コラム
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法
公開日2025.01.31
更新日2025.01.31

トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法

2021年農林水産省生産農業所得統計によれば、トルコギキョウは国内生産額が約117億円(切り花類第5位)の人気の花です。キク・バラ・カーネーションなどに比べて高単価のため、栽培をチャレンジしようと思っている農家さんも多いのではないでしょうか。トルコギキョウの栽培で気を付けるべき生理障害には、チップバーンやブラスチングなどがありますが、今回のコラムでは、葉の先端が茶色く枯れてしまうチップバーン(葉先枯れ症)の対策について、解説していきます。適切な温度・湿度などの栽培環境整備や施肥、カルシウムの葉面散布方法、品種選びまで、チップバーンに効果的な予防対策をご紹介します。

トルコギキョウのこんな症状はチップバーンかも!?

トルコギキョウ栽培でよくあるトラブルのひとつにチップバーン(葉先枯れ症)という生理障害があります。症状を見落としてしまい対策を怠ると枯死や草姿の乱れが広がり製品価値が低下して収量が減少する原因となります。被害を最小限に抑えるためにはなるべく早いうちに対策をとることが求められます。一般に良く見られる症状は以下の通りです。

  • 定植1~2ヵ月後の生育が旺盛な時に発生する
  • 茎頂部(茎の先端部分にある生長点)の褐変や枯死
  • 上位葉ほど葉先の褐変や縮葉が顕著
  • 展開前の葉の先端の枯死、葉の展開に伴い症状が明確になる
  • 花芽分化期に頻発する(育苗中や開花期にはほぼ発生しない)
  • 生長点が枯死するため、脇芽が伸長し草姿が乱れる

上記の項目に当てはまる場合、トルコギキョウがチップバーン(葉先枯れ症)になってしまっている可能性があります。栽培中のトルコギキョウに症状が現れていないか、よく観察してみてください。

チップバーン発生のメカニズム

このようにトルコギキョウに深刻な被害をもたらすチップバーン(葉先枯れ症)ですが、そもそもどのようなメカニズムで起こるのでしょうか?

実は、チップバーン(葉先枯れ症)の発生メカニズムはとても複雑で、完全に分かっているわけではありません。現在のところ有力な原因として考えられているのは、局所的なカルシウム不足です。カルシウム不足は、窒素過多や高温乾燥環境で発生が助長されると考えられています。また、栄養生長から生殖生長へ移行するタイミングで発生しやすいとされています。少し詳しく見ていきましょう。

カルシウム欠乏の仕組み

植物におけるカルシウムの働きとカルシウムの欠乏

カルシウムは植物にとって、細胞内各種膜構造体や核形成の構成材料の役割を担っているため、欠乏すると細胞分裂の最も盛んな部分において、組織の壊死や崩壊をもたらします。

カルシウムは、細胞壁でペクチンのカルボシキ基と相互作用してペクチンをゲル化させます。植物の細胞壁はセルロース・ヘミセルロース・ペクチンといった多糖類などで構成されていますが、セルロースは骨格を形成し、ヘミセルロースは骨格を支える鉄筋、ペクチンゲルはそれらの隙間を埋めるための「セメント」のような役割を持っていて、胞同士をしっかりとくっつけ、植物の組織を強くしています。カルシウムを十分に吸収した植物は組織が強くなると、病害虫抵抗性の向上に加えて、高温乾燥や塩類過剰などの環境に対しての耐性が高くなることが知られています。

このように植物全体を支えているカルシウムですが、欠乏してしまうと、細胞壁の強度が低下して細胞が壊れやすくなってしまいます。チップバーン(葉先枯れ症)は、この細胞が壊れることで葉枯れが起こる現象です。カルシウム欠乏こそが、チップバーン(葉先枯れ症)発生の直接的な原因だと考えられています。

カルシウム欠乏は局所的に起こる!

植物にとって非常に重要なカルシウムですが、その欠乏症の症状も起こりやすい場所が決まっていることが分かっています。その理由は、植物の生理現象にあります。

植物はカルシウムを根からの水の吸収と共に体内に取込みます。水分は、葉の蒸散により起こるため、蒸散量が多い成熟葉の方にカルシウムが優先的に届けられる傾向にあります。カルシウムは植物体内では難移動性で重い荷物を運ぶようにゆっくりと移動します。また、篩管内を移動しないため植物体内で再分配や再利用が行われないという特徴があり、蒸散量が少ない新葉の先端には供給されにくくなります。新葉の先端は急速に生長する部分であり、新しい細胞壁の合成にカルシウムが必要となっているため、これらの部位で局所的にカルシウム欠乏が生じやすいのです。特に生育が旺盛な時期は、カルシウムの需要が高まるため、欠乏症状が現れやすくなります。

この現象は、植物の生長点における必要なカルシウム量と実際の供給量のアンバランスによって引き起こされます。急速に成長している新しい組織ほどカルシウムが必要ですが、同時にカルシウムが届きにくい場所でもあるのです。結果として、葉の先端や縁、新芽などで局所的なカルシウム欠乏が発生し、これが症状として現れているのがチップバーン(葉先枯れ症)というわけです。

多元的解析手法による園芸植物のCa欠乏症発生要因の解明(黒沼 尊紀)によると、高カルシウム環境にあるトルコギキョウは、根には多くのカルシウムが蓄積されていたものの新芽に欠乏症状が現れることがあったとし、カルシウムの移動性がチップバーン(葉先枯れ症)の原因になっていることが示唆しています。

カルシウム欠乏が植物に与える影響については、こちらの記事でも詳しく説明しています。

環境要因が大きな要素に!

近年の研究では、カルシウム欠乏だけでなく、温湿度や土壌環境などの環境要因がチップバーン(葉先枯れ症)の発生に大きく関与していることが明らかになってきました。

高温・高湿度環境

高温・高湿度の状態はチップバーン(葉先枯れ症)発生の要因の一つです。盛んに光合成が行われる太陽の光の下で、葉の気孔が開かれて二酸化炭素を取り込むと同時に、葉から蒸散を行います。葉からの蒸散がスムーズに行われることで根から水分とともにカルシウムを吸収します。しかし、気孔が開いた状態でも高湿度環境下では飽差が小さいため蒸散が起こりにくくなり、根から養水分を吸収することができなくなります。昼の相対湿度が低いと、飽差が大きく蒸散量が増えてカルシウムの吸収量が増えるためチップバーン(葉先枯れ症)の発生は軽減されると考えられています。

秋出しトルコギキョウ栽培の手引き(福岡県農林水産部経営技術支援課)によれば、台風襲来時にハウスを閉め切ってしまと高温多湿環境となりチップバーン(葉先枯れ症)の発生が増加すると説明されています。また、地下水位が高かったり、耕盤層が形成され排水性が悪かったりする場所では、湿度が上がりやすくチップバーン(葉先枯れ症)を誘発するリスクが高くなると考えられています。

土壌環境

カルシウム欠乏によって起こるチップバーン(葉先枯れ症)は、もちろん土壌環境も重要です。

土壌が乾燥していると根から吸収した水分と一緒にカルシウムを吸収できなくなるため、チップバーン(葉先枯れ症)のリスクが高まります。花芽が発達してつぼみになる出らい期以降は、上位の節間の徒長を防ぐために潅水量を少なくすることがありますが、潅水量の影響なのか、この栄養生長から生殖生長に切り替わるタイミングでチップバーン(葉先枯れ症)が発生する傾向があるようです。

CEC(陽イオン交換量)が低く、陽イオンの栄養素であるカルシウムを保持する力が土壌になくなっている場合、必要なカルシウムを土壌に施肥しても保持されず流失してカルシウム欠乏が起こることがあります。また、他の陽イオンの栄養素であるマグネシウムやカリウムは、カルシウムと拮抗作用を持っていて、この土壌の塩基バランスが崩れると、カルシウム欠乏に陥りやすくなります。

トルコギキョウはチップバーンになりやすい?

チップバーン(葉先枯れ症)の発生しやすい作物としては、レタス・キャベツ・ハクサイ・ホウレンソウ・コマツナなどのアブラナ科の葉菜類や、イチゴ・トマトなどの果菜類など、さまざまな植物で発生することが知られています。これらの植物と同様に、チップバーン(葉先枯れ症)になりやすいのが、トルコギキョウです。同じ花き類としては、トルコギキョウより出荷量の多いキク・カーネーション・バラでもチップバーン(葉先枯れ症)は発生する可能性があるようですが、対策に関連した資料が少ないことから、現場では大きな問題にはなっていないのかもしれません。

なぜトルコギキョウはチップバーン(葉先枯れ症)になりやすいのかは、はっきりとはわかっていないのですが、八重咲きの品種やピンクや黄色などの花色が濃い品種は、チップバーン(葉先枯れ症)が発生しやすいとされているなど、作物の種類や品種によって養水分の吸収能力(蒸散量の違い)やカルシウムの要求量の違いなどが関係しているのかもしれません。

トルコギキョウのチップバーンの発生を抑える環境管理

トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)は、生理障害であり、適切な対策を講じることで発生を抑制する効果が期待できます。具体的な対策や対処方法をご紹介します。基本は温度管理や水分管理となります。

栽培環境の最適化

チップバーン(葉先枯れ症)発生の主要因は植物体内のカルシウム欠乏ですが、カルシウムが土壌中に十分に存在していても、温度や土壌環境などで吸収しにくくなることがあります。まずは、栽培環境をトルコギキョウに合った環境に最適化してあげましょう。

適切な温度・湿度・土壌環境は?

温度と土壌環境については、トルコギキョウの栽培管理ブック(郡山市農林部農業センター)に最適条件が紹介されています。湿度は、秋出しトルコギキョウ栽培の手引き(福岡県農林水産部経営技術支援課)に紹介されています。栽培品種や地域の環境により最適な条件は異なるかと思いますが、2つの情報を以下の表にまとめましたので参考にしてみてください。

環境要素 最適条件
適切な温度 育苗期 昼温25℃ 夜温15℃
定植期 15~25℃
生育初期 昼温25℃以下 夜温15℃
出らい期 昼温25℃以下 夜温15℃
適切な湿度 昼間 50~60%
夜間 55~80%
土壌 pH 6.5~7.0
EC 0.3~0.4ms/cm

土の中の水分が確保されていれば、昼間の相対湿度が低いほど葉の蒸散量が多くなるため、水分と一緒に移動するカルシウムの吸収量も多くなり、チップバーンの発生が軽減されるとされています。チップバーン(葉先枯れ症)は気温や湿度が高くなるほど発生頻度が多くなり、症状が重くなるという傾向があるようです。

湿度管理には風通しの良さも大切

適切な湿度管理のためにぜひとも行いたいチップバーン(葉先枯れ症)対策が、ビニールハウス内に循環扇や温風器を設置するなど風通しをよくすることです。風通しが良ければ、葉っぱからの蒸散が行いやすくなるためです。

送風および土壌の乾燥によるトルコギキョウの葉先枯れ症発生軽減対策(広島県立農業技術センター)によれば、葉先枯れ症の発生前の幼苗から花芽分化期に送風手段として温風機を用いると、葉先枯れ症の発生を軽減できると報告されています。一方、送風による抑制対策では、全ての株に好条件で風を当てることが難しいという指摘もあります。

また、適度な蒸散を促すのには適切に栽植密度を保つ必要があります。品種や栽培環境による違いはあるかと思いますが、標準的なトルコギキョウの株間は10~12cm程度とされています。あまりに栽植密度が高すぎると、株元の風通しも悪くなり過湿になりやすくなり、蒸散が抑制されてしまう可能性もあるため注意してください。

土壌のpH

トルコギキョウは微酸性の土壌を好むという傾向がありまので、pHが6.5~7.0であればカルシウムの吸収が阻害されるということはありません。酸性に傾きすぎている場合は苦土石灰、アルカリ性に傾きすぎている場合は硫黄華などを施用して調整してください。石灰資材のみでpHを補正すると、一部の微量要素の吸収を阻害する可能性があるため、土壌のpH補正には転炉スラグを用いると良いとされています。転炉スラグとは、製鉄所で銑鉄から鋼を製造するときに微量要素副成させる資材でマンガンやホウ素といった微量要素が含まれています。

転炉スラグによる土壌pH矯正を核とした土壌伝染病フザリウム病の被害軽減技術(農研機構)によれば、転炉スラグはpH補正に加えて、土壌伝染病フザリウム病の被害の軽減にも効果が期待できると報告されています。トルコギキョウの立枯病対策事例集(農研機構野菜花き研究部門)でもフザリウムやオキシスポラムによる土壌病害はpHが高くなるにつれて被害が減少すると報告されています。

土壌のpHは、作物を育てている間に変化することがあります。定期的に土壌診断を行って適切な土壌環境を維持するようにしましょう。

土壌のEC

トルコギキョウは塩類耐性がやや弱く、一般に土壌で土壌の電気伝導率(EC)が1.0mS/cm以上になるとチップバーン(葉先枯れ症)が発生しやすくなると考えられています。通常、土壌EC硝酸態窒素の含有量には正の相関関係があるとされており、硝酸態窒素が多いとpHが低下して塩基類が溶出し濃度障害を引き起こします。窒素過剰がチップバーン(葉先枯れ症)を誘発するといわれているのは、根が濃度障害により土の中にあるカルシウムを吸収できないことが影響しているのかもしれません。

トルコギキョウのチップバーンの発生を抑える対策

カルシウムを葉面散布で施肥する

カルシウム剤の葉面散布は、カルシウムを必要とする生長点に直接供給できるため、チップバーン対策に即効性のある有効な手段です。特に、土壌からのカルシウム吸収が阻害されやすい高温期には、チップバーン(葉先枯れ症)が発生する前の葉面散布が効果的です。カルシウム剤を選ぶ際には、水に溶けやすいものを選ぶことが重要です。

効果的な散布方法

カルシウム剤の葉面散布は、気温が低く、風の弱い朝方に行いましょう。朝露が残っている場合は乾くのを待ってから散布してください。高温時は強い日射や急速な乾燥により液肥が高濃度になり、濃度障害を起こす可能性があります。また夕方はビニールハウスが湿っていることが多いため、このタイミングで薬散すると病気に繋がる恐れがあります。また、過度に濃い溶液をかけてしまうと肥料濃度が高くなり葉に障害を与える可能性がありますので注意しましょう。葉面散布は、希釈した液体肥料を霧吹きや散布機械で直接葉にかけていきます。上から作物全体にかけると、土にこぼれた分も根から吸収されるため無駄がありません。

トルコギキョウの栽培管理ブック(郡山市農林部農業センター)によれば、カルシウム剤を定植後30日後から10日おきに3回程度散布するとチップバーン(葉先枯れ症)の発生が少なくなると紹介されています。トルコギキョウの葉先枯れ症発生低減(広島県立農業技術センター)によれば、有機酸カルシウムを、活着時から花芽分化期(草丈7~30cm|およそ20日間)に600㎎/Lまたは1500mg/Lで毎日葉散布をすると効果が大きいことが報告されています。

カルシウム剤は比較的高い資材で、一定期間、コンスタントに散布することが必要になるため、コストや労力がかかるという点はデメリットです。

チップバーン(葉先枯れ症)発生しにくい品種を選ぶ

トルコギキョウに発生する葉先枯れ症の原因究明と軽減対策(高知県農業技術センター)によれば、葉先枯れ症の発生程度は、品種間差が大きくピンク系の品種が障害を受けやすい傾向があると報告されています。発生程度の少ない品種を選ぶことでチップバーン(葉先枯れ症)発生のリスクを減らすことができます。以下の表は、トルコギキョウに発生する葉先枯れ症の原因究明と軽減対策(高知県農業技術センター)より引用したものです。

障害発生程度 品種
少ない パープルエッジグラス・ティファニーピンク・パープルレイン・アルプス・バレンタインビーチ・セントバレンタイン・ムーランルージュ・スーパープリマドンナ・ミッキーバイカラーピンク・ラブリーブルーバイカラー・ラブリーピンクバイカラー・スマイルホワイト・キャディピーチ・改良あずまの藤・あずまの濃色銀河・あずまの波・あずまの漣・あずまの雪・はまの雪・あすかの紫
多い ネイルマリン・ネイルピーチ・ネイルピンク・はまのローズ・浜のローズピンク・ハートピーチ・キングオブイエロー・あずまの薫・あずまの粧・さとの桜

さらに、日本の育苗企業であるサカタのタネカネコ種苗タキイ種苗で販売されているチップバーンになりにくいトルコギキョウの品種をいくつかピックアップしてみました。参考にしてみてください。

種苗会社 品種名 特徴
サカタのタネ ボヤージュ(2型) ライトピンク 八重の大輪で花持ちが良く、茎が太い。ライトピンクの花色が特徴。
レイナ ホワイト(ver.3) 純白の八重の大輪花。草姿がコンパクトで、花付きが良い。
カネコ種苗 エーゲマリン 鮮やかなブルー系の花色。耐暑性があり、夏季の栽培に適している。
エピカホワイト 純白の八重の大輪花。花弁が厚く、花持ちが良い。
エンドレスラブ ピンク系の花色。長期間開花が続き、切り花としての持ちが良い。
タキイ種苗 F1プリマ1型ラベンダー ラベンダー色の一重の大輪花。草姿がコンパクトで、花付きが良い。
F1ベール1型ロマンス・ホワイト 純白の一重の大輪花。花弁が厚く、花持ちが良い。
F1マイコ ピンク系の花色。早生種。一重で草姿がコンパクト。

土壌の排水性を改善する

トルコギキョウは、水はけと通気性の良い土壌を好むため、地下水位が高い場所や排水性が悪い土壌では湿度が高くなり、チップバーン(葉先枯れ症)が発生しやすくなるようです。排水不良な土壌では根腐れが起こり根からのカルシウム吸収が機能せず、チップバーン発生のリスクが高まってしまいます。堆肥などの有機質資材やパーライトバーミキュライトなどを混ぜて土壌改良を行い、排水性と通気性を確保しましょう。

トラクターなどの農業機械の圧力で発生した耕盤層を破砕したり、簡易暗渠を施工して土壌の排水性を向上させたりするなどの対策が効果的だとされています。耕盤層の粉砕により作土層が深くなるため根張りが良くなる場合がありますが、地表30cmより深い場所には土壌消毒が届きにくいため立枯病などの土壌病害に注意する必要があります。

定植時期を遅らせる対処法も

トルコギキョウの定植時期を遅らせることで、チップバーン(葉先枯れ症)が発生しやすい高温多湿の時期を避けることができます。この方法は特に秋から冬にかけての作型で有効です。秋出しトルコギキョウ栽培の手引き(福岡県農林水産部経営技術支援課)によると、福岡県における10月~12月出荷のトルコギキョウ栽培においては、気温が低い時期になるとチップバーン(葉先枯れ症)の発生は減る傾向にあり、8月20日以降に定植した場合は発生数が少なくなるとされています。地域の気候条件や品種の特性を考慮して適切な定植時期を決定しましょう。

ただし、定植時期が遅すぎると、生育期間が短くなることで、開花の遅れや切り花の本数の減少が起こる可能性もあります。この問題を解決するには、より大きな苗を定植することが効果的です。大きな苗は根系が十分に発達しており、光合成能力も高いため、短い生育期間でも十分な成長が期待できます。

農業水産技術会議の「農業新技術2012」によると、本葉が3対(6枚)以上展開した大苗を用い、電照による長日処理を組み合わせることで、慣行苗と比べて収穫期を59日程度早めることができるとしています。この技術により、定植時期を遅らせて収穫期を調整することが可能になります。

地域の気候条件や品種の特性を考慮して適切な定植時期を決定し、大苗の利用と長日処理を組み合わせることで、チップバーン(葉先枯れ症)のリスクを軽減しつつ、生育期間の短縮による影響を最小限に抑えることができるのではないでしょうか。

関連コラム:トルコギキョウの電照栽培とは?冬季作型における補光処理について解説

枯れた葉先は除去する

チップバーン対策ではありませんが、チップバーン(葉先枯れ症)が発生すると、その箇所から灰色カビ病が発生しやすくなるため早めに除去することが望ましいとされています。

灌水でチップバーン対策におすすめ|根活&ナノバブル水製造装置

潅水でチップバーン対策も出来る方法としておすすめなのが、根活&ナノバブル水製造装置です。水と空気から生成されるナノバブル水を利用しており、ナノバブル水に含まれるナノバブルはマイナスの電荷を帯びています。カルシウムやマグネシウム、カリウムなどの陽イオンを効率的に吸着し、植物の根に養分を届けます。特にカルシウム欠乏症の改善効果が高く、イチゴのチップバーン対策や、トマトやナスの生育促進として実績があります。

ナノバブル水を導入したイチゴ農家さんでは、この装置を使用することで液肥の効きが明らかに良く、施肥量も少なくなったとの声も聞かれています。なんとチップバーン(葉先枯れ症)の被害が1/3までに劇減したとの報告もあります。

トルコギキョウ農家さんでは実績が未だありませんが、チップバーン(葉先枯れ症)の発生要因はイチゴと同様に生長点のカルシウム欠乏による可能性が高いため、効果は期待できるのではないでしょうか。

トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
ナノバブル水製造装置100Lタイプ
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
ナノバブル水製造装置200Lタイプ
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
根活20Lタンク
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
ナノバブル水製造装置(200L)の設置の様子。
出来上がったナノバブル水を液肥タンクに直接充填しています。
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
ナノバブル水製造装置(50L)の設置の様子。
雨よけできる納屋やハウスに設置します。
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
ナノバブル水製造装置(50L)の設置の様子。
本体が安定するように水平をとります。
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
ツマミが1つ、ボタンが1つなので操作が簡単!!
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
ナノバブル水の製造時間を12時間に設定。毎日自動で製造します。写真は夕方18:00~早朝6:00。
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
水位センサー(左)とナノバブル生成器(中央)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)

換気でチップバーン対策におすすめ|空動扇&空動扇SOLAR

気温や湿度が高くなるほど葉から蒸散が難しくなるため、チップバーン(葉先枯れ症)の発生頻度は多くなり、症状が重くなるという傾向があります。ビニールハウスでは、太陽光の光が空間内にこもり、特に天長部に熱だまりが発生します。ビニールハウスの熱だまりを効率的に排出する換気扇としておすすめなのが空動扇&空動扇SOLARです。風や太陽光の力でファンが回転しビニールハウス内部の風の流れを円滑にして葉からの蒸散を促進します。天候に応じて、手動で換気作業を行うのは時間と手間がかかりますが、空動扇の内部には温度に応じて伸縮する形状記憶スプリングが内蔵されており、温度変化が生じると伸縮により換気弁(ベント)が自動で開閉します。一度調整すれば、設定温度に応じて換気弁(ベント)が自動で開閉されるため、労力のかかるビニールハウスの換気作業を省力化することができます。

トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
左:空動扇|右:空動扇SOLAR
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
空動扇は自然の風の力でベンチレーターを回転させることでハウス内の暑い空気をハウス外へ排出します。
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
空動扇SOLARは自然の風の力とSOLARの力を利用してビニールハウス内の熱い空気をハウス外へ排出します。無風の時でも晴れてさえいれば換気能力が失われません。
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
空動扇SOLARはを設置する場合は、ソーラーユニット単体を回さないようにお願いいたします。故障や部品欠落の原因となります。
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
ビニールハウスの上部に設置することで、熱気と湿度を排気します。
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
パイプ取付部分の爪の直径は約25mmと約40mmです。25mm側を補助パイプへ、40mm側を母屋パイプに固定します。
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)
トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法(イメージ)

チップバーン対策はトルコギキョウのほかのトラブル対策にも有効!

今回は、トルコギキョウ栽培で課題となるチップバーン(葉先枯れ症)について、最新の研究の結果を交えながら、原因やメカニズム、予防・対策方法や対処法をご紹介しました。

チップバーン(葉先枯れ症)は、初期段階では症状が軽微な上に、似ている症状の病害虫も多いため、つい見過ごしてしまいがちです。しかし、症状が進行すると、回復が難しくなり、植物の生育に深刻な影響を与える可能性があります。日頃からトルコギキョウの葉をよく観察し、少しでも異変に気づいたら、すぐに適切な対策を講じるようにしましょう。

今回紹介したコラムには、温度や湿度などの環境管理のほか、葉面散布などの技術を利用した生育方法など、プラスになる情報が記載しました。ぜひ参考にして、美しく健康なトルコギキョウをたくさん育ててください!

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参考資料:
多元的解析手法による園芸植物のCa欠乏症発生要因の解明(黒沼 尊紀)
トルコギキョウの栽培管理ブック(郡山市農林部農業センター)
秋出しトルコギキョウ栽培の手引き(福岡県農林水産部経営技術支援課)
送風および土壌の乾燥によるトルコギキョウの葉先枯れ症発生軽減対策(広島県立農業技術センター)
トルコギキョウの葉先枯れ症発生低減(広島県立農業技術センター)
トルコギキョウに発生する葉先枯れ症の原因究明と軽減対策(高知県農業技術センター)
農業水産技術会議の「農業新技術2012」

トルコギキョウのチップバーン(葉先枯れ症)対策のための環境づくりと対処法

コラム著者

セイコーステラ 代表取締役  武藤 俊平

株式会社セイコーステラ 代表取締役。農家さんのお困りごとに関するコラムを定期的に配信しています。取り上げて欲しいテーマやトピックがありましたら、お知らせください。

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