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バラを食べるヨトウムシにどう備える?
公開日2026.03.04
更新日2026.03.04

バラを食べるヨトウムシにどう備える?

朝見たら葉やつぼみが急に食べられている—そんな突然の食害で疑いたいのが、夜に活動するヨトウムシです。日中は天敵を避けるため隠れており発見しにくく、気づいた時には被害が進んでいるのが厄介な点です。この記事では、ヨトウムシ(ヨトウガ類)の生態から、バラの受ける被害、防除の方法についてわかりやすく整理しています。

ヨトウムシ(ヨトウガ)とは

ヨトウムシは夜間に活動して植物を食害する蛾の幼虫の総称で、バラの葉やつぼみを食い散らかします。被害が進むと葉脈だけを残して食べつくされ生育や見た目が悪くなり、商品価値が著しく低下します。ヨトウムシの成虫であるヨトウガの雌成虫は2,000~3,000個の卵を数回分けて葉裏などに産み付けます。ふ化後しばらくのあいだ(おおよそ2齢幼虫期までは)集団で葉を食害します。初期はまとまって加害するため被害が目立ちやすく、早期発見のポイントにもなります。3齢幼虫期に入ると行動は一変します。個体ごとに分散し、日中は天敵からの捕食を避けるため、株元の土の中や作物の隙間に潜んで、夜になると活動を再開し食害するようになります。このため、被害が進んでいるにもかかわらず虫体を見つけにくい、という状況が起こります。

幼虫の体表は平滑で刺毛はなく、頭部は黄褐色、胴部は灰黒色・暗褐色・暗緑色など変化に富み、全体に小さな黒点が多数見られます。老齢幼虫になると体長は最大で約30~50mm程度に達し、その後、地表から40~50mmほどの土中に潜って蛹化します。

ハスモンヨトウの成虫は、前線に向かう気流や台風に伴う強い風に乗って、海を越え、大陸から長距離を移動して飛来することが知られています。

ヨトウムシによるバラの被害

ヨトウムシの被害は、いくつかの特徴的なサインとして現れます。まず目につきやすいのが、葉のふちが不規則に欠ける症状です。葉の縁がザクザクと削られたように食害され、昨日まできれいに揃っていた葉が、朝になって突然欠けていることがあります。夜行性のため、被害は一晩で進むのが特徴です。また、蕾や花に穴があくこともあります。とくに開花直前のやわらかい蕾は狙われやすく、かじられると花姿が乱れるだけでなく、傷口から傷みやすくなります。その結果、株全体の消耗につながることもあります。さらに見逃せないのが、黒い粒状のフンです。株元や葉の上に小さな黒い粒が落ちている場合、近くに潜んでいる可能性が高いと考えられます。虫の姿が確認できなくても、フンが新しければ「今夜も活動する合図」と判断し、早めの対策を意識することが大切です。

ヨトウムシによる特徴的な被害

  • 葉のふちが不規則に欠ける
  • 蕾や花に穴があく
  • 黒い粒状のフンが落ちている

ヨトウムシの発生時期

春の芽吹きや、秋の伸びやかな新葉の季節。株が勢いよく動き出すこの時期に、ひそかに活動を始めるのがヨトウムシです。発生のピークは年に2回、初夏(4~6月)と秋(9~12月)。とくに被害が目立つのは5~6月と9~10月で、やわらかい新芽や蕾が増えるタイミングと重なります。4月に羽化した成虫はすぐに産卵し、ふ化した幼虫は葉を食べながら成長します。やがて土中で蛹(さなぎ)となり、9月には再び成虫へ。秋に生まれた世代は蛹のまま地中で越冬し、翌春また姿を現します。このサイクルを毎年繰り返しているのです。

春~初夏(4~6月)

4月に羽化した成虫が産卵し、ふ化した幼虫が葉を食害。この時期は、やわらかい新葉が多く「食べやすい環境」になっており、被害が広がりやすい。

秋から初冬(9~12月)

9月に再び成虫が発生し、葉裏に産卵。秋に育った幼虫は11月ごろ蛹となり、地中で越冬。翌年4月に羽化して、再びサイクルが始まる。

*ビニールハウスでバラを栽培している場合、本来は低温で活動を休止するヨトウムシ(ヨトウガ類の幼虫)が、ハウス内の暖かい環境によって冬季も活動を続けることがあります。気温が一定以上に保たれると発育が止まらず、世代が継続するケースも見られるようです。

バラ栽培におけるヨトウムシ対策

捕殺

もっとも導入しやすい防除方法が捕殺です。数が少ないうちは、取り除くだけで被害を緩和させる効果が期待できます。割り箸やピンセット、ビニール手袋などを用意しておくと心理的ハードルが下がります。幼虫や葉裏にある卵塊を見つけたら除去します。ちぎりとった葉は圃場の中に残さず、ビニール袋に密封して圃場外へ持ち出し、確実に処分します。圃場内に放置すると再発生の原因になります。

圃場の整備

残さや雑草などは、ヨトウムシが潜むことができる場所は、心地よい環境を用意していることになります。残渣は、できるだけ早く撤去し、地中深くに埋設するか、圃場外へ持ち出すことが基本です。すき込みを行う場合、地温が高い時期であれば分解が進みやすく、リスクを抑えられます。しかし、寒い時期や春先では残さに病害虫が残ることもあるため、その際は無理にすき込まず持ち出す判断も必要です。

雑草は「生えたら除草」ではなく、「生えにくい環境をつくる」ことが大切です。適正施肥や作物残さ・周辺雑草の除去、排水性の改善など、圃場環境を整えることが重要とされています。加えて、マルチングや防草シートの活用といった方法で発生を抑制します。

防虫ネット

害虫の被害を未然に防ぐうえで重要度が高いのは、「侵入させない」という対策です。ヨトウムシの成虫(ガ)は体長15〜20mm程度のため、それだけを防ぐのであれば4mmの目合いの防虫ネットで問題はありませんが、ヨトウムシの幼虫やアザミウマのような微小な害虫を防ぐためには、1~2mm程度の目合いのほうが良いと考えることができます。一方、目合いが細かくなればなるほど、通気性が低下し過湿や高温による病気や障害が発生しやすくなります。

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薬散(殺虫剤)

薬剤は“タイミングと当て方”で効果が大きく変わります。幼虫は齢が進むほど薬剤が効きにくくなるため、薬散による防除は中齢期までが勝負です。抵抗性の発達を防ぐために、同じ系統の薬剤を続けて使わないようローテーション散布を心がけましょう。同一作用機構(IRACコードが同じ系統)の薬剤を連続して使用しないことが重要です。ローテーション散布は、長期的な防除体系の維持につながります。

散布の作業は葉裏と株元周辺まで濡れるように当てます。卵は葉裏にあり、幼虫も日中は株元周辺や葉裏にいることがあるためです。噴霧が届かない場所が多いと殺虫剤の効果が落ちてしまいます。

黄色の照明(蛍光灯・ナトリウムランプ・LEDなど)

黄色の照明は、夜間の成虫の飛来を減らすための補助策です。日中は天敵から身を守るため活動が停滞するヨトウムシの特徴を利用した防除方法です。夜間に照明を行うと、ヤガ類の複眼が明るさに順応し、活動が抑えられます。特にこの作用は黄色光で最も高いことが古くから知られています。ヨトウムシなどのヤガに対して、黄色光を点灯することで成虫を明順応状態に保ち、活動を抑制することで交尾や産卵の機会を低下させる効果が期待できます。一般にバラは日長の影響を受けにくい中性植物のため電照による悪影響はないとされていますが、周辺で短日性植物を栽培している場合は、その影響に留意する必要があります。

フェロモントラップ

フェロモントラップは、発生状況を知るための道具として有効です。ヨトウムシの成虫は、雌が遠くの雄を呼び寄せるために「フェロモン」と呼ばれる物質を使っています。現在では、この成分を化学的に合成し、夜蛾類の発生を調べるために活用しています。フェロモンに引き寄せられた雄成虫を粘着板で捕らえ、その数を一定期間ごとに数えることで、発生のピークや増減の傾向を把握できます。これにより飛来のピークを推定し、薬散を実施するタイミングを決めやすくなります。

光で守るヨトウムシ対策|虫ブロッカー黄色

夜間の飛来対策としておすすめなのが、LED防蛾灯「虫ブロッカー黄色」です。ヨトウガなど夜行性害虫の活動を光で抑制し、交尾や産卵の機会を減らすことで被害の連鎖を断ちます。バラは日長の影響を受けにくい植物のため、電照の影響を比較的受けにくい点も導入しやすいポイントです。薬剤散布やフェロモントラップと組み合わせれば、防除のタイミングを整えながら安定した管理が可能になります。ハウス・露地のいずれでも活用できます。

バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
虫ブロッカ―黄|578nm
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
虫ブロッカ―緑|535nm
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
単独タイプ|本体に100Vコンセントが直に取り付けられています(取り外し不可)。
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
連結タイプ|本体の上下に50cmのコードが伸びています。上部コードに100Vコンセントを、下部コードには専用中継コードをかませて本体2台目を取り付けて連結します(最大連結数はスペック表を確認してください)。
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
連結タイプには100Vコンセントとエンドキャップを付属します(連結方法により付属数が変わります)。
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
施設に100V電源が無い場合は100Vコンセントの代わりに200V用丸端子ケーブルを付属します。
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
連結タイプの上部コードに100V用コンセントを取り付けます。下部コードにはエンドキャップを取り付けて防水します。
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
虫ブロッカ―2台を連結した様子。
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
連結部分はネジ式で防水仕様です。
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
連結タイプ用中継コードの先端はキャップを付けて防水します。
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)
バラを食べるヨトウムシにどう備える?(イメージ)

ヨトウムシの夜の食害に、昼の備えを

ヨトウムシは夜行性で見つけにくい害虫ですが、葉の欠けやフンといったサインを手がかりに初期段階で対策を実施することが重要です。捕殺や圃場整備で発生源を減らし、防虫ネットや黄色照明で侵入と活動を抑制、適期の薬剤散布で増殖を防ぐ――これらを単独ではなく組み合わせて行うことが安定防除の鍵です。さらにフェロモントラップで発生の波を把握すれば、対策はより計画的になります。日々の観察と環境づくりこそが、美しいバラを守る最も確かな方法といえるのではないでしょうか。

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コラム著者

セイコーステラ 代表取締役  武藤 俊平

株式会社セイコーステラ 代表取締役。農家さんのお困りごとに関するコラムを定期的に配信しています。取り上げて欲しいテーマやトピックがありましたら、お知らせください。

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