コラム
メロンの葉っぱが白い、もしかしてうどんこ病?その原因と対策
公開日2021.07.06
更新日2022.09.28

メロンの葉っぱが白い、もしかしてうどんこ病?その原因と対策

湿度が高くなるこの時期にみられる代表的な症状である「うどんこ病」。葉っぱの表面が粉状のうどん粉をまぶしたような姿になってしまうことから「うどんこ病」と名付けられています。うどんこ病はキュウリ・イチゴ・メロン・バラなどの植物に発生するカビ菌の一種です。罹患直後はほとんど気が付きませんが、お風呂で繁殖するカビと同様に環境が整うと密集するようになり、罹患後しばらくすると症状が目立つため発生が確認しやすいです。落葉や土壌の中に潜み、どこにでもいる糸状菌で作物の葉の養分を吸い取ります。窒素過多やカリウム不足による軟弱徒長状態や、免疫系が弱ったりしているときに罹患しやすいと考えられてます。

うどんこ病とは?

植物にカビ菌が住み着き、葉っぱが白色になる病気です。ほとんどの植物が発症する恐れのある病気で様々な理由で株が弱ったり、ストレスを受けているときに罹患しやすいと考えられています。発生時期は5~6月、9~11月にかけて降雨量が多い時期に発生します。施設栽培のような室内では、ほぼ1年中発生するリスクがあるといわれています。日中やや乾燥(湿度40~70%)し、朝夕に冷え込む寒暖差の大きい春や秋の時期で空気が淀みやすい時期に感染が多いようです。相対湿度の関係で日中気温が高く湿度が比較的乾燥していても、空気が淀んでいる場合絶対湿度(1立方メートルあたりの空間に含まれる水蒸気の重さの割合)は変わりませんから、15~16℃ぐらいの冷涼な温度になる夜間は相対湿度97~99%(多湿な状態)となり、うどんこ病の病原菌である胞子の形成が促進されると考えられています。なお胞子の状態は肉眼で見ることはできません。胞子が空中を漂い植物に付着し、付着した場所で菌糸をのばす条件が整うと、うどんこ病に罹患したことになります。

一般的にカビ菌は、有機物・無機物を問わず食料とすることができ、生息域も広く生物が活動する範囲のどこにでもいるといわれています。このことがほとんどの植物でうどんこ病に罹患する原因と考えられています。

うどんこ病の発生環境

カビ(糸状菌)が胞子から菌糸を盛んに伸ばし生育に適した温度は20~25℃だといわれています。葉が入り組んでいて湿気が溜まりやすい部分から発生します(湿気が多い場所は、空気が停滞しやすく、気温が下がりづらく、高温障害を発生しやすいといわれています。このことで葉っぱにもストレスがかかり、抵抗力が落ちていることが原因かもしれません)。なお病原菌の胞子形成が促進される「多湿(湿度97~99%)で冷涼な温度(15~16℃)の環境」は、30℃を超える夏などには発生しにくいです。

分類

うどんこ病の菌は、有性生殖により発生する子嚢(しのう)と呼ばれる袋状の器官をもっている子嚢菌(しのうきん)の一種です。閉子嚢殻と呼ばれる黒い殻の中に、有性生殖によって形成される子嚢袋と、その内側に入っている胞子が存在します。この殻は硬く薬品に対する耐性も高く、中に隠れている胞子は殻に守られ越冬することができ、春になると感染源となります。葉裏をよく観察すると小さな黒い粒が確認できることがあり、これは閉子嚢殻の可能性があります。

この菌は、カビの一種といわれていますが同じ種類に酵母菌が存在します。酵母菌は主に有機物(でんぷんやたんぱく質)から有用な物質(アルコールやアミノ酸)を作ります。カビ菌と酵母菌は生息域が重なり合っていることがあり、酵母菌が優位な位置を占めている場合、カビ菌の繁殖が抑えられる傾向があります。

伝染源

既に感染している作物、圃場周辺の雑草、土壌や落ち葉の中などでうどんこ病の病原菌は繁殖します。これらの病原菌の胞子が風にのって飛散し感染が広がっていきます。一度発生させると毎年繰り返す傾向があります。特に同じ作物を生産している場合、収穫が終わった後の残渣に菌が付着し残渣が土中に隠れ、圃場の消毒等が不十分なまま放置されると、連作障害として現れます。はっきりとした要因はわかっていませんが、特定の植物にしか感染しない宿主特異性という特徴をもっています。例えばナス科のトマトに感染するうどんこ病は、ウリ科のメロンには感染することはないと考えられています。ちなみに人体への影響はありません。

メロンのうどんこ病の症状

メロンに限ったことではありませんが、うどんこ病の症状は主に葉っぱに発生しその後、花卉・つぼみ・果実などといった株の全面へ感染が拡大します。気孔があり空気を取り込む機能がある葉っぱが、罹患しやすい部位だと考えられます。植物が健康な状態で抵抗力を発揮できれば病気を防ぐことが可能かもしれませんが、発育不全や高温障害になっているときに罹患すると、うどんこ病の菌が一気に菌糸をのばし葉の中に侵入します。菌のコロニーが形成されたとき葉っぱには、ぼやっとした白い病斑の症状が見られ、進行すると葉全体が白い粉で覆われます。さらに感染が進行すると葉っぱは黄色く変色して枯れ、茎まで感染が進むと根から水を吸い上げる機能が停止し、株ごと枯死してしまいます。まれに果実にも菌の感染が及ぶことがあります。古い病斑はべと病に似ていますが、うどんこ病の場合は、白い菌叢(きんそう)が付いているため見分けることができます。

メロンのうどんこ病の被害

繁殖したカビで葉っぱが小麦粉を振りかけたように白くなり、葉っぱに日光が届かないことで光合成が行えなくなります。発生したカビ菌は他の株に移って被害が拡大します。生育不良・枯死・葉・茎の奇形・花が咲かない(開花阻害)・果実が大きくならない・糖度が低下する、という被害が発生します。葉一面に発生すると回復が難しいといわれているため早期の対策が必要です。

メロンのうどんこ病対策

うどんこ病の原因は、カビ菌の仲間だということが分っています。主に胞子の状態で空中を漂いたどり着いた先で、菌糸をのばす環境が整うとカビ菌は増殖を開始します。増殖の大きな要因に温度と湿度があるといわれています。家のお風呂場の天井などによくある黒いシミは、カビが発生した痕跡で水滴が付着した場所に胞子がたどり着き、発芽したものだそうです。

うどんこ病の菌を圃場に持ち込まない・繁殖させない

圃場衛生管理

圃場周辺に昨年の生産物の残渣が残っていたり、雑草の管理ができていないと、カビ菌の温床になっている場合があります。胞子の形で圃場に飛んできたり、子嚢の形で土に隠れて履物に付着して侵入したりすることがあります。換気やほこりを良く落としてから圃場に入るようにし持ち込まないようにしたいものです。カビ菌が存在する土壌では、潅水時や雨が降った時の跳ね返りで、葉に付着することがあります。連作障害の原因にもなりますから、敷き藁やマルチングで対策をしましょう。

うどんこ病の発生する環境を作らない

温湿度管理

発芽条件が整わなければ、カビ菌の発症する機会を減らすことができるので、温度・湿度管理は重要です。メロンは、午前は光合成を十分行い、午後にでんぷん質を果実に蓄えると考えられています。光合成には二酸化炭素と水分が必要ですから、午前中は湿度が高い環境を作り、午後は上昇した湿度を一気に下げます。湿度が高い梅雨時には加温機を使い施設内温度を植物が耐えられる温度まで、いっぱいに上げ、その時の風向きを見極め、天窓の開放方向を制御し相対湿度を下げる工夫をしている農家さんもいるようです。高級メロン産地では電子制御による湿度管理に特化したハウスを建設し、品質の良いメロン栽培に取り込んでいると聞きます。湿度を上げないための、換気は重要です。葉っぱが込みすぎると空気の流れが悪くなり、高温障害の原因にもなります。

土壌管理

土中が健全で、カビ菌に対抗できる酵母菌が豊富であればカビ菌の増殖を抑える効果が期待できます。ここでも土作りがいかに重要か考えさせられます。土壌が健全で植物の健康が維持されていれば、多少のことでは罹患しても発症はないと思います。肥料過多やミネラル不足が原因で不健康になると発症の引き金を引きやすくなると思います。

発生してしまったら・・・

薬剤防除編

うどんこ病を早期発見するように心がけ、初期の段階では薬剤による繁殖抑制の検討を行います。放置するとカビ菌は繁殖してしまいますので、早めの対策が必要です。

薬剤候補

  • ポリオキシン(農業用抗生物質)
  • ダコニール
  • イオウフロアブル
  • サブロール乳剤
  • カリグリーン

薬剤は、防除効果・予防効果に優れています。使用時、用法・用量をしっかり守ってください。使い方を間違えると、耐性を持つ耐性菌が現れることがあります。地域によっては、使用薬剤の制限がありますので、農業試験場や農薬メーカの情報をご確認ください。

関連コラム:農薬散布の正しい方法と注意点|安全・安心な作物作りを目指して

その他編

  • 葉っぱを切り取る

初期の段階であれば、症状が出た葉っぱを切り取り、圃場の外に出してください。切り取った葉っぱは、確実に焼却処分または廃棄処分して下さい。

  • 食酢や重曹での防除

他の株にも広がる場合には、1週間おきを目安に食酢や重曹を散布してみましょう。初期段階の散布が効果的といわれています。

  • 希釈した重曹スプレー散布する

重曹スプレーは、重曹1gに対し水1000g(1ℓ)を目安にすると良いとされています。濃くしすぎると、葉っぱが黒ずむことがあるので注意してください。。農薬取締役法により散布殺虫剤として特定農薬にも指定されていますので、重曹スプレーを使用する際は特定農薬の注意事項をご確認の上ご利用ください。

  • 食酢スプレーを散布する

うどんこ病のカビ菌に、酸性の液体を振りかけることにより死滅する効果があるといわれています。食酢を20倍に希釈して使うのが一般的で、濃度を濃くすると酸性度が上がることになり、植物に悪影響が出るので注意します。ほかの病原菌に対しても、酢の浸透力による作用で殺菌効果が期待できます。

  • LEDの光で胞子の放出や飛散をおさえる

近年、胞子の成長には特定の波長が影響していることが研究され、特定の波長のLEDを組み合わせ照射すると、胞子の成長や飛散が阻害される可能性があるという報告があります。関心がある方は以下を検索してみてください。

LED 照射による分生子柄形成メカニズムの解明とうどんこ病防除への利用
日本菌学会大会 2016 年 9 月|研究者名 :野々村照雄(敬称略)

うどんこ病対策におすすめの資材

空動扇&空動扇SOLAR

ビニールハウス専用の無電源全自動換気扇です。空動扇は10坪に1機、空動扇SOLARは15坪に1機をビニールハウスの天井部に設置することでハウス内に溜まった熱だまりや湿気を抜いて温湿度を下げます。また農作業者の頭部分の温度が下がることで作業の快適性が向上します。

空動扇の一番の特徴は電気を使わない換気扇であることです。温度変化で伸び縮みするバネ(形状記憶スプリング)により弁が開閉することで換気の有無が決定されます。従って「電気代」というランニングコストが一切かかりません。

また台風の襲来時にビニールハウスを守るはたらきもしてくれます。強風によってベンチレーターが高速回転しハウス内の空気を抜くことでハウスの内圧を下げ、ビニールと躯体のパイプが強く密着。ビニールのバタつきを抑えることでハウスの裂傷・倒壊・破損といった被害を軽減するはたらきが期待できます。

▶空動扇の説明動画はこちら

静電噴口

静電噴口は静電気の原理を応用し、薬液を帯電させることで、散布した薬液を効率的に作物へ付着させます。帯電噴霧により通常では届きにくい葉裏などへの薬液付着率が向上し、約30%の農薬使用量削減が期待できます。薬液を作物に確実に付着させ、病害虫の発生頻度を抑えますので散布回数の低減が見込めます。ノズルと噴管の可変により様々な噴霧方向が選べます。

静電噴口の検証動画はこちら

うどんこ病対策をして品質の良いメロンを栽培

今回はうどんこ病の原因と対策に関して解説しました。うどんこ病は多発してしまうと抑え込むことが困難になりますので、予防と発生初期の防除対応がとても大切です。ぜひトライしていただき品質の良いメロンを栽培していきましょう。

メロンの葉っぱが白い、もしかしてうどんこ病?その原因と対策

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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