をこまめに行います。薬や肥料を葉面散布する時は軟弱葉により薬害を起こすことがあるので注意します。
着果不良 対策
果実は可能な場合は小さめうちに収穫することで着果負担を軽減します。
病害虫 対策
摘芽、整枝を行うことで採光や通風を確保し病気を予防します。また天候不順の間は病害が多発する傾向があるので病害の早期の防除をします。
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野菜の生育のために気象情報を収集しよう-webやアプリの活用
webサイト
気象庁で過去の情報と将来の予測情報を取得することができます。過去の気象情報を野菜や果樹・花卉などの植物の生育記録と対比させることで効果の検証ができるので活用してみてください。なお圃場近くの気象庁観測データで日照時間・平均気温・降雨量などのアメダスデータが入手可能です。同様に、将来の予測1か月先及び3か月先も入手可能です。これらのデータは、気象庁が公開している情報で、どなたでも利用することができます。
気象庁|過去の気象データ検索 (jma.go.jp)
気象庁 | 全国の季節予報 (jma.go.jp)
また気象庁は、農業従事者向けに利用方法の手引きも公開しています。
気象庁|農業に役立つ気象情報の利用の手引き (jma.go.jp)
気象庁以外でも、農林水産省・各県のHPでは異常気象が予測される場合対策が掲載されています。特に異常気象で被害が予測される県の農業行政を担っている部署からの情報は、参考になるので活用をお勧めします。
アプリ
「Yahoo!天気」は天気予報アプリの中でもカスタマー評価が高く、アプリのダウンロードランキングでも上位にランクインしています。特に雨雲レーダーは、天候の予測や対応に有効に活用できるのでおすすめのツールです。
日照不足の際の農作物による生育不良の軽減に役立つ資材|その1
人間は天候をコントロールすることはできません。従って日照不足を改善するためには太陽光に代わる設備を新たに導入する対策が最も有効です。おすすめの資材をご紹介致します。
農業用LED電球
農業専用に開発されたLED電球です。農作物の生長に適した各色の波長のLEDチップをバランス良く配合し搭載していることや、本体に農薬がかかっても良いように防水規定IPX5の加工がされているなどのこだわりと工夫が凝らされた製品です。
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天候不順の際の農作物による生育不良の軽減に役立つ資材|その2
次にご紹介する資材は「生育不良の軽減」「病気になりづらい」「樹勢が向上」といった効果が報告されています。天候不順という植物にストレスがかかった時に基礎体力を向上させることで、曇天続きでもその後の回復力(リカバリー力)のアップが期待できます。
※その年の気候や栽培方法、その時使用した資材などの様々な要素がありますので、この資材を使用したら確実に効果が出るという保証はありませんのでご注意ください。
地力の素
カナディアンロッキー産の天然腐植質の土壌改良剤です。フルボ酸が植物に必要なミネラルや微量要素をキレート化(吸収されにくい養分を吸収しやすくする)し、細胞内に届けるはたらきをします。また光合成を活性化し、窒素成分を効果的に葉や茎の組織に変えたり、根に働きかけて根量を増やします。
カナディアンフミン原鉱を粉砕した高純度フルボ酸のスーパー濃縮堆肥なので連作で崩れがちな微生物のバランスを整え、健全な土壌を取り戻します。微生物が活性化し団粒構造が生まれやすくなり、植物が健全に生命活動を行うことができます。
オルガミン
オルガミンは天然アミノ酸葉面散布肥料(液体肥料)です。最近話題のバイオスティミュラント資材にも登録されています。魚をまるごと糖蜜と一緒に発酵させて作っています。化学処理をせずに天然発酵によって分解された約18種類のアミノ酸が含まれた液肥です。さらに植物が必要とする微量要素も加えられています。窒素・リン・カリがほとんど含まれていないため、作物の生育ステージを問わず安心して使用することができます。1,000倍に希釈し農薬と混合で葉面散布剤として利用できます。天然のアミノ酸は植物への吸収が早く、速効性が高いと考えられています。低温・高温・霜・乾燥・日照不足・長雨・病害虫などの障害が発生した際の回復促進や、作物の抵抗力の増加の効果が見込めます。有機JAS資材登録に登録されていますので有機栽培でも使用することができます。
▶解説動画はこちら⇒【解説】オルガミンの効果・使い方・メリットを4分で徹底解説
モーターフォグ
大き目のスイカ一個分(本体重量5.6kg)程度の重さの電動噴霧器です。霧状の細かい粒子の薬液をビニールハウス内に散布することで農作物の葉面にうっすらと葉面散布ができます。下記のリフレッシュをシーズン中の週に2回程度、1反あたり4.5Lを目安に散布することで農作物の軟弱・徒長対策にとても有効です。
>>>モーターフォグの使い方とコツに関してはこちら
生育不良を軽減して品質の良い農作物の生産を
近年は今まで経験をしたことのない異常気象がしばしば発生するようになってきました。天気予報を活用し今後の天候の状況を早めに察知し、その情報をもとに備えと対策をすることが非常に大切です。品質の良い農作物を生産していきましょう。皆様のお役に少しでも立てましたら幸いです。
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- 生育に最適な波長のLEDチップを内蔵
- “生育促進”“休眠防止”“収量確保”の効果が期待できる
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- 世界で最も高品質なカナディアンロッキー産の腐植物質
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- 根量の増加・土壌病害の軽減効果が期待できる
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- 細かい霧状の薬液をビニールハウス内に散布
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- コストを抑えながら作物の健康を維持し病気や害虫のリスクを下げる
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・光拡散反射によるアザミウマ類の忌避
・モスバリアジュニアⅡレッドとの相乗効果
・果樹や果菜類の色付効果と色ムラ抑制
・農家の作業効率を落とさない眩しさを抑えた光反射シート
・イチゴ、キュウリ、アスパラガス、リンゴ、ブドウ、モモなどに導入実績あり