コラム
センチュウ(線虫)とは?作物への被害の特徴と予防・駆除方法
公開日2020.04.04
更新日2022.06.08

センチュウ(線虫)とは?作物への被害の特徴と予防・駆除方法

センチュウは線形動物の仲間で、多くの種類は土の中や海の中に存在し他の生物に寄生しない生活を送っている物が大半だといわれています。一部に動植物に寄生する種類がいて、回虫や鞭虫などがよく知られています。植物寄生性線虫は肉眼で観察することが難しいほど小さく、植物では根に寄生し成長を妨げます。他の有害な虫に比べて目に見えないため注意しにくいのですが、作物に寄生されてしまうと根絶が難しいうえに加害する範囲は広く、ダメージは大きくなってしまいます。

センチュウの基礎知識

センチュウの研究は、動植物に被害を及ぼすものを中心に研究が進み、今では土中から海洋までの様々な場所から発見されています。センチュウの仲間は50万種とも1億種類以上ともいわれます。もしかしたら生態系の重要な一角を担っているのかもしれません。

センチュウ(線虫)とは?

植物につくセンチュウは、細長い糸状の体で体節構造がありません。ミミズに似た体をしていますが、ミミズの体にある節の繰り返し構造のようなものはセンチュウには確認できません。アメーバやゾウリムシなどの原生動物とミミズやヒルなどの環形動物の中間にあたる袋形動物です。体の大きさは、体長0.3㎜~1㎜程度と小さく(動物に寄生する回虫は数十センチと大きいものもいます)、基本的に無色透明で発見されにくいです。さまざまな場所で仲間の生息が報告されていますので、環境に対応する適応能力が高く一度その土壌に定着すると、次々に子孫を繁栄させ、被害が容易に拡大していくことが予想されます。

農業で被害を及ぼすセンチュウはネグサレセンチュウ・ネコブセンチュウ・シストセンチュウなどがあり、これ以外にも弱った松に取りつくマツノザイセンチュウや、桜根こぶを発生させるセンチュウなど、日本国内では11種類ぐらいに分類され報告されています。

センチュウの多くは、さまざまな植物に寄生できる性質が報告されています。例えばネグサレセンチュウは、根の組織内で産卵を行い、幼虫は孵化後根の中で養分を吸いながら移動し、根が弱ったり枯れたりして生息環境が悪化すると、その根からいったん出て次の寄生先を見つけ移動します。移動先の植物は同じ種類である必要は無く野菜から花卉へ、又はモモやサクラへの移動もできるようです。多湿な土壌を好み、地温が10度以上になると活動を活発化させ卵は15度以上で孵化します。

センチュウの種類

ネグサレセンチュウ

ほとんど土中で生活をしていて、土壌温度と湿度により活動条件が左右されます。高温多湿になると活発になり、地温15度ぐらいから活動を始め1世代25~35日とされています。産卵は根の組織内で行い、孵化した幼虫が養分を求め根の中を移動することにより、根が弱ったり腐ったりしていきます。根に褐色や黒褐色の斑点が生じ細かい根が少なくなります。生育条件が悪くなると、次の寄生主を求め出ていきます。圃場内で起こると同一作物が密集していますから次々と広がっていきます。イチゴ・大根・人参・ごぼう・サツマイモ・レタスなどに発生します。

ネコブセンチュウ

卵や成虫・幼虫いずれでも越冬することができ、地温10度くらいになると活動を開始します。1世代の長さはネグサレセンチュウより若干短く夏で25~30日といわれています。卵は15度以上で孵化が始まり、孵化した幼虫は土中を移動し根の生長点付近から侵入定着し、口からある種の汁液を出し根に無数のこぶを作ります。ナス・トマト・きゅうり・メロン・ピーマンなどに発生します。冷涼な地域ではキタネコブセンチュウ、温暖な地域ではサツマイモネコブセンチュウが生息しています。ネコブセンチュウのメスはゼラチン状の物質を作り、その中に数百個の卵を産み付けます。

シストセンチュウ

シストセンチュウは、卵や幼生が厚い膜を覆って休眠状態になった時が名づけの由来です。センチュウは雌が卵を持って死に、自身の体表が硬くなって卵を包む膜となります(この状態をシストと呼ぶ)。このような状態で土中に潜み越冬し、孵化した幼虫は土中を移動し根に到達すると根の中に入り成長します。3回の脱皮を経て成虫になった雌は頭部を根に入れてぶら下がり、雄は土壌中を自由に行動します。シストは厚い殻に覆われているため環境変化に強く薬剤が届きにくいようです。そのため農薬を施しても効果が出にくいといわれています。ジャガイモ・大豆・小豆・インゲン豆などで発生します。

センチュウによる主な被害

被害の症状はセンチュウの種類により異なり特徴があります。センチュウはさまざまな種類がいますが、作物へ被害が大きいセンチュウとしてはネグサレセンチュウ・ネコブセンチュウ・シストセンチュウが有名です。センチュウの被害にあった植物はセンチュウが口から出した汁液の影響で、咬まれたところが刺激され変形する症状が出ることが多いようです。作物の丈が短くなったり、葉の色が退色(赤褐色や紫褐色に変色)してきたりして枯死に至ります。土の中では根の組織内に侵入し根を変形させ根腐れを起こすことで株全体が弱くなります。天気の良い日に茎葉が萎れて生長が遅れ生育不良が起こり収穫量が減少します。土壌中に発生すると発見しにくく、知らないうちに蔓延してしまうというやっかいな害虫です。

センチュウ発生の原因

既にセンチュウが発生している土壌を持ち込んだり、その圃場で使用していた道具を別の圃場で使用したりすることで、もともとはセンチュウが生存していなかった場所で繁殖が始まることがあります。

センチュウ被害の予防・駆除方法

センチュウは動植物に被害を与えないものが大半で、圃場の中では良いセンチュウと悪いセンチュウのせめぎあいがあり、このバランスを保っておくことが重要だと思います。

センチュウの種類は約50万種ともいわれ、生息域は土中から海底まで広範に存在しています。悪い影響を植物に与えるセンチュウは詳しく研究され、加害するセンチュウが増える原因は、研究が進むにつれてだんだんとわかってきました。害をなさない有用なセンチュウはまだまだ分からないことの方が多いといわれています。

予防方法

連作をやめて輪作や昆作を行う

連作することは土壌環境のバランスが崩れてしまい「子孫を増やすことが出来る環境」をセンチュウに提供していることになります。特定のセンチュウがなわばりを確保しやすくなり繁殖に拍車がかかってしまうようです。この環境で連作を続けるとセンチュウの繁栄をさらに助けるだけになり、被害は拡大し生産量が激減し収益が落ちてしまいます。

センチュウによっては幅広い作物に適応するものもいますが、特定のセンチュウを増やさないために、色々な作物を作ることが大切です。水田化し潅水するとセンチュウの駆除をしやすいようです。

被害を起こしているセンチュウの種類は、圃場の土壌を検査することでわかる場合があります。ベルマン法や最近では新型コロナウイルス検査で有名になったPCR法で検査をしているところもあるようです。センチュウの種類を確認し、被害状況を踏まえて育てる作物を変えましょう。圃場の改善検討を行い、特定のセンチュウ密度を下げることが大事です。

道具の使いまわしに注意する

センチュウが発生した圃場で使用した道具の使いまわしや発生した圃場の植物を持ち込むことで被害が拡大します。道具は泥をしっかりと落とし、乾燥させた状態で保管するようにしましょう。

緑肥(抵抗性植物・対抗植物)を活用する

緑肥と呼ばれる植物の中にはセンチュウの繁殖を抑制する化学的物質を持っている種があり、緑肥を栽培しすき込むことでセンチュウの密度を低下させることができるとされています。また緑肥という有機物を土壌に投入することで多様な微生物の働きが活性化し、土壌環境のバランスが改善され有害なセンチュウが増えにくいとも考えられています。効果が期待できる緑肥には、ギニアグラス・クロタラリア・マリーゴールド・ライ麦などがあります。マリーゴールドの中では特にフレンチマリーゴールドやアフリカンマリーゴールドが有効で、育てるだけでも効果が期待できますが、花が咲き終わったら花ごと刻んで緑肥にすると良いといわれています。

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センチュウの密度低下効果が期待できる緑肥

センチュウの種類 センチュウの密度抑制効果が期待できる緑肥
キタネグサレセンチュウ エビスグサ・エンバク野生種・大麦・マリーゴールド・ライ麦
キタネコブセンチュウ ライ麦
ダイズシストセンチュウ クリムソンクローバー
サツマイモセンチュウ クロタラリア・マリーゴールド
ネコブセンチュウ ギニアグラス・クロタラリア
ネグサレセンチュウ ギニアグラス・ソルゴー(ソルガム)

駆除方法

太陽熱による土壌消毒を行う

熱消毒は有効な手段だといわれています。圃場を灌水し水田化するとさらに死滅が早まるとの報告もあります。気温が高く晴天が続きやすい夏に行うと効果がでやすいようです。土づくりを行った後にたっぷり水をかけて、透明なマルチシートを土にかぶせて石や水袋で固定し20~30日程度放置すると良いでしょう。

石灰窒素を使用する

石灰窒素は遅効性の窒素肥料で殺虫作用があります。センチュウは土中で越冬している間は卵の状態で薬剤に対する抵抗性が強く薬が効きにくいです。地中の温度が15℃以上になると卵から孵化して活動をし始めるため春から秋の間で使用すると効果的です。発芽直後に寄生されると被害が広がるため初期の防除が重要です。石灰窒素は有機物を腐熟する効果があり、尿素を経てアンモニア態窒素から徐々に硝酸態窒素になります。過剰な施肥には注意してください。作付け前や播種前に10aあたりに50~100kgをに散布または土壌と混和します。

米ぬかを使用する

米ぬかをまいたり、土にまぜたりすると乳酸菌が繁殖し自活性のセンチュウが増殖します。自活性センチュウが活発に活動することにより土中のアンモニア(自活性センチュウの排泄物)濃度が高くなりアンモニアに耐性の低い植物寄生型のセンチュウが減少します。米ぬかを混ぜた直後はアンモニアの害が出やすいため播種や植え付けの作業は1か月以上おいてからすると良いといわれています。

農薬(殺線虫剤)を使用する

薬剤を土壌に混ぜる方法です。センチュウ専用の薬剤もありますが、センチュウは土中深くても存在できるため殺虫剤の効果が及ばないことがあります。熱消毒・及び薬剤処理は対処療法で根本的に駆除は難しいといわれています。また土壌にとって有益な自活性のセンチュウも駆除してしまい土壌の環境には良い影響をあたえません。

センチュウの行動には硝酸カリウムの影響が見られ、濃度勾配の変化が影響を与えているらしいと報告されています。さらに研究が進み新しい防除方法が発見されるかもしれません。興味のある方は以下のサイトをご覧ください。

平成27年8月4日付 科学技術振興機構(JST)及び 名古屋大学名で発表の論文記事
土壌を模したミクロな人工空間でセンチュウの生態を解明~小さな虫が食糧・環境問題の解決に貢献~

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センチュウ対策に効果的な資材

地力の素

そこで皆様へおすすめしたいものが地力の素です。カナディアンロッキー山脈の東麓に位置するアルバータ州から発見された天然鉱物「カナディアンフミン」を原料としており、フミン酸・フルボ酸などの腐食物質が高度に濃縮されています。この地力の素を土づくりに使うことでセンチュウが発生しにくい環境をつくります。地力の素に多く含まれるフルボ酸は、土壌を本来の生息環境に近づける効果があり、微生物が増えてセンチュウを退治するといわれています。

地力の素の解説動画はこちら

スミちゃん

スミちゃんは籾殻を24時間自動で連続炭化することができる装置です。お米の脱穀によって生じたもみ殻を450~550℃程度の高温で燃焼して炭化させます。音がほとんどせず煙と臭いが出ないので近隣に住宅があっても気にせず運転ができ、火災の心配もありません。できた籾殻くん炭は露地栽培やハウス栽培の土壌環境を改善したり、畜産におけるニオイや虫の発生を抑止したりする資材として活用できます。センチュウの発生しづらい健康的な土壌環境をつくることができます。

▶【動画】スミちゃん設置編
▶【動画】スミちゃん稼働編

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有効な予防でセンチュウ被害を減らしましょう

センチュウは一度発生してしまうと駆除が難しい害虫ですから、事前の予防がとても大事です。病害虫防除のためには連作を避け土壌改良を行い、良いバランスで土の環境を整えておく必要があります。センチュウの被害を減らし大切に育てた農作物を守ることが収量の減少を防ぐことにつながります。

センチュウ(線虫)とは?作物への被害の特徴と予防・駆除方法

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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