コラム
トルコギキョウのブラスチングを回避せよ!冬季作型で問題となる生理障害
公開日2023.05.22
更新日2023.05.22

トルコギキョウのブラスチングを回避せよ!冬季作型で問題となる生理障害

トルコギキョウのブラスチングと呼ばれる生育不良にお困りではないでしょうか。花蕾が生長を停止してしまうこの生理障害は、冬季作型(夏播種→秋定植→冬開花)で発生しやすいという特徴があります。トルコギキョウは高温と長日条件において開花が促進されるため、冬期作型は花蕾を上手に生長させることが難しく、安定した出荷量を確保するためには知見や栽培技術が必要となります。多くの花き類でも発生するこの現象ですが、今回のコラムでは冬季作型のトルコギキョウ栽培においてブラスチングが発生する原因と対策について考えていきたいと思います。

トルコギキョウのブラスチングとは?

胚珠(種になる部分)が正常に花芽分化をせず花蕾が生長を止めてしまうことです。多くの花蕾が1cm以下で生長を停止し黄変や褐変します。場合によっては枯死します。冬季以外でも梅雨時期などで曇天が続くと発生することがありますが、特に11月~1月にかけて花蕾が発達する冬季開花の作型で頻繁に発生しやすく問題となっています。トルコギキョウは高温・長日・高日照の条件で開花が促進されますが、冬季栽培はこの環境とは反対の環境(低温・短日・低日照)に陥るケースが多いことからブラスチングが発生する条件が整いやすいといえるでしょう。ブラスチングが発生する圃場では、小花数の減少や花芽形成の遅延なども起こりやすく圃場全体の開花時期が遅れることにもつながります。品質も低下する傾向が見受けられます。開花時期が遅れると栽培期間が長くなり暖房コストが農業経営の負担となる場合が多く見受けられます。一重品種よりも八重品種において発生しやすいという傾向があるようです。

トルコギキョウのブラスチングが発生する原因

低温・短日・低日照の環境下においてブラスチングは発生しやすくなりますが、そのメカニズムについては不明な部分が多いといわれています。現在のところ主な原因としては光合成不足・肥料過多・植物ホルモンの影響、などが考えられています。

光合成不足(エネルギー不足)

トルコギキョウは、花蕾が発達するときに糖分が必要です。特に花弁が展開する際には多量の糖分を消費します。日照不足により光合成の活動が低下すると糖分量(エネルギー)が不足し花蕾の生長に悪影響を与えます。特に冬は夏に比べておよそ日照量が50~60%程度となってしまうため、光合成やそれにより作り出されたエネルギーが半分となり、花蕾が生長するための力が不足します。

肥料過多(特に窒素肥料)

窒素光合成によって得られたエネルギーの分配作用に関係しているとされています。発達中の花蕾と新しい葉っぱとの間で光合成エネルギーの取得競争があり、低照度下では新葉に優位性があるという研究があります。窒素は花芽形成や花蕾の発達に影響するため、冬季の低日照環境下では窒素の分配が少なくなった花蕾の生長が止まってしまうのではないかと考えられているようです。特に発蕾後の窒素肥料の濃度が大きく影響しているとされています。

植物ホルモン

他の植物の事例ではありますが、光合成不足による糖濃度の低下により植物ホルモンのエチレンが花蕾の中で増加し、ブラスチングが引き起こされるという研究があります。内生エチレンなどが何らかの作用によりブラスチングに関与しているのかもしれません。一方、ジベレリンやベンジルアデニンといった植物ホルモンについて花蕾への処理を行うと、トルコギキョウのブラスチングを抑制し開花を誘導するといった研究もあります。

トルコギキョウのブラスチングが発生した際のデメリット

開花率と品質が低下する

ブラスチングが発生すると開花率が減少し、多発する場合には品質も著しく低下します。収穫数が少なくなる上に切り花品質が落ちれば直接的に売上が上がらないこととなります。

計画的な出荷が行えない

開花数の低下に加えて、開花までの時間が長くなる傾向があり、計画上出荷する予定だった市場ニーズの高い時期での出荷が行えないという事態に陥ります。

燃油消費量が増加する

冬季出荷の作型では花芽形成以降に加温する必要があります。しかし、出荷時期が遅くなればビニールハウスなどの施設で育てる時間が長くなり、燃油消費量が増加するため農業経営を悪化させることとなります。

トルコギキョウのブラスチング対策

電照を利用する

トルコギキョウは長日植物のため、電照設備を使い人工的に長日環境を作り出します。冬季作型において白熱電球やLED電球を利用し、日長が20時間程度となるような環境を整えてブラスチングの発生を予防する方法です。電照により冬の日射量不足を補い光合成を促進させます。適切に運用できれば花芽分化と開花促進の効果が期待できます。

適切な温度管理を行う

トルコギキョウは高温性植物のため株の生長は温度が高いほうが早くなりますが、適当な品質の切り花という観点からいえば、一般的な生育適温は昼間で25~28℃程度、夜間は15℃程度とされています。この環境を保てるような温度管理を実施しましょう。

二酸化炭素発生装置(CO₂発生装置)を利用する

冬季作型においては、ビニールハウス内の保温のため換気頻度が減少します。すると外気量が減り施設内の二酸化炭素(CO₂)が不足します。日照量が十分でも植物が炭素(C)を取り込めなくなりエネルギーに変換できない状態となるため、ブラスチングが発生しやすくなります。そこで、二酸化炭素発生装置を使い、日照量に対して適当な光合成活動を行えるようにします。

発蕾後は低窒素になるように管理する

発蕾後の窒素量が多いとブラスチングの発生頻度が高くなるという研究があるようです。窒素量をコントロールしながら栽培を進めると発生を防止する可能性があります。水耕栽培では特定の時期に肥料をコントロールはすることは難しくありませんが、土耕栽培では難易度が高いかもしれません。

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ブラスチングを防いでトルコギキョウの収量を増やしましょう

トルコギキョウは年々市場ニーズが高くなってきており、年間を通して安定した生産量が求められています。ところが、6月~9月ごろの生産量にくらべて冬季は少なく、例えば1月の市場入荷量は8月の15~20%程度しかありません。冬季作型(9月定植・2月開花)を実施するとなると、自然環境においてのトルコギキョウの開花条件と逆行していくため、温湿度や日射量を人為的にコントロールする高い技術が必要ですから、チャレンジする農家さんは少ないのかもしれません。この状況をチャンスと捉えて、冬期作型のノウハウを身につけることができれば、増収につながる可能性が高くなります。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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