電照栽培の基礎知識
電照栽培が広く認知されている作物は菊です。電照菊ブランドの歴史は長く、静岡・愛知・兵庫・福岡・香川などに集団で栽培している生産者が多いようです。
●電照栽培とは
生物の光周性が発見されたことにより、日照時間を人為的に調整すれば、野菜の収穫時期や花きの開花時期の調整が可能だという理屈が成り立ちます。電照栽培とは電灯照明を利用し成長の促進や抑制を行い、収穫期をコントロールする栽培方法です。これとは反対に、自然光を遮断し栽培する方法を遮光(シェード)栽培といいます。
現在もっとも電照栽培が実用化されているのは菊の開花制御だといわれています。菊は短日植物の仲間で、秋が自然開花時期といわれています。これを遅らせ正月・早春の切り花として出荷するため以下のような方法がとられます。
・日照時間が短くなり始める8月下旬ごろから夕方に電照を開始して花芽着生を防ぐ
・あるいは夜間に数時間照射し着花を防ぐ
・開花前に電照をやめると、すでに日照時間が短日になっているので花芽がつき開花する
電照に使われる光源は、LED・蛍光灯・白熱電球などで、作物の種類や目的により光源の強さや波長を選びます。太陽光と併用する方法が一般的ですが、最近の植物工場では自然光に頼らず電照のみで育てるケースも増えてきています。
●電照栽培で育てやすい作物
タバコと大豆の開花時期を決定する要因を研究中だったガーナーとアラードは、開花が誘導される要因の一つに日の当たる時間が影響していることを発見しました。その後、昼間の時間が長い時に花芽を形成する植物、短い時に花芽を形成する植物、長短に関係なく花芽を形成する植物に分類することが出来ることがわかり・長日植物・短日植物・中性植物と分類することにしました。
種類 | つぼみ形成の要因 | 傾向 | 例 |
---|---|---|---|
長日植物 | 日照時間が長くなる | 春咲きの植物に多くみられる | ペチュア・キンギョソウ・ストック・トルコギキョウ・フクシア・アブラナ・ダイコンなど |
短日植物 | 日照時間が短くなる | 秋咲きの植物に多くみられる | キク・コスモス・アサガアオ・カランコエ・ポインセチア・シャコバサボテン・サルビアなど |
中性植物 | 日照時間に影響されない | 四季咲き二季咲きの物が多い | ニチニチソウ・タンポポ・セントポーリア・バーベナ・ゼラニュウム・シクラメン・ランタナなど |
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電照栽培のメリット・デメリット
日照の変化に敏感な植物とそうでない植物が存在します。敏感な植物は、限界暗期または限界日長が15分から20分の差で花芽形成が誘導されたり、されなかったりするそうです。
※花芽形成に最低限必要な暗期の長さを限界暗期、最低限必要な日長の長さを限界日長と言います。
●メリット
経営を安定化しやすい
太陽光のみで栽培する場合は、作物の成長が天候や季候に左右されるため収量が安定しません。そこで人工的に日照時間を変え、光周(性)誘導を起こすことにより、天候や季節に影響を受けることなく生育・出荷することが可能になります。お天道様に影響を受けにくくなり、安定的に収入が確保しやすくなります。(ただし、光周性がよくわかっている植物であるという条件付きです)
作物の品質をコントロールできる
太陽光の可視光線には紫・青・緑・赤などがあり、青や赤が作物に良い影響を与えるということがわかってきました。発芽時期・成長期・花芽時期といった成長の状態によって、どのような光の強さや波長が良い影響を与えるのかという研究も進んでおり、このような知見や情報を有効に生かせば、さらに作物の品質や収量を向上させることができると言われています。
●デメリット
電照機器の導入に費用がかかる
作物の成長には一定以上の光量が必要となりますが、品種によって昼間と感じる照度が異なります。10~50ルクスで反応するオナモミや、200ルクス以上ないと昼間になったと認識しない稲などがあり、その作物に合った電照設備が必要です。全体にむらなく光を当てたほうが良いので均一に照明を配置する必要があり、電気工事・照明器具の設置等、初期費用が発生します。
温度管理や湿度管理が必要になる
電照を使用すると、温度や湿度が作物の成長に適さない環境になることもあります。白熱球を使用した場合、温度が高くなり乾燥することがあるため、ハウス内の温湿度環境のコントロールに注意する必要があります。
キク栽培におすすめのアグリランプエース
アグリランプエースはキクの抑制栽培に最適なLEDです。キクの花芽抑制に最も効果的とされるおよそ630nmの波長を搭載しています。エースピンクとエース白の2種類をラインナップしており、抑制効果を重視する農家様の殆どがエースピンクを選択します。エース白は夜間作業を行う農家様向けです。LEDは白熱電球と比較して単価が高いため初期導入コストが高くなってしまいますが、消費電力が小さいため数年後のトータルコストはLEDの方が遥かに低く抑えられます。キクの花芽抑制に大きな効果があり、電気料金も低く抑えられるアグリランプエースをおすすめします。
電照栽培を上手に利用し品質や収量を向上させましょう
栽培している作物が長日作物か短日作物かをよく理解し、作物が必要としている光を調節できるように環境を整えましょう。電照を有効に生かせば品質や収量を向上させることが可能になるはずです。
コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。