コガネムシの生態と作物への被害
コガネムシ類が所属するコガネムシ科は、全世界で約3万種、日本にも約360種が分布しています。体長は数センチ以内の種類が多く、春~秋にかけて成虫が発生し冬に幼虫で越冬する生活サイクルです。
以下ではコガネムシの生態と特徴の解説をします。
●コガネムシの生態
甲虫類の一種で、光沢感のある体が特徴です。体色はさまざまで緑色・黒色・茶色など色彩変異がとても多いです。漢字では「黄金虫」と書きます。成虫は春の終わりから夏にかけて活動が活発化します。幼虫は一年を通して土中に生息しています。家庭菜園のプランターや花壇にも発生するので植え替えの際に見たことがある方も多いのではないでしょうか。幼虫・成虫ともに農作物に食害を起こすやっかいな害虫です。代表的なコガネムシはドウガネブイブイ・アオドウガネ・ヒメコガネ・マメコガネなどで、種類によって好む植物が異なります。
●コガネムシに似た昆虫との見分け方
コガネムシに似た昆虫には、カナブンやハナムグリなどがいます。それぞれそっくりな見た目ですが、頭部と羽の付け根の形状で種類を見分けることができます。なおカナブンは広葉樹の樹液を、ハナムグリは花の蜜や花粉を餌としているので、植物の葉や根などを食害しません。
≪見分け方(羽の付け根)≫
コガネムシ:楕円形
カナブン:二等辺三角形
ハナムグリ:二等辺三角形で羽に白い模様がある
●コガネムシによる被害の特徴
・幼虫の被害
主に植物の根を食害します。食害されると植物は栄養の供給ができなくなり、植物が元気をなくして最悪の場合は枯死してしまいます。鉢植えの場合、気づいた時には植物自身で支えることができずグラついて土からスポッと引き抜けるほどダメージを受けていることもあります。コガネムシは繁殖力が強いため大量発生すると庭木や樹木まで枯らすことがあるので注意が必要です。またサツマイモなどの根菜類は可食部を食害されたり、芝生の場合は芝の根を食い荒らすことで芝が剥がれてしまうこともあります。
・成虫の被害
主に植物の葉を網目状に食害します。家庭菜園やガーデニングなど植わっている植物の数が少ない場合、コガネムシの大量発生によって葉を食い荒らし葉脈だけ残して丸坊主にされてしまうこともあります。葉がなくなると光合成ができなくなるので植物は最悪の場合枯死してしまいます。無事な葉があったとしても、もし葉に糞が付いているとそれがフェロモンを発し、別のコガネムシを誘引してしまいます。
・作物別の被害①|ブドウ
マメコガネ・ヒメコガネ・ドウガネブイブイ・アオドウガネなどによる被害があります。6~8月頃に発生し、成虫が葉を食害します。堆肥置き場が近くにある場合はコガネムシの好む繁殖場所になっている可能性が高いのでご注意ください。
・作物別の被害②|バラ
マメコガネなどの被害があります。成虫は葉や花弁を食害します。花弁は食害されると食害箇所が茶色くなったり、食い散らかしてボロボロになったりするので観賞価値が低下してしまいます。また幼虫は地中で根を齧ります。重度の場合は枯死してしまうこともあるので、早期に発見し対処することが大切です。元気だったバラの樹が突然調子を落とした場合はコガネムシの被害を疑いましょう。
・作物別の被害③|ダイズ
マメコガネ・ヒメコガネ・ドウガネブイブイなどによる被害があります。成虫は葉を食害するため、生育が悪くなり実の収穫量が減ってしまいます。ダイズではハスモンヨトウ害に次いでコガネムシ害が大きいので非常にやっかいな害虫といえます。
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コガネムシの防除(駆除・予防方法)
●コガネムシの駆除方法
・手で捕殺する
成虫が葉に付いていれば、手などで取って駆除しましょう。足に小さなトゲがある場合があるので軍手や手袋を使用することをおすすめします。葉についた糞がフェロモンとなり他のコガネムシを誘引するので糞は取り除きます。また土を耕す際に幼虫がいれば退治しましょう。
・農薬を使用する
コガネムシの幼虫や成虫に効果のある殺虫剤を使用しましょう。例えばダイアジノンが効果的です。大量発生している場合は、薬剤によって一斉駆除するのが一番有効です。成虫の活動が活発化している時期に散布すると産卵を防ぐ効果もあります。また毎年発生している場合は作付前にクロルピクリンなどで土壌消毒しておくことで予防効果を発揮でき、おすすめです。
・フェロモントラップを仕掛ける
主に予察用(モニタリング用)での利用が目的です。性フェロモンや食物由来フェロモン(コガネムシの食べる葉の成分が含まれた誘引剤)があります。トラップで捕獲したコガネムシの種類を判断し、適切な防除方法で対策すると成虫の駆除にとても効果的です。使い方も難しいものではなく、農薬を頻繁に散布できない場合はフェロモントラップに頼っても良いかもしれません。
●コガネムシの発生を予防する方法
・コンパニオンプランツを植える
コンパニオンプランツとは、害虫が嫌う植物を栽培植物の周辺で育てることです。コガネムシが嫌う植物にはスイセンやニンニク、マリーゴールドなど育て方も簡単な草花が多いようです。効果のほどは10の被害があったものが8前後に減る程度ですのであまり期待はできないようです。
・防虫ネットをかける
物理的に侵入を防ぐ方法です。作物に直接を防虫ネットをかける方法とハウスの場合はハウス側面に防虫ネットを張ることでコガネムシの成虫が葉に飛来するのを防ぎます。
・地表にマルチシートや防草シートを敷く
市販のマルチシートで地面を覆ったり、プラスチック製の防草シートを表土に敷くことでコガネムシの成虫が土の中に潜れなくなり産卵できない環境にします。これらを使用する場合は同時に雑草の生育を阻害できるので除草剤散布の手間も省力化できます。また、土壌由来の病害の拡散(泥はね)にも対策できるので、殺菌剤を減らした栽培管理ができ手入れも省力化できます。
・木酢液を散布する
木酢液は木炭を作るときに発生する煙や水蒸気を冷やして液体にしたものです。コガネムシ以外でもアブラムシやセンチュウといった害虫の忌避効果を期待できます。原液はニオイが強い場合があるので注意してください。水で希釈してスプレー散布します。木酢液はホームセンターなどで安価に購入できる商品がありますので、お試しで使用してみるのもいいかもしれません。
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コガネムシの駆除に役立つ製品
そこでおすすめしたいのがコガネムシ類発生予察(モニタリング)用資材ニューウインズパックです。畑・果樹園・園芸などに設置することで特殊なルアーがコガネムシ類を誘引し捕獲します。ルアーには性フェロモンまたは植物誘因物質が練り込まれており、設置場所から50~100mの距離のコガネムシ類を誘因します。発生数・発生範囲・発生源といった駆除の指標となる情報が得られます。無農薬なので安心安全です。
設置はとっても簡単です。ルアーを装着し地表より1m前後またはできるだけ地表近くに設置するだけです。ルアーの交換周期は2~3カ月です。
※使用するルアーや設置場所は、コガネムシの種類によって変わりますのでご注意ください。
・捕獲できるコガネムシの種類
マメコガネ・ヒメコガネ・ドウガネブイブイ・セマダラコガネ・ヒラタアオコガネ・チビサクラコガネ・アシナガコガネ・オオサカスジコガネ・アオドウガネ・ナガチャコガネ・スジコガネ・ツヤコガネ・シロテンハナムグリ
コガネムシ被害の対策をして作物の品質・収量を守る
コガネムシは見た目はかわいらしい昆虫ですが、大量発生すると作物に大きな被害を与えてしまいます。作物の状態を定期的に確認し、初期の頃から抑えることが有効です。大切な作物を守るために今回のコラムのポイントをしっかりおさえて対策をしていきましょう。
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コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。