コラム
農業用ハウスのメリットとは? 作物に適切な環境を整える設備の選び方
公開日2019.05.10
更新日2022.09.01

農業用ハウスのメリットとは? 作物に適切な環境を整える設備の選び方

農業用ハウスは栽培する農作物に適した環境を人工的に作り出します。このような農業を施設園芸農業といいます。季節に関係なく農作物を栽培でき、特に気温が低下する冬季でも温室で安定的に栽培し収穫できることが大きなメリットです。今回はビニールハウスやガラスハウスのような「農業用ハウス」で農作物を栽培するメリットを〝作物に適切な環境を整える設備の選び方“という観点から記載していきたいと思います。

農業用ハウスで作物を育てるメリット

温度と湿度を調整し収量増加

農業用ハウスはパイプや鉄骨といった骨組み(フレーム)に透明なビニールを展張した閉鎖的な空間です。そのためハウス内に温度や湿度をコントロールする機械を設置し自動的に温度や湿度を調節することができます。例えば加温機やヒートポンプ、外張り・内張りカーテン、サイドの巻き上げ装置、妻面換気、循環扇、谷換気といった機械を使用すれば、農作物に最適な温度と湿度に近づけることが可能となります。このように温度管理や湿度管理ができるというメリットがあります。温度と湿度が最適になれば農作物は健全に成長し安定的に収穫することができます。また、露地では栽培することが難しい冬季に出荷することにより収入源を確保します。

害虫の侵入を防ぎ農薬の使用量を減らす

露地では害虫や害獣といった生物の侵入を防ぐことが難しい環境ですが、農業用ハウスでは構造的に外部からの流入が少ない密閉された空間ですので、侵入を抑制できるメリットがあります。露地と比較すると作物自体に害虫が付着しにくいので、投与する農薬の量を減らすことができコストを削減できます。

悪天候から作物を守る

雨や強風といった悪天候から作物を守り、幹折れや作物が傷むといった被害を防ぐことができます。そして悪天候でもカッパや傘を差さずに農作業をできるため、農家の方にとっても働きやすい環境です。ただし、台風や大雪ではハウスが倒壊する可能性があるので対策を講じる必要があります。

日照時間を調整し品質向上

農業用ハウスのカーテンはメーカーにより仕様はさまざまで、通気性・遮光・遮熱などといった機能性を持っています。例えば遮光率の高いカーテンは、夏場の強い日差しを遮熱し作物を守り、遮光して作物に適切な日照時間に調整をすることができます。近年では、曇天時の日照時間が足りない時の日長延長として、農業用のLED照明を利用する農家さんも増えており、農作物の品質向上に寄与しています。

全自動環境制御で省力化

センサーや自動制御装置を活用すれば、ハウス内の環境をセンシングして、換気装置・潅水装置・ミストスプリンクラー・暖房機などを全自動でコントロールすることができます。現地で確認や作業をする手間が省けて、遠隔地からパソコンやスマートフォンなどで栽培環境のモニタリングを行い管理し、状況に応じて指示を出すことが可能です。毎年集計したデータを蓄積しノウハウとして活用するなど様々な使い方が期待できます。

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・農業の自動化によるメリット・デメリット│ICTの活用で生産性を向上
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熱を使った土壌消毒ができる

栽培をしない時期(特に夏の暑い時期)にハウスを締め切って、気温と地熱を高温にすることで、土壌に存在している害虫や病原菌を退治する方法があります。地表をビニールシートで被覆するとより効果的です。

農業用ハウスの種類

ビニールハウス(パイプハウス)|単棟

農業用のハウスは大別するとビニールハウス(またはパイプハウス)とガラスハウス(または鉄骨ハウス)に分類することができます。ビニールハウス支柱U字パイプ、被覆に農ビ(農業用ポリ塩化ビニール)やPOフィルム(ポリオレフィンフィルム)を使い、ガラスハウスは支柱部分にH鋼角パイプ、被覆にガラス硬質フィルムなどの頑丈な部材を使って作られています。

また一つずつ独立してハウスが建てられている構造を単棟、二つ三つと繋がった状態で建てられている構造を連棟といいます。

ガラスハウス(鉄骨ハウス)|連棟

一般的にはビニールハウスのほうがガラスハウスより安価で、単棟のほうが連棟より安価です。それぞれにメリット・デメリットがありますので、価格だけで選ぶのではなく作る環境や投資規模により最適なものを選ぶ必要があります。

以前は底面の全部がコンクリート等で覆われた農業用の施設を作ると、農地転用(宅地扱い)となり固定資産税が上がってしまうということがありましたが、平成30年11月6日に施工された農地法の一部改正により、農作物栽培高度化施設の用に供する土地として事前に農業委員会に申請することで農地転用にあたらないとみなされ、農地としての課税評価が継続されるようになりました。

種類 ビニールハウス
(パイプハウス)
ガラスハウス
(鉄骨ハウス)
支柱(骨材) U字パイプ H鋼・角パイプ
被覆 濃ビ・POフィルム ガラス・硬質フィルム

農業用ハウスを選ぶポイント

耐久性の高い骨材・構造でできているか

骨材とはハウスの支柱部分のことで、一般的にガラスハウスでは「H鋼」や「角パイプ」、パイプハウスでは「丸パイプ(鋼管)」が使われています。耐風性や耐雪性を向上させるには丈夫な骨材を選択する必要があります。骨材は錆びると耐久性が下がりますので、亜鉛メッキ加工を施した錆びにくい骨材を選択すると良いでしょう。ガラスハウスのほうが、強度が高く倒壊しにくい素材でつくられていて耐用年数も長いですが、それだけ設置費用も高くなります。

形状が環境に適しているか

農業用ハウスの構造は丸型と屋根型があります。丸型のほうが耐久性の高い構造ですが、雪が落ちにくいというデメリットがあり、地域によっては雪が落ちやすい屋根型のほうが良いとされています。その他にも積雪量や風向きなど現地の気候の特色に合わせて、間口・軒高・連棟などの構造を耐久性のある仕様にする必要があり、各メーカーから様々な仕様のものが販売されていますので、各メーカーへ相談をされた上で慎重に選択してください。

気密性が高いかどうか

冬季でも農業用ハウスは太陽の光さえ差し込めば暖かくなります。これはハウスが気密性を保持しているからです。ハウス内の環境を維持する為にはこの気密性が重要です。冬季は特に被覆材と内張に断熱性のあるものを使用することをおすすめします。

換気設備は整っているか

農業用ハウスの天長部に熱がこもりやすいため、温度や湿度を調節するための換気設備が必要です。換気装置には妻面(側面)換気装置、サイド巻上換気装置、天窓換気装置、循環扇装置などがあります。温湿度が上手にコントロールできないと病害虫が発生しやすくなったり、高温障害が生じやすくなったりします。

見積もり金額は適切か

農業用ハウスは農業経営費の中では大きい出費となるので、金額が農地運営に対して適切かどうか見極める必要があります。また日本では、調達の過程でいくつもの卸売業者が介在していることが商習慣上一般的で、間接的な費用が発生し農家さんが購入する際に値段が割高になってしまうという流通機構の問題があります。そのため農家さんによっては自作でハウスを組み立てされたり、知り合いの農家さんから中古品を購入される方もいらっしゃるようです。スペインやオランダでは卸売業者や小売店を通さずにメーカーから直接購入するケースがほとんどです。

助成金があるか

ハウスの建設や整備に使える補助金や助成金がある場合は、有効に活用すると良いでしょう。補助金や助成金の情報は、農林水産省や各都道府県および市町村などのホームページに詳しい情報が載っていますので、事前にチェックすることをおすすめします。農林水産省が補助金等の逆引き事典をホームページ上に掲載していますので、こちらもご活用ください。

公的な保険制度である農業保険は、原則的に掛金の50%を国が負担してくれます。耐風や強風などで倒壊・破損の危険性がありますので、このような保険も有効に利用すると良いと思います。

農業用ハウスでの作物栽培に便利な商品

空動扇|ビニールハウスの換気扇

商品特徴
空動扇は電源が一切不要な全自動無動力換気扇です。弁と連動した形状記憶合金のバネが設定温度を感知すると縮んでオートマチック開き換気を行います。施工も非常に簡単で導入後のメンテナンスも不要です。また天窓よりも大幅にコストを抑えて導入することができます。全国各地での導入実績も豊富ですので安心です。

導入による効果
換気によってハウス内の温湿度を低下させます。夏場の昇温を防止しますので健全な作物の育成を、湿度を低下させますので病気の発生を防ぐ効果があります。また台風等の自然災害にみまわれた際、空動扇のファンは毎分1300回転し、農業用ハウス内の空気を急速に外へ排出します。そのためハウス内の気圧が下がり、ビニールとパイプが強く密着。浮き立ちを防止し裂傷、倒壊、破損といった被害を軽減する効果もあります。台風対策としての効果が期待できます。

空動扇の説明動画はこちら

実際に導入されたお客様の声はこちら:

8℃下がった!?空動扇はハウス強度を落としません!|磯川さんのコーヒー農園
ハウス内が涼しくなった!空動扇SOLARの効果を実感|苺絵
夏場のハウス内温度が低下!湿度対策や耐久性向上にも効果を実感

モーターフォグ|葉面散布用噴霧器

商品特徴
モーターフォグは葉面散布用の小型電動噴霧器です。本体重量は約6kgと小型で持ち運びがしやすく、モーター式なのでエンジン式と比較すると動作音が静かです。葉面散布剤各種を霧状にうっすらとハウス内に充満させることができます。湿度が80~90%の時には20m先まで噴霧できますのでパワフル。葉面散布剤は珪酸が主成分の「リフレッシュ」をおすすめします。

導入による効果
リフレッシュの上澄み液を定期的に散布(おすすめは一週間に2回、10aあたり4,5L)していただくことにより、動噴による薬剤散布の回数を減らすことができます。また葉を硬く引き締め樹勢を整え、害虫や病気を予防する効果もあります。特にイチゴ栽培農家さんに高い実績があります。

使用者の声
栃木県 いちご農家様
合計栽培面積3000㎡にモーターフォグをご導入
〈2019年1月ご訪問時のお客様の声〉
モーターフォグを使用して5日に一回、10aあたり4,5Lのリフレッシュ上澄み液を噴霧されています。「今冬は寒いにも関わらず玉伸びが良く収量が安定している」また「アザミウマ、コナジラミ、ハモグリバエ等の害虫が発生していない」「継続的に噴霧することが大切だ」と嬉しい声をいただきました。

便利な資材を使って、効率的な農作業を

農業用ハウスのメリットをご確認いただけたでしょうか。ハウスは農作物を栽培する為の環境として非常に便利なものですが、設備の選び方が重要です。農作業の効率化と生産性向上の実現に向けて、このコラムが少しでもお役にたてば幸いです。

農業用ハウスのメリットとは? 作物に適切な環境を整える設備の選び方

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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