コラム
ブルーベリーを野鳥から守れ!鳥害と対策
公開日2021.07.13
更新日2022.05.27

ブルーベリーを野鳥から守れ!鳥害と対策

ブルーベリーとは?なぜ鳥害に合いやすいの?

ブルーベリーとは

ブルーベリー( blueberry)はツツジ科スノキ属に分類される北アメリカ原産の小果樹です。初心者でも育てやすい植物として知られ、青紫色の果実は生食、ジャム、スイーツ等の幅広い料理に使用できることから人気のある栽培作物の一つとなっています。

ブルーベリーの特徴

現在栽培されているブルーベリーの品種は主にハイブッシュ系とラビットアイ系の2種類に分けられ、さらに近年ではハイブッシュ系の中でノーザン・ハイブッシュ、サザン・ハイブッシュ、ハーフ・ハイブッシュの3種類に分けられています。それぞれ耐寒性や耐暑性の特徴があるため、栽培する場所の気候に適合した品種が栽培されています。

ブルーベリーは酸性の土壌を好む性質があります。特にハイブッシュ系は土壌酸性度を高めてあげないと育ちが非常に悪くなりますので注意します。

ブルーベリーの果実は身体に良い健康食品として知られており、アメリカでは“スーパーフード”と呼ばれています。「心臓」「インスリン反応」「脳」「がん」「腸内フローラ」への効果が期待され様々な研究が進められています。

ブルーベリーが鳥害にあいやすい原因

ブルーベリーの実は他の果物に比べるとサイズは小さく、一飲みにするにはちょうど良い大きさで、糖分も十分あり鳥たちにとっては魅力的な食料で鳥害被害にあいやすい作物です。また鳥はエサがある場所を覚える能力があるので、一度被害にあうと繰り返し訪れる習性があります。従って、適切な鳥害対策を行うことが重要です。

 

農業においての鳥害とは

農業における鳥害とは、主にスズメ・カラス・カモ・ムクドリ・ヒヨドリ・ハト・キジ・サギなどにより、農作物が被害を受けることです。近年は水稲栽培の面積の減少に伴いスズメやカモの被害は減少しており、農林水産省の統計では被害量・被害面積・被害金額のいずれも、平成12~13年ごろから減少傾向が続いています。また令和29年度の被害金額は獣害の132億円と比べて、鳥害は32億円と獣系の被害よりは規模は小さいようです。しかし実際に被害を受けている農家さんにとっては、自分の果樹園で大切に育てた作物の実が収穫前に食害を受けてしまうと収量が大きく減少してしまう死活問題です。

関連コラム:鳥害対策の方法を詳しく解説

ブルーベリーを加害する鳥の種類

ブルーベリーを加害する鳥としては、主にヒヨドリ・ムクドリ・メジロ・スズメ・カラスなどですが、なかでもヒヨドリとムクドリによる被害が大きいと思います。ヒヨドリやムクドリは、糖類を含むエサが大好物です。鳥は液体を飲み込む時に吸い込むことができず、舌ですくい取りくちばしを上に向けることで流し込みます。花の蜜を吸おうとすると頭を蜜ツボ付近まで突っ込み、頭に花粉をいっぱいつけながらすくい取ることになります。これを利用して花粉を運んでもらう代表格が椿で、ヒヨドリとは共生関係にあるといわれています。ムクドリは、椋木の実を好んで食べるのでムクドリと名付けられたそうです。彼らは独占欲が強く庭にミカンやリンゴの切れ端を置いてやるとすぐにやってきて、独り占めします。野菜類ではキャベツや白菜の葉っぱ類も狙うことがあります。

あるブルーベリー畑が良い餌場だと認識されると、実がない時期でも咲いた花を食べてしまい実自体が育たないという事態に陥ってしまうこともあります。ブルーベリーの収穫時期はムクドリ・ヒヨドリの出産・子育てといった繁殖期とかぶっており、被害を受けやすいと考えられています。発見されるとあっという間に1株の6~7割が食べられてしまいます。

加害する鳥の繁殖期

種類 時期
ムクドリ 3月下旬~7月
ヒヨドリ 5月~9月

ブルーベリーの収穫期

種類 時期
ハイブッシュ系 6月下旬~7月中旬
ラビットアイ系 7月上旬~9月下旬

いろいろな鳥害対策

次にいろいろな鳥害対策を見ていきましょう。

防鳥ネット(防鳥網)

防鳥ネットを使い作物を完全に囲うことができれば、被害を大幅に減らすことができますが、コストはかかります。そのため、農作物の種類や収量金額などを考慮し、費用対効果を検証してから導入したほうが良いでしょう。設置前に剪定をして全体を低くしておかないと網を張る作業に時間がかかります。網目が小さいほど防鳥の効果は高くなりますが、風や雪などの影響を受けやすくなりますので注意が必要です。

防鳥ネットに鳥が絡まって死亡することがあり、絡んだスズメなどの小さな鳥を狙ってタカやハヤブサなどの猛禽類が飛来し、また絡まる可能性があります。猛禽類は爪が鋭く、対処しようとすると農作業従事者がけがをする恐れがありますので注意が必要です。鳥を捕獲したとみなされ鳥獣法に抵触する可能性もあります。

防鳥ネットにはいくつか種類がありますので、鳥の種類によって適切なものを選ぶようにしてください。

鳥の種類 防鳥ネットの網目
スズメ・シロガシラ 20mm
ムクドリ・ヒヨドリ 25mm~30mm
カラス 75mm

糸の種類によって「単糸タイプ」と「撚糸タイプ」がありますので、コストや作業効率などを加味しながら最適なものを選ぶと良いでしょう。

単糸タイプ

釣り糸のように1つの糸でできている糸で網目を作っています。軽量のため設置や撤去作業を行いやすく、糸が細いため悪目立ちしませんが突破されやすく、鳥が絡まりやすいです。

撚糸タイプ

糸を撚って(ねじりあわせて)1本の糸を使用して網目を作っています。撚糸は丈夫なため、摩耗しにくく耐久性に優れています。

テグスやワイヤー

防鳥ネットのような効果は得られませんが、カラスのような比較的大きな鳥類にはある程度の効果が見込めるようです。複数の支柱(杭)を設置して、テグスやワイヤーを1m以下の間隔で張ります。1mはおよそカラスが羽を広げた長さの目安です。格子状で設置する場合は2.5m間隔でも効果があると考えられています。防鳥ネットを張るほどの費用や手間がかかりません。カラスが見えにくい黒や透明のテグス(ワイヤー)がおすすめです。カラスの飛行は小回りが利かず、カラスの体に少しでもテグス(ワイヤー)が触れると警戒して直ちに飛び立ち、圃場での滞在時間を大幅に減少させることができます。ヒヨドリ・ムクドリ・メジロ・スズメなどには、効果が低く被害を防止することは難しいのでご注意ください。

音による防鳥対策

天敵の猛禽類の鳴き声・銃声音・爆発音などを発生する音声機器で鳥を威嚇します。

視覚による防鳥

複数本の防鳥テープや吹き流しが不規則に揺れ動くことで鳥を威嚇します。防鳥テープの吹き流しの周辺には鳥が集まりにくくなりますが、無風の時には効果を発揮できません。太陽の光がキラキラと乱反射するCDをつるす方法や、古くからある人の形をしたかかしを設置する方法もあります。また最近では猛禽類に似せた鳥害グッズを良く目にしますね。

鳥は警戒心が強いため、音や視覚にうったえる防鳥機器は、最初に一定の効果が見込めます。しかし学習能力が高く慣れてきてしまうと、1~2週間程度で効果が薄れてきてしまいます。他にエサがない場合や別の圃場がない場合は、最初から効果が出ない可能性もあります。音が発生するものは音量がかなり大きいため近隣住民の方の理解が必要です。

忌避剤

日本では農薬登録されている鳥用の忌避剤の種類が少ないといわれています。また被害現場では安定した効果が得られない事象が見られるようです。

狩猟

狩猟は有効な鳥害駆除方法ではありますが、捕殺だけで個体数を減らすことは困難でコストも高くつくといわれています。狩猟行為は人間に対する鳥の警戒心を高め、その結果として防鳥機器が有効に作用するというメリットがあるようです。銃を使用した狩猟は、他の野生鳥獣を混乱させ、新たに圃場へ加害する鳥獣を増やすこともありますので注意が必要です。

猛禽類

猛禽類は、人間とのかかわりは古く狩のお供として利用されてきました。また餌となるネズミや小鳥が発見しやすい、草原などが狩の主な場所になった関係で、人が管理していた里山や、収穫後の畑、屋根をふくための萱場などをえさ場とすることが多かったようです。現在でも都市部の高層ビルの屋上に巣を構え、上昇気流を利用して公園に集まる鳩を狙うものが都会に現れ始めています。リンゴの産地では、畑の中にフクロウの巣をかけることで、夜間に活動するネズミの被害が減少したそうです。実験的に鷹匠に依頼し、追い払うことをしても、一時的な効果しか見込めません。果樹園の近くに、雑木林が残っているのであれば、猛禽類の巣がかけやすいように、整備し小型猛禽類との共生を検討してみてはいかがでしょうか。

耕種的防除

鳥害を受けにくい作物や、被害を受けにくい時期を狙って栽培を行う方法です。地域全体で取り組むとより効果的であると考えられています。その地域の作付け体制が鳥害を増やしているケースもあります。

鳥害対策の難しい点

おいしく実った果実を加害されないように、対策を行わなければなりませんが、一般的に鳥害対策は難しいといわれています。

皆さんがご存じのように頭の良いカラスは知能が7歳ぐらいという研究もあるようです。人間の言葉を真似る能力があるオウムなど鳥類の頭の良さは良く知られていますね。鳥は警戒心が強いのですが、見せかけの脅しはすぐに見抜いてしまい、危害がないとわかればすぐに慣れてしまいます。一度、圃場を餌場と学習すると、場所を覚えていてしつこいぐらい繰り返しやってきます。味を覚えてやってくるため、年を重ねるごとに被害が拡大していく傾向があるようです。

また鳥はイノシシやシカなどの害獣と違い、空を飛べることから圃場の側面ばかりでなく圃場の上空からも簡単に侵入しますので、防鳥ネットを張り巡らせるにも労力やコストがかかります。隙間を作らずに圃場全体に適切に張らなければ効果が半減してしまいます。圃場が平らな土地とは限らず、傾斜地などがあるとさらに作業は大変です。

強さと軽さを兼ね備えた防鳥ネット『バードネット

そこでご紹介したいのが、セイコーエコロジアで取り扱っている「バードネット」です。ネットの素材にポリプロピレンを使用しており、縦糸と横糸の交差点を縦方向と横方向へ延伸式に融着することで、縦・横・斜めのどの角度に負荷がかかっても、強度があり破れにくい構造です。

軽量のため作業性に優れており、編み込み型のネットと違い交差点が融着されていますので、目ズレやほつれがおこらないメリットも。

目合いは18mm×20mmという適度なサイズですので、大切な果樹・作物を鳥害から守ることができます。

しっかりと鳥害対策を行い、収穫時期を安心して迎えましょう

一言で鳥害対策といっても、物理的に防御するものや、音や視覚で警戒をさせるものなど様々な対策があります。どの防除方法にもメリット、デメリットがあるかと思いますので、どれか一つの方法に頼りすぎず複合的に組み合わせて対策を行うことが大切です。今回のコラムをブルーベリー栽培の鳥害対策にお役立ていただければ幸いです。

関連コラム:畑の鳥害対策について|鳥害の実態や鳥害対策方法を解説

ブルーベリーを野鳥から守れ!鳥害と対策

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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