コラム
アザミウマ類からトマトやミニトマトを守れ!
公開日2022.04.19
更新日2022.04.21

アザミウマ類からトマトやミニトマトを守れ!

トマトだけに限らず、野菜の栽培には農薬を多く使用した病害虫防除が行われてきましたが、薬剤抵抗性の高い害虫が栽培の現場に出現し、日本で生産される野菜の被害は1,000億円(年間)を超えるという試算もあり、大きな問題になってきています。加えて、消費者による農薬の少ない農作物のニーズが高まってきており、農薬にたよりすぎない防除方法が求められています。今回のコラムではトマトをテーマに、アザミウマの生態とその被害や防除方法についてお伝えしたいと思います。

アザミウマとは

アザミウマは、野菜・果樹・花卉など多くの農作物に群生して加害する吸汁性の害虫です。温度が高く乾燥した時期に発生しやすいとされています。200以上の種類が確認されていて、体長は10mm程度の大きいものもいますが、一般的にトマトやミニトマトに加害するアザミウマは、1~2mm程度で体形が細長くとても小さいサイズです。花の中や葉裏で活動(産卵)しているため発見しにくいというやっかいな性質を持っています。種類にもよりますが、体色は主に黄色や茶色をしています。蛹は土の中で活動し、蛹になる前の幼虫や、蛹から孵化した成虫が加害します。日本では在来している種類と外来種がいますが、1990年代に初めて記録された外来種のミカンキイロアザミウマは薬物耐性が高いとされています。

トマトを加害するアザミウマ類の種類

本章では、一般的にトマトに加害することが確認されているアザミウマについてご紹介いたします。他の作物を食害することが多いミナミキイロアザミウマによるトマトの被害はほとんど確認されていません。

ミカンキイロアザミウマ

欧米でも多くの作物が加害されており、日本には1990年代に確認された海外からの侵入種です。現在では、ほぼ日本全国に生息し発生地や被害作物が拡大しています。耐寒性が高いため、暖かい地域では露地でも成虫が越冬することができるとされています。薬剤抵抗性が発達しているやっかいな種類のアザミウマです。

ヒラズハナアザミウマ

1970年頃からトマト・イチゴ・メロンなどの果菜類に被害が出始めました。トマトでは果実に産卵し、白ぶくれ症状を発症させ商品価値を著しく低下させます。花を好む傾向があるため、圃場周辺に花をつける雑草があると発生するリスクが高くなります。成虫態で越冬し、晩春~初夏にかけて個体群が増大しやすくなるとされています。施設栽培では年間を通して発生し作物を加害します。

ダイズウスイロアザミウマ

日本在来種のアザミウマで、近年、発生は少なくなっているようです。主に葉っぱの組織内に産卵します。

種類 体長 体色
ミカンキイロアザミウマ 雌:1.4~1.7mm
雄:1.0~1.0mm
雌:褐色~茶色(夏)/淡黄色(冬)
雄:淡黄色
ヒラズハナアザミウマ 雌:1.3~1.7mm
雄:1.0~1.2mm
雌:黒褐色~黒
雄:黄色
ダイズウスイロアザミウマ 雌:1.2~1.4mm
雄:0.9~1.0mm
雌:褐色~暗褐色
雄:黄色

アザミウマ類によるトマトの被害

アザミウマは新芽や花弁などの柔らかい部分を好む傾向があります。ストロー状の吸管器官をもっていないためキズをつけるようにして吸汁し、葉や花を吸汁すると食害された部分が変色します。葉っぱは白い斑点が生じたり、褐変してかさぶたになったりします。花の蕾が開き始めると隙間から侵入し加害します。受粉して果実となる子房に産卵すると、果実が実ったときに*痕が残り白く膨れた状態になるため製品価値が著しく低下します。

一番、恐れられているのはトマト黄化えそウイルス(TSWV)を媒介することです。ウイルスを持っているアザミウマが健全な植物体を加害した際に、ウイルスを含んだ唾液を分泌し感染にいたります。アザミウマ本体への影響はないため、死ぬまでウイルスを保有し葉や実に加害するごとに株が感染してしまいます。食害の程度が軽傷でも、ウイルス性の病気により、葉や茎に褐色の壊疽のため輪紋斑や条斑が現れ、萎れて枯死したり茎の内部が空洞化したりするなど、株が健全に生長することができず収量が大幅に低下します。このウイルスは宿主の範囲が広くアザミウマを介して伝染するため、一度圃場内に侵入すると感染が広がりやすく根絶するのが難しいと考えられています。特にミカンキイロアザミウマは、加害範囲が広く、耐寒性や薬剤耐性が強いことから媒介能力が高いとされています。

*白ぶくれ症:一般的にヒラズハナアザミウマの加害で発生しやすい

アザミウマによるトマトの被害を軽減する方法

アザミウマ類は繁殖力が高いため早期の発見と防除が基本になります。また一つの方法では防除効果が低くなるため、以下にご紹介する方法を複合的に行うことが大切です。

モニタリングを行う

葉裏・新芽・花などにアザミウマがいないか定期的にモニタリングを行いましょう。施設栽培では換気に伴って侵入するケースが多いため、換気扇や出入口付近は入念にチェックをするようにします。花に軽く息を吹きかけると、アザミウマが花の中から出てきたりするなど、動いている様子がわかるため発見しやすくなります。また白い紙の上で花をたたきアザミウマを落として発見する方法もあります。

防虫ネットを設置する

天窓・出入口・換気扇などに0.4mm程度の目合いの防虫ネットや寒冷紗を使用して圃場への侵入を防ぎます。目合いが小さいほうがより侵入を防ぐことができるのですが、通気性が低下します。施設栽培においては温湿度が高くなり、生理障害が発生するリスクがあります。赤色の防虫ネットを使用すると高い忌避効果が期待できるため、0.8mm程度の目合いのネットでも侵入抑制効果があったという研究もあることから、施設内の温度が上昇してしまう問題にも配慮する場合は活用できる方法かもしれません。

>>>トマトの高温障害についてのコラムはこちらから。

シルバーマルチやシルバーテープを設置する

キラキラと光が乱反射することで、アザミウマは方向感覚が狂い、圃場へ侵入しにくくなると考えられています。マルチとテープを比べると忌避効果はマルチのほうが高いようです。畔をシルバーマルチで被覆しアザミウマの飛来を防止すると同時に、土の中からの孵化を抑える効果も期待できます。施設栽培ではハウス外の地表やサイドの開口部付近に設置します。ただし、モンシロチョウやハスモンヨトウなどの誘引効果があるので、このような害虫が発生しやすい地域では設置する際に注意が必要です。

粘着シート(粘着資材)を設置する

アザミウマは黄色や青色に集まる性質があり、特に青色を好む傾向があるようです。粘着シートは捕虫するとともに、アザミウマの増加の傾向を予測し、薬剤防除のタイミングを試算するためのモニタリングツールとしても活用することができます。

周辺の雑草を除去する

アザミウマは広食性が高いため、栽培する作物以外の雑草にも生息している可能性が高いとされています。圃場や周辺の雑草の除去が不十分だと、薬剤散布や防虫ネットなどで対策をしても、期待できる効果が低下します。アザミウマにとって雑草は薬剤散布時の避難場所にもなってしまいます。

作付終了後の蒸し込み

アザミウマの死滅温度(45℃で60分以上)になるように、ビニールハウスを密閉して殺菌し、施設圃場外への拡大を防止します。施設内に雑草があると蒸し込み作業を行っても生き残ってしまう可能性があるため、事前に雑草は除去する必要があります。

天敵昆虫(生物農薬)を使用する

アザミウマを捕食できる虫を農薬のように防除効果を期待して利用する方法です。製品化されているものはスワルスキーカブリダニ・ククメリスカブリダニ・タバコカスミカメ・タイリクヒメハナカメムシ・ナミヒメハナカメムシなどがあります。施設栽培などで薬剤抵抗性が高くなってしまったアザミウマを捕食する際に活用されています。ほとんどの製品は、農薬散布回数にはカウントされないため使用回数の上限がありません。

インセクタリープランツ(天敵温存植物)を植付ける

インセクタリープランツとは、主に露地栽培において、土着の天敵昆虫や生物農薬として市販されている天敵昆虫の定着および増殖などを助ける植物のことです。例えば、オクラを植えると、葉っぱではカブリダニ類が、花ではハナカメムシ類が温存されると考えられています。その他にもアザミウマを捕食する天敵が好む植物としては、マリーゴールド・バーベナ・スイートバジルなどがあります。

人工の光(赤色LEDなど)を活用する

アザミウマは葉っぱなどの緑色に反応して株に集まってくるとされています。赤色のLED光を植物体に照射することにより、緑色が認識できなくなり活動量を抑制します。すでに定着しているアザミウマには効果は期待できません。照射する時間は日中で、夜間に照射するとアザミウマが集まってきてしまい逆効果になりますので注意してください。昆虫の光に対する性質を利用して、アザミウマの天敵であるハナカメムシが好む紫色のLEDを照射して、ハナカメムシを集めて防除する方法もあるようです。

アザミウマに使用する散布薬剤

上記のような農薬を利用しない防除方法を複合的に行うことで、被害を抑えやすくなる可能性はありますが、被害が広がりそうな場合や既に被害が圃場全体に広がってしまった場合には殺虫剤の散布が必要になります。

グレーシア乳液

耐雨性が高いため、散布後に雨が降っても効果が落ちにくく、低温~高温など様々な環境で効果を発揮するという特徴があります。抵抗性の高いアザミウマに対しても効果が期待できるとされています。ミツバチ・マルハナバチは翌日の導入が可能です。

スピノエース顆粒水和剤

バージン諸島のラム酒工場跡で発見された土壌放射菌「サッカロポリスポラ スピノサ」を活用し開発された殺虫剤です。この菌が産出する活性成分ガス「スピノサド」は、新しい作用機序のため薬剤抵抗性を発達させたアザミウマにも効果が高いとされています。残留性も長く、通常の条件では7~10日程度です。人畜に対して毒性が低く、散布後は太陽光や微生物の影響により、腐植成分・水・炭酸ガスなどに変化します。

ポリオキシンAL水溶剤

一般的な水和剤に含まれる鉱物質由来の成分を含有していないため、農作物を汚すというデメリットがありません。

モスピラン顆粒水溶剤

ネオニコチノイド系の殺虫剤です。ミツバチやマルハナバチへの影響は少ないとされています。

その他にも、ダントツ粒剤・ディアナSC・ベストガード水和剤・ベネビアOD・べリマークSC・トクチオン乳剤・モベントフロアブル・ヨーバルフロアブルなどがありますが、同一系統の薬剤連用は薬剤抵抗性を発達させる可能性があるため、ローテーション散布をすることが重要です。アザミウマの種類によって薬剤効果が異なったり、天敵害虫を殺虫してしまったりすることがあるため、薬剤は、製品ラベルの安全使用上の注意事項を良く読んで理解した上で活用してください。

アザミウマの防除におすすめの資材

アザミウマ対策のLED防虫灯|モスバリアジュニアⅡレッド

赤色LEDの光を照射して、日中のアザミウマの活動量を低下させます。「モスバリア」というネーミングなのですが、レッドタイプはアザミウマの防除に活躍しますので、本来であれば「アザミウマバリア」が正しい製品名でしょうか。赤色のLED光がアザミウマの行動を抑制し生育密度を低下させることで、交尾の機会を減少させます。これにより次世代を作るための繁殖行為を制限し、トマトの被害を食い止めます。薬剤や天敵昆虫の散布回数の減少にもつながり、労力およびコストの削減に貢献します。

乱反射型光拡散シート|てるてる

赤色のLED光を増幅させるオプションとして乱反射型光拡散シートてるてるを圃場に設置すると、より効率的にアザミウマの活動を抑えることができます。本コラムでは、アザミウマに対するシルバーマルチの有効性をご紹介しましたが、てるてるはシルバーマルチと比べて多少使用方法が異なるものの、さらに高い有効性(アザミウマに対する忌避反応)が確認されています。とりわけ高い効果を有する理由は、光を乱反射的に拡散反射することです。拡散反射は従来光の届きにくかった葉裏や株元にまで光を届くということで、アザミウマの逃げ場をより少なくすることができます。

吸引式LED捕虫器|スマートキャッチャー

スマートキャッチャーは施設栽培圃場向けの吸引式LED捕虫器(モニタリングツール)です。LEDの光を活用しアザミウマのような飛翔害虫を引き寄せて、強力なファンで捕獲します。捕まったアザミウマの数を把握して、駆除の指標となる情報を得ることができます。ハチ防護ネットが付いているため受粉昆虫が吸引されてしまう心配はありません。アザミウマ以外でもコナジラミ類・キノコバエ類・ハモグリバエ類・夜蛾類といった害虫も捕虫することが可能です。

複合的な防除で大切なトマトをアザミウマから守りましょう

薬剤だけに頼り過ぎてしまうと抵抗性がついてしまったり、農作業者の負担が大きくなってしまったり、中長期的な農業経営には良い影響を与えないように思います。今回ご紹介した防除の方法を複合的に組み合わせて対策を進めていくことが大切になります。今回のコラムがトマトをアザミウマから守る一助になりましたら幸いです。

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