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フミン酸とは?肥料として用いる場合の植物への直接的・間接的な効果
公開日2020.05.01
更新日2023.05.11

フミン酸とは?肥料として用いる場合の植物への直接的・間接的な効果

土壌は石・堆積物・火山灰などの無機質(およそ90~99%)と炭素を含む有機物(およそ1~5%)で構成されています。有機物は土の表面に多く含まれており、動物の体を構成しているたんぱく質や脂肪、植物の体を構成しているセルロースやリグニンは全て有機物です。土の中を占める割合は少ないのですが、この有機物が土壌に与える影響は大きいとの報告があります。特に注目を集めているのが土の中で新しくできたと考えられている腐植物質です。

腐食物質とは

枯れた樹木や落ち葉、動物の排泄物・死骸にはさまざまな成分が含まれています。土壌生物や土壌微生物によりセルロース・デンプン・糖などは早く分解されますが、リグニン・油脂などは時間をかけてゆっくり分解されます。ゆっくりと分解される過程で腐植物質に変わる(または分解されずに残った有機物が結合する)といわれています。この過程はとても複雑で、化学的に合成するのは難しいようです。実際に動植物の死骸が土壌生物や土壌微生物に分解され腐食化するまでにはとても時間がかかり、自然の森林では積もった有機物から1㎜程度の腐食層ができるまで10年もかかるという報告もあります。腐植物質は土壌の保水力を高めたり、団粒構造を促進し通気性を高めたり、土壌にとって良い働きをすると考えられています。

腐植物質には「フミン酸」「フルボ酸」「ヒューミン」とさまざまな呼び方がありますが、本質的に違うわけではなく、酸やアルカリによる溶解度により呼び名を変えています。アルカリ・酸、両方に溶ける部分をフルボ酸、アルカリに溶けて酸では溶けない部分をフミン酸、ほとんど溶けない部分をヒューミンと呼んでいます。

腐植物質の性質

呼び方 酸やアルカリによる
溶解度
フルボ酸 溶けやすい 赤褐色~オレンジ・黄色
フミン酸 やや溶ける 黒色
ヒューミン ほとんど溶けない 暗褐色~黒色

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フミン酸の基礎知識

●フミン酸とは

日本語では腐植酸と呼ばれることもあり、腐植物質のひとつに含まれます。フミン酸は赤褐色の物質で、アルカリ性の物質に溶け、酸性の物質には溶けないという特徴があります。フミン酸が配合された肥料には土壌改良の効果があるといわれています。

●フミン酸の生成

自然界でできるフミン酸を天然フミン酸といいます。天然フミン酸は、枯れた樹木や草、落ち葉、動物の排泄物や死骸などの有機物が変化してできます。土壌中の微生物や菌の働きにより、複雑に分解や重合を繰り返して生成されますが、生成には長い年月を要します。生成過程によって、土壌フミン酸と石灰系フミン酸に分けて考えられています。

フミン酸は構造がかなり複雑で、どのような構造をしているか、まだはっきりと解明されていません。このフミン酸を人工的に作り出す研究もあり、このフミン酸を再生フミン酸と呼んでいます。生物由来の原料を酸化分解して製造するという方法で、未だ研究段階で実用化には少し時間がかかるといわれています。

農業でフミン酸を肥料に用いる効果

フミン酸は電気的性質により表面が負に帯電しています。このためフミン酸が土壌に含まれているとカリ・マグネシウム・カルシウムなどの栄養素を引き寄せ、雨が降っても土壌から栄養素が流出しにくくなるといわれています。またフミン酸が土壌微生物のエサとなり微生物が活性化することで、土壌の団粒化にも貢献し、それによって作物が育ちやすい土壌環境へと整えてくれるようです。

●植物への直接的な効果

フミン酸が土壌に含まれていると、根や根毛の生育が促進され養分の吸収効率が高まります。また肥料の三要素であるリン酸などの吸収を促進し、植物体内の代謝が活性化されます。通常はリン酸を土壌に施肥すると、土壌中にあるカルシウム・鉄・アルミニウムなどと結合し溶けにくくなります。溶けにくくなったリン酸は作物に吸収されなくなり土壌にあっても作物に届きません。フミン酸は、このような「リン酸の固定化」をキレート作用※により植物が吸収されやすい状態に戻してくれます。蓄積した土壌中の過剰なリン酸も有効活用することができるといわれています。

●植物の生育への間接的な作用

フミン酸は土壌の保肥力を高めます。土壌の生産性、化学性を改善し、微生物が生きやすい環境に変えます。フミン酸は黒色のため、太陽熱を吸収しやすく土壌の温度を上げるようです。土の温度が高まると、有機物の分解が促進されます。キレート作用※で銅やカドミウムなどの有害物質の重金属を吸着するため、作物に重金属が吸収されにくくなり、安全な作物を育てることができるという報告もあります。

※キレートとは「カニのハサミ」という意味です。カニのハサミのように不要な物質を取り除くことから、不要なものを挟んで排出することをキレート作用といいます。

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土壌改良に役立つフミン酸配合資材「地力の素」

そこでご紹介したいのが天然腐植質の土壌改良資材地力の素です。カナディアンロッキー酸の高純度フルボ酸質の土壌改良材で、土壌に混和することで土壌を改善します。一般的な堆肥に含まれる腐食酸の含有率は1~2%程度といわれていますが、地力の素はフミン酸・フルボ酸など人工的に生成することが難しいとされる腐植物質が濃縮(70%以上)されています。病害がひどく収穫が安定しない場合や、連作により収量が低下している場合など、土壌改善が必要な圃場におすすめです。

地力の素の解説動画はこちら

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フミン酸を活用して土壌を改善し健康な作物を育てましょう

元々の土壌には栄養素がたくさんありますが、圃場では、土壌から栄養素を吸収した作物が毎回収穫され外に持ち出されますので、必然的に栄養素が足りなくなっていきます。圃場は自然界とは環境が異なるため、腐食物質は補充されません。そのため土から腐食物質の成分がなくなってしまうわけです。植え付けし育てて収穫するというサイクルを繰り返していくうちに腐食物質がなくなっていき土地がやせてしまいます。定期的に腐植物質を圃場に加えて、作物にとって適切な環境を整えてあげることが大切ですね。土壌環境が整えば、作物も元気に育ち病害虫に対する抵抗力も高まります。そうすれば農薬を抑えて収量を上げることができるかもしれません。

フミン酸とは?肥料として用いる場合の植物への直接的・間接的な効果

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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