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連作障害はなぜ起こる?発生原因と作物への影響、対策方法
公開日2020.04.02
更新日2023.05.11

連作障害はなぜ起こる?発生原因と作物への影響、対策方法

同じ圃場で同じ作物を作り続けると「収量が減少する」「病害虫の影響を受けやすくなる」といった障害が起こりやすくなります。このような障害を連作障害といい、農家さんにとっては大きな痛手となります。今回のコラムでは連作障害が起こる原因と作物への影響をご紹介します。知識を身に着けておくことで障害発生が防ぎやすくなります。安定した農業経営にお役立ていただければ幸いです。

連作障害とは?

連作障害とは、その文字の通り作物を連続して栽培することで発生します。同じ作物(または同じ科の作物)を同じ圃場で作り続けると起こりやすい生育障害のことです。以下に例を示します。意外なものが同じ科の作物と思うかもしれません。

アブラナ科 ハクサイ・キャベツ・ブロッコリー・小松菜など
ナス科 ジャガイモ・ナス・トマト・ピーマンなど
バラ科 イチゴ・リンゴ・梨・ビワなど

連作障害の主な種類

土壌病害

もともと土壌には様々な種類の微生物が存在しています。この中には「作物にとって有益な微生物」「有害な微生物」「それ以外の微生物」が存在しバランスを取っていると考えられています。土壌の微生物のバランスが崩れ、土壌に生息する有害な微生物(作物にとっての病原体)の密度が高くなりすぎてしまうこと(有害微生物の寡占化)により、根や地下茎などから作物に侵入し病害を引き起こします。病害におかされると様々な障害が発生します。例えばトマトでは「尻腐れ病」「青枯れ病」、ハクサイでは「根こぶ病」が発症しやすくなります。病気にかかり実が着かなければ出荷できなくなり収入が落ちる可能性があります。

主な土壌病害
糸状菌 細菌 ウイルス
つる割病・疫病・萎凋病・褐色根腐病・半身萎凋病・萎黄病・根こぶ病・黄化病・菌核病・白絹病・紫紋羽病・黒あざ病・粉状そうか病・根茎腐敗病 斑点細菌病・青枯病・かいよう病・褐班細菌病・軟腐病・黒腐病・そうか病 メロンえそ斑点病・モザイク病・ウイルス病

生理障害

温湿度・日射量・土壌の栄養などの環境要因によって引き起る障害です。連作障害における生理障害で関係性が深いのは土壌の栄養です。土壌中に必要な栄養素が不足したり過剰であったりすることで、生長がスムーズに進まなくなります。

線虫害

線虫(センチュウ)は400㎛~1㎜程度の大変小さな動物で土の中で活動しています。作物が呼吸することにより出している二酸化炭素やアミノ酸から作物の場所を探し出します。線虫の口から出す針(口針)に作物が刺されると、根腐れが起こり生育不良を引き起こします。また、刺された箇所が死んでしまいそこから生長ができなくなるため、作物の形が歪みせっかく収穫しても商品価値が著しく落ちてしまいます。

連作障害の原因

連作障害が起こる原因

自然界の土壌は様々な微生物が協調したり、排除しあったりしながら生育環境が出来上がっていると考えられています。自然界では一か所に何度も同じ作物が育つのは特殊な状態であるため、人工的に農作物を繰り返し育てると、有害な土壌中の微生物の寡占化が起こったり、栄養が偏ったりして土壌病害が極端に表れやすいようです。実は水田で作られる稲作には連作障害がほとんど起こりません。これは灌水や落水により土壌中の有害な微生物の寡占化を防ぐためと考えられています。

施設園芸農業においては、同じ作物を繰り返し栽培する傾向がみられ、特に連作障害が発生しやすいといわれています。施設園芸は高い収益性を保持する必要があり、高度な栽培技術を要します。1品種でもノウハウの蓄積に時間がかかり、多品種を生産するのが難しいというのが農家の実情ではないでしょうか。また物理的に集約して栽培する必要性があるため余計に連作障害が発生しやすくなります。

原因1:土壌環境の悪化に起因する病害虫の増殖

連作を繰り返すことで起きた特定の栄養素の過不足や土壌酸性度の変化、また有害微生物の増殖などにより土壌環境が悪化し、作物の病害虫に対する耐病性や免疫が低下することがあります。土壌の栄養分の偏りは、栄養分を頼りに活動している土壌生物にも影響を与え、この偏りにより環境が悪化しやすくなると考えられています。土壌生物が作り出すミネラル分や有機質にも偏りが発生し、病害虫を誘引しやすく増殖を抑えられなくなります。例として、アブラムシは、窒素過多の圃場で発生しやすいといわれ、連作を漫然と繰り返すとますます作物にとって、病気や食害の影響が深刻化し生産量が落ちてしまいます。

原因2:施肥による土壌の栄養素の偏り

同一作物を同じ土地で生産するという自然界にはない環境が続くと土壌の栄養素が片寄りやすくなり、これが原因で作物の育成に障害を引き起こす連作障害が発生しやすくなるといわれています。同じ圃場で、同じ作物を作り続け、漫然と肥料を与え続けると土壌中の栄養素バランスが崩れ、特定の養分だけが吸収され土壌中から不足し、別の養分は留まり続け過剰になることが考えられます。昔、中学に技術家庭科の授業があり、植物の肥料3要素の学習で、窒素「ひょろひょろ」葉っぱ「カリカリ」と習ったような記憶があります。窒素の過不足はひょろひょろ伸びるが実が付かない。カリ分が多いと葉っぱが固くなる生理障害ということでした。

これ以外に植物が必要な栄養素は10数種類といわれ、糖質やたんぱく質を植物内で合成するとき、ミネラル類や有用成分がバランスよく根から吸収されないと正しく成長できません。例えば茎の成長を抑制し花芽を作る時期は、茎の成長を制御する成分が合成され、花芽を作る部位の細胞を刺激し花芽が出来ていきます。うまく合成できない場合は果実が実らなかったり、病害虫に対抗するための物質が不足したりする結果、病気にかかりやすくなります。

植物が成長に必要な三大栄養素は窒素・リン酸・カリといわれており、これらの栄養素を作物の種類や成長のタイミングに合わせて与えていても、連作障害が起ると養分が吸い上げにくくなり育ちが悪くなるばかりでなく、免疫系の活性化も損なわれ病害虫に対する耐性も落ちてきて病気や虫害が発生しやすくなります。

ちょっと解説☞同じ作物を作り続けるメリット

農業で作物を育てる場合、営農効率を考えると一定面積の圃場に同一作物を育てた方が、作業効率が上がり安定した経営が出来ると考えられます。また、毎回同じ作物を育てた方が育成手順の習熟度が高まり、さらに経営は安定します。このように、特定の土地で同一作物が安定して市場に供給され評判を呼ぶと、その地域の特産品として認められブランド化できるようになり産地の人にとってメリットとなります(例えば「九条ネギ」「三浦大根」「桜島大根」「大納言小豆」等)。

連作障害の対策方法

連作障害を避けるためにはどのような対策があるのか、土壌の特性・植物の特性・肥料の与え方などの工夫すべき点や、昔の人の知恵も借りて考えてみたいと思います。昔の人は連作障害のことを「土地が疲れる」とか「土地が痩せる」と表現していました。同じ作物を同じ土地で作ると忌地となり、上手く作物を育てられなくなることを経験的に知っていました。このため畑を区割りし栽培する場所を変えていく方法や、家庭菜園で行われているように異なる野菜を混在させて栽培したりしていました。

輪作・混作

毎年異なる作物を育てるようにします。作物は輪作年限が示されており、同じ圃場ではこの年数を参考にして育成し、この年数を経過しないように作物を変えていきます。違う野菜でも体質が近いと思われる近縁種の作物は避けるようにしましょう。ナス科であるトマト・ナス・ジャガイモ等は同じ病気にかかりやすく。病原菌・害虫も同じ種類のものの影響を受けやすいと言われています。

圃場を区分けし、育てる場所をローテーションして変えていく方法も有効です。この時育てる作物を組み合わせ、良い影響を与え合うようにします。家庭菜園では狭い場所でいろいろな作物を次々と栽培し上手に育てている方もいます。作物が相互に作用しあうことで連作障害を避けているようですね。プラスの影響を与え合う相性の良い作物はコンパニオンプランツと呼ばれています。

<コンパニオンプランツの一例>
▼イチゴとホウレンソウ・タイム
▼キュウリとトマト・葉ネギ・マリーゴールド
▼ジャガイモとエンドウ・キャベツ

有機物投入

無機質の肥料ばかり施肥していると、だんだんと圃場が固くなっていきます。通気性が悪くなり耕すのが大変になるだけではなく、土壌中の環境が偏ってくる影響でそこで生活が出来る生物にも偏りが出てきます。モグラやミミズのような大きな生物から、発酵菌・腐敗菌のような小さな生物までが土壌の環境を作っていますので、無機肥料ばかり施すと生物に偏りが出て多様性が崩れ土壌環境が悪化すると考えられています。

多様性を確保するためには、土壌中のさまざまな菌を豊かにすることが重要です。鉱物由来のミネラルは、根から吸収するのに大きすぎたり、有害なものと結合したりしていることがあります。これを吸収しやすい形にする働きをしているのが菌です。人の世界でも、有益なものに変える作用は発酵と呼び、害をなすものは腐敗と呼んでいます。

このような菌が活発に活動するためには、堆肥や有機資材を投入する必要があります。有機物は土壌中にいる生物のいわば食糧です、食べつくしてしまえばよそに移動するか、飢えて死滅してしまいます。そうならないように継続的に有機物を投入する必要があります。

土壌消毒(バーナー消毒・太陽熱消毒)

土壌を太陽熱やバーナーを使い高温殺菌したり、燻蒸剤をつかい土壌中にいる菌を徹底駆除します。この方法は特定の病害虫や病原体だけでなく、有用な微生物も死滅させてしまいます。処理後は有機物を投入したり、緑肥をしたりして土壌の微生物を増やし環境を戻す必要があります。土壌中に菌が住み着いてしまい発生するアスパラガスの茎枯病や、トマトのフィトフソラ病(カビ菌)などが有名です。このような場合、土壌消毒が必要になります。

接ぎ木

連作障害を接ぎ木により回避できる場合もあります。野菜類ではキュウリ・スイカ・メロン・ナス・トマト・ピーマンなどで接木が行われているようです。接木は収量を上げる目的と、病気にかかりにくくする目的があります。病気に強い近縁種の作物を台木にして、その上に育てたい作物に接ぎ木をします。例えばユウガオを台木にし、スイカを接ぎ木する方法はよく知られています。接木苗は適合するものを、市販品から選ぶと良いでしょう。トマトはトマトモザイクウイルス(ToMV)に対する品種改良が進んでいるとのことです。抗体特性が合わないと接合がうまくいかないため、抗体特性遺伝子カタログの確認が必要な場合があります。

土壌診断を受ける

健康な作物を育てるには、健康な土壌が必要です。土作りが土壌の基本となりますから、水分の状態や栄養素の過不足を把握し、その状態に応じた土壌改良や肥料の施用を行うと良いと思います。定期的に診断を行うことで収量や品質のレベルアップにつながる可能性があります。費用はかかりますが土壌医の資格を持つプロを利用してみるのも手段の一つです。

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連作障害の対策や予防に役立つ土壌改良資材地力の素

そこで皆様にご紹介したい製品が天然の腐食物質である地力の素です。地力の素には植物に必要なミネラルやアミノ酸などの微量養分の吸収力を高め、発育を促すと考えられているフルボ酸・フミン酸などの腐食物質が高度に濃縮されています。このような腐植物質が、土の中の微生物を活性化させることで、衰えた土壌を回復させると考えられています。カナディアンロッキー山脈の東麓にある熟成された堆積層から産出された土壌改良資材です。

地力の素の解説動画はこちら

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発生原因を理解し連作障害を防ぎましょう

連作障害は知見があるとないでは、対応力に差が出てきます。土壌改良や作物の組み合わせなどにより連作障害を避ける方法がありますので、作物特性を見極め、大量に病害虫の被害や生育不良が起らないように、連作障害対策を行っていきましょう。

連作障害はなぜ起こる?発生原因と作物への影響、対策方法

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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