電照栽培の基礎知識|メリット・特徴について
電照栽培とはどのようなものでしょうか。基礎知識・メリット・特徴を記載していきたいと思います。
●電照栽培の基礎知識
電照栽培(でんしょうさいばい)とは、名前の通り“電照設備を使用し光を照らして栽培する方法”のことです。ビニールハウス内部の作物上部に配線を引き、数メートル間隔で電照設備を設置します。電照設備は白熱灯タイプや蛍光灯タイプや電球タイプなどがありますが、いちご栽培では電球タイプが使用されることがほとんどです。電球タイプには「白熱電球」「蛍光電球」「LED電球」の3つのタイプがあり、それぞれの価格と消費電力の差は以下となります。
【価格と消費電力】
価 格 : 白熱電球<蛍光電球<LED電球 ( 安い < 高い )
消費電力 : LED電球<蛍光電球<白熱電球 ( 少ない < 多い )
●電照栽培のメリット
電照は主に本圃における厳寒期の草勢維持を目的に行われ、最大のメリットは生育を向上させ(生育不良を防止させ)収量を確保できることです。
いちごは着果したり、果実を肥大させるために大きなエネルギーを消費します。株が日照不足(短日)で光合成が十分に行えないと消費が大きくなりかつ葉の展開も遅くなってしまいます。電照をして長日条件にすることで、葉の展開が進行し、葉面積が広くなり、結果的に一株当たり光合成量が増すことから、収量の増加につながります。120~150cmの高さから1㎡あたり3.5~4Wの電球を取り付けることを目安にしてください。
いちごは秋になり平均気温が25℃前後に下がり日が短くなること(短日)に反応し、花芽分化をするという特徴があります。「電照をすると花芽分化が遅れるのでは?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際のところは電照によって葉が大きくなり光合成が促進されると花芽の生育が促進されます。つまり花芽分化が遅れても、出蕾・開花は早くなるようです。
いちごの電照栽培開始時期と実施期間
いちごの電照は開始時期がとても重要です。開始時期が早すぎると徒長し、栄養生長に傾き腋果房の分化が抑制されるので収穫がストップする時期ができる原因になりますのでご注意ください。
●いちごの電照栽培開始時期
作型や品種によっても変わりますが、早いもので11月上旬から電照を開始します。
●いちごの電照栽培実施期間
作型や品種によっても変わりますが、11月から翌年の2月までの4カ月間前後です。
電照方法の種類
電照方法には日長延長方式・間欠電照方式・暗期中断の3つの方法があります。その中でも日長延長方式を採用している農家さんが最も多いようです。インターネット上に各方式の文献などがございますのでお調べいただければ幸いです。
●日長延長
長日環境でいちごの花芽を発達させるために利用されます。日没後もしくは日の出前に電照する方式です。日没後点灯の方がハウス内の温度が高いため効果的であると言われています。明期時間は13~15時間が目安です。
●間欠電照
日長延長の代わりとして、1時間に1回、5~15分間程度日没から日の出までに繰り返し電照を行う方式です。頻繁に点滅するとランプの寿命が短くなる可能性がありますのでご注意ください。
●暗期中断(光中断)
植物の光周反応は連続した暗期の長さによって起こります。午後11時から2~3時間電照する方式です。
いちごの電照栽培に役立つ製品「アグリランプFR」
アグリランプFRは遠赤色LEDチップを含んでおり、日長延長の役割を果たすだけではなく光合成効率を改善する役割も果たします。アグリランプFRはミドルパワー型とハイパワー型がありますが、イチゴ栽培ではミドルパワー型を選択してください(ハイパワー型は主に花きの生育促進で使用します)。厳寒期の連続収穫を助けて収穫量を落としません。農家さまから家庭菜園の方までどなたでもお問い合わせください。
イチゴ栽培に好影響を及ぼす資材
ナノバブル発生装置
ナノバブル発生装置で製造できるナノバブル水はカルシウムやマグネシウムなど陽イオン栄養をイチゴの根に届けて、根域拡大やチップバーン改善に貢献します。蛇口から水(飲用的水)を装置に引き、装置内で12時間バブリングします。高濃度にバブリングされたナノバブル水を100-300倍に希釈して週に1回程度灌水させます。装置は自動設定によって毎日生成することができますが、使用頻度が少ない時期はアナログ操作で製造したい時だけ動かすことができます。ナノバブル水の使用期限はおよそ1週間です。
イチゴ栽培におけるアザミウマ対策に役立つ資材
虫ブロッカー赤は660nmのLEDを照射できるアザミウマ専用防虫灯です。660nmの波長はより幅広いアザミウマの種類に忌避効果がえられ、イチゴに寄生するヒラズハナアザミウマに対しても分光感度が低いことがわかっています。虫ブロッカー赤は半径5-7.5mに1台を目安に設置します。効果を高めるために白マルチや反射シートの併用を推奨します。虫ブロッカー赤は本体と本体を連結することができ、100V環境ならば12本まで連結可能です。みどりの食料システム戦略にも合致した害虫コントロールの技術を是非ご検討ください。
電照設備を導入して安定したいちご栽培を
近年の異常気象でいちごの栽培において電照は必要不可欠のものとなりつつあると思います。今回のコラムをご参考に電照設備の更新や導入を検討してみてはいかがでしょうか。電照設備を上手に利用して安定したいちご栽培を実現していきましょう。
コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。