植物育成の光の重要性と電照栽培について
植物と光の関係に関して、いくつかトピックを挙げて記載したいと思います。
●植物は光をエネルギーとして有機物を生成する
植物が動物と異なるところは、光エネルギーを利用し水と二酸化炭素から有機物を生産できることです。私たちを含む動物の多くは他の生物が生産した有機物を利用して生きていますが、植物は細胞内に葉緑体という器官があり、光合成を行うことで無機物を利用して有機物を生産することができます。まさに体内に工場があるようなイメージです。
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●光が少ないとエネルギー不足で生育に悪影響を及ぼす
雨天や曇天が多いと、必然的に太陽からの光が不足し光合成が起りにくくなります。植物は光エネルギーを利用した有機物の生産活動が低下してしまいます。多くの植物は日陰では正常に育たない陽性植物にあたりますので、光の不足は生育に悪影響を及ぼすということができます。自然環境において太陽の光(日照)をコントロールすることはできませんので、人為的に電照(電照栽培)することで日照不足をカバーするという考え方が生まれてきました。
●電照栽培について
植物の成長が日照時間や積算温度に影響されることに着目し、人工的に照明や温度を制御することを「電照栽培」といいます。日本では菊の電照栽培が最も有名です。菊は日照時間が短くなることで花芽を形成するという特徴があります。その性質を利用して花芽が形成される前から人工的に光を照射することで、花芽の形成を抑制し開花時期を遅らせることができます。その結果、出荷時期を数か月も調整できるので一年中、出荷ができるようになっています。
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●光の波長と植物育成について
最近では光の波長と生育の関係性が判明し、積極的に特定の波長を照射することによって成長を制御する栽培方法が取り入れられるようになっています。当初の光源は、電灯照明・蛍光灯照明などが使われていましたが、一般の住宅照明において電気代削減(省エネ)の促進と、蛍光灯の無水銀化がいわれるようになり、LEDを光源とした照明器具の取り換えが進みつつあります。そしてこのLEDが植物育成に利用されるようになってきました。
LEDは半導体の構造を変えることで、特定の波長を発光させることができます。この特性を利用し植物の成長段階で波長を積極的に変え生育制御をすることが可能で、この技術は施設園芸や植物工場などに応用されています。電照栽培は水耕栽培との親和性が高く、特に葉物野菜は根を一定の場所にとどめる必要がないため、生育時期に見立てた複数のゾーンに区切り、ベルトコンベアーで移動させ特定の成長期に必要な波長を照射することにより安定した生産を行うことが可能になりました。今では都心のビルの中でも生産可能な施設ができているほどです。
室内での栽培用照明の選び方
室内で植物を栽培する場合、温度や湿度も大切な環境要因ですが、最もネックとなるのが日照不足でしょう。ここでは栽培用照明の選び方のポイントを記載したいと思います。
●日照不足に関して
室内で植物を栽培しようとした場合、日照不足になることが予測されます。一般住居の室内では300ルクス程度、窓際で800ルクス程度と言われており、タワーマンションといった周囲に日差しを遮る建造物がないマンションでは室内では1,000ルクス程度、南向きの窓際で20,000ルクス程度といわれています。晴天午後3時の太陽光は100,000ルクスですから、いかに少ないかが分かります。
●陽性植物&半陰性植物&陰性植物
陽性植物とは光が大好きな植物で、1日中(6時間以上)光が当たる環境を好みます。夏野菜と言われるトマト・ナス・キュウリ・ピーマン・トウモロコシが該当します。半陰性植物とは半日(午前または午後の実3~4時間)光が当たる環境を好みます。イチゴ・コマツナ・ネギ・ホウレンソウなどが該当します。陰性植物は半日陰~日陰を好み、1日1~2時間の光でも育つことができます。セリ・ミョウガ・ニラなどが該当します。先に記載した日照不足を考慮すると室内栽培に向く野菜は半陰性植物もしくは陰性植物でしょう。
●LED照明の選び方
ホームセンターや電気店等で販売されているLED電球等は安価で導入しやすい面がありますが、家庭向けに開発された照明ですのであまりおすすめできません。以下をご参考に選定してください。
・植物に合った波長の光を放出するLED照明を選ぶ
植物は青と赤の光をよく吸収し光合成をおこないますので、青と赤の含むLED照明を選びましょう。光のレシピ(青と赤の比率)によって、生育の良し悪しがかなり左右されるようです。一般的には赤の比率が多いほうが健全に生育しやすいようです。国や研究機関などで効果が実証された製品を選ぶことをおすすめします。
・光量&照射範囲
光の量は植物を元気に生育させるためにはなるべくなら多いほうが良いでしょう。栽培しようと検討している野菜の光の要求量を調べてから製品を選定してください。照射範囲は照明の製品のタイプによっても大きく変わってきます。例えば蛍光灯などの長細いタイプは比較的広範囲を照射できます。一方、電球のタイプは円形に照射しますので、まんべんなく光を届かせるためにはチドリ状に設置するといった工夫が必要かもしれません。
・栽培キットを購入する
最近では手軽に野菜が栽培できるように、インターネット通販などで種と液体肥料がセットになった「栽培キット」という商品が販売されています。各メーカーによって、インテリアに合うように開発されたおしゃれなデザインのものや本格的なものまでさまざまです。インターネットの検索欄で「植物栽培キット」や「水耕栽培キット」と検索してみてください。LED照明が内蔵されており、光の点灯時間を例えばタイマーで12時間にセットできるなどの仕組みが設定されているため、初心者でも安定した栽培が可能となっています。バジルやレタスなどの葉物野菜は比較的簡単に栽培・収穫ができるでしょう。購入を検討してみてはいかがでしょうか。
植物の室内栽培に最適なLEDの紹介①
ハレルヤ
ハレルヤは植物育成用LEDで、120cmタイプのハレルヤと60cmタイプのハレルヤJrをご紹介しております。ハレルヤJrは室内での観葉植物栽培向けに開発されており、インテリアにも調和するシンプルデザインと、十分な光量を照射できる60W仕様はお勧めです。既存のラックにも取り付けやすいようコンパクトに設計されておりS字フックで吊り下げて設置します。
植物の室内栽培に最適なLEDの紹介②
アグリランプ
アグリランプは単色波長のLEDチップを搭載した電球型のLEDです。赤、青、黄、緑の4色をラインナップしており各色に効果の特徴があります。赤色はアザミウマ忌避や光合成促進に適しています。青色はブドウの着色やマメシンクイガ飛来抑制に適しています。黄色は夜蛾の忌避に適しており、緑色は黄色に準ずる効果を有しています。
LEDを導入して安定した植物栽培を
近年の異常気象報道で注目されてきているLED照明。導入することで天候不順によるリスクを軽減し、安定した植物栽培が期待できます。また巣籠り増加により室内で植物栽培を楽しむ方も増えてきていますので、そんな方にもおすすめです。この機会にぜひ導入をご検討してみてはいかがでしょうか。
コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。