コラム
就農希望者が知っておくべき、農業を始めるためのポイントとは?
公開日2019.09.01
更新日2021.07.01

就農希望者が知っておくべき、農業を始めるためのポイントとは?

農林水産省の発表によれば、日本の食料自給率は先進国の中では極めて低い4割程度を推移しており、マスメディアや専門家からは課題の多い分野であると指摘されています。政府は2025年までに職業自給率を45%まで引き上げることを目標に掲げ、就農支援を実施する自治体も増えてきており、農業を職業にすることへの注目度が高まっていることがうかがえます。今回のコラムでは一般の方にはなじみの低い農業を、仕事にすることについての基本をお伝えしていきたいと思います。

農業の今

2020年農林業センサンス結果

2020年(令和2年)に農林水産省が発表している農林業センサス結果の概要によると、5年前と比べると農業経営体は21.9%の減少、個人経営体は22.6%の減少となっており、この減少傾向は今後も続く見込みです。団体経営体のうち会社法人や農事組合法人などの法人経営体はわずかに増加傾向が見られています。

農業経営体数(全国)

区分\年 2010年 2015年 2020年
農業経営体 1,679千 1,377千 1,076千
個人経営体 1,644千 1,340千 1,037千
団体経営体
(うち法人経営体)
36千
(22千)
37千
(27千)
38千
(31千)

経営耕地面積の規模別農業経営体数の増減については、小さい面積の経営体数は減少傾向にあり、耕地面積10haを境に増加し、規模が大きくなればなるほど増加率が高い傾向が見られます。

経営耕地面積規模別農業経営体数の増減率

面積 ~1ha 1~5ha 5~10ha 10~20ha 20~30ha 30~50ha 50~100ha 100ha~
増減 △24.5% △23.6% △5.7% 11.8% 25.4% 31.7% 39.5% 37.5%

農業経営体の総数が減少し続けている一方、法人経営体の増加や大規模な耕地面積を持つ経営体は増加しています。

不足する若手

農業の労働力については、基幹的農業従事者(普段の仕事が農業である人)の数が1995年(平成7年)に256万人でしたが、2018年(平成30年)には145万人とかなり大きく減少しています。また農業従事者の年齢構成は2018年(平成30年)の段階で、65歳以上が68%(98.7万人)40歳以下が11%(15.2万人)と大きな偏りが見られ、若い世代の農家さんが極端に少ないことがわかります。

日本の農業の厳しい実情

このように全体として日本の農業は厳しい状況は続いていますが、日本人の人口の減少による国内食市場の縮小が避けられない中、世界全体の食市場は急速な拡大が予測されており、世界の多様なニーズに答えられるような農業の体制づくりが求められています。このような課題を解決するためにも農業従事者および新規就農者を国や行政がどのようにバックアップしていくのかが重要なポイントの一つであると考えられています。

就農の基礎知識

就農の種類

就農の形態は大きく分けて3種類あります。実家の稼業を継ぐ場合や、農業法人に就職する雇用就農、農地を買う・または借りて自分で農業を営む独立就農(自営就農)があります。近年は、脱サラして就農するなど、新たに農業に対して興味を持つ人も多くなっています。

【種類別】就農のメリット・デメリット

新規自営農業就農

家族がもともと農業を営んでおり、家業を手伝うまたは経営を継ぐことにより農業従事者となった人のことです。作物栽培のノウハウや、仕入先や販売先などが確保されており、その基盤を生かして経営を発展しやすい環境です。作物の作り方や販売先などを大きく変えたいときに、既存のしがらみにとらわれフレキシブルに対応できないこともあるようです。

新規雇用就農

安定した収入を得ながら農業を学ぶことができ、上司や先輩など手本になる就農者が身近にいて学びやすく、仕事の道筋を会社が用意してくれるといったメリットがあります。ただし、会社の一員として働くことになるため、自分のやりたい農業を実現できない場合があります。

独立就農|新規参入就農

自分自身が農業経営者になり、栽培や管理の年間計画を自分の裁量で決めることができるというメリットがあります。しかし生産技術が未熟な場合は、課題が発生した際に自分自身で解決することになるため、効率が落ちやすいというデメリットがあります。また、農地取得の資金を調達する必要があり、新規参入者は軌道に乗るまで収入が不安定になりがちといったリスクも背負わなければいけません。販売先も独自に開拓する必要があります。

農家の収入はどれぐらい?

農林水産省のホームページに1経営体あたりの農業所得の動向が掲載されています。勤労者世帯の収入は、総務省が発表している家計調査報告家計収支編2019年(令和元年)に記載されている過去の可処分所得(月平均額)をベースに年間の所得を算出しています。

区分\年 平成29年 平成28年 平成29年 平成30年
販売農家 496万円 521万円 526万円 511万円
主業農家 704万円 788万円 802万円 801万円
勤労者世帯 513万円 514万円 521万円 546万円

販売農家:経営耕地が30a以上又は農産物販売金額が年間50万円以上の農家
主業農家:農業所得が主で、1年間に60日以上農業に従事している65歳未満の者がいる農家
勤労者世帯:二人以上の世帯のうち勤労者世帯

販売農家と主業農家の用語の意味が少しわかりにくいです。主業農家は農業所得が農業外所得より多いという点が大きな違いかと思います。反対に販売農家は農業外所得や関連事業所得また年金などの所得が農業所得より多い農家です。単純に数字だけを見ると勤労者世帯に比べて主業農家のほうが所得が多いと考えられます。

就農するための準備

農業の情報や基礎知識を収集する

自身の就農イメージを具体化することが大切です。各地域の公的な支援制度がありますので、ホームページなどで情報を集めて有効に活用しましょう。農業人フェアのような就農説明会に参加すれば知識を勉強できますし、全国新規就農相談センターのような相談窓口に行ってノウハウを得るなど、いろいろな方法を使って情報収集を行いましょう。

農業法人等のインターンシップに参加する

農業法人等では就農希望者に向けて、実際に働きながら農業を学べる農業インターン生を募集している場合があります。将来の就農地や生産したいものをイメージし、目的意識をもって研修を受けることが大切です。事業規模により、作業形態や仕事内容・勤務時間・待遇などが異なってきます。自分自身のやりたいことが、家族経営が向いているか、社員10人以上の比較的大きな農業法人か向いているか、さまざまな視点から検討すると良いでしょう。

自治体主催の研修に参加する

就農地が決まっている人におすすめなのが、農業者不足を解消するため、地方の自治体が行っている農業研修です。仕事を疑似体験することができます。長期や短期研修など期間はさまざまですから、希望する自治体の役所に問い合わせてみると良いでしょう。

農業に使える補助金を調べる

新たに農業を始める就農者にとって、高額な設備や運転資金を確保するのは大変なことです。農業にかかわる個人や法人などの団体が利用できる補助金がありますので有効活用できるように事前に調べておくと良いでしょう。こちらのコラム農業補助金とは?就農者の自立・事業拡大を後押しする支援制度の特徴もご参照ください。

就農するためのポイント

自分が目指したい農業を選択する

野菜作り

就農者に人気がある農業です。作目によってある程度の就農する地域が決まってきます。野菜作りには露地栽培と施設栽培の2パターンの栽培方法があります。露地栽培は初期費用を抑えることができ、栽培品目も多様です。施設栽培はパイプハウスおよび付属するヒートポンプといった施設等の導入費用がかかりますが、年間を通して安定した生産が可能だと言われています。作る野菜の市場価値や人気次第で所得や収益率が変わってくるため、自分の作りたい作目がどれほどの売り上げを見込めるのかを調べておくと良いでしょう。

稲作

稲作で一定の収益を上げるためには広い土地が必要となります。農業用水が必須になりますが、水は集落の資源なので、周囲の理解を得てから始めることが重要です。初期投資としてトラクター・田植え機・コンバインといった重機の費用がかかります。

果樹

実が成るまでに年数がかかるので、ある程度の運転資金が必要です。地域や気候・土壌の影響を大きく受け、簡単に植え替えができないので、品目選びはよく検討する必要があります。安定して収益を上げるには、ある程度の広さの農園と栽培技術が必要ですから、最初は小規模で行い徐々に規模拡大を目指すのがおすすめです。

花卉(かき)

切り花・鉢物・苗物・球根・芝など品目は多岐にわたります。小面積でも高い収益を見込めますが、花はデリケートで劣化が早いため、高度な栽培および収穫技術と、市場ニーズの把握する情報収集力が必要となります。花卉の輸入が年々増えており、価格競争にさらされる可能性も指摘されています。単価の高い高級品目を栽培する高級路線か、消費者が求めやすい価格の品目を栽培するカジュアル路線かで経営方法が変わります。

畜産

酪農・肉用牛・養豚・養鶏などがあります。生き物を相手にするので365日休みなく作業があります。伝染病や病気の予防などに注意が必要です。施設・機械・家畜の購入費用などの初期費用や、餌代など資金が必要になります。リスクを回避するために、畜産農家で研修または就職して、経験と知識を蓄えてから始めるというように段階的に進めるほうが良いと言われています。

新規就農者をバックアップする機構を活用する

経営していくためには資金調達・経営ノウハウ・農業技術の習得・設備の整備などさまざまな知識が必要です。農林水産省が資金を交付する制度に、農業次世代人材投資資金というものがあり、これは就農前の研修資金や就農直後の経営確立を支援するための給付金です。このような新規就農希望者をバックアップする助成金を活用することはもちろん、技術的な課題や経営的な判断に迷う際には、都道府県や市町村の相談窓口などを活用すると良いでしょう。

日本の農業を盛り上げ明るい未来を作っていきましょう

多くの人が日本の食料供給に不安があると回答しているアンケートもあります。輸入している食料が確保できなくなる可能性を考えると、食料を安定的に供給することは日本の将来のために大変重要なことです。農業を担うことはとても大切な仕事ですが、実際に農業を始める上ではいろいろな課題が出てくると思いますので就農準備を開始する際の情報として今回のコラムをお役立ていただければ幸いです。

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