野菜の栽培で注目を集める植物工場とは
●植物工場とは
「植物工場」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。植物工場とは植物生育に最適な環境を人工的に作り、計画的に栽培する施設やシステムのことです。温湿度・光・二酸化炭素・養液といった植物に影響を与えるエレメントを自動制御で最適な状態に保ち、自然環境に左右されず計画的に作物を育成します。パイプハウスのような簡易なビニールハウスは、生育環境を制御しながら本来栽培しにくい場所や季節に生育するという意味では植物工場のプロトタイプと言えます。これをさらに進化させ、冷暖房・保温装置・給排水・変温装置など省力化のためのさまざまな装備を備え、コンピュータ制御を行いシステム化したものが「植物工場」になります。管理が行き届いているため天候の影響(とりわけ日射量の減少)を受けにくく、作物を計画的に収穫できるという特徴があります。また植物工場で育成した作物は菌の数が少ないため日持ちが良く、水っぽくないため純粋な味を楽しめるといわれています。
皆さんがご存じの通り「きのこ」「リーフレタス」「スプラウト」といった植物では栽培事例が多く生産現場では既に普及し始めていて、近年ではベンチャー企業も参入し各企業は植物工場の競争優位性を争っています。一般ユーザーが楽しめる簡単に家庭菜園用の栽培キットも人気があり広がりを見せています。
●植物工場の種類
植物工場には大きく分けて「人工光型」「太陽光利用型」の二つのタイプがあります。
人工光型
屋内施設で植物が育つ環境を完全にコントロールして栽培する方法です。太陽光の代わりにナトリウムランプ・蛍光灯・LED照明などを使い作物を電照します。外の自然環境とは完全に切り離された閉鎖空間のため、日照不足や台風といった一般的な圃場では対応が難しい悪天候に左右されることがありません。生長に必要な光や栄養を植物の段階や状態に応じて効率的に与えることができるため、新鮮な野菜を一年通して安定的に収穫できます。病原菌や害虫の被害も少なく、それを予防・駆除するための農薬の使用量を抑えられ安全性が高いと言われています。工場や都市といったスペースが限られた狭い場所でも高層式栽培ラックを使い栽培が可能です。 人工光型植物工場の多くは水耕栽培です。発砲スチロールやスポンジ等のパネルに苗を植えて養液に浮かべて栽培をします。菌を植物工場内に持ち込まないように気密性を確保し、作業者は体を完全に覆う作業着を装着するなど衛生管理が行き届いているのも特徴です。
太陽光利用型
温室などの環境で太陽光の利用を基本として温湿度を調節しながら栽培する方法です。ガラスハウスと言われることもあります。太陽光のような自然環境を上手に利用しながら施設内の環境をコントロールします。日照が不足した場合に補光としてナトリウムランプ・蛍光灯・LED電球などで電照を行い、植物の生長を促します。完全に閉鎖された環境ではないため無農薬での栽培は難しいと言われていますが、完全人工型に比べると初期投資費用や光熱費が抑えられます。人工光型の水耕栽培とは異なり、主に土を用いて露地栽培と同じような環境を作れることから有機栽培も可能です。
LED照明で野菜が育つ仕組みとメリット
●なぜLED照明で野菜が育つのか?
日照不足の時期や日陰などの太陽の光が当たらない場所は、野菜の育ちが悪くなります。これは太陽光を利用して行われる光合成の活動が低下するためで、曇天続きのシーズンに野菜の生産が不良でスーパーでの価格が高騰しているといったニュースを耳にすることがあるのではないでしょうか。
太陽光は通常、可視光線・紫外線・赤外線が一緒になった状態で地上に降り注ぎます。この中で植物の生長に必要なのは可視光線と呼ばれる目に見える光です。可視光線の色には紫・青・水色・緑・黄・橙・赤などがあり、近年の研究では青や赤の光が植物の生長には欠かせない光合成や葉と実の形成にかかわっていることが解明されています。少し驚くかもしれませんが、実はこのような植物の生長に欠かせない自然光をLED照明で補うことができるのです。LEDの光でなくても家庭向けの白熱灯や蛍光灯の光でも一定の効果があると考えられていて、農家さんでは1950年ごろから生産性向上を目的に人工の光を使用してきました。
近年ではLED電球のライトが波長のコントロールがしやすいため、植物に適した可視光線を作りやい性質があり、その性質を利用して作物に適した波長の青系や赤系の光を当てることで、太陽の当たらない環境でも効率的に作物を育てることがより効率的にできるようになってきています。
>>>LEDが光合成を促す理由は?メリット・デメリットと導入時のポイント
●LED照明で野菜を生産するメリット
作物の生長を早め生産量を増やせる
天候は毎年大きく変化し、太陽が多く降り注ぐ年もあれば曇天続きの年もあるため、生長の速度が遅くなってしまったり、上手に光合成が行えず生育不良につながったりします。日照不足の時期に、LED照明で電照をすることで作物の生長を助け、効率的に生産することが可能となります。太陽の日照量に左右されず、かつ必要な波長の光をダイレクトに電照できるので、光合成が順調に行われ、植物は栄養素を効率的に吸収するためです。その結果、生長のサイクルが早くなり生産量の増加につながります。
品質が均一になり管理が楽になる
ビニールハウスなどの施設内では自然光の当たり方にばらつきが生じることがあります。日当たりの良い場所と比べて、日が当たりにくい場所では育つ速度や味などに違いが出て、クオリティーが揃わなくなります。クオリティーがバラバラだと品質管理をするために時間がとられたり、せっかく育てた作物を販売できず減収につながることも・・・。日陰になる場所がある場合は、LED照明を使い光を均一に電照することで、品質が一定の基準内で収まるようになり生産が安定しやすくなります。
長寿命でランニングコストが安い
白熱灯や蛍光灯は消費電力が大きく、維持費用が高くなってしまい、電気代がかかりすぎることが農家さんが導入する際のハードルになっていました。長寿命で消費電力の少ないLED照明であれば低コストで維持ができ費用を抑えることにつながります。植物工場においても生育環境をきちんと整えれば、露地栽培と同様に栄養価や機能性成分の高い野菜が育てられるといわれています。
病害虫にかかりにくい
LED照明で完全密閉型の水耕栽培(いわゆる植物工場での栽培)を行えば、無農薬栽培や減農薬栽培ができる可能性もあります。というのも農作物の病気は土を介して発症することが多いため、水耕栽培を行うことで病害虫の発生を抑えることができ、その分農薬も使用せずに栽培を行えるというわけです。しかし、水耕栽培は水を常に循環させているため、一度病気が発生すると水を通じて被害がすぐに広がってしまうというデメリットがあり、十分な注意が必要です。
またビニールハウスでLED照明を利用した施設栽培は、完全に密閉はされていませんが、外部と遮られている環境ですので「露地栽培に比べると」という条件付きですが病害中の被害が少なく、農薬使用量を抑える可能性も考えられます。
LEDの光を使って育てられない植物は?
ほとんどの植物が太陽光を利用し光合成を行って生命活動をしているため、LEDの光で育たないものはないと考えて良いでしょう。ただし、現在の技術では土のない水耕栽培において大根・ジャガイモ・人参といった根菜類を生育するのは難しいようです。これは土壌に含まれる微生物の働きが土壌環境を改善し、作物が根から効率良く必要な栄養素を吸収しやすくなるためと考えられています。
一方、レタス・バジル・ベビーリーフなどの葉物野菜は水耕栽培に適しており、完全密閉型の工場でも生産されています。都心に立ち並ぶオフィスビルでも、環境を整えることで生産が可能ですから、技術が進歩すれば都会で消費する野菜は、都心のビルで作られる時代が来るのかもしれません。
安定した野菜の栽培におすすめのLED照明
セイコーエコロジアで扱っている農業用LED電球は消費電力が少なく、長時間照射できランニングコストを抑えられます。放熱が多く農作物の生育を阻害することがある蛍光灯やナトリウムランプと違い、発光側にはほとんど発熱をしないためビニールハウス内が温まりすぎないというメリットも。寿命も長いため交換の手間もかからず理想的な電照が可能となります。低消費電力でありながら照度が高く、明け方や夕暮れ時にも適度な明るさの確保を補助するため、農作業の作業効率維持を支援いたします。ほとんど紫外線も出さず害虫の行動が抑制される効果も期待できます。
農業用LED電球を活用してより良い作物の栽培に
LEDのメリットを感じていただけましたでしょうか。日照不足を補う電照だけでなく、LED電球を利用した水耕栽培の良さも理解していただけたと思います。LEDの登場により植物が必要としている光を効率的に電照することができるようになりました。それは水に直接肥料を入れる無機肥料の吸収性を高めることができ植物工場の可能性が広がってきています。もちろん土耕栽培にもLED電球を活用していただきより良い作物の栽培にお役立ていただければ幸いです。
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