コラム
ビニールハウスでの熱中症から農作業者を守れ!
公開日2022.07.05
更新日2022.07.05

ビニールハウスでの熱中症から農作業者を守れ!

一般的に暑さの影響で死亡者が増え始めるのは30℃を超える日とされていますが、暑さに体が慣れてない時期や、高温多湿になりやすいビニールハウス内などでは、30℃に達しない時期でも熱中症が発症しやすく注意を払って農作業にあたる必要があります。今回のコラムでは農業用ビニールハウスにおける熱中症にスポットを当てた対策をお伝えしていきたいと思います。

熱中症とは?

気温や湿度が高い環境に長くいることで、体温を調節する機能が上手く働かなくなったり、体の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたりして、体温上昇・めまい・意識障害・筋肉のけいれん・筋肉痛・頭痛・吐き気・倦怠感・汗をかかない・まっすぐ歩けない・手足のしびれなどの様々な症状を引き起こす病気です。

通常人体では活動を行うためのエネルギーを作っており、この際に熱が発生していますが、熱を外に逃がすことで体温がおよそ36℃前後に保たれています。農作業を行ったり、ビニールハウスなどの暑い作業環境に身を置いたりしていると、体内の熱を外に逃がすために血液を全身に行き渡らそうとしますが、これにより一時的に血圧が下がり脳に十分な血が送られず、めまい・立ち眩み、場合によっては意識障害を引き起こすこととなります。

また発汗により体内の熱を外に逃がしますが、水分が足りなくなると脱水状態となり、吐き気・倦怠感・頭痛といった症状が出てきます。汗には体内にある電解質の一つ「ナトリウム」(塩分)が含まれており、発汗が続くと「ナトリウム」(塩分)が不足します。「ナトリウム」(塩分)には筋肉の収縮を調整する機能があるため、不足すると筋肉のけいれんや筋肉痛を引き起こします。

暑さ指数(WBGT)とは?

最近、暑さ指数(WBGT)というワードを目にしたり聞いたりすることはないでしょうか。暑さ指数(WBGT):Wet Buld Golbe Tempurature(湿球黒球温度)は、人体の熱の収支に影響を及ぼす湿度・輻射熱・気温の3つに着目した指標のことで、アメリカ・サウスカロライナ州パリスアイランドの海兵隊新兵訓練所における熱中症防止を目的として1954年に開発されました。パリスアイランドは湿度が高いため、海兵隊の厳しい訓練により熱中症になる兵士が多かったことからWBGTを考案したとされています。黒球温度・乾球温度・湿度温度の値を元に算出し、暑さ指数も気温と同じ「℃」で表示しますが、暑さ指数「WBGT」が28℃(気温とは異なる)を超えると、統計的に熱中症患者が増加する傾向が見られます。環境省が発表している熱中症警戒アラートは、熱中症との関係性が高いとされる暑さ指数(WBGT)を基準として発表しています。

暑さ指数(WBGT) 状態 指標
31~ 危険 作業は原則中止
28~31 厳重警戒 激しい作業は中止
25~28 警戒 積極的に休息
21~25 注意 積極的&こまめに水分補給
(のどの渇きを感じる前に)
~21 ほぼ安全 適宜水分補給

ビニールハウスにおける熱中症リスク

ビニールハウス内は風通しが悪く、熱がこもりやすいため、露地環境に比べて湿度や気温が圧倒的に上がります。人体には暑熱順化といって体が熱い環境になれる機能を備えていますが、梅雨明けや梅雨の晴れ間といった時期は、まだ体が暑さに順応していないため、5~6月のシーズンにも熱中症の発症リスクが高くなります。

ビニールハウス内における熱中症事故の統計は見つけられませんでしたが、早いシーズンや早い時間帯から注意が必要です。特にご高齢の農作業従事者は、汗腺の縮小による発汗機能の低下や、血流量の減少による放熱機能の低下などにより、体温を調節しにくくなっていることから、熱中症が発症しやすいと考えられています。露地栽培を含めての統計にはなりますが、農林水産省が厚生労働省の人口動態調査をもとに集計した「農作業中の熱中症による死亡者数、年齢別(平成20~29年)」によれば、全死亡者数198人のうち170人が70代以上と8割以上を占めていました。

ビニールハウスにおける熱中症対策

熱中症の情報を収集しておく

環境省の熱中症予防情報サイトでは、場所と環境を選択すると暑さ指数(WBGT)の予測値と実測値が情報提供されており、「温室」というメニューを選択すればビニールハウス内での暑さ指数を確認できます。また、熱中症警戒アラート*や暑さ指数(WBGT)のメール配信サービスなどが利用することができます。農林水産省が提供している農家向けのスマートフォンアプリ「MAFFアプリ」は、登録者に対して熱中症警戒アラートがプッシュ通知にてお知らせする機能がついています。

農作業中の体調管理を行う

適切な水分補給と塩分補給を行いましょう。前述の通り体温調節機能が作動する際に、水分だけでなくナトリウム(塩分)も失われていますので、水分だけの補給では血液中のナトリウム濃度が低くなり、かえって熱中症を引き起こしやすくなるというリスクがあります。スポーツ飲料や経口補水液*、塩分タブレットなどを摂取し、発汗により失われた水分とナトリウムなどの電解質をチャージすると良いでしょう。農作業中は無理をせず休憩を取るようにして、休憩時間では日陰で手足を露出し水をかけるなど体を冷やすようにすることが大切です。また、なるべく単独作業は避け、複数で作業にあたりお互いに声かけするなど状況確認をすると良いでしょう。

*スポーツ飲料はナトリウムが1Lあたり400~800mgを含んでいるもの、経口補水液はナトリウムが1Lあたり1,000~1,300mgを含んでいるものが一般的です。経口補水液のほうが、塩分濃度が高く糖質の割合が少なく素早く補給されるため、熱中症対策にはより良いと考えられています。
※スポーツ飲料がない場合は、1Lの水に対して1~2gの食塩を加えた食塩水でも良いとされています。

体を暑さに慣らせておく

人間の体を暑さに慣らしておくことで、汗や血液の量が増加し体内の熱を外に逃がしやすくなったり、汗に含まれるナトリウム(塩分)の量が少なくなったり、暑さに対する耐性を強化することができます。このような作用のことを「暑熱順化」(しょねつじゅんか)と言います。暑熱順化するためには、ウォーキング・ジョギング・サイクリング・筋肉トレーニングやストレッチ・入浴などが効果的だとされています。自律神経や内分泌の作用により適応するため、順化には少なくとも1~2週間程度かかると考えられています。お盆休みなど長期の休み明けは体がもとに戻ってしまっている可能性がありますので注意してください。

暑さに強くなる食べ物を積極的に摂取する

気温が高い季節になってくると、どうしても冷たいそうめんのようなものばかり食べてしまいがちですが、炭水化物をエネルギーに変換させるビタミンB1がないと、効率よくエネルギーを使うことができず体が疲れやすくなります。ビタミンB1を多く含む食べ物は、豚肉・大豆・豆腐・炒りゴマ・胚芽米・玄米・カリフラワー・ホウレンソウなどです。加えて体の免疫力を高めてくれる赤ピーマン・ブロッコリー・キウイフルーツなどに含まれるビタミンCと、疲労の要因となる乳酸の発生を抑制する梅干・お酢・レモン・グレープフルーツ・オレンジなどに含まれるクエン酸を摂取すると良いとされています。

暑さ対策のツール活用や設備の導入

・帽子

ビニールハウスでの農作業に限らず熱中症対策の基本ですね。太陽の光で頭部が加温されるのを防ぎます。太陽光が当たっている部分と当たっていない部分では5~10℃の温度差があるという見解もあるようです。保冷材や氷や水などで頭部を冷やすことができるタイプの製品もあります。

・空調服

作業服にファンがついているファンジャケット・ファンベストなどで体を冷やし、体内の熱を積極的に逃がすことができます。直射日光による温度上昇を防いでくれる生地を採用した商品もあります。

・暑さ指数(WBGT)計測器

熱中症の危険性を察知するために、暑さ指数(WBGT)を計測しアラームなどでお知らせする計測器です。コンパクトなものが多く、持ち運びしやすいという特長があります。

・空調設備を導入する

ヒートポンプエアコンは暖房運転機能がついており冬場のビニールハウスの加温にも活用することができます。ミストシステムは、微細なミストの気化熱を利用してビニールハウスの内部を冷やします。デメリットは、いずれの設備も導入費用やランニングコストがかさむという点です。

・換気装置を導入する

天窓換気扇・妻面換気扇・サイド巻上換気装置・循環扇などを利用し、ビニールハウス内の熱だまりを外に排出します。

熱中症かな?と思ったら

十分に熱中症対策を行っていても、農作業中に体調不良になることもあります。医療機関に頼るなど無理をせずに迅速に対応するようにしましょう。以下の対応を目安としてください。

・涼しい場所に避難する
・服をゆるめたり、脱がしたりして体温を下げる
・水をかけたり、仰いだりして体温を下げる
・医療機関に相談する、場合によっては救急車を呼ぶ
・塩分や水分の補給をする(嘔吐や本人の意識がないときは無理やり飲ませない)

熱中症対策におすすめ!空動扇/空動扇SOLAR

ビニールハウスの熱中症対策としておすすめしたい製品が、無動力全自動換気扇の空動扇/空動扇SOLARです。電力は一切不要で、風の力や太陽の光を利用してベンチレーター(換気装置)を作動させ、ビニールハウスに滞留しがちな熱だまりを外部へ排出し、農作業従事者の環境を改善します。内蔵されている形状記憶スプリングが周辺の温度変化に伴い伸縮することにより、換気弁を開閉させるため、換気窓やサイド巻上換気のような手作業での開閉作業が必要ありません。設定温度(開閉設定温度は約0~40℃の間で設定が可能)になると自動的に換気作業を行ってくれます。

▶空動扇の説明動画はこちら

導入事例はこちら:8℃下がった!?空動扇はハウス強度を落としません!|磯川さんのコーヒー農園

複合的な対策でビニールハウスでの熱中症を防止しよう

まずは農作業者の安全が第一です。ビニールハウスはとにかく高温になりやすいため、はやめに十分な対策を計画しておくことが大切です。今回ご紹介した対策を複合的に組み合わせて、熱中症発生を防止にお役立ていただければと思います。暑さに気をつけて作業にあたられてください。

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ビニールハウスの換気方法|作物に最適な環境を目指して

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