コラム
品質の良いリンゴを収穫するための剪定方法
公開日2021.09.21
更新日2021.09.21

品質の良いリンゴを収穫するための剪定方法

リンゴの原種はアジア西部の北コーカサス地方が有力といわれており、暑さに弱いことから夏の気温が低く抑えられる場所が栽培に適した環境です。日本では明治に入り東北や北海道など米の生産に適さない土地の新たな産品奨励として苗木の配布が始まり、青森県では気候が適したことで特に盛んにおこなわれ「リンゴ王国」の基礎ができたようです。今回は日本人にも馴染みの深いリンゴの栽培における剪定作業について詳しくお伝えしていきたいと思います。

リンゴの剪定

リンゴの剪定技術は他の果樹に比べて大きく進歩しているといわれています。剪定について独自に研究を進める農家さんが多く、その剪定ノウハウが現役の農家さんに引き継がれており、地域や一派によっていろいろな剪定方法があるようです。リンゴ農家さんは若いうちから剪定技術を磨き、自分自身の剪定スタイルを築き上げていきます。そこまで剪定にこだわるのは、リンゴの剪定技術の良し悪しは、収穫するリンゴの品質に大きく影響するためです。冬の剪定の仕上がりが良ければ品質の良いリンゴが収穫でき、仕上がりが悪いと品質も悪くなってしまうという大変重要な位置づけです。

リンゴを剪定する理由

リンゴの木は自然にまかせて栽培すると8ⅿくらいの高さに育ちます。自然界では他の樹木との日照権の争いに勝たないと十分な光合成が得られない為、リンゴに限らず高く広くなる傾向があり、この状態で果実が付くと実が小さく糖度もない商品価値が低い果実にしかなりません。商品価値を高めたり作業性を良くする理由で、花芽の管理・摘果作業・剪定作業を適宜行い、収益性を高めることが重要です。ちなみに果樹の多くは台木で増やされることが多く、1975年頃からリンゴわい性台木を使い小さく育てる技術により、生産性の向上が図られるようになりました。

リンゴの剪定時期

リンゴに適している剪定時期は夏(7月~8月)と冬(1月~2月)です。夏剪定と冬剪定の二本立てになります。

夏剪定

成長時期を迎えると枝葉が生い茂ってくるので、樹形を整えるための剪定作業を行います。太陽からの光で効率よく光合成を行うためと、風通しを良くして病害虫を防ぐために不必要な枝や枯れた枝を剪定していきます。徒長した枝を短く剪定し、栄養を生長点に行き過ぎないようにする切り戻しの作業も大切です。この作業を行うことにより栄養を果実に使うことができ品質の良いリンゴの収穫につながります。

冬剪定

葉が落ちて活動が低下している落葉後から発芽までの冬(1月~2月)に行う剪定です。この時期はリンゴが実をつけるために必要な花芽を切ってしまうリスクがあります。剪定する際は明らかに不要だと思われる枝を剪定するにとどめ、慎重に作業するようにしてください。落葉樹であるリンゴは冬場に葉を落としますので、冬季の剪定は不要な枝の見極めがしやすいというメリットがあります。理想とする樹形をイメージしながら不要な枝や側枝を中心に剪定しましょう。

摘果剪定

摘果も剪定のひとつです。開花後ひと月を目安として、標準的には6月~7月にかけて行います。摘果を怠ると栄養が分散してしまい幼果が大きくなりません。花芽から咲く4個~6個の花のうち真ん中にある大きな中心果だけを残して、残りは摘んで間引きます。

リンゴの剪定手法

透かし剪定

風通りや日当たりを良くするために、枝が密集した部分や、伸びすぎた徒長枝など不要な枝を除去する剪定です。必要な栄養を必要な箇所に行き渡らせることができるため、生育環境が改善されたり病害虫に強くなったりします。成長の悪いひょろっとした枝や、内側や下向きに生えている枝などを選んで除去していきましょう。密度が均一になるように全体のバランスを見ながら剪定すると良いでしょう。

切り戻し剪定

樹形をコンパクトにしたい場合や、サイズを適度に保つために行う剪定です。花や果実に栄養を集中させる効果があります。新芽を残すようにして、新芽の上の部分で切り戻すと花が付きやすくなります。切らない場合と比べて新梢の樹勢が強くなるといわれています。主枝の先端を切り戻すと横に伸びる枝が成長します。これにより果実が横方向に成りやすい樹形が形作られて、花芽や果実は農作業がしやすい位置に発生するようになります。

リンゴ剪定に必要な道具

剪定鋸

25cm~30cm程度のものが使いやすいサイズです。刃の目の粗さによって使い分けをします。刃が悪くなったときに交換できるタイプのものや、折り畳み式のものなど、色々な種類があります。刃の種類によって使い分けることもできます。バラ目鋸は、刃が細目で直径1cm~3cmの枝を切断する作業に適しています。窓鋸は刃が粗目でおがくずが目につまりにくい構造で直径5cm以上の太い枝を切る作業に適しています。

剪定鋏

直径1cmまでの小枝を切るときに使用します。手になじむものを選ぶと、枝を切断するときに抵抗力が弱くなり、切断時の衝撃による手や腕の疲労が少なくなります。高い部分用に高枝切り鋏があると便利です。

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癒合剤

リンゴのような果物が成る果樹は病気にかかりやすいといわれていますので、切断面から病原菌が侵入しないように癒合剤を塗布します。切り口の癒合組織を活性化させて、菌の侵入を防止します。

リンゴ剪定にオススメの剪定鋏

リンゴの剪定作業にオススメしたいのがドクターカットの剪定鋏です。Made In Japanのドクターカットは、繰り返される剪定時の手指への衝撃を軽減する剪定鋏です。従来の剪定鋏にくらべて75%も負担を軽減し、農作業者を痛みや疲れから守ります。人間工学に基づいて考案されたグリップの形状は、握りやすくそして手にやさしいデザインになっています。

剪定技術を磨いて品質の良いリンゴを収穫しましょう

リンゴの栽培方法の中で重要視されている剪定方法についてお伝えしてきました。剪定は、日光をまんべんなく樹全体へ届けてリンゴの樹を効率的に光合成させたり、風通りを良くして病害虫から守ったり、また農作業者が作業しやすいような樹形に整えるために行います。不必要な枝を切り落として枝の配置を整えて理想の樹形に仕上げるという高度な技術ですが、今回のコラムを剪定技術の向上にお役立ていただければ幸いです。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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