コラム
農業法人化のメリット・デメリットとは? 設立に必要な手続きまとめ
公開日2021.01.15
更新日2021.04.10

農業法人化のメリット・デメリットとは? 設立に必要な手続きまとめ

今日、農業では新規就農者および従事者の減少、後継者不足と様々な問題が噴出してきています。個人経営や集落営農が主流である農業ですが、現在では経営を基盤強化し農業を発展させていくために農業法人(法人経営)への移行するケースが増えているようです。法人化することは事業の拡大、継承というメリットもありますが当然デメリットもあります。今回は農業法人化のメリット・デメリットと、設立に必要な手続きについてご紹介したいと思います。

農業法人の基礎知識

農業法人とは

農業法人とは稲作、施設園芸、畜産などの農業を営む法人の総称を指し会社法人農事組合法人に分類されます。

会社法人とは会社法により設立された営利を目的とする社団法人を指し株式会社の他、合名会社、合資会社、合同会社の4種類が認められています。

農事組合法人とは農業生産の協業(多くの労働者や企業が、分担し合って組織的に働く)により共同利益の増進を図る法人のことです。経営上、資金繰りが厳しい場合に機械施設の購入や共同施設の利用、また共同で農作業を行いマンパワー不足を補うというメリットがあります。

農業法人のうち、農業経営を行うために農地を取得できる法人農地所有適格法人といいます。農地所有適格法人になるためには農地法第二条の規定により①法人形態要件②事業要件③議決権要件④役員要件の4つの要件を満たさなければなりません。法人が農業を営むにあたり農地取得しようとする場合には農地所有適格法人である必要があります。その審査は農業委員会が行っています。

農地所有適格法人になるための要件
①法人形態要件 株式会社(公開会社でないもの)、農事組合法人、持分会社
②事業要件 主たる事業が農業(自ら生産した農産物の加工・販売等の関連事業を含む)
③議決権要件 農業関係者が総議決権の過半を占めること
④役員要件 役員の過半が農業に常時従事する構成員であること
役員又は重要な使用人が1人以上農作業に従事すること

農地を所有することができる農地所有適格法人は年々増加しています。増加している理由には就農人口の減少や収入面などの問題から、個人や集落で農業を営むのが難しくなっているため法人化し制度面や税金面で優遇を受けようという背景があるようです。農地所有適格法人には事業税が非課税になるなどの優遇措置が設けられています。

平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 平成31年
農地所有適格法人 15,106 16,207 17,140 18,236 19,213

参考:農林水産省認定農業者等に関する統計

農業法人化のメリット・デメリット

法人化のメリット

  1. 経営管理しやすくなる
    法人化していない場合、気を付けていても経営と家計のお金の管理が混在しやすくなります。日本の農家は家族経営や集落営農が多く、労働力や資金繰りを混同しがちで、資金収支や人員管理などが丼勘定になり、結果として経営状態を正確に把握することが難しくなります。法人化すると財務諸表の作成など会計処理を行うことにより、お金の流れが明確になり見通しがたつことで経営の判断をスムーズに行うことができるようになります。
  2. 対外的な信用度が増す
    法令制度上認められた法人となることで、対外的な信用度が向上し銀行・金融機関などから融資を受ける際に審査が通りやすくなったり融資限度額が大きくなったりします。また製品を購入する際も仕入先から掛売で購入しやすくなるといったメリットもあります。試算表や決算報告書などで、取引先が経営内容を把握しやすくなり信頼性が高くなります。農業法人が優先的に受けられる給付金もあり、補助金や助成金のなど行政支援策が適用されやすくなります。
  3. 人材確保しやすくなる
    法人は社会保険(健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険など)への加入が義務付けられます。保険料の事業主負担は増えますが従業員にとっては安心して働ける環境になります。福利厚生面が整えば新規就農者や優秀な人材を確保しやすくなります。
  4. 従業員満足度が向上する
    就業規則を整備し、労働時間や賃金に関することなどを明確化すると、労使の関係を円滑になり従業員が安心して仕事に取り組める環境を整えることができます。人事制度や労務制度が充実することで、従業員満足度が向上し離職率も低くなることが期待できます。
  5. 税制面の優遇を利用できる
    法人化のほう税制面で負担が軽くなる可能性があります。役員報酬や給料や退職金を経費扱いにしたり、欠損金を長い間繰り越すことができるなど、税制上の法令に従い税金を抑え節税対策を行うことができます。
  6. 事業を継承しやすくなる
    法人化しておけば、代表者(経営者)が変わっても安定した経営を継続でき、有能な役員や社員に事業を継承しやすくなります。相続問題がなくなり法人として事業継承を円滑化することで銀行や取引先への対外信用力も継続しやすくなります。
  7. 農業経営を発展しやすくなる
    1~6が実現することにより経営の計画性・信頼性・継承性が向上し、対外的にも社内的にも評価が高まることで、事業規模の拡大や多角化といったチャレンジを行いやすい環境が生まれます。環境の変化により経営者自身の意識が高くなり、事業計画の作成や人材育成などの経営管理能力が向上するため農業経営が発展しやすくなります。

法人化のデメリット

  1. 資本金や設立費用などのお金がかかる
    法令上では1円の資本金でも会社の設立は可能ですが、資本金は銀行などの金融機関が融資の際に審査する項目です。資本金が少ないと安定性や継続性がないと判断され、融資を断られる可能性が高くなりますので、ある程度の資金が必要になります。また会社の設立手続きとして登録免許税や認証手数料などの費用が発生します。
  2. ランニングコストが増える
    前述の通り社会保険への加入が義務付けられます。健康保険、厚生年金の半分は法人側が負担することになり、従業員を雇った分だけ経費が増加しますので経営を成り立たせるためには十分な利益を確保することが必要です。売上が少ないと倒産する可能性があります。また従業員の報酬は勤続年数に比例して上げていくためには前年の売上よりも多い数字を稼がなければなりません。
  3. 事務作業が増える
    帳簿や試算表を作成するための経理処理や納品書・受領書・請求書の保管などデスクワークが発生します。源泉所得税などの従業員の税金をまとめて会社で納税する代理納税や、決算月には決算報告書の作成や法人税の納税といった手間のかかる作業も行わなければなりません。
  4. 社会的責任を負う
    法人は社会的な責任を負うことになります。従業員の生活を保障する義務や、金融機関、仕入先、販売先といった様々な取引先に対する責任が生じることになります。会社法により取締役会の設置や、財務状況を開示する決算公告などの法令順守も求められます。
  5. 廃業・解散する場合は手続きが必要になる
    資産の売却、債権回収、債務の弁済など、すべてを清算する必要があります。手続きの内容が煩雑で専門家のフォローアップを受けて進めなければなりません。

農業法人を設立するために必要な手続き

それでは農業法人を設立するために必要な手続きをご説明いたします。

定款の作成・認証

会社設立のためには法人についての基本的な規約や規則を示す定款の作成が必要です。記載する内容は会社法によって基準が設けられていますので、司法書士、行政書士、社労士、税理士などと相談しながら進めるのが良いでしょう。会社設立の際に作成した定款は原始定款と言われ公証人の認証を受けるまでは法的な効力がありません。会社所在地の公証役場にて認証手続きを行い、認証されて初めて効力を発揮します。 認証時には定款の発起人全員が公証役場に出向かう必要があります。発起人が複数名の場合は発起人の一人に代理になってもらう必要がありますので委任状を用意しましょう。 (合名会社、合資会社、合同会社については定款の認証手続きは不要です)

設立登記

次に設立する会社の本店所在地を管轄する法務局にて登記の手続きを行います。登記とは法律に定められた事項を世間に公表するために、法務局に備えられている登記簿に権利関係や会社の重要事項を記載することを言います。定款、登録免許税や出資金の払込を証明する書類を提出します。定款は公証役場で認証を受けたものでないと受理してもらえませんので注意しましょう。窓口での申請以外に郵送申請、オンライン申請も可能です。この手続きが完了すれば会社が正式に成立したことになります。

法人設立届出書の提出

設立した会社の概要を税務署に通知するために、設立登記を行った日から2カ月以内に納税地の税務署へ法人設立届出書を提出する必要があります。定款、登記事項証明書、株主名簿、設立趣意書、設立時貸借対照表を提出します。提出は郵送またはe-Taxを活用したインターネット上での提出も可能です。

社会保険の手続き

法人化すると法律によって社会保険の加入することが義務付けられます。社会保険とは健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の総称のことです。健康保険、厚生年金保険は会社所在地を所轄する年金事務所に申請書類を提出します。雇用保険はハローワーク(公共職業安定所)、労災保険は労働基準監督署に申請書類を提出します。それぞれ提出の期日が設定されていますので注意しましょう。

農業の健全化、拡大化を目指して

今後の日本の農業を考えた時に事業を健全化、拡大化していくためには法人化は有益な手段です。法人化せずに計画もなく融資を受けてしまうと、資金繰りに苦労することになります。農業に関わっている方々には、メリット・デメリットを踏まえて法人化を検討する材料としてもらえると幸いです。

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