このたんぱく質という栄養素はアミノ酸の組み合わせでできているのをご存知でしょうか。20種類あるといわれているアミノ酸(うまみ成分のグルタミン酸やアスパラギン酸は有名ですね)が数百~数千組み合わさることによりたんぱく質ができあがります。植物はアミノ酸を利用してたんぱく質を作り、体のもとになる細胞を増やし活性化させます。細胞はあたかも化学工場のような働きをし、カルシウムやリンなど根から得られたミネラルや光合成で作られた炭水化物などを原料とし、根・茎・葉・樹液などを作ります。
かなり簡略的になりますが植物がアミノ酸を使いたんぱく質そして器官を生成する過程をお伝えします。細胞の中にある核内にDNA(生命体の設計図=データベース)があり、これを読み取ったRNA(データベースを元にプログラムを実行する)の指示に従ってアミノ酸が並びます。並んだアミノ酸はアミノ酸同士が結合し長いひも状の物になります。連なったひも状のアミノ酸がさらに折りたたまると立体構造を持つたんぱく質となり、そのたんぱく質の集合体が器官になります(根・茎・葉・樹液など)。RNAとアミノ酸の関係を詳しく知りたい方は「コドン表」を検索してみてください。
※DNAやRNAがアミノ酸を使い器官を生成する過程
1.細胞の核内にDNA(生命体の設計図)がある
2.DNAから情報を読み取ったRNAがアミノ酸を並べる
3.集まり並んだアミノ酸同士が結合しひも状になる
4.ひも状になったアミノ酸が折りたたまりたんぱく質となる
5.たんぱく質の集合体が器官となる
このように植物は成長に必要なアミノ酸そしてたんぱく質を自分で作り出すことができます。根から吸収した窒素成分を使うことによりアミノ酸を合成することが可能です。植物と動物の決定的な違いは自らアミノ酸やたんぱく質のような成分を合成してつくることができるかできないかです。
進化の過程で高等生物ほど、多くの栄養素を外部から取り込むという決死の決断をしたようです。特に動物の世界で草しか食べないのに筋肉モリモリの代表が草食動物です、草食動物の牛は複数の胃を持っていることが知られています。これは胃の中で植物を発酵させる菌を飼っていて、第1の胃で培養し、第2、第3の胃で利用しやすいようにし、第4の胃で消化してアミノ酸に変えているといわれています。牛は無駄を省き共生関係を構築し分業制を選択したともいえます。植物は動物に比べ移動できない分、アミノ酸を作る能力が高いのかもしれません。
アミノ酸肥料の効果
土壌が健全であれば、様々な土中菌や微生物の活動で自然と多様なアミノ酸が土中に生産されることが期待できます。しかし同じ作物を作り続けたり無機質の肥料に頼りすぎたりすると、特定のアミノ酸が不足して微生物の生活環境の悪化によりアミノ酸の生産量が減ることが想定されます。こうなると、植物は不足したアミノ酸を自ら作る必要に迫られ無駄にエネルギーを使うことになり成長が阻害されると考えられています。成長を促進するために、土壌に不足しているアミノ酸肥料を施肥することで作物の生育状況や品質を向上させることができるというわけです。
●作物の生育が良くなる
アミノ酸肥料を施肥し土壌に必要なアミノ酸があると、植物が自らアミノ酸を作ることにエネルギーを使う必要がなくなり、たんぱく質の合成がよりスムーズになり作物の生育が良くなると考えられています。
●作物の品質が高まる
作物は、アミノ酸を合成するために必要な元素(炭素・酸素・窒素・リン・水素など)を細胞内に取り込み合成しています。細胞が正常に活動するためのエネルギーを発生しているミトコンドリア(メインエンジン)や光エネルギーを利用し光合成をおこなう葉緑体(サブエンジン)は、必要なアミノ酸を外部から取り込むことができると省エネにつながり、別の生産活動にエネルギーを使用することができます。アミノ酸生成で消費されなかったでんぷん質などが種子や果実に蓄積され大きく味が良い作物ができることが期待できます。特に光合成は糖度を上げるために大事だといわれていますので、外部からアミノ酸を吸収できると、葉緑体の活動は果実の糖度を向上させることに集中できます。また細胞の外壁が厚くなるため、病害虫にも強くなることが報告されています。
●土壌の微生物が活性化する
アミノ酸は土壌の微生物にとっても重要です。土壌微生物がアミノ酸をエサとして利用することができます。土壌微生物の活動が活性化されると団粒化が促進され、生物の多様化で特定の菌の増殖を抑え、結果として病原菌を抑制してくれることが期待できます。
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アミノ酸肥料の使い方
アミノ酸肥料は、有機質肥料に比べ早く結果を求めたいときに適していると思います。あたかも、スポーツマンが効率よく筋肉を作るためにプロテインに頼るのに近いのではないでしょうか。種類によっては即効性を求めるものや、ゆっくりと効果がでるもの、バランス重視のもの、といろいろあるようです。また酵素やカルシウム等のミネラルが含まれたアミノ酸肥料もありますので土壌に不足している栄養素を調べてから(土壌診断)、使用する製品を選ぶとよいかもしれません。
●元肥として使用
定植前に圃場をよく耕し肥料を混ぜ込み、作物が育ちやすい土壌づくりや栄養バランスの調整を目的とした肥料の与え方を元肥といいます。アミノ酸の持ち味は、即効性にあり発育初期の段階で吸収されることです。この特性をふまえ緩効性の有機肥料と組み合わせ、発育初期の段階で不足がちになると予測される成分を補う目的で併用すると良いといわれています。
●追肥として使用
栽培中、作物に生育状態に合わせ不足しがちな栄養素を追加供給することを追肥といいます。アミノ酸肥料を追肥として与えるときは、少ない量で回数を分けると良いといわれています。一度にたくさんの量を与えると逆に生育障害を起こし、株がしおれたり、枯れたりすることがあるので注意しましょう。少ない量を効率よく吸収させるため、根からではなく葉からあたえる、葉面散布を試すのもよいでしょう。
良質な天然アミノ酸肥料
オルガミン
オルガミンは天然アミノ酸入り複合肥料(液体肥料)です。作り方は魚をまるごと糖蜜と一緒に発酵させています。化学処理をせずに天然発酵によって分解された22種類のアミノ酸が含まれた液肥です。さらに植物が必要とする微量要素も加えられています。窒素・リン・カリがほとんど含まれていないため、作物の生育ステージを問わず安心して使用することができます。1,000倍に希釈し農薬と混合で葉面散布を行うことも可能です。天然のアミノ酸は植物への吸収が早く、速効性が高いと考えられています。低温・高温・霜・乾燥・日照不足・長雨・病害虫などの障害が発生した際の回復促進や、作物の抵抗力の増加の効果が見込めます。果樹(ぶどう・桃・リンゴ・さくらんぼなど)、野菜(トマト・イチゴ・キャベツ・レタス・ブロッコリーなど)といった様々な作物で活用されています。
海藻のエキス
海藻のエキスには、植物の生育に貢献するとされている種々のアミノ酸が含まれており、マンガンや亜鉛など微量要素も含まれている葉面散布剤です。農薬と混用できるため農薬散布の際にご利用いただくと手間も省けて効果も得やすくなっています。海藻のエキスは有機JASには登録されていないものの、最近注目されているバイオスティミュラント資材として扱うことができます。
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効果的にアミノ酸肥料を使い作物の品質を向上させましょう
作物はアミノ酸を使ってたんぱく質を作り、成長に役立てていますので、アミノ酸肥料を施肥することにより、作物の成長にとっていろいろな良い効果が生まれると考えられています。安心安全な天然のアミノ酸肥料を上手に使い、作物の収量や品質向上にお役立てください。
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コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。