コラム
沖縄の農業と農産物|熱帯気候で活躍する農業資材を紹介!
公開日2021.09.06
更新日2021.09.06

沖縄の農業と農産物|熱帯気候で活躍する農業資材を紹介!

本州に住んでいる方の沖縄の農産物といえばシークヮーサー、パインアップル、マンゴー、パッションフルーツ、パパイヤなどトロピカルフルーツのイメージが強いのではないでしょうか。しかし意外にもスイカやキクなど本州の方にはあまりイメージのない農産物も沖縄の特産物としてさかんに栽培されています。筆者も沖縄は何度も訪れていますが、そのたびに沖縄農業の新しい発見をします。沖縄は県外からの観光客も多く、近年はイチゴ狩りのできる農園が増加しているようです。
今回のコラムは、本州在住の筆者から見た沖縄の農業について執筆させていただき、熱帯気候で活躍する農業資材を紹介できればと思います。

沖縄の土と気候

沖縄の土と気候は本州と比べて特徴的です。土に関しては沖縄本島を含めた南西諸島に独特な土壌が分布し、気候に関しては高温多湿で年間を通して温暖な気候となっています。
本章では、沖縄の土と気候について紹介したいと思います。

<沖縄の4つの土壌>

沖縄の土は国頭マージ(55.1%)・島尻マージ(27.4%)・ジャーガル(8.0%)・沖積土壌(9.5%)の4つに分類されます。国頭マージの土壌pHは酸性を示し主にさとうきび、パインアップル、果樹が生産されています。島尻マージとジャーガルの土壌pHは弱酸性を示し主にさとうきびと野菜が生産されています。沖積土壌では主に水稲が生産されています。沖積土壌は主に灰色低地土が占めており水田に利用されることが多く、この傾向は本州と同じようです。

<沖縄の気候>

沖縄の気候について話題になると「亜熱帯気候」というワードが飛び交います。しかし、ケッペンの気候区分1)にも日本の気候区分2)にも亜熱帯気候という区分と明確な定義はないようです。沖縄の気候はケッペンの気候区分だと温帯湿潤気候および熱帯雨林気候にあたり、日本の気候区分だと南日本気候にあたります。これらの気候区分を統一して表現することは難しいですが、沖縄気象台によると那覇市の年平均気温は23℃ほどで冬でも年平均最低気温は15℃を下回らず、月平均相対湿度は年間を通じて70%以上、年降水量は2000ミリほどとなっており、いわゆる高温多湿の気候です。台風の影響も本州に比べて多くなっており、7~9月をピークに年間7.4個の台風が接近します。

1)ケッペンの気候区分:ドイツの気候学者ケッペンが考案し、世界の気候を熱帯・温帯・冷帯・乾燥帯・寒帯の5つに区分しました。この5つの気候区分はさらに細かく分別されています。

2)日本の気候区分:ケッペンの考案した5つの気候区分では日本の気候の区別は難しいとし、太平洋側気候・日本海側気候・中央高地式気候・瀬戸内海式気候・南日本気候の5つに区別されています。

こちらのコラムも是非ご覧ください!

>>>ビニールハウスの台風・強風対策|換気扇を活用してハウスを守ろう

>>>ビニールハウス栽培におすすめの換気扇「空動扇」の特徴とメリット

沖縄の農業

沖縄県の農業産出額は988億円で全国33番目の産出額です(2018年)。このなかでも工芸農作物1)の産出額が205億円と農業産出額全体の約20%で、さとうきびが161億円、葉タバコが43億円とこの2品目で工芸農作物産出額の殆どを占めています。さとうきびに関しては沖縄県の農家の約70%が栽培しており、本州の農家の多くが水稲を栽培していることと類似している傾向にあります。
988億円という数字のなかには畜産分野での産出額も含まれており、ブランド豚「アグー豚」の飼育を代表するように養豚が盛んです。しかしながら、畜産分野でもっとも盛んに行われているのは子牛の生産です。日本各地には松坂牛、神戸牛といったブランド和牛がたくさんあります。それらのブランド和牛は、別の場所で産まれた子牛が肥育農家によって育てられた牛で、出荷するときには各地のブランド和牛として流通しています(すべてが同様ではないかもしれませんが)。沖縄県は鹿児島県、宮崎県、北海道に次いで第4位の子牛生産地で、肉用牛産出額は223億円でさとうきびと葉たばこを合計した産出額(205億円)よりも大きくなっており、農業産出額全体の約23%を占めています。
1)サトウキビ、葉タバコ、イモ類、コーヒーなど加工原料になる農作物のこと。

こちらのレポートも是非ご覧ください

>>>日本のバナナ、特に沖縄の島バナナに迫る

沖縄の農産物産出額ランキング

沖縄県では果樹、花き、野菜、工芸作物、畜産など多種多様な農業生産が行われています。今回のコラムでは取り上げませんが、まぐろを対象とした漁業とクルマエビともずくの養殖などの水産業も盛んです。これらの農産物のなかには全国1位の生産量を占めるさとうきびやマンゴーなどが含まれており、県の総面積が小さいにも関わらず意外にも農業県で食材の宝庫だったのです。また、新興の栽培品目であるイチゴの生産が増えてきました。トロピカルフルーツのイメージが強い沖縄県ですが、近年の研究の成果によって今後さらにイチゴ栽培が盛んになるかもしれません。

本章では、沖縄の農産物1)の2018年産出額ランキング上位5品目と番外編として沖縄のイチゴについて紹介したいと思います。

1)いずれの農産物も耕種部門から選出したものになります。

1位 産出額161億円:さとうきび (イネ科サトウキビ属)

いわずと知れた、砂糖の原料となる工芸作物です。黒糖の原料としても知られています。品種は少なくとも10種以上あり、肥培管理、収穫時期、栽培地域、加工後製品品質などによって選定するようです。さとうきびの栽培期間は1~1.5年で非常に長い時間をかけて栽培されます。春に植え付ける春植え、夏に植え付ける夏植え、収穫株の地下茎を利用する株出しの3種類の作付け方法があり、収穫期は1~3月になります。前章で紹介した沖縄の土壌の内、国頭マージ、島尻マージ、ジャーガルでさとうきび栽培が向いており栽培管理方法はそれぞれの土壌で異なるようですが、なかでもジャーガルが最も生産性が高いとのことです。病害は黒穂病、葉焼病、さび病、根腐病、モザイク病などが発生し、害虫はガ類、カメムシ、コガネムシ類、アブラムシ、アザミウマ、バッタなどが発生します。収穫シーズンになると県外から住み込みの短期アルバイトの求人を農協やハローワークなどのホームページで見掛けます。筆者も学生時代に誘われたことがありますが、沖縄県ということもあり人気のお仕事のようです。

2位 産出額64億円:キク(キク科キク属)

沖縄県におけるキク栽培は北部地域が盛んで今帰仁村、名護市、恩納村などが生産地です。主に輪ギクと小ギクが栽培されており、輪ギクは今帰仁村や本部町など、小ギクは国頭村、今帰仁村、名護市、恩納村などが主要産地になります。本州の方には「電照ギク」という言葉で知られているのではないでしょうか。電照ギクは電照栽培でキクを栽培することで冬期に夜間電照を行って日長を延ばす栽培方式になります。沖縄県の電照ギクの場合、電照を当てることで出荷時期を通常の秋ごろから冬に調整することができます。この電照栽培で特徴的なのは露地栽培において電照を当てることです。本州で電照ギクといえば愛知県の渥美半島が有名ですが、愛知県の場合はハウス内において電照を行います。沖縄本島では北部地域だけでなく糸満市や読谷村など各所で電照ギク栽培が行われています。

3位 産出額43億円:葉たばこ(ナス科タバコ属)

葉たばこは宮古、八重山、伊江などの離島地域を中心に栽培されており、農家とJT(日本たばこ産業株式会社)との契約栽培で進められています。葉たばこ栽培はさとうきび栽培との輪作で行われることが多く、さとうきびと同様に沖縄県の基幹作物になっています。葉たばこは、葉を乾燥させて加工すると「煙草(タバコ)」になります。筆者は宮崎県で収穫後のたばこ畑を見たことがありますが、葉だけを収穫しているようで茎は畑に根付いたまま残されており無数の支柱が立っているような景色になります。栽培するにあたり、整地および植え付け準備、堆肥作り、土壌消毒が苦労する作業で、栽培規模が大きい農家ほど整地および植え付け準備に苦労する傾向があるようです。

4位 産出額25億円:マンゴー(ウルシ科マンゴー属)

マンゴーは離島地域を含め沖縄県の各地で栽培されており、沖縄県のマンゴー生産量は全国最多です。マンゴーにはキーツ、トミーアトキンスなどさまざまな品種がありますが、沖縄県は「アーウィン」の生産が主流です(国内の主要産地は殆どアーウィンを栽培しています)。国内でのマンゴー栽培の歴史は古く沖縄県が最初の栽培地といわれ120年以上も前から栽培されていたようです。マンゴーは病害に侵されやすく、とくに炭疽病と軸腐病が問題となっています。これらの病害は栽培期間に圃場で発生しますが、収穫した果実に付着した菌が流通中や消費者の手に渡ってから果梗部の腐敗および黒斑症状として現れ、果実品質を落とす原因となっています。害虫の発生も多く、カイガラムシ、アブラムシ、アザミウマなどに侵されます。カイガラムシの発生は、すす病の発生要因にもなります。

関連するコラムはこちら

>>>マンゴー栽培で発生する病気|発生の仕組みと防除対策をご紹介

>>>マンゴー栽培で発生する害虫|効果的な対策方法を解説

5位 産出額20億円:ゴーヤー(ウリ科ツルレイシ属)

私たちが普段使用している「ゴーヤー」という用語は沖縄の方言です。植物学的な分類においてツルレイシという単語が使用されているように、「ツルレイシ」が正式な呼称のようです(「ニガウリ」とも呼ばれるようです)。沖縄県のゴーヤーは施設栽培が中心で、温暖な気候を利用して周年栽培されています。定植時期によって品種選定が変わるようで、周年栽培が可能であるからこその特徴かと思います。沖縄県内で生産されたゴーヤーの70~80%が県内消費とのことで、沖縄県の方は年間を通してゴーヤーを食べていることが伺えます。

番外編 イチゴ(バラ科オランダイチゴ属)

近年沖縄県ではイチゴの栽培面積が増加してきました。イチゴは花芽分化をするために低温を求めるため(花芽分化には低温以外の要因も必要です)、栃木県や福岡県を中心に栽培が盛んで年間を通して温暖な沖縄県は後進的な位置づけでした。イチゴは高収益を望める栽培品目で、県オリジナル品種が登場するなど全国的にブランド化が進められています。この潮流に乗ってか、沖縄県でも栽培するための研究が進められ近年イチゴ生産が伸びてきたようです。福岡県で育成された「さちのか」という品種を供試して研究が進められたこともあり、本州では最近見かけることが少なくなってきたさちのかの栽培が行われているようです。さちのかは、大粒系品種ではないものの花粉量が多いため果形が良く、花数も多い、果実硬度も高いため生産性と流通性では沖縄に適していると考えられます。観光農園での経営体が多いようで、イチゴ農園は今後沖縄の新しい観光名所になるかもしれません。

沖縄の地域的特産品

沖縄県の各地には地域的に知名度が突出した農産物があり、本州の方には宮古島のマンゴーがその代表ではないでしょうか。勿論、この他にもそのような農産物があります。
本章では、沖縄の地域的特産品と称して本州の方にはあまり知られていない農産物を紹介したいと思います。

今帰仁村のスイカ

今帰仁村は沖縄県北部地域にあたり、世界遺産に登録されている今帰仁城跡があることでよく知られています。本州の方にはあまり知られていないかもしれませんが、今帰仁村はスイカの特産地です。コロナウイルスの影響によって今帰仁村のスイカの売れ余りがニュースになったことで知った方もいるのではないでしょうか。名護市方面から国道505号線を通って今帰仁城跡に向かう途中何軒かのスイカの直売所があり、道沿いにはたくさんのビニールハウスが立っています。このなかにはスイカが栽培されているハウスがあったかもしれません。

伊江島のラッカセイ

伊江島は沖縄県北部地域にあたります。城山(伊江島タッチュー)と呼ばれる岩山があり、本島や飛行機からもその姿をみることができます。この伊江島は島らっきょうやさとうきびの特産地として知られていますが、落花生も有名で沖縄のお土産として道の駅などで販売されているのをしばしば見かけます。離島という限られた面積で栽培される落花生は、その希少性から今後注目度が上がってくるかもしれません。

津堅島のニンジン

津堅島は沖縄県中部地域のうるま市にあたり、高速船やフェリーで渡航できますが本島からもその姿をみることができます。津堅島は「キャロットアイランド」とも呼ばれており、ニンジン栽培が盛んです。ニンジンは津堅島の他に読谷村や糸満市などでも栽培が盛んで、沖縄の名物料理「にんじんしりしり」に代表されるように、農業と食文化において沖縄では重要な園芸作物になっているようです。

電照菊に最適!!「アグリランプエース」

アグリランプエースキクの抑制栽培向けのLEDはキクの花芽分化抑制向けに開発されたキク専用LEDで、キクの花芽分化抑制に効果的である波長630nmのLEDチップを搭載しています。アグリランプエースはエースピンクとエース白の2タイプがありますが、抑制効果が高い方はエースピンクになります。エース白は多少抑制効果が小さいですが夜間作業が多い方は作業性が高いエース白を選択してください。LEDのため消費電力が低く、アグリランプエースは9Wの仕様になります。また沖縄県の露地の電照菊栽培に最適になるようIP67の完全防水性能を備えています。導入費用が高くなってしまうかもしれませんが、白熱電球と比較して圧倒的な省電力のため費用の回収も長くなりません。

マンゴーに!イチゴに!!胡蝶蘭に!!!「虫ブロッカー赤」

ビニールハウスに設置されたLED防虫灯、虫ブロッカー虫ブロッカー赤は波長660nmの赤色LEDを照射するアザミウマ専用防虫灯です。ハウスに10~15m間隔で虫ブロッカー赤を設置して日中の照射するだけで数種のアザミウマの抑制ができます。赤色LED防虫灯は様々なメーカーから発売されていますが多くのものは波長630nmを採用しています。630nmだと行動抑制できるアザミウマの種類が少なく、660nmと比較する抑制効果がかなり落ちてしまいます。
IP67の完全防水性のため湿度の高い沖縄県でも問題なく使用できます。虫ブロッカー赤は、本州では非常に導入実績が高い製品で、イチゴでは多数の実績があります。マンゴーでも導入件数を伸ばしており効果も上々です。沖縄県では胡蝶蘭に納入実績があります。

沖縄は食材の宝庫!

今回のコラムでは沖縄の農業を紹介させていただきました。コラムで取り上げた農産物のほかにも野菜ではオクラ、かぼちゃ、甘藷、果物ではパインアップル、シークヮーサーなど紹介できなかったものがまだまだたくさんあります。これらの農産物は道の駅やJAの直売所などで販売されているので、是非立ち寄ることをオススメします。この記事が読者さまの参考になれば幸いです。

本コラムは下記HPの情報を一部参考に作成しております。
・内閣府沖縄総合事務局農林水産部、沖縄の「農」
・沖縄気象台<沖縄本島地方の気候>
・内閣府沖縄総合事務局<平成30年農業産出額(沖縄県)>
・内閣府沖縄総合事務局農林水産部<沖縄の農林水産業の現状と課題<令和2年8月>
・沖縄県HP
・糸満市HP
・論文「伊江村におけるサトウキビと葉たばこの輪作体系の分析」
・沖縄県農業協同組合南部地区営農振興センター

沖縄の農業と農産物|熱帯気候で活躍する農業資材を紹介!

コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法など。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の研究に着手する。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

おすすめ記事
Tweets by SEIKO_ECOLOGIA
youtube
ご注文
見積依頼
お問合せ