アスパラ栽培の基礎知識と育て方
●アスパラ栽培の基礎知識
アスパラガスは、苗を植えてから出荷できるまでの期間が長く、最初の2年間は収穫せずに株を成長させます。3年目以降、春先から夏にかけ発芽した若芽を収穫し出荷します。一度定植すると10年程度収穫ができます。主な生産地は北海道・佐賀県・長野県言われていますが、日本各地で露地栽培・施設栽培が行われています。
出荷時期が最も早いのは3~4月頃で、九州から始まりだんだんと北上して9月頃に国内の生産が終わり以降、輸入物が入ってくるようです。近年は秋田県・群馬県で促成栽培が盛んになり、12月~2月にも出荷が可能になったため、ほぼ年間を通して国産のアスパラが食べられるようになりました。
アスパラガスは減価償却が必要な「生物の耐用年数表」に掲載され、耐用年数は11年となっています。青色申告をされている営農化の方は、そろそろ貸借対照表を作成しましょう。
有名なアスパラガスには、ホワイトアスパラガスとグリーンアスパラガスがありますが、これは品種が違うのではなく、生産の仕方に大きな違いがあります。ホワイトアスパラガスは極力遮光して栽培されたもので、光合成をおこなわないように黒い布で日光を遮り栽培されます。一方、グリーンアスパラガスは、逆に日光を十分に当て光合成を行うことにより緑色になります。最近では、アントシアニンを含んだ紫色のアスパラガスも生産されているようです。
グリーンアスパラガスに比べてホワイトアスパラガスのほうが柔らかく甘味がありますが、栄養面ではグリーンアスパラガスのほうが多く含まれていると言われています。ホワイトアスパラガスは栽培に手間がかかり傷みやすいため希少性が上がり値段が高くなります。
●アスパラの基本的な栽培方法
土づくり
十分な管理を行えば10年以上に渡り収穫ができると言われています。長い期間に渡り収穫を維持し続けるためには定植前の土づくりがとても重要です。アスパラガスは「水はけ」と「日当たり」が悪い場所を嫌います。根を深くはる性質がありますから、地下水位が低く、排水性が良い土壌が必要です。定植前の秋から冬にかけ、30cm以上深耕し排水性を確保します。1aあたり完熟堆肥300㎏、炭酸苦土石灰(粒)10㎏を散布しよく混ぜ合わせておくと良いでしょう。アスパラガスが好むpHは6.0〜6.5(やや酸性)が目安となりますので、炭酸苦土石灰の量は圃場の様子を見ながら調整してください。
種まき、手入れ
最初の1年目は苗つくりの年になります。プランターに腐葉土を入れ3cm間隔で土に真っ直ぐな溝を付け、その溝に種を蒔く条播き(すじまき)を行います。草丈10cmほどになったら1本ずつポット等に鉢上げし、このまま1年育てます。通気性がよく日当たりが良い場所におき、乾燥に注意して育てます。秋から冬にかけ葉が枯れたら地上部を切り取ります。この時期に、植え付ける圃場の準備を並行して行います。
2年目は、圃場で株を作る年になります。霜が降りる心配がなくなるころにポット等で育苗した苗を植え付けます。株間は50cm位を目安に二条千鳥植え(鳥の足跡のように植え付ける方法)をすると良いでしょう。芽が3~5cm隠れる深さに植えつけ、その後十分に灌水し乾燥を防いでください。3月から4月頃、芽出しを補助するために追肥を行います。追肥は株元から30cmくらい離れたところに施します。
露地の場合、降雨の跳ね上がりが病原菌を付着させる原因になる場合がありますので、ワラや籾殻を敷きます。跳ね上がりを防ぎ病原菌から作物を守ると同時に乾燥を防ぐ効果も期待できます。土が乾くと根が弱り、株の生育が悪くなります。
この年は収穫せずに親茎として伸ばし、光合成を活発に行わせて育てます。根茎を太くし養分をたっぷりと蓄えさせます。1.5m位まで成長しますので、草丈60cmほどになったら、茎が倒れないように四隅に支柱を立ててヒモを張り、倒伏しないようにすると良いでしょう。成長に合わせ2段・3段と張っていきます。
親茎が盛んに成長する5~6月を目安に再び肥料を施します。15℃~20℃が生育に適しており、30℃くらいになると生育が衰えてしまいます。3回目の追肥を行った後に、中耕して土寄せを行います。この時期に株に十分な栄養が蓄積されることで、次の年の収量が左右されます。2年目も1年目と同様に収穫せず枯れた地上部を刈取り、休眠に入ります。
収穫
2年目と同様に、追肥・刈取りを繰り返し、春先若芽が出るようになったらようやく収穫時期をむかえます。穂先が固く締まっているアスパラを根元から切り取る(または地際近くで、手で折って収穫)します。育ちすぎると穂先が開いて味が落ちるので刈り遅れないようにしましょう。すべての茎を取らずに細い茎等はわざと残します。気温が30℃になる少し前に収穫をやめ、根に養分を蓄えるようにすると、次の年の収量が落ちずに済みます。根を上手に管理すれば、年々大株になり収量も増えていきます。
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アスパラ栽培で気を付けたい病害虫と対策方法
●アスパラ栽培で起こりうる病害虫
アスパラガスは多湿の環境で病気になりやすく、罹患し枯れた茎が感染源になります。新芽や葉に悪さをする虫も多数います。圃場に病原菌・虫を入れないよう観察し、取り除くようにしましょう。
病気
アスパラ栽培で特に注意が必要だといわれている病気が、茎枯病です。土の中にいるカビ菌が原因といわれています。春先若芽が出てくるころ、前年に罹患した茎の残り土が汚染されていると、感染しやすくなります。特に湿度が高くなると胞子が飛びやすく、また雨のしずくによる跳ね上がりが茎や新芽に付着することもあります。茎枯病は発生させてしまうと即効性がある薬剤なく、同じ系統の薬剤を使用し続けると、耐性菌を発生させてしまうので、罹患させない予防と、万が一罹患した場合は圃場からの排除することが大事です。
秋から冬にかけ、枯れた茎を刈り取った残りが感染源となりますので、畝面に残った切りくずは残らず外に出すようにしましょう。取り残しに関してはバーナーで焼却すると発病しにくくなります。予防薬剤との組み合わせが有効です。その他の病気では、茎や葉に赤褐色の斑点ができる斑点病や葉が黄化し枯れる紫紋羽病などがあります。
害虫
害虫は、圃場の外から飛来するものが多く防虫ネットで防ぐと同時に、圃場周辺の虫の住処になりやすい、雑草の刈取りを行いましょう。できるだけ圃場への侵入を阻止したいものです。アスパラガスにつく虫は、「ジュウシホシクビナガハムシ」(ハムシとも呼ばれる)、「ネギアザミウマ」(スリップス類)、「ハスモンヨトウ」(ヨトウ虫類)が代表的なものです。
ジュウシホシクビナガハムシ(ハムシとも呼ばれる)
テントウムシのような色をしていますが、テントウムシのように丸ではなく、やや細長い体をしています。羽の色はテントウムシのように赤く、点が十四個観察できるので、ジュウシホシの名がついているようです。幼虫のころは一見ウジ虫のように見え大きさは8㎜位です、成虫は6㎜位で捕まえようとすると、ぽとりと落ちます。幼虫期食欲が旺盛で伸び始めた新芽や茎が大好物です。
ネギアザミウマ(スリップス類)
スリップス類の一種で日本では100種類ぐらいが確認されており、生態がよくわからない種類が多く、近年では被害が増大しているため、アスパラガスでも注意が必要です。ネギアザミウマ以外では、ヒラズハナアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマなどが知られています。体長1~2mmの虫で、ハダニの被害と間違えることもあります。スリップス類は体型が幼虫も、成虫も細長い形をしたものが多く、ハダニは丸い形をしています。
圃場周辺の雑草を住処にしている場合が多く、高温乾燥期になると盛んに繁殖します。25℃の環境で、産卵期が3日、ふ化~羽化までは約7日で平均産卵が500個と報告されている種類もいますので、早期発見・早期駆除が重要になります。圃場近くの環境を整えるのと、畝面を乾燥させないよう住みづらい環境を保つことも必要です。葉っぱを好んで食べ、葉うらや日が当たりづらい場所に隠れていますので薬剤を散布するときは、隠れた場所にもしっかり散布する必要があります。被害にあうと、葉や茎にかすり状の白斑ができます。
ハスモンヨトウ(ヨトウ虫類)
ハスモンヨトウとかシロモンヨトウは、ヨトウ虫類の幼虫のことを言います。日中は土中深くに隠れていますが、夜に植物の若い葉や柔らかい茎を食べに来る厄介な害虫です。まとめてヨトウムシ(夜盗虫)と言うときもあります。成虫に有効な薬剤は見当たらなくないため幼虫のうちに駆除する必要があります。
ハスモンヨトウの卵は小さめの白い粒です。卵は葉ごと切り取って孵化する前に除去しましょう。圃場の幼虫は、土の中で越冬するものもいます。耕すときに幼虫を発見したら駆除します。ヨトウムシの薬剤は、一般的に強力で残留性(効き目が長い)ものが多いので、使っていい野菜・使ってよい時期等をよく確認し使用してください。
キュウリの露地栽培農家で聞いたところ、日の出前の「テデトール」が有効とのことでした。どんな薬かと思ったら、「地道に手で取る = ジミチニ テデトル = テデトール」のオチがついていました。
●アスパラ栽培での病害虫への対策方法
アスパラ栽培は通気性を良くし乾燥を防ぐと同時に、日当たりを良くすることで丈夫な株を作ります。病気にかかりにくい環境を保ち、外から害虫や病気を持ち込まない管理することが大切です。風通しを良くするため、密植はせず50cm位離して植え付けしましょう。圃場の水はけを良くするために、深耕し完熟堆肥を入れることで、通気性の向上と排水性を高めた環境にしましょう。場合によっては圃場の給排水能力を向上させる暗渠排水を行うと良いでしょう。
病害虫が発生すると、有効な対策が限られてくるので予防対策に力を入れます。病気は、高温多湿で株が弱ってくるとかかりやすいので、追肥の基本的な管理とともに多湿にならないよう、換気に努めます。根回りの乾燥は嫌うのでワラや籾殻なので畝面の乾燥を防ぎます。丈夫な株を作り病気にかかりにくくしましょう。土中に潜んでいる菌は、雨による泥跳ねで付着するので通路にもひきつめるのが有効のようです。ただし、泥はね防止対策は冬刈り取った茎の残差を取り除き、バーナーで消毒をしないと効果が期待できません。
物理的な病気や害虫の侵入対策を講じても、防ぎきれないこともあります。栽培サイクルの時期に合った薬剤を選び、定期的に予防防除を計画し実施することも大事です。茎の変化をよく観察し、早期発見と駆除を行ってください。
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空動扇|ビニールハウスの換気扇
無動力全自動換気扇空動扇です。最適な設定温度に応じて自動で換気しますので、窓の開閉作業から解放され、節約できた時間を他の作業に充てることができます。急な温度上昇にも自動でゆるやかに作動するため農作物を温度障害から守ります。
ビニールハウス内の温度に応じて空動扇の温度調節器に内蔵された形状記憶スプリングが膨張または収縮するしくみにより、内部の換気弁が自動で開閉するという簡単な構造です。弁の開閉の程度により換気する空気量が決まり、弁が閉じた状態では換気は停止します。温度調節は0℃から40℃の範囲で設定ができますので、育てる作物に適切な温度に設定してお使いいただけます。さらに空動扇は電力不要で動作するので、ランニングコストが発生しないというのもおすすめのポイントです。
天窓換気装置・妻面換気装置・循環扇などの換気装置は、高額なものが多く、電気配線を新たに引き込む場合は資材コストが余計にかかります。空動扇は無動力で簡易に設置ができ、導入後のメンテナンスもほとんど必要がありません。
換気を円滑に行い温度や適切に保つことで作物の樹勢が良くなります。急激な気候の変化により、適切な環境を保持するのは大変な作業ですが空動扇は設定温度に応じて自動で換気をしてくれますので、天候の変化に対応が遅れ、農作物をダメにしてしまう可能性が少なくなります。ビニールハウスのサイド巻上部分から新しい空気が入り、天頂部から排出されるルートができるため、ハウス全体を換気し同時に二酸化炭素を取り込むことで作物が順調に生育する環境を整えます。温度および湿度の上昇を抑えることから、夏場に問題となる農作業中の熱中症の予防にもつながります。設置場所が天頂部のため農作業の邪魔になりません。
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虫ブロッカー赤
数百品目を超える植物に深刻な被害を与えるアザミウマ。殺虫剤の耐性を獲得して化学的防除が困難になってきました。虫ブロッカー赤はアザミウマ対策ができる赤色LED防虫灯です。赤色LEDはアザミウマの抵抗性を発達させず密度を低下させることに貢献します。
虫ブロッカー赤の設置目安(1機あたり)の推奨ピッチは10m~20m(短いほど効果あり)。赤色LED(ピーク波長657nm)を日中に十数時間程度(日の出1時間前~日の入り1時間後までの点灯を推奨します)照射するとアザミウマの成虫は植物体の緑色の識別が困難になり、ハウスへの誘引を防止すると考えられています。その他、殺虫剤の散布回数減・散布労力減といった効果も期待できます。
虫ブロッカ―黄
農薬での対策が難しく数百種以上の作物に深刻な被害をもたらす夜行性のチョウ目害虫。「虫ブロッカ―黄」は露地・ビニールハウス向けのLED防虫灯です。LEDの光がチョウ目害虫の行動を抑制し拡散を防止します。害虫の生息密度を低下させ、繁殖を一世代で止めることで果実・野菜・花の被害が減少します。また薬剤散布のコストや労力削減、天敵昆虫のコスト削減に貢献します。
病気や害虫に負けない環境作りを
アスパラガスは株を成長させるための期間として1~2年目は収穫が難しいと言われています。栽培期間中もこまめな病害虫防除が必要なため手間暇がかかる作物ですが、土壌作りからきちんと準備を行えば、10年ほど安定して収穫ができる作物です。病気や害虫に負けない環境作りをするためにポイントをしっかりおさえることで、アスパラガスを健康的に育て収量アップを目指しましょう。
コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。