コラム
団粒構造とは? 植物が良く育つ土壌に必要な要素と土の作り方
公開日2019.05.24
更新日2022.05.06

団粒構造とは? 植物が良く育つ土壌に必要な要素と土の作り方

作物の根っこは土の中の養分と水を吸収しながら伸びていくため、作物の生育にとって土壌環境は大変重要で、土の質が作物の成長度合いを大きく左右します。フカフカした土が良いといわれているのは土が団粒構造という状態になっているためです。団粒構造の土は孔隙率が高く、通気・排水・保水・保肥といった土壌物理性が優れており、植物の根が成長に必要な栄養を吸収しやすい環境を整えてくれます。今回のコラムは団粒構造の土についてご紹介いたします。

団粒構造の基礎知識

●団粒構造とは

団粒構造とは土壌粒子(土の微細粒子)が小粒の集合体を形成している構造のことを指します。だんご状になった大小の土の塊がバランス良く混ざり合っていて、適度な隙間がたくさんつくられています。土が柔らかく通気排水に優れ有用微生物が多く繁殖しており作物の生育に適しています。これに対し土の粒子が集積し詰まっている状態を単粒構造といい、多くはゆるい砂土質や粘土質の土で構成されています。空気や水の透過性が悪く、根が伸びにくいため酸素不足を起こしやすい環境です。単粒構造は作物の成長には適しません。団粒の内部には小さな隙間(毛管孔隙)ができ、外部にはそれよりは大きな隙間(非毛管孔隙)ができます。これは隙間が均一な単粒構造が濡れるとドロドロ、乾燥すればカチカチになるのに比べて、環境の変化にあまり影響を受けずに隙間が確保されやすいため、保水性・通気性・透水性に優れた状態になります。

日本には天然の団粒構造である火山灰土壌が北海道・東北・関東・九州などに広く分布しています。火山灰が風化してできた土壌で、色が黒く歩くと“ボクボク”する土ということから「黒ボク土」と呼ばれています。黒ボク土は他の土壌よりもリン酸と強く結合するため、作物がリン酸欠乏症になりやすく農作地としては敬遠されていました。しかし、通気性・排水性・保水性が優れており畑として利用するときに耕しやすいため、近年ではリン酸と石灰の施用を行うことにより、畑地・樹園地として活用されています。

●団粒構造の仕組み

さまざまな要素により土の粒子を団子状にすることで、団粒構造ができあがります。昆虫・ミミズ・小動物の分泌物、作物の根から排出される分泌物、土壌微生物からの分泌物、カビの菌糸などが接着剤の働きをして団子状の粒子が生成されます。土の中で分泌物や菌糸などが活発に活動すると、人間が土を耕すように団粒化が進み、良い土壌に改善されるといわれています。

土の材料になる元の岩石(母岩)から土壌になるまでの過程で変質する鉱物としない鉱物があります。変質しないものを一次鉱物といい、水や空気などと反応し変質するものを二次鉱物といいます。変質したも鉱物のうち多くは、粘土となる粘土鉱物と呼ばれています。微細な団粒はこの粘土鉱物や腐植物質などの集合体から形成されているといわれ、粘土鉱物が団粒構造の形成には欠かせないという見方もあるようです。

●土壌が団粒構造化しやすい栽培方法

有機農業を行うと堆肥と微生物の働きにより土壌がフカフカの団粒構造になりやすくなります。団粒構造化すると通気性が良くなり、微生物が増加・活発化してさらに団粒構造が発達します。団粒構造の形成には、有機物の分解に関わっている土壌微生物を維持する必要があるため、微生物の数が減らないタイミングで有機物を補給することが大切です。森林は小さな虫や微生物が落葉や動物の死骸を分解することで、天然の団粒構造をもった土を維持しています。

良い土壌の条件と団粒構造のメリット

●良い土壌の要素

土の塊を観察してみると、重さ・土同士の隙間・湿度などに違いが見られると思います。また土の塊を水の中に入れると泡が立ち昇ってきます。つまり土は粘土・砂・落ち葉や動物の糞などの有機物・水・空気などから形成されています。これらを固相・液相・気相の三つ(三相)に分類分けをして、この三相の割合が「固相:液相:気相=4:3:3」となる状態が作物の成長にとって理想的な土壌といわれています。秋になると落葉し、地面に堆積した落葉が微生物の餌になり分解されることで、自然界の森はこのバランス量を保っています。水分が停滞しない排水性や、根に水分をもたらす保水性、空気を取り込む通気性などのバランスが保たれています。

●固相:鉱物・落ち葉・動物の糞などの有機物、また土壌生物や微生物など物理的な要素
●液相:水分
●気相:空気やガス

●団粒構造のメリット

通気性の向上
団粒間の隙間を新鮮な空気が通過することで根の酸素吸収が促進される効果があります。

排水性の向上
水はけが悪いと根が水に浸かった状態になり、栄養の吸収が阻害され成長が悪くなりますが、団粒構造は排水性に優れているため根腐れのリスクを下げることができます。

保水性と保肥性の向上
団粒内部に適度に水分を蓄えることで乾燥を防ぎ、土壌の水分蒸発や水分切れが起こりにくくなります。そのため土の水持ちが良く、水に溶けた有機肥料や化学肥料の成分を蓄えることができます。

土壌微生物の発育を促進
土が適度のサイズで固まり、土全体の表面積が広がります。そのため微生物が発達しやすくなり病原菌や細菌が蔓延しにくくなるといわれています。水分・ミネラル・肥料成分が蓄えられている団粒構造の土壌には、隙間が多いため根が張りやすく養分を吸いこみやすくなります。

土壌微生物に関するコラムはこちら>>>土壌微生物を増やすには?作物が育ちやすい環境づくりで収穫量向上を

病害虫が発生しにくい
団粒構造の土壌には微生物が住みやすいため、土壌中には多様な微生物が存在しています。生態系のバランスが取れていると、病害菌が異常繁殖する可能性が低く、連作障害も起こりにくいといわれています。

●団粒構造が破壊されるケース

団粒構造は壊れやすい構造なので良い状態を維持するには注意が必要です。化学肥料や農薬の大量散布により、土に住む微生物なども殺してしまい、土壌が活性化しなくなると団粒構造が保持されなくなります。また土が多湿状態のときに耕すと土が練られて固くなり団粒構造が破壊されます。一方、乾燥状態のときに耕起すると、土が細かくなりすぎて団粒構造が破壊され粘土質の土壌になります。冬から春にかけて気温が下がり、土が凍結と融解を繰り返すことや、トラクターなど大型農機の作業で土を踏みつけてしまい、耕作地の土が固くなり団粒構造が破壊されることがあります。

団粒構造の作り方

●土壌に生物が多く住める環境を作る

土の粒子を結び付けて団粒状態にするには、土の粒子と粒子を結び付ける役割を担う『腐植』が必要です。腐植は土壌生物が動植物遺体を分解することで発生しますので、土壌生物が多く住みやすい環境を整えるために、腐葉土・もみ殻といった育土堆肥や畜糞堆肥や生ごみ堆肥などの養分堆肥を土に投入すると良いでしょう。腐植は団粒構造を作り出すとともに、pHの変動を抑え作物が育ちやすい土壌になるともいわれています。

●田起こしを行う

収穫後や稲を植える前に畑の乾いた土を掘り起こします。土を反転させ土中に空気(酸素)を入れることで微生物の動きを活発にします。粘土と砂が適度に混ざることで土壌生物の住みやすい環境を作りだし、腐食が進み団粒構造が発生しやすくなります。その際に肥料や緑肥などを混ぜてすき込むと、より腐植を促進させることができるといわれています。

●緑肥作物を栽培する

有機的な肥料である緑肥を使用することで、微生物が活性化しやすくなり、土壌に隙間ができ団粒構造化を促進する効果が期待できます。緑肥とは、栽培した作物を土壌と一緒に耕し、肥料にすることで、化学肥料に比べてリーズナブルです。

●完熟堆肥を施用する

完熟堆肥はすでに、易分解性有機物が微生物によりある程度分解されていますが、それでもまだ堆肥の中には有機物が残っており、これが土壌に住んでいる微生物のエサとなります。微生物は有機物を食べると糊のような粘着物を吐き出し、この粘着物が土の粒同士をくっつける役割を担います。すると、異なる大きさの土の粒が形成されやすくなり団粒構造化を促進します。つまり、土づくりの際に堆肥を施用することが、土壌の団粒構造化を促す要因の一つになります。

団粒構造を作るために効果的な土壌改良資材「地力の素

団粒構造を促進するために皆様へおすすめしたいものが地力の素です。カナディアンロッキー山脈の東麓に位置するアルバータ州から発見された天然鉱物「カナディアンフミン」を原料としており、フミン酸・フルボ酸などの腐食物質が高度に濃縮されています。この地力の素を土づくりに使うことで土の粒子と粒子を結び付ける役割を果たします。連作障害の改善や健康な土壌づくりに貢献します。

フルボ酸は植物などの堆積有機物から生成される天然有機酸です。植物に必要なミネラルや微量要素キレート化(吸収されにくい養分を吸収しやすくする)し、細胞内に届けるはたらきをします。また光合成を活性化し、窒素成分を効果的に葉や茎の組織に変えたり、根に働きかけて根量を増やします。一般的に農業において落ち葉や家畜の糞(馬糞・牛糞・豚糞・鶏糞)を混用し黒色になってできた堆肥を使用している場合が多いですが、その堆肥には腐植酸の含有量が少ないといわれています。

商品ラインナップの【細粒】と【粗粒】はJAS規格の有機JASに登録されている資材ですので、有機栽培をして有機農産物を生産する生産者や法人の方もご利用できます(袋の表面に有機JASマークが表示されています)。

地力の素の解説動画はこちら>>>【解説】地力の素カナディアンフミンの特徴・メリット・使い方を6分で徹底解説

地力の素【細粒】20kg

地力の素【細粒】20kgだけで堆肥1トン分と同等の腐植質を含有しています。その為、堆肥と併用することで堆肥の投入量を削減しますので土づくりを省力化します。施用方法は基肥として作付前の圃場1000㎡あたりの土壌に2~4袋(40kg~80kg)を混和するだけです。フルボ酸腐植質が土壌環境を長期間改善しますので、連作障害の防止や植物の生育環境の改善が期待できます。また育苗では培養土1Lに対して3~5gの混合がおすすめです。

地力の素【ペレット 】15kg

ペレットタイプの地力の素です。2~3袋でたい肥1トン分の効果があります。ペレットなので機械散布ができ、堆肥成分(有機炭素)も入っているオールインワン土壌改良材です。元肥一発肥料の土壌改良材版という位置づけですので大面積、露地向けの資材です。野菜・花き・果樹は10aあたり5~1o袋(75~150kg)、水稲は10aあたり3~5袋(45~75kg)、豆・麦類は10aあたり2~4袋(30~60kg)の使用をおすすめしています。

地力の素【 リキッド12 】1L,5L,20L

濃縮された腐植酸が入っている地力の素の液体タイプです。希釈して土壌へ流し込むことで、作中に衰えた地力を補うことができます。土壌潅注の場合は1,000倍で10~15日間隔での使用、点滴潅水・養液土耕の場合は3,000~5,000倍で随時での使用をおすすめします。

phがアルカリ性ですので、酸性の資材と混ぜると沈殿が生じます。他の資材と混用する場合は本製品を1,000倍以上に希釈してから混ぜてください。

 

良い作物は団粒構造の土づくりから

団粒構造の土でも作物の栽培を続けると団子状の粒子は崩れて隙間がなくなります。空気も水も抜けにくくなり、根が窒息して根腐れを起こす要因となります。おいしくて安全な作物を育てる際には土壌を風化させない土壌改良が必要になりますので、良い作物を収穫するために団粒構造の土づくりを心がけましょう。

>>「地力とは?-地力を上げる方法を解説-」のコラムはこちらからご覧いただけます

団粒構造とは? 植物が良く育つ土壌に必要な要素と土の作り方

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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