腐植酸とは?
腐植酸とはどのようなものでしょうか。基礎知識と植物が腐植酸の補給が必要な理由を記載していきたいと思います。
●腐植酸の基礎知識
腐植酸とは腐植物質の一つです。腐植物質は生物活動に由来し動植物の死骸や、排泄物の有機物を微生物や菌が分解していく過程で残った有機物(糖・炭水化物・タンパク質・脂質などに分類されない物質)がさらに化学的な反応により出来上がった物質です。腐植物質にはフミン酸のほか、フルボ酸、ヒューミンなどがあり酸やアルカリによる溶解度が異なります。腐植物質が溶け込んだ水溶液は、微小金属や有機汚染物質とのかかわりがあり、動植物や、地球環境に影響を与えている可能性が示され研究されています。
腐植物質の性質
呼び方 | 酸による溶解度 | アルカリによる 溶解度 |
色 |
---|---|---|---|
フルボ酸 | 溶けやすい | 溶けやすい | 赤褐色~オレンジ・黄色 |
フミン酸 | 溶けにくい | 溶けやすい | 黒色 |
ヒューミン | 溶けにくい | 溶けにくい | 暗褐色~黒色 |
なお腐植物質は地中に堆積していくと亜炭や石炭へ変化していくようです。この石炭または亜炭を硝酸で分解し、カルシウム化合物又はマグネシウム化合物で中和することで腐植酸としての力が復活し土壌改良資材として使用できるという報告もあります。ご興味がある方は下記の本をご参照ください。
参考:ポケット肥料要覧
関連コラム:フルボ酸とは?腐植成分がもたらす植物と土壌への効果
関連コラム:フミン酸とは?肥料として用いる場合の植物への直接的・間接的な効果
●腐植酸の補給が必要な理由
腐植物質の生産は、動植物由来の有機物を微生物や菌が分解し、時間をかけて出来上がったものです。自然環境では多様な生物の生活サイクルが循環し有機物の堆積層を作っていきます。大穀倉地帯(相当量の穀物を生産している農業地域)として知られている北米大陸のプレーリーは、長い年月をかけて植物由来の有機物が分解・変化し腐植物質が蓄積した地域と一致していることが知られています。自然の森林では積もった有機物から1㎜程度の腐食層ができるまで10年もかかるという報告もあります。
腐植酸のような腐植物質は有機肥料を投入してもすぐに出来るわけではありません。作物の栽培過程で分解され減少していていきます。そのため生成が分解に追いつかず、土中の腐植酸が不足しがちになります。定期的に腐植酸を含んだ資材を土に混ぜ込んで補給する必要があります。
腐植酸を肥料(堆肥)として用いる効果
土づくりに堆肥は欠かせない資材です。堆肥による土壌改良は数年から10年はかかるといわれています。堆肥が植物に有用な腐植物質に変わるのに時間が必要だからです。逆に、腐植酸を含む資材を肥料とし混ぜ込むことによって、堆肥による土壌改良の期間を短縮することが期待できます。
●根の成長を促進させる
腐植酸のうち、水溶性の成分が植物ホルモンに似た働きをします。発根や根毛形成の促進によって養分やミネラルの吸収効率が高まります。根域は植物にとって重要な部分ですから、良い環境になることで収量増加効果を発揮します。
●土壌の保肥力を高める
腐植酸は水に溶け込んだ状態で金属イオンと遭遇すると、金属イオンを取り込み保持する性質があるようです。金属イオンはプラス電荷(陽イオン)を持ち、腐植酸はマイナス荷電を持つので、お互いを引き付けあい保持する作用が働きます。そのため、カルシウム(石灰)やマグネシウム(苦土)などの肥料成分の水による流失を防ぎ土壌の保肥力を高めるといわれています。
●リン酸の固定化を防止する
リン酸肥料のリン酸は、土中に金属イオンが存在すると結合する傾向があります。カルシウム(Ca)や鉄(Fe)、アルミニウム(Al)などと結合し水に溶けにくくなります(リン酸の固定化といいます)。ここに腐植酸が投入されると腐植酸のキレート作用によってリン酸の固定化を防ぐとともに、難溶化したリン酸を可溶化して肥効を高めます。
●土壌微生物の働きを活性化させる
腐植物質の効果によって微生物や菌が活性化し快適に暮らせる条件が整います。植物にとって有用な微生物や菌が多い環境は連作障害を引き起こすフザリウムや病害センチュウを、抑制することが期待できます。
●団粒構造を促進させる
粒子と粒子を結び付ける役割を果たします。連作障害の改善や健康な土壌づくりに貢献します。
(>>詳しくは:団粒構造とは? 植物が良く育つ土壌に必要な要素と土の作り方)
腐植酸の補給におすすめの土壌改良資材「地力の素」シリーズ
地力の素は高純度フルボ酸含有の100%有機質土壌改良材です。フルボ酸は植物などの堆積有機物から生成される天然有機酸です。植物に必要なミネラルや微量要素をキレート化(吸収されにくい養分を吸収しやすくする)し、細胞内に届けるはたらきをします。また光合成を活性化し、窒素成分を効果的に葉や茎の組織に変えたり、根に働きかけて根量を増やします。
細粒と粗粒はJAS規格の有機JASに登録されている資材ですので、有機栽培をして有機農産物を生産する生産者や法人の方もご利用できます(袋の表面に有機JASマークが表示されています)。
※有機JASの登録証をご希望の方は写しをお送り致しますのでお申し付けください。
●地力の素【細粒】20kg
地力の素【細粒】20kgだけで堆肥1トン分と同等の腐植質を含有しています。その為、堆肥と併用することで堆肥の投入量を削減しますので土づくりを省力化します。施用方法は基肥として作付前の圃場1000㎡あたりの土壌に2~4袋(40kg~80kg)を混和するだけです。フルボ酸と腐植質が土壌環境を長期間改善しますので連作障害の防止や植物の生育環境の改善が期待できます。また育苗では培養土1Lに対して3~5gの混合がおすすめです。
一般的に農業において落ち葉や家畜の糞(馬糞・牛糞・豚糞・鶏糞)を混用し黒色になってできた堆肥を使用している場合が多いですが、その堆肥には腐植酸の含有量が少ないといわれています。
●地力の素【 リキッド12 】
濃縮された腐植酸が入っている地力の素の液体タイプです。希釈して土壌へ流し込むことで、作中に衰えた地力を補うことができます。土壌潅注の場合は1,000倍で10~15日間隔での使用、点滴潅水・養液土耕の場合は3,000~5,000倍で随時での使用をおすすめ致します。葉面散布にも使うことができます。
※phがアルカリ性ですので、酸性の資材と混ぜると沈殿が生じます。他の資材と混用する場合は本製品を1,000倍以上に希釈してから混ぜてください。
腐植酸を補給して安定した健全な作物の育成をしましょう
今回のコラムでは腐植酸にスポットを当てて記載してきました。腐植酸は植物栽培(育苗~収穫)において重要な役目を果たす成分です。定期的に供給することが必要不可欠ですのでぜひ地力の素を使用してみてはいかがでしょうか。
関連コラム:土壌改良の重要性とは?環境を整備する資材の種類と使用時の注意点
関連コラム:土壌改良|植物をより健康に育てるための土づくり
関連コラム:土壌改良のチェックポイント|野菜栽培に適した土づくり
コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。