コラム
ヨトウムシの被害から作物を守るには?予防や駆除におすすめの設備
公開日2019.08.09
更新日2022.07.01

ヨトウムシの被害から作物を守るには?予防や駆除におすすめの設備

幼虫が老齢化すると夜行性になるヨトウムシは食欲旺盛で、大量発生すると夜間に葉を食べる音が聞こえてくるほどといわれています。夜中は天敵があまりいないため、長時間にわたり快適に食事をすることができ、葉っぱを食べつくしてしまいます。多くの虫は食べる物が決まっていることが一般的ですが、ヨトウムシは食性が非常に広く、さまざまな種類の作物を好んで食べてしまうというのも厄介な害虫である理由です。ヨトウムシの生態の特徴と、予防や駆除におすすめの設備を紹介していきたいと思います。

ヨトウムシの基礎知識

まずはヨトウムシの基礎知識に関して分かりやすく具体的に記載していきたいと思います。

ヨトウムシとは

ヨトウガという夜行性の虫の幼虫です。シロイチモジヨトウ・シロシタヨトウ・ハスモンヨトウ・アワヨトウもまとめてヨトウムシ類と呼ばれます。夜間に活動し、作物を食害することから「夜盗虫(ヨトウムシ)」という名前が付いたとされています。

特徴
若年幼虫は淡い緑色や黒褐色の体色をしており、体長30~50mmほどで葉裏に群生します。老齢になると夜行性になることに伴い、黒や灰色の個体が多くなり体長は40~50mm程度です。

生態
地域に限定されず日本各地に存在するため、家庭菜園でも良く発生し、成虫は作物の葉の裏に数十~数百個の卵塊を数回に分けて産み付けて繁殖します。卵は葉裏まとめて産み付けられ、孵化したすぐ後は集団で加害しますが、成長し老齢幼虫になるにつれて分散し昼間は茂みや土中で過ごし夜になると地中から出てきて植物を食べるようになります。

8月~10月ごろに1匹あたり1,000~3,000粒ほどの卵を産み、9月~10月に一度に大量に孵化します。1カ月ほどで蛹になり、冬の間は土の中で休眠して越冬します。4月~5月ごろに羽化して成虫になります。

ヨトウムシが発生しやすい時期

ヨトウムシの親であるヨトウガは、春から初夏と秋頃の2回にわたり卵を産み付けます。特に夏で高温乾燥していると発生しやすい傾向があるといわれています。発生時期には警戒が必要です。下の表の赤い部分が特に発生しやすい時期です。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
冬眠 羽化→成虫→産卵→孵化 蛹・夏眠 羽化→成虫→産卵→孵化
  食害
幼虫食害
幼虫食害 幼虫食害
食害  

ヨトウムシの被害が出やすい植物

野菜、花き、果樹に至る極めて広食性の高い虫ですが、キャベツやハクサイなどの葉物野菜や、ブロッコリーやカリフラワー・ジャガイモ・イチゴ・ナス・小松菜などの種類が被害に遭いやすいです。花・庭木では、パンジーやプリムラ・マーガレット・バラなどが被害を受けやすく柔らかい花弁の部分が食害されることがあります。

被害が報告されている植物の一例

植物の分類 植物名
アブラナ科 アブラナ属 アブラナ、ミズナ、タイサイ、コマツナ、カブ、チンゲンサイ、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ハボタン
ダイコン属 ダイコン
ナス科 ジャガイモ、ナス
バラ科 イチゴ、バラ
ヒガンバナ科 ネギ属 ネギ、タマネギ
スミレ科 スミレ属 パンジー、スミレ
サクラソウ科 プリムラ
キク科 マーガレット
セリ科 ニンジン属 ニンジン
アオイ科 トロロアオイ属 オクラ
ウリ科 キュウリ属 キュウリ
シソ科 大葉

ヨトウムシの食害が及ぼす影響

雑食で食欲旺盛であり集団で活動するため、葉に穴を空けて食い散らかされ野菜の食用部分がなくなるケースが多くなります。被害が進むと葉脈だけ残して葉全体がすべて食べられてしまいます。植物の新芽を好んで食べる性質があるため芽を食い尽くされると、野菜や植物が育たなくなるおそれがあります。ヨトウムシは卵からかえると1枚の葉をあっという間に食べつくし、葉が表皮を残しレース状になってしまいます。食べる場所がなくなると他の葉へ分散し被害が広範囲へ拡大していきます。花は、花びらだけでなくつぼみも食い荒らされ、花数が減る原因になります。食害痕は見た目が悪くなり商品価値が著しく低下します。

ヨトウムシとネキリムシの違い

ヨトウムシに似た夜蛾にネキリムシがいます。名前の由来は一見すると根を切られたような被害に見えるため「根切虫」と呼ばれています。ヨトウムシは主に葉っぱや実を食害するのに対しネキリムシは地際の茎を食害します。

ネキリムシの活動パターンは、ヨトウムシと同じく夜行性で日中は地中に潜み夜間活発に行動します。地表を移動し植物に取りつくと、地面付近の茎を齧ります。茎の周辺は根から吸い上げた水や養分を届けたり、葉で作られたでんぷん質などを実に集めたりする、いわば血管のような『維管束系』(葉脈・導管・木管・通道など)がありここを狙うのがネキリムシです。『維管束系』は、植物を支えると同時に、成長に必要な様々なものの配送制御を行う器官ですからここが食害されると、支えきれなくなり横倒しになってしまいます。また、十分な栄養の供給ができずに枯れてしまいます。

ヨトウムシの予防対策・駆除方法

ヨトウムシの被害を未然に防ぎ、駆除する方法に関して記載していきたいと思います。

ヨトウムシは、夏季や冬季に圃場周辺の土中でサナギの状態で過ごします。その後、羽化した成虫は、卵を産み付ける場所を探し移動するようです。定植中や発芽直後の圃場を発見すれば彼らにとっては衣食住が十分そろったパラダイスの環境です。そして人間に発見されなければ大量発生の繁栄が約束されます。そのようにならないように予防に努め、万が一侵入されたら早めの駆除をしましょう。

ヨトウムシの予防対策

ヨトウムシは、1回に100個ほどの卵を産み付け何回か脱皮をした後に成虫になります。孵化から若齢幼虫のうちは集団生活をしており、昼間に活動しますが、成長するにつれて老齢幼虫となると夜行性になります。ヨトウムシの予防法は、ヨトウムシの親であるヨトウガをとにかく圃場に入れないことです。物理的に遮断する方法や、彼らが近寄りたくない匂い・刺激で追い出す方法、天敵昆虫に頑張ってもらう方法などがあります。作物や圃場の置かれている環境により試してみてください。

道具を使った予防
作物に防虫ネットをかけ、ヨトウガの飛来を避けます。露地栽培ではトンネルがけなどを行います。防虫ネットは網目が粗いと小さな幼虫が入ってきてしまいますので、なるべく目の細かいネットを使用すると良いでしょう。また害虫忌避剤を撒く、防蛾灯を照らすなどを行い、成虫の産卵を抑制します。

日頃からできる予防
作付け前に畑をよく耕すことで、土の中にいるヨトウムシや蛹をみつけやすくなります。葉裏に産卵するため、葉ごと切り取って孵化する前に処分すると良いでしょう。周辺に雑草が多いと繁殖や越冬をしやすく、発生要因になるといわれていますので、雑草は丹念に抜いて処分しましょう。

天然の忌避効果や殺虫効果を使った予防
天然の忌避効果が期待できる、コーヒーの出がらしや木酢液、殺虫効果が期待できる草木灰などが知られています。

コーヒーの出がらしを土と混ぜると、幼虫が土中にもぐりにくくなるといわれています。広大な圃場に投入するのは相当な量が必要になりそうです。ガーデニングや家庭菜園のようなところで効果が期待できるかもしれません。

木酢液は、炭を作る過程で植物を構成する成分が、熱分解し水蒸気などと一緒に煙となった気体を冷却するとえられる強酸性を示す液体です。古くは酢酸の原料として利用され、また、農薬として登録をされていたこともあります(現在は農薬としては認められていません)。木酢液を水で数百倍に薄めて植物に散布すると、その匂いでヨトウムシが近づかなくなるといわれています。

草木灰は、草木を燃した後に残る灰のことです。草木灰は、下草を刈ったものや雑木林の落ち葉を集めて積み上げ、火をつけて作ります。十分乾燥させないと煙が大量に発生し大変なことになるので注意してください。草木灰を作る目的の一つに、害虫が刈り取った下草や落ち葉に集まり、それを焼くことで駆除すると同時に、土壌中和剤を作ることです。草木灰は防虫・殺虫効果があるといわれています。また主成分は炭酸カリウムですので水溶液はアルカリ性を示し酸性に傾いた土地を中和することができます。

ヨトウムシの駆除方法

目視で駆除する
葉の裏面に産卵していたら、葉ごと処理するか手袋をしてすりつぶします。ただし、葉を1枚ずつチェックしたり、処理したりする手間がかかります。また老齢幼虫になると日中は土に潜ってしまうため昼間は目視で探すことは困難です。

殺虫剤で駆除する
オルトラン水和剤のような殺虫剤がヨトウムシには効果的といわれています。老齢幼虫になると殺虫剤の感受性が低下し、薬剤の防除効果が落ちる可能性があるため、若齢幼虫期に防除を行うと良いでしょう。ある程度大きくなり土中に潜むようになった幼虫を駆除するためには、誘殺剤を植物の株元に撒きます。薬剤によっては益虫も減らしてしまうこともあるので、ヨトウムシだけに効果のあるものを選びましょう。ヨトウムシ対策の駆除剤は強力なので、使う際は残留や使用方法に注意が必要です。

米ぬかを使っておびき寄せ除去する
米ぬかを好むヨトウムシの性質を利用し、風や雨を受けにくい場所にトラップとして米ぬかを入れた容器を置きます。おびき寄せたヨトウムシを殺虫剤や手作業で除去します。ヨトウムシは米ぬかを好むのですが、うまく消化できずおなかを壊し、そのまま死んでしまうこともありますので薬剤の使用を避ける場合に適しています。ただし他の虫を呼び寄せてしまうことがあるので注意が必要です。

専用の設備を導入する
LED電球の光を使って夜蛾の活動を阻止できる設備を利用します。ヨトウムシの親であるヨトウガも夜行性のため日中は太陽の光を感じて暗い所にじっとしていて、摂食や繁殖といった活動を控えています。夜に光を照らすことで、日中であると勘違いさせてヨトウガの活動を抑えます。ヨトウガが死滅するわけではありませんが、繁殖活動が行えなければヨトウムシは徐々に減少していきます。

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ヨトウムシの繁殖を防ぐおすすめの農業資材

虫ブロッカ―黄緑・虫ブロッカ―緑

農薬での対策が難しく数百種以上の作物に深刻な被害をもたらす夜行性のチョウ目害虫。「虫ブロッカ―黄緑・虫ブロッカ―緑」は露地・ビニールハウス向けのLED防虫灯です。LEDの光がチョウ目害虫の行動を抑制し拡散を防止します。害虫の生息密度を低下させ、繁殖を一世代で止めることで果実・野菜・花の被害が減少します。また薬剤散布のコストや労力削減、天敵昆虫のコスト削減に貢献します。

 

スマートキャッチャーⅡ
吸引式LED捕虫器です。LEDの光でヨトウガを誘引し、強力吸引ファンで専用捕虫袋に捕獲します。推奨設置数は10a(1000㎡)あたり2台ですので手軽に導入ができます。※幼虫に対しては効果がありませんのでご注意ください。

▶スマートキャッチャーの解説動画はこちら

 

 

 

 

 

てるてる

ヨトウムシのような夜行性の蛾は昼間の活動は少ないことがわかっています。ですので虫ブロッカ―黄緑・虫ブロッカ―緑のようなLED光をハウス内に照射すると夜蛾は昼間と勘違いしてしまうので忌避効果が得られるわけですが、この照射をさらに広げることで忌避効果が大きくなります。照射範囲を拡大させて忌避効果を増大させることができるのが光拡散反射シート「てるてる」です。
てるてる」に照射した光はあらゆる方向へ拡散反射し、葉裏や株元など従来光が届きにくかったところにも光を照射するので夜蛾に対する忌避効果をさらに高めることができます。

適切な対策を行いヨトウムシから大切な作物を守りましょう

ヨトウムシは夜行性のため、昼間の確認だけでは見落としやすい病害虫です。葉が食べられるまで、まったく気がつかないこともあり、気が付いた時には対策が追い付かず、大切に育てた作物がボロボロになり収量が落ちてしまいます。このような状態にならないように、こまめに作物の状態をチェックして、適切なタイミングでベストな対策を選択し作物を守っていきましょう。

ヨトウムシの被害から作物を守るには?予防や駆除におすすめの設備

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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