コラム
温州みかんの特徴と栽培方法
公開日2021.07.31
更新日2022.11.28

温州みかんの特徴と栽培方法

日本で冬場に食べる代表的なフルーツの一つである『みかん』。家族でこたつに入って団らんしながら食べるイメージを浮かべる方も多いのではないでしょうか。普段から私たちが口にしているみかんは「温州みかん(うんしゅうみかん)」と呼ばれるみかんで、400~500年以上前から非常に多くの品種改良を重ねて栽培がおこなわれてきました。今回のコラムでは温州みかんの特徴と栽培方法について解説していきたいと思います。

温州みかんとは

温州みかん(温州蜜柑、学名:Citrus unshiu)の「温州」とはカンキツ類の産地として有名な中国の浙江省(せっこうしょう)にある温州から名付けられました。温州みかんの起源には”中国の温州から持ち込んだ種子を蒔いたもの“という説がありますが、最近の研究ではDNA鑑定により、母系種はキシュウミカン、父系種はクボンネであることが分かっています。

日当たりがよく暖かい気候を好むため、主に関東よりも西の沿岸部で栽培されています。一般に冬の果実とされていますが、現在では品種改良や施設栽培により、夏~翌春という長期間の収穫ができるようになっています。農林水産省から発表されている最新の収穫量によると、和歌山県が16万7,100t、静岡県が11万9,800t、愛媛県が11万2,500t、熊本県が8万2,500tとなっており、この5県で全国の収穫量(76万5,800t)の7割を占めていることになります。

スーパー等に行くと有田や西宇和といった名前を目にしますが、各産地において栽培しやすく食味がよくなるようにと競うようにして多くの品種改良がおこなわれてきたことが現在のおいしいみかんが普及した結果と言えます。

参考:令和2年産みかんの結果樹面積、収穫量及び出荷量

温州みかんの栄養素

温州みかんにはビタミンC、βクリプトキサンチン、食物繊維などの栄養素が含まれており以下の効果が期待できます。

栄養素 期待できる効果
ビタミンC* 肌を美しく、免疫力のアップ
β-クリプトキサンチン がんに対する抑制(β-カロテンの5倍もの抗がん作用があるとされています)、動脈硬化の予防、骨粗鬆症の予防
食物繊維 整腸作用、抗がん作用

*約3~4個食べることで大人が一日に必要とされるビタミンCを摂ることができます。

温州みかんの植え付け場所

温州みかんは一度植え付けをしたら永年にわたり収穫ができる永年作物です。従って、植え付け場所の選定はとても大事ですので慎重に検討します。適度に礫(小石)を含み、排水・通気性が良好で、適度に保水力に富んだ土壌が適しています。

なお植え付けは3月以降の暖かい時期に行います。寒い時期の植え付けや植え替えは株に大きなダメージを与えてしまいますのでしないようにしましょう。植え付け後はたっぷりと潅水をしてください。

温州みかんの整枝・剪定と仕立て方

整枝・剪定は毎年2月~3月に行います。以下のポイントと基本をおさえて作業を行ってください。温州みかんは1年おきに豊作年(表年)と不作年(裏年)を繰り返す「隔年結果」の植物ですので、剪定や摘果作業はとても重要です。

前年に着果が多かった樹は整枝・剪定を遅くに行い、着蕾確認してから間引き剪定*といった軽めの作業を行います。また連年で安定生産している樹は着花と葉数の平衡を保ちつつ、可能な限り軽めの整枝・剪定をし、樹冠内部まで日光が当たるように亜主枝上の立ち枝や内向枝を除去します。そして前年に着果が少なかった樹は早めに整枝・剪定を始め、切り返し剪定*を主体として新梢を出すことに専念しましょう。

苗から育てていく場合は3本主枝を基本とする場合が多いようです。3方向に綺麗に主枝が伸びるように調整していくのがベストです。最初の4年~5年間はあまり整枝せずに、6年目くらいから3本主枝を選定し、仕立てることも良いかと思います。

*間引き剪定・・・枝の幹部から切ること。込み合った枝を間引くことで日当たりや作業性を改善する剪定方法です。切り返し剪定と比較して、樹が落ち着くことで花芽がつきやすくなります。

*切り返し剪定・・・枝の途中で切ること。先端を強く伸ばすことで骨格となる枝を育てたり、先端が下垂し弱ってきた枝の勢いを回復させたりできます。

整枝・剪定のポイント

  • 葉や枝にしっかりと日光が当たるようにする
  • 葉や枝にしっかりと防除の際の薬液がかかるようにする

整枝・剪定の基本

  • 枯れ枝の除去
  • 下垂枝の除去
  • 立枝を間引く
  • 内向枝を除去
  • 重なった枝の除去
  • 主枝との競合となっている枝を間引く
  • 樹高を下げる

温州みかんの肥料の効果

温州みかんの肥料は下表の通り、与える季節ごとに効果が異なります。都道府県ごとや産地ごとに施肥基準が策定されているので参考にすると良いでしょう。

なお夏の肥料は果実を肥大させるためにとても重要です。施肥が遅くなると浮き皮や着色遅れとなる可能性があるので注意しましょう。

季節 効果
春(3月上~中旬) ・発生した花芽、来年の母枝となる新梢の充実
・幼果の初期肥大の促進
夏(6月上旬) ・果実肥大の促進
・樹勢の維持
秋(10月中下旬~11月) ・樹勢の回復
・耐寒性の向上・翌年の着花量を増やす

温州みかんの摘果方法

安定して美味しいみかんを作るためには、果実一つに対して葉が25枚程度を目安に摘果をすることが最適とされているようです。摘果は主にハサミを使用した人力によって行いますが、摘果剤を利用する方法もあります。この場合、効果が不安定ですので、薬剤の使用方法を守って適切にご利用ください。

温州みかんの収穫

9月下旬から収穫ができる極早生から、12月中旬に収穫して冷蔵庫に貯蔵することで翌年の3月頃まで出荷される晩生があります。果実の品質(糖度、酸度)と着色が整い、出荷基準に達した実を収穫します。収穫は以下の点に注意しながら行いましょう。

  1. しっかりと手袋をはめることで、爪による果実の傷付きを防止
  2. 果皮と果肉離れや痛みや腐敗の原因となるので、果実を引っ張って収穫しない
  3. ハサミで果実を傷付けないように注意する
  4. 一度落果した果実は傷や打撲による痛みにより腐敗する可能性があるので出荷しない
  5. 果梗枝は必ず二度切し、切断面が平行になるようにする(斜め切りをすると果実を傷つけてしまう)
  6. 果実を別コンテナに移動する際は、痛まないように丁寧に扱う

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温州みかんの病害虫と対策

病気

黒点病

糸状菌(かび)が病原菌で、胞子が雨で流れることで伝染します。枯れ枝、切株、剪定枝から胞子が飛ぶので、それらの処分はしっかりと行います。特に梅雨などの雨が多い時期は感染リスクが増すので注意します。指導機関の防除暦に沿って薬剤を予防散布することが最も効果的な対策です。

そうか病

糸状菌(かび)が病原菌で、葉の病斑で冬を越すことで雨が降った際に伝染します。5月下旬~7月下旬の雨が多い時期は要注意です。黒点病と同様に薬剤の予防散布が効果的です。

かいよう病

細菌が起こす病気で、温暖で多雨な気候に多発します。気孔や傷口から開口部へ侵入します。温州みかんの高糖度系の品種に注意が必要な病気です。初芽前~5月までの防除が重要です。ボルドー液などの薬剤散布を行います。

害虫

サビダニ

雌成虫の体長早く0.1mmで非常に小さく、肉眼では確認ができません。芽で冬を越した成虫が発芽とともに新梢に移動して繁殖し、7月頃から果実に移動し害を及ぼします。加害された果実は灰褐色~黒褐色に変色します。6月から9月に薬剤散布を行います。被害が出てからでは遅いので予防散布が効果的です。

アザミウマ

露地ではチャノキイロアザミウマ、ハナアザミウマが、ハウスではミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマの被害が報告されています。果皮を加害することで変色を引き起こし、ひどい場合は腐敗させる被害を出します。アザミウマは圃場付近の雑草に生息していますので草刈りをして予防します。またタイベックシートなどの反射シートを圃場に敷くことで侵入抑制や被害軽減ができます。最も効果的なのは薬剤防除です。

カイガラムシ

ヤノネカイガラムシ等も被害が報告されています。繁殖力が強いので早めの駆除で対策します。発生初期は歯ブラシ等でこすり落とし、薬剤散布をしましょう。

カメムシ類

果樹カメムシとも呼ばれ、チャバネアオカメムシやツヤアオカメムシといった種類がいます。本来の生息場所はヒノキやスギなどの人工林ですが、それらの毬果を加害し尽くしてしまうと果樹園に飛来する行動をとります。口針を果実に刺して内側の果汁を吸うため、果実の着色ムラや斑点状の傷がつき、商品価値が低下します。柑橘類の中でも温州みかんは果皮が薄いため被害を受けやすいです。対策は薬剤散布や防虫ネットで行います。

温州みかんの剪定や採果に適したハサミDr.Cut|ドクター・カット

快適な剪定や摘果作業を行うために、おすすめするのがセイコーエコロジアで取扱っているDr.Cut|ドクターカットです。ドクターカットは、作業者の手指の負担を軽減することを目的に開発されました。従来の剪定用ハサミに比べ、切断時の手指への負担を75%カットします。手持ち部分は柔らかいシリコン樹脂でできており、手元に衝撃緩衝材を付けることで、使用時の手指への衝撃を大幅に軽減します。その結果、使用者の肩や腕の凝り、手指の痛みを減らし腱鞘炎のリスクを軽減します。

1人あたり1日2万回程度のカット作業が発生する温州みかんの摘果作業をはじめ、園芸店における切り花のカット作業、家庭菜園の農作物の収穫・剪定など、さまざまなシーンでお使いいただけます。握りやすく、手に優しいドクターカットをぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

温州みかんを上手に栽培しておいしいみかんを収穫

今回のコラムでは主に地植えによる温州みかんの特徴と栽培方法について解説しました。初心者の方も最近ではホームセンターなどで苗木を入手することも可能です。鉢植えといった家庭菜園からでも始めることができますのでご興味ありましたらぜひチャレンジしていただければと思います。本コラムが少しでもお役に立てれば幸いです。上手に栽培しておいしいみかんを収穫しましょう。

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温州みかんの特徴と栽培方法

コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Twitterを更新していますのでぜひご覧ください。

 

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