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堆肥による土づくりが省力化できる?ペレット堆肥のすすめ
公開日2022.10.05
更新日2022.10.05

堆肥による土づくりが省力化できる?ペレット堆肥のすすめ

家畜の糞尿などの原料を腐熟させた堆肥は、農業の良質な土づくりにおいて欠かすことのできないものとされています。堆肥の施用は、浸水性や保水性(保肥性)といった物理性の向上や、微生物の活性化による生物性の向上といったメリットをもたらし、栽培する作物の品質や収量を改善させることができます。ところが、堆肥の散布作業は重労働であることや、原料が入手しにくく運搬コストがかかることから、堆肥を利用していない農家さんが一定数存在しています。今回のコラムでは、このような課題を解決する方法として期待を集めているペレット堆肥について詳しくお伝えしていきたいと思います。

ペレット堆肥とは?

ペレット堆肥とは、家畜の糞尿を攪拌・発酵・乾燥させた後に、造粒機械で圧縮し直径5mm程度の粒状に成型した肥料のことです。高密度に圧縮されペレット化していると、一定の形が保持されやすくなり、化学肥料的な感覚で施用することができます。一般に、原料は牛糞・豚糞・鶏糞などを使用したものがあり、造粒時に鶏糞や油粕を混ぜて成分調整を行うことも可能です。

主要家畜のペレット堆肥の比較

原料 NPKの傾向 C/N比(窒素の傾向) 有機物の分解速度
牛糞 K>N≒P 高い 遅い
豚糞 P>N>K 中間 中間
鶏糞 P>K>N 低い 速い

ペレット堆肥のメリット

軽量で取扱いしやすく作業を省力化する

一般にペレット堆肥は、変質を防ぐために含水率15%以下と水分をほとんど含みません。そのため、動物質堆肥に比べてかなり軽量で、運搬性や作業性に優れています。パック包装されており保管する場所を取られず置き場所に困りません。製造工程上の技術によりアンモニア揮発による臭いも少なく手も汚れにくいです。

栄養バランスが良く品質が安定している

動物質堆肥は成分が不安定で施肥計画を立てにくいというデメリットがあります。含有成分が明確でないという点も動物質堆肥の施用を利用したくない理由の一つとなっているようです。一方、ペレット堆肥は、製造過程で成分をコントロールしやすいため、三大栄養素である窒素・リン酸・カリのバランスが良く、品質が安定しています。

関連コラム:植物に与える肥料の基礎知識|作物の生長を促進させる使い方とは?

汎用機での散布が可能で施肥しやすい

動物質堆肥の散布にはマニュアスプレッダなどの高価な堆肥専用散布機が必要ですが、ペレット堆肥は、粒度が均一のため、汎用的な機械であるブロードキャスターやライムソワーといった自走式の肥料散布機などで散布することが可能です。小型な散布機であれば、小規模の圃場や山間部にある圃場でも散布しやすくなります。散布時の粉塵が起こりにくいという特長もあります。

動物質堆肥と同等の肥効が期待できる

ペレット堆肥の製造では、動物質堆肥を粉砕・圧縮・摩擦熱といった作用で加工するだけですから、化学組成は加工前の堆肥とほぼ同じと考えられています。既にご存知のことと思いますが、有機物の連用により以下のような作用が働き、結果として「良質な作物の収穫」や「収量の安定化」といった効果が期待できます。

・土壌微生物のバランスが良くなり、作物に悪さをする病原菌が増えにくい
・土壌がフカフカと柔らかくなり、植物の根が伸長しやすい
・団粒構造化による浸水性・保水性(保肥性)を向上する

価格が不安定な化学肥料への依存度を減らせる

世界的な社会情勢の変化により、原料を輸入に頼っている化学肥料の価格は乱高下するリスクが常にある状態です。国内の家畜の糞尿を原料にしている製品が適正な価格で市場に出回れば、価格の変動は起こりにくくなります。農家さんは経費が予測しやすくなり経営が安定します。

関連コラム:土壌微生物を増やすには?作物が育ちやすい環境づくりで収穫量向上を

土壌の窒素無機化量が減少する?

バラ堆肥と比較して窒素無機化量が半減するという報告がありますが、その理由についての統一した見解は未だありません。原料の違いや造粒時の含水率などが窒素の無機化に影響を与えているのではないかとされています。

リン酸の土壌固定が抑制される?

バラ堆肥と比較して、作物のリン酸の利用率がおよそ1.5倍になったという試験結果があります。土壌への吸着ロスが少なくなったとされていますが、これについても統一した見解は今のところありません。

関連コラム:リン酸肥料の効果とは|無駄にしない効果的な使い方

都道府県の補助金を利用できる

農林水産省が実施している産地生産パワーアップ事業の生産基盤強化対策「全国的な土づくりの展開」において、堆肥の施用による土づくりに取り組んでいない農業従事者に、堆肥の実証的な活用を支援するとした助成金があります。この対象にはペレット堆肥も含まれていますので、購入する際は補助金の活用を選択しない手はありません。支援内容や補助率などの情報は各都道府県の担当者へお問合せください。

ペレット堆肥のデメリット

主成分の含有量が厳密に保証されていない場合がある

現在のところ、多くのペレット堆肥は特殊肥料登録されているケースが多いため、主成分の含有量は保証されていません。普通肥料の成分は表示以上の割合が含まれていることが必須ですが、特殊肥料の場合は、誤差の許容範囲が±0.3%とされています。また堆肥には成分を調整するための化学肥料の調合は認められていません。そのため、作物の要求量が不足している場合には、ペレット堆肥と化学肥料をそれぞれ散布する必要があります。

製造コストが上がりやすい

国内で発生する家畜糞を原料として活用する場合、各地域に広がっている酪農場から原料を仕入れる必要があります。この場合、運搬車などを使い原料を集めるのにコストがかかり、価格が上がりやすいという傾向があるようです。いくら再利用ということでも、価格が上がってしまうようであれば、価格転嫁が難しい農家さんにとっては従来の肥料からの切り替えは現実的ではないといえるでしょう。

リン酸やカリが過剰集積する

ペレット堆肥だけに限ったことではありませんが、堆肥は基準量以上の連用によりリン酸やカリといった栄養分が過剰に蓄積してしまうことがあります。土壌中の養分バランスが崩れたり、地下水汚染の原因となったりするケースがあるため注意が必要です。土壌の種類によっては基準量の施用でも過剰に蓄積する場合があるので、pHやECを測定するなど土壌診断を行い、施肥量をコントロールすることが大切です。

関連コラム:土壌EC・土壌pHとは?その測定方法と適正値について

おすすめのペレットタイプの土壌改良資材|地力の素「ペレット

地力の素「ペレット」は、フルボ酸やフミン酸といった腐植物質に加えて牛糞堆肥を含有しています。緩効的に腐植を効かせて土づくりを行いたい場合に適した地力増進法指定の土壌改良資材です。直径4mm×長さ2~5mm程度の大きさでペレット状に圧縮されており、一般的な肥料散布機で施肥することが可能で、重労働であった従来の堆肥散布作業を省力化することができます。連作などで崩れてしまった土壌微生物のバランスを整えることで、土壌環境が改善されます。これにより根の伸長が活性化したり、土壌病原菌が発生しにくくなったりするなどの効果が期待できます。

地力の素の解説動画はこちら

ペレット堆肥を上手く活用して土づくりを省力化しましょう

持続的な圃場を運営していくための土づくりにおいて、堆肥の施用は必要不可欠なものですが、堆肥による土づくりに取り組んでいる農業経営体は3割程度にとどまっているという報告もあります。ペレット堆肥であれば作業負担が軽減される上に、作物にとって良い環境を用意することができることになります。新しい手法を活用し圃場の土づくりに取り組んでみてください。今回のコラムがお役に立てば幸いです。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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