オンシツコナジラミの基礎知識
オンシツコナジラミは北米又は中南米に分布しており元々は日本にいませんでしたが、世界各地との貿易が発達した影響で観葉植物や苗と一緒に侵入してきました。1974年に初めて記録され、その時点で既に22県に分布していたと言われています。
●オンシツコナジラミとは
カメムシ目コナジラミ上科コナジラミ科の一種です。日本にはもともとタバココナジラミが分布していました。オンシツコナジラミとタバココナジラミまたはシルバーリーフコナジラミはよく似ていますが葉の上にとまったとき翅のたたみ方が異なります。オンシツコナジラミは葉に対して平行にたたみ、タバココナジラミまたはシルバーリーフコナジラミは45℃~垂直に翅をたたみます。
●成虫の特徴
農地で発生し野菜・観葉植物・果樹・庭木などの葉や花など様々な植物に寄生する害虫です。成虫の体長は雄が約1㎜、雌が約1.2㎜と雌のほうが少し大きく胴体はクリーム色(淡黄色)ですが、翅(はね)はやや裾広がりの形状で白色のワックス性の分泌物で覆われおり全体は白色に見えます。成虫を上から見ると三角形に近い形状に見えます。葉っぱに止まったとき、翅は平行になり後端部は重なるため胴体は見えません。
●卵・幼虫・蛹の特徴
卵は円錐形で0.3㎜位です。最初はクリーム色(淡黄色)ですが孵化までに黒褐色に変わっていきます。植物の下の方の葉の表皮内に円形または三日月形に産み付けられます。幼虫は黄色~薄い緑色~濃褐色と変化していき、1齢幼虫は歩行しますが以降はカイガラムシ状になって動かなくなります。その後、管状器官から甘露を分泌し終齢幼虫は半透明の円盤状になり、周辺部にワックスを分泌して盤状になり蛹化します。蛹は乳黄色で周縁部から下向きに剛毛が生えています。幼虫・蛹の期間は植物の葉の裏で生活しています。
●発生環境
平均気温20℃前後の比較的低温を好み、この時期に盛んに繁殖を繰り返します。生殖は単為生殖・両性生殖ともに行い、単為生殖では雄のみ、両性生殖では雌雄とも生まれます。雌は平均120個ほどの産卵数といわれていますが、記録では500個産卵する個体も確認されているようです。成虫は20度前後の環境で約50日間生存し、30℃を超えてくると死亡率が増加するという報告があります。発育零点は約8.3℃~8.9℃、発育有効積算温度は357日と確認されていますので平均気温20度の時の発育日数は、次のようになります。
発育日数=発育有効積算温度÷(平均気温-発育零点)
約30日=357日÷(20℃-8.3℃)
参考:京都大学農学部昆虫学研究室の論文より「昆虫の発育零点」
発育零点:発育のまったく休止する温度で普通には積算温度法則を昆虫の発育に適用した場合に理論的に求めた比較発育速度がゼロの温度のことを指しています。
●オンシツコナジラミによる被害
直接的被害
幼虫や蛹の時期をほとんどを葉裏に寄生し植物の汁を吸って生活しています。植物から吸汁するときにキュウリ黄化えそウイルスを媒介することがあります。被害にあった葉は緑葉素が抜け、白いかすり状の症状が出て葉っぱが枯れてしまいます。
間接的
オンシツコナジラミの排泄物がウイルスの媒介になり、すす病が発生するおそれがあります。すす病とは、すす病菌(糸状菌というカビ)が植物の上で増殖することで発症します。葉や幹が黒色のすすで覆われたようになり植物の美しさが損なわれるだけではなく、光合成や葉の蒸散の妨げになるため、植物が枯れる場合があります。高温多湿の環境で発生しやすく、露地では梅雨時から秋雨まで湿度が高くなるとき注意が必要になります。施設では水はけが悪い環境で発生しやすいので気をつけましょう。
●オンシツコナジラミの被害を受けやすい作物
オンシツコナジラミは施設栽培で発生することが多く、さまざまな植物に取りつき植物体から吸汁します。その際、黄化えそウイルスに感染している植物体の汁を吸いこむとウイルスを媒介します。
トマトやナスなどのナス科
果実に排泄物が堆積するとすす病が発生したり、加害されると変色をするので商品価値を損ないます。またタバココナジラミ・シルバーリーフコナジラミも取りつきますので注意が必要です。タバココナジラミがトマト黄化ウイルスを媒介しているときに新系統とされたのがシルバーリーフコナジラミです。
キュウリやメロンなどのウリ科
キュウリ黄化えそウイルスを媒介します。
ぺラルゴニウム・ポインセチア・ハイビスカス・ランタナ・シソ科のハーブ類
吸汁により葉が変色し、排泄物によって汚れてすす病が発生します。
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オンシツコナジラミへの対策と予防方法
オンシツコナジラミは、さまざまな植物に取りつき植物体から汁を吸い取りウイルスを媒介します。成虫は黄色に誘引されますので黄色の粘着板で発生状況を把握し駆除方法と予防方法を記載しましょう。
●駆除方法
発生してしまった場合は早急に駆除を行いましょう。有用な農薬として薬剤の物と、生体由来(天敵)としての物がありますので適切に使用しましょう。都道府県病害虫防除所では、推奨農薬・使用方法も確認できますので参考にしてみてください。
農林水産省HPには、都道府県病害虫防除所のリストが掲載されおり、県別でどのような病害虫が発生しているか(予報・確定情報)、対策としてどのような方法があるか、薬剤は何を使ったらよいか等の情報を入手することができます。
発生初期で農薬を使いたくない場合、牛乳と水を1:1で混ぜた液体を植物に吹きかける方法もあります。牛乳が幕を張りオンシツコナジラミが窒息することで駆除が期待できます。ただしそのままにしておくと臭いがきつくなるのでしばらくした後で水を散布します。
天敵を使う方法も有効です。クロヒョウタンカスミカメムシ・タバコカスミカメ・オンシツヤコバチなどの天敵生物天敵はコナジラミ類の卵や幼虫を捕食してくれます。生体由来の物は生息可能な時期や環境に加え、薬剤との併用が難しいなど活動条件に制限があることにご注意ください。大量に発生してしまった場合は、薬剤による防除が最も有効です。未だメージャーではありませんが菌に感染させて死亡させる昆虫寄生菌もあるようです。
●予防方法
施設園芸の場合はハウス開口部に防虫ネットを張って侵入を防止しましょう。入り込んでしまったコナジラミ類は黄色に誘引される性質がありますので、黄色の粘着板を設置しましょう。主に発生状況を把握するものですが、多数設置することで生息数を減少させる効果があります(シートの設置数は県の技術指導センター等で基準を決めているところもあるようです)。光を嫌う性質がありますので、葉の裏を明るくするためにマルチフィルムを株元に敷き、光を反射させて影をなくし居心地を悪くすることも良いでしょう。また水に弱いので、定期的な葉水を行うことで予防に努めましょう。圃場周辺の雑草がコナジラミ類の隠れ場所になっている可能性もありますので確認し、草刈り整備や農薬や殺虫剤を散布する等の対応が大切です。
予防は組み合わせて行うことが効果を高めます。発生・蔓延する前に対策をしていきましょう。都道府県病害虫防除所では、害虫の予測情報も行っておりますので参考してみてください。
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オンシツコナジラミの防除に効果的な製品
そこで皆様へご紹介したい製品が吸引式LED捕虫器(スマートキャッチャーⅡ)です。ビニールハウス向けのLED捕虫器で、LEDの光でコナジラミ類・アザミウマ類・キノコバエ類・ハモグリバエ類・ヤガ類などの飛翔害虫を誘引し、強力吸引ファンで専用虫袋に捕獲します。コナジラミの発生前~発生初期の早期に設置していただくことで、発生数の増加を抑制することが期待できます。
コナジラミの駆除・予防に効果的なコナジラミキャッチャー
活性式予察捕虫器コナジラミキャッチャーはビニールハウス向けの予察捕虫器です。特殊誘引剤の匂いと粘着シートの色によってコナジラミを誘引し捕虫します。付着した害虫の種類や数を農薬散布の目安とすることで害虫被害の早期発見と早期防除に役立ちます。
電源が不要のため電気が完備していない圃場にもおすすめです。約1a(100㎡)あたりに1台設置することで、食品由来の原料を使用した誘引剤「コナジー」と粘着シートの色でコナジラミを誘引し捕虫します。誘引剤の効果はおよそ3か月間持続します。
適切な予防と防除を
オンシツコナジラミは主に施設栽培において植物を吸汁し加害することによって弱らせたり、排泄物がすす病といった間接的被害を生じる厄介な害虫です。ハウスに侵入され繁殖し大量発生してからでは防除が大変ですので、適切な予防策を講じ大切な植物を守りましょう。コラムをご参考に対応いただけますと幸いです。
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コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。
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吸引式LED捕虫器スマートキャッチャーⅡ
- LEDの光でさまざまな種類の飛翔害虫を捕獲
- 農薬散布回数・農薬散布量・農薬散布労力の軽減
- 吸汁被害・ウイルス病の蔓延を防止
- 害虫の発生予察資材(モニタリングツール)として活躍
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活性式予察捕虫器コナジラミキャッチャー&アザミウマキャッチャー
- 特殊誘引剤の匂いと粘着シートの色によってコナジラミとアザミウマを誘引し捕虫
- 電源のない圃場への害虫対策に
- 害虫の発生予察資材(モニタリングツール)として活躍
- ビニールハウスのお守りとして
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乱反射型光拡散シートてるてる
・光拡散反射によるアザミウマ類の忌避
・虫ブロッカー赤との相乗効果
・果樹や果菜類の色付効果と色ムラ抑制
・イチゴ、キュウリ、アスパラガス、マンゴー、リンゴ、ブドウ、モモなどに導入実績あり