コラム
メロンの接木苗のメリット・デメリットとは?
公開日2022.09.28
更新日2023.03.30

メロンの接木苗のメリット・デメリットとは?

ハウスメロンでは全体の7~8割は接木栽培で行われています。従来は種苗会社から接木苗を購入するケースがほとんどでしたが、近年は野菜苗の価格高騰により費用が農業経営を圧迫してしまうため、自家製の接木苗を利用する場合が増えてきているようです。今回のコラムではメロンの接木苗について詳しくご紹介していきたいと思います。

メロンの接木苗(つぎきなえ)とは?

接木(つぎき)とは、異なる品種の穂木と台木をつなぎ合わせることです。切断した断面を接着して人為的に一つの植物体にします。一般的に同じ種類や、近縁の植物同士でないと接木することはでず、メロンの台木には同じウリ科のカボチャが使われます。たとえばメロン・スイカ・トマト・ナス・ピーマンなどの果菜類でよく行われている手法です。接木苗は苗屋さんから購入するパターンと自前で作るパターンがあります。

メロンの接木苗のメリット

メロン栽培において、接木苗を利用するメリットは、穂木と台木の長所を持ち合わせたメロンが作れるということです。例えば、美味しい果実をつける品種と、病害虫に耐性のある品種を組み合わせることで、それぞれの長所を持ち合わせたハイブリットになります。具体的には以下のような利点が生まれると考えることができます。

土壌伝染病を防止する

メロン栽培において、土壌菌に起因する伝染病「つる割病」やウイルスに起因する「えそ斑点病」などに、高い耐菌性(耐ウイルス性)を有している台木品種があります。このような台木を使用すると伝染病が発症したとしても、被害を最小限に抑える効果が期待できます。ただし、病原菌の汚染濃度が高い場合は、感染するリスクが高くなるため土壌消毒は行った方が良いでしょう。接触により地上部から感染する可能性もありますので、罹患した株は速やかに除去する必要があります。現在のところ、「黒点根腐病」や「根こぶ線虫」に耐性を持つ台木品種は販売されていないようです。

環境耐性(非生物ストレス耐性)が向上する

低温や高温環境においても伸張性を保つなど、環境耐性が向上し障害が発生しにくくなります。

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栽培中の管理が楽になる

病原菌や障害の発生が少なくなれば、その対応としての農薬や栄養剤の散布などを行う手間がなくなり、農業経営の時間やコストを軽減することが可能になります。

メロンの接木苗のデメリット

接木苗を上手に育てることができれば、定植後の農作業時間は短縮されますが、一方、育苗ステージにおいては手間や時間をとられる作業が多くなります。そのデメリットを以下に記載します。

接木苗は高価なためコストが増える(苗を購入する場合)

一般的に、接木苗は普通の苗と比べて高値で販売されています。接木苗をつくるには人が手で一つずつ作業を行うためです。苗を購入して育苗を行う場合には、費用負担が大きくなります。

細かい作業で手間や時間がかかる(接木苗を自前で作る場合)

接木の作業はとても細かく、人の手で行う作業のため、どうしても手間や時間がとられます。特に、メロンの台木は胚軸がとても細く弱いため丁寧な作業が求められ労力がかかりやすいです。作業を行える季節は限られているため、時間をかけて行うことができません。また、成長する力の強い品種が選ばれており、樹勢が強く脇芽がでやすいため、芽かきを行う必要があります。

知識や技術が必要となる(接木苗を自前で作る場合)

接木は古来より活用されている方法ですが、求められる知識や技術は高く、経験豊富な方が失敗することもあり、習得するには時間を要します。

メロンの接木の方法

本章では、一般的なメロンの接木苗の作り方についてご紹介します。接木にはさまざまな方法があり、地域や品種などにより異なる点もあるかと思いますのでご容赦ください。

1)台木の芽かきを行う
2)穂木を清潔な刃物でカットする
3)乾燥防止のため穂木を水につけておく
4)穂木の接合する部分を鋭利になるようにカットする
5)台木の葉が分かれる手前に小さく穴をあける
6)開けた穴に穂木の鋭利な部分を差し込む
7)クリップで接木面を固定する
8)育苗ハウスで約1週間寝かせる(順化)

カボチャ台木を使用する場合、継ぎ目からカボチャの芽が育ってくることがあり、芽かきをせずにそのまま育てると、カボチャが実るので注意が必要です。接木作業において、とても大切なのが接木直後の「順化」という段階です。遮光した空間の中で徐々に太陽の光や空気に慣れさせていくことが重要になります。接木苗はポリフィルムのべた掛けを行い、温湿度を高く保つことで苗の活着や生長を促進させます。気温が高い方が活着は早くなるため、接木作業は晴天の続きそうな期間で行うと良いとされています。

メロン栽培に役立つ土壌微生物資材

土壌中に存在する微生物にアーバスキュラー菌根菌という糸状菌がいます。アーバスキュラー菌根菌は植物の根に共生して、植物のリン酸吸収を改善する能力を有しています。このアーバスキュラー菌根菌は資材化されており簡単に購入することができ、誰でも菌根菌農法にチャレンジすることができます。
セイコーエコロジアでは「キンコンバッキー」を提案しており主に育苗期間中に使用する水和タイプのアーバスキュラー菌根菌として案内しています。キンコンバッキーは水で2000倍に希釈して育苗ポットに50-100mlを施用します。およそ1ヵ月で共生して根張り改善やガッシリした苗の育苗に貢献します。

メロンの接木苗技術を取得して品質や収量を向上させましょう

メロンの接木は知識や経験が必要な作業ですが、購入する接木苗の価格の高騰に対応していくためには、自前で接木を行えるように準備しておくことが必要かもしれません。今回のコラムを皆様の接木苗づくりや苗の生育にお役だていただければ幸いです。

関連コラム:メロンの葉っぱが白い、もしかしてうどんこ病?その原因と対策

参考資料:
メロンの半促成栽培における接ぎ木苗の自家育苗技術
(茨城県農業総合センター園芸研究所)
メロンの接ぎ木苗生産において断根挿し接ぎ法は省力的である
(茨城県農業総合センター園芸研究所)

メロンの接木苗のメリット・デメリットとは?

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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