コラム
ネギを脅かす害虫、シロイチモジヨトウの特徴と防除方法を解説
公開日2024.09.17
更新日2024.09.17

ネギを脅かす害虫、シロイチモジヨトウの特徴と防除方法を解説

シロイチモジヨトウは、ネギ栽培における大きな脅威となっており、多くの農家さんを悩ませています。この害虫は日本全国に分布し、特に暖かい季節に活発に活動します。幼虫がネギを食害することで収穫量が著しく減少するため、農業生産において重大な問題となっています。本コラムでは、シロイチモジヨトウの特徴から被害の実態、さらには効果的な対策方法までを詳しく解説し、農家の方々がこの害虫と上手に付き合うための知識と実践方法を提供します。コラムの後半ではシロイチモジヨトウの防除に役立つ資材をご紹介しています。ぜひ最後までご一読ください。

シロイチモジヨトウの基本情報

シロイチモジヨトウは、農業に大きな影響を与える害虫として知られており、ネギの栽培地でも厄介な存在となっています。幼虫の時期に植物の葉や茎を食害し、成虫は葉裏などに団塊で卵を産み付けるため被害が拡大します。昼間は葉の裏や地面に隠れており、夜間に活動を開始します。

特徴と見た目

シロイチモジヨトウの特徴と見た目を理解することは、夜蛾の種類を同定するために必要です。種の同定は防除において非常に重要で、例えば殺虫剤を用いる場合、同定を見誤ると効果が見込めなくなります。成虫は、体長おおよそ30mm程度で灰褐色の翅を持っています。前翅の中央部にオレンジ色の円形の斑点があり、この斑点は非常に目立つため、成虫を識別するポイントとなります。幼虫は成長段階によって体色が変化します。若齢期は緑色で、中齢期以降は淡褐色や黒褐色に変わります。胴の側面に白い線があるのが特徴で、これも識別の鍵となります。0.4mm程度の黄褐色の卵は塊の状態で葉の表皮に集団で産み付けられ、卵の表面は灰色の鱗毛(りんもう)で覆われています。

ヨトウムシ類の見分け方については大阪府病害虫防除所が作成しているヨトウムシ類の見分け方と防除が役に立つと思いますので参考にしてみてください。

分布と生態

シロイチモジヨトウは、温暖な地域に広く分布している害虫で、日本では1980年のはじめに鹿児島や高知のネギ産地を中心に発生し始め、現在では北海道から沖縄まで全国で確認されています。この虫は鳥などの捕食者から身を守るために主に夜行性で日中は葉の内側に潜んでいます。夜間に活発に活動するため、対策を講じる上でも夜の活動を抑えることがポイントとなります。天気の悪い日は昼間でも活動することもあるようです。シロイチモジヨトウの成虫は植物の葉に卵を産みつけ、そこから孵化した幼虫が葉を食害して成長します。雌成虫1匹あたり平均1,000個もの卵を産み付け、孵化後の幼虫は集団で食害し、生長に伴って分散するため食害の範囲が広がっていきます。幼虫は土の中で蛹となり、その後羽化して成虫となります。およそ25℃の環境で「卵⇒幼虫⇒蛹⇒成虫」のサイクルを1ヵ月で繰り返します。

シロイチモジヨトウによるネギへの被害

シロイチモジヨトウの卵は葉身部(上のほうの青い部分)の先端から中央にかけて産み付けられることが多く、孵化後に葉身部内へ侵入し表皮を残して中身を食い散らかします。単純な食害に加えて幼虫の糞が内側の底に堆積するため、市場の価値はなくなり、販売が難しくなります。被害発生の初期では、卵塊が産み付けられた株や、その周辺の株は激しく食害されます。老齢幼虫になると大きな穴をあけたり、食い切ったりするため被害が大きくなります。幼虫は爆食するため農作物に多大な被害をもたらします。

防除を怠ると、2週間ほどで収穫直前のネギが壊滅的な被害を受けることもあるようです。また、発芽後、間もないタイミングで幼虫が発生すると、卵を産み付けられた場所から円状にネギがなくなるので経済的な損失が大きくなります。

効果的な対策と予防方法

シロイチモジヨトウはネギ栽培において深刻な害をもたらす害虫ですから、生態や弱点を理解し、その上で適切な防除方法を選択することが重要です。シロイチモジヨトウの薬剤抵抗種の発生を避けるためには、薬散以外の物理的な防除や生物的防除を併用することが求められます。こうした多種多様なアプローチを組み合わせることで、シロイチモジヨトウの被害を効果的に抑えることが可能になります。以下に、具体的な対策をご紹介します。

農薬(殺虫剤)の利用について

シロイチモジヨトウへの対応において、薬剤耐性の問題は避けて通れない重要な課題です。同一系統の薬剤に依存することは、シロイチモジヨトウがその薬剤に対して耐性を持つ薬剤抵抗種の発生を助長することになり、効果的な防除が難しくなります。耐性を獲得した害虫が増えると、農作物への被害が長期間にわたり続く恐れがあります。薬剤抵抗種の発生を抑える方法として、系統の異なる複数の薬剤をローテーションで使用することが効果的です。異なる作用機序を持つ薬剤を順番に使うことで、シロイチモジヨトウの耐性発達を遅らせることができると考えられています。殺虫剤のラベルに表示してある作用機構を示した数字(IRACコード)を確認の上、同一系統の農薬の連用は避けるようにしてください。

薬剤の効果を最大限に引き出すためには、適切な散布時期や方法を工夫することも重要です。例えば、比較的薬剤の効果が得られやすい幼齢幼虫が出現するタイミングを正確に把握し、それに合わせて薬剤を散布するなどです。卵から孵化したばかりの1齢幼虫と比較すると、脱皮をして大きくなった3齢幼虫は感受性は著しく低下するようです。さらにやっかいなのは、孵化後短時間で葉の内部に侵入してしまうという習性です。有効な殺虫剤を散布したとしても、薬液が幼虫に十分にかからず効果が低下してしまいます。発生最盛期には卵は2~3日程度で孵化することから、防除効果を上げるためには薬散の頻度が高くなり、作業者の負担となります。

黄色の防蛾灯の利用

黄色の防蛾灯はシロイチモジヨトウの防除に非常に有効な手段です。農業現場において簡単かつ効果的な害虫対策として注目されています。防蛾灯の光を夜間に放つと、シロイチモジヨトウの成虫は夜を昼間と勘違いをして活動量が低下します。行動抑制により雄成虫と雌成虫の接触機会を減少させ、結果として幼虫の発生を抑えることができます。防蛾灯を利用することで、薬散回数を減らし農作業者の作業負担を減少させる効果が期待できます。また、黄色の防蛾灯の利用は、特に薬剤耐性を発生させない対策の一つとなります。

黄色LED防蛾灯による小面積防除技術マニュアル(兵庫県農林水産部)によれば、「ネギの事例では、黄色LED 防蛾灯を最低照度が1lux(ルクス)以上となるよう水平方向に照射すると、被害を大幅に抑制し(被害株率96%→6%)薬剤散布回数も低減(6 回→1 回)することができる」と報告されています。

デメリットとしては圃場に電源がない場合に導入が難しい(太陽光パネルを電源にすることも可能ですが発電が安定しないことがある)点、光に敏感な作物には開花に悪影響を及ぼす可能性がある点、カメムシを誘引する恐れがあり発生が見られた場合は点灯を中止しなければならなくなる点などがあげられます。

防虫ネットを利用する

防虫ネットを使って物理的にシロイチモジヨトウの侵入を防除する方法です。目合いは4mm程度のものが推奨されています。施設栽培の場合には、開口部をネットで被覆し、露地栽培の場合はトンネル掛けを行います。卵の塊や幼虫を発見した場合はテデトールで直ちに処分してください。

フェロモンを利用する

雄成虫は雌成虫が発する性フェロモンに誘引されて近づきます。人工的に作り出したフェロモントラップには、主にトラップへ引き寄せて補殺する方法、圃場内にフェロモントラップを複数設置し、かく乱する方法があります。一般にトラップは風通しの良い1m~1.5mの場所に設置する(株の高さよりも上に設置する)と効果が得られやすいようです。

黄色の防蛾灯と同様に、殺虫剤の使用量を低減させる防除方法として期待されていますが、黄色LED防蛾灯による小面積防除技術マニュアル(兵庫県農林水産部)によれば10a程度の小規模圃場においては、フェロモン剤による交信かく乱法は、効果が安定しないとの課題があるとのことです。風によってシロイチモジヨトウの成虫が圃場に侵入する影響を受けて効果が低下することがあるようです。

関連コラム:
・防蛾灯を利用したヤガ(夜蛾)対策、効果のほどは?
・防虫ネットの正しい使い方|害虫のハウスへの侵入を阻止

シロイチモジヨトウの防除におすすめの防蛾灯|虫ブロッカー黄

ネギ栽培におけるシロイチモジヨトウの防除におすすめの防蛾灯が虫ブロッカー黄です。日没後に黄色のLEDを照射させることで、シロイチモジヨトウの成虫に昼間だと勘違いをさせます。日中の成虫は鳥などの天敵から身を守るために行動を抑制する傾向があり、この性質を利用した防除方法です。行動抑制により成虫の生殖機会を減らし、幼虫の発生量を抑制する効果が期待できます。薬散回数の減少により農家さんの作業負担を軽減させたり、薬剤抵抗種の発生を抑えたりするなどのメリットがあります。防水仕様のため施設栽培だけでなく、露地栽培においても活用することが可能です。

ネギを脅かす害虫、シロイチモジヨトウの特徴と防除方法を解説(イメージ)
虫ブロッカ―黄|578nm
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虫ブロッカ―緑|535nm
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連結タイプ
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100V用コンセントプラグ
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200V用丸端子ケーブル
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連結タイプ用中継コード|先端部分はネジ式で防水対策があります
ネギを脅かす害虫、シロイチモジヨトウの特徴と防除方法を解説(イメージ)
虫ブロッカ―2台を連結した様子
ネギを脅かす害虫、シロイチモジヨトウの特徴と防除方法を解説(イメージ)
連結タイプ用中継コードの先端はキャップを付けて防水します
ネギを脅かす害虫、シロイチモジヨトウの特徴と防除方法を解説(イメージ)
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ネギを脅かす害虫、シロイチモジヨトウの特徴と防除方法を解説(イメージ)
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シロイチモジヨトウを防除して品質の良いネギを栽培しましょう

シロイチモジヨトウはネギ栽培において深刻な被害をもたらす害虫の一つですが、適切な対策と予防措置を講じることで、その影響を最小限に抑えることが可能です。もちろん、観察や早期発見が重要となりますので、定期的にネギの状態をチェックし、シロイチモジヨトウの初期兆候を見逃さないようにしましょう。農薬の使用も重要ですが、使用する際には効果的かつ適正な手法を選び、過剰な使用を避けることで農作業者の負担を最小限にすることができます。それぞれの手法にはメリットとデメリットがありますので、一つの方法にこだわりすぎることなく、複合的に取り入れることが大切です。

関連コラム:
ヨトウムシの被害から作物を守るには?予防や駆除におすすめの設備

参考資料:
ヨトウムシ類の見分け方と防除(大阪府病害虫防除所)
黄色LED防蛾灯による小面積技術マニュアル(兵庫県農林水産部)
シロイチモジヨトウ 生態と防除対策(大阪府環境農林水産部)

ネギを脅かす害虫、シロイチモジヨトウの特徴と防除方法を解説

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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