コラム
農業法人化のメリット・デメリットとは? 設立に必要な手続きまとめ
2019.04.16

農業法人化のメリット・デメリットとは? 設立に必要な手続きまとめ

今日、農業では新規就農者および従事者の減少、後継者不足と様々な問題が噴出してきています。個人経営が主流であった農業ですが、現在では経営を基盤強化し農業を発展させていくために個人事業主(家族経営)から農業法人(法人経営)への移行するケースが増えているようです。法人化することは事業の拡大、継承というメリットもありますが当然デメリットもあります。今回は農業法人化のメリット、デメリットと設立に必要な手続きについてご紹介したいと思います。

農業法人の基礎知識

●農業法人とは

農業法人とは法人形態によって稲作、施設園芸、畜産などの農業を営む法人の総称を指し会社法人と農事組合法人に分類されます。会社法人とは会社法により設立された営利を目的とする社団法人を指し株式会社の他、合名会社、合資会社、合同会社の4種類が認められています。農事組合法人とは農業生産の協業(多くの労働者や企業が、分担し合って組織的に働く)により共同利益の増進を図る法人のことです。経営上、資金繰りが厳しい場合に機械施設の購入や共同施設の利用、また共同で農作業を行うというメリットがあります。
そのうち、農業経営を行うために農地を取得できる法人を農地所有適格法人(農業生産法人/平成28年4月1日施行の改正農地法により、「農業生産法人」は「農地所有適格法人」に呼称が変更)と言います。農地所有適格法人になるためには農地法第二条の規定により①法人形態要件②事業要件③議決権要件④役員要件の4つの要件を満たさなければなりません。法人が農業を営むにあたり農地を所有しようとする場合には農地所有適格法人である必要があります。

農業の法人形態 議決権 目的 農地所有適格法人
※(農業生産法人)
農事組合法人 1号法人 1人1議決権 協業を図ることにより
共同の利益を増進する
なれない
2号法人 農地法第二条の規定を
満たした場合になれる
会社法人 株式会社 1株1議決権 営利目的
合同会社 持株会社
合資会社
合名会社

※農地所有適格法人は毎事業年度の終了後3か月以内に農業委員会へ事業状況等の報告を義務づけられています

●農業法人化が進む背景

農地所有適格法人は平成23年から30年の間に、約1.5倍に増加しています。
・平成23年:12,052法人
・平成30年:18,236法人
参考:農林水産省認定農業者等に関する統計

増加している理由には就農人口の減少や収入面などの問題から、個人で農業を営むのが難しくなっているため法人化し制度面や税金面で優遇を受けようという背景があります。

 

農業法人化のメリット・デメリット

●法人化のメリット

対外的な信用度が増す
法人化すると、財務諸表の作成が必要になります。そのため複式簿記の経理処理を行うことにより今まで一緒になっていた家計と経営の分離が図られ対外的な信用度が向上し銀行、金融機関などから融資を受ける際に審査が通りやすくなります。また製品を購入する際も仕入先から掛売で購入しやすくなるといったメリットもあります。取引先が経営内容を把握しやすくなることで信頼性が高くなります。

社会保障制度を導入できる
個人事業主の場合とは異なり法人化することで制度上、社会保険(健康保険、厚生年金など)への加入が義務付けられます。保険料の事業主負担は増えますが従業員にとっては安心して働ける環境になります。このように福利厚生面が整えば新規就農者や優秀な人材を確保しやすくなり、離職率も低くなることが期待できます。

税制面での優遇がある
事業主の所得は法人を通して従業員へ給与として分配されるため、利益が減少するので税金を抑えることができます。また従業員が受け取った給与は給与所得控除を適用できます。 個人事業主の場合には所得税がかかり、法人には法人税がかかります。それぞれ税率が異なりますので利益の額によって法人化したほうが税制面で負担が軽くなる可能性もあります。個人事業主の青色申告の「所得税損失額 繰り越し期間」に比べ法人税の欠損金のほうが長い期間繰り越すことができます。上記のような税制上のメリットもあります。

事業を継承しやすくなる
個人事業主の場合、家族や親族が経営を引き継ぐ場合がほとんどですが、法人化しておけば有能な役員や社員に事業を継承しやすくなります。法人として事業継承を行うことで銀行や取引先への対外信用力も継続しやすくなります。

●法人化のデメリット

社会的責任が生まれる
個人とは異なり社会的な責任を負うことになります。法人として従業員の生活を保障する義務が生じます。また農作物の販売先、お金を借りている銀行、資材の仕入先といった様々な取引先に対する責任が生じることになります。

コストが増える
前述の通り社会保険(健康保険、厚生年金など)への加入が義務付けられます。健康保険、厚生年金の半分は法人側が負担することになり、従業員を雇った分だけ経費が増加しますので経営を成り立たせるためには十分な利益を確保することが必要です。売上が少ないと倒産する可能性があり、また従業員の報酬は勤続年数に比例して上げていくためには前年の売上よりも多い数字を稼がなければなりません。

 

農業法人を設立するために必要な手続き

それでは農業法人を設立するために必要な手続きをご説明いたします。

●定款の作成、認証

会社設立のためには法人についての基本的な規約や規則を示す定款の作成が必要です。記載する内容は会社法によって基準が設けられていますので、司法書士、行政書士、社労士、税理士などと相談しながら進めるのが良いでしょう。会社設立の際に作成した定款は原始定款と言われ公証人の認証を受けるまでは法的な効力がありません。会社所在地の公証役場にて認証手続きを行い、認証されて初めて効力を発揮します。 認証時には定款の発起人全員が公証役場に出向かう必要があります。発起人が複数名の場合は発起人の一人に代理になってもらう必要がありますので委任状を用意しましょう。 (合名会社、合資会社、合同会社については定款の認証手続きは不要です)

●設立登記

次に設立する会社の本店所在地を管轄する法務局にて登記の手続きを行います。登記とは法律に定められた事項を世間に公表するために、法務局に備えられている登記簿に権利関係や会社の重要事項を記載することを言います。定款、登録免許税や出資金の払込を証明する書類を提出します。定款は公証役場で認証を受けたものでないと受理してもらえませんので注意しましょう。窓口での申請以外に郵送申請、オンライン申請も可能です。この手続きが完了すれば会社が正式に成立したことになります。

●法人設立届出書の提出

設立した会社の概要を税務署に通知するために、設立登記を行った日から2カ月以内に納税地の税務署へ法人設立届出書を提出する必要があります。定款、登記事項証明書、株主名簿、設立趣意書、設立時貸借対照表を提出します。提出は郵送またはe-Taxを活用したインターネット上での提出も可能です。

●社会保険の手続き

法人化すると法律によって社会保険の加入することが義務付けられます。社会保険とは健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の総称のことです。健康保険、厚生年金保険は会社所在地を所轄する年金事務所に申請書類を提出します。雇用保険はハローワーク(公共職業安定所)、労災保険は労働基準監督署に申請書類を提出します。それぞれ提出の期日が設定されていますので注意しましょう。

 

農業の健全化、拡大化を目指して

今後の日本の農業を考えた時に事業を健全化、拡大化していくためには法人化は有益な手段です。農業に関わっている方々にはデメリットも踏まえて的確な判断をする材料としてもらえると幸いです。

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