コラム
ハマキムシとは?発生による植物への影響と駆除・予防方法
公開日2020.05.21
更新日2023.08.04

ハマキムシとは?発生による植物への影響と駆除、予防の方法

育てている作物の葉が巻いている状態になっていることはないでしょうか。これはハマキムシ(葉巻虫)が加害したために発生している可能性が高く注意が必要です。蜘蛛が持っているような糸で葉っぱを丸めその中で生息しています。野菜や果樹、花などに加害し、葉の中に隠れているため薬剤が効きにくいという厄介な害虫です。今回はハマキムシの生態や駆除方法についてお伝えしていきたいと思います。

ハマキムシとは

ハマキムシとはハマキガ科に属する蛾の幼虫の総称で、糸をつかって葉を丸めたり、2枚の葉っぱをつづってくっつけたりして中に隠れています。新芽や新葉を好み被害を受けた葉っぱが丸まることからハマキムシという名前が付けられたといわれています。数多くの種類(500種類以上といわれることもあります)が生存していますが、被害を受けた作物の症状はとても似ています。

●ハマキムシの生態

ハマキムシは葉を丸め、その中に棲みつく習性があります。産卵期になると成虫は葉に大量の卵を産み付けます。風通しがあまりよくない葉に数十個から数百個の卵をうろこ状に産み付け、透明な薄い膜でおおわれた卵は2~3週間ほどで孵化し活動を始めます。ハマキムシの幼虫はイモムシで、集団行動はせずに分散し餌となる葉を住処とし食害し始めます。真冬の時期以外は活動する厄介な害虫で4月~11月ごろまで出現し成長サイクルは年に4~5回程度繰り返します。特に夏になると活動が活発化し、被害が大きくなりやすく、高温で乾燥するシーズンに多発しやすいといわれています。1ヶ月ほどでサナギになります。

●ハマキムシの食害による影響

葉が傷つけられ丸まってしまうので葉っぱによる光合成ができなくなり、生育が遅くなります。白っぽい透けた斑点が葉に現れたり、葉が巻かれたりするため見た目も悪くなります。丸まった葉の中に隠れ、葉だけでなくつぼみや芽、果実も食害するため、収穫量減少の原因になるおそれがあります。成熟幼虫になると果実の中にも入り込むハマキムシがいますので、落果の被害につながります。被害を受けた果実を見落として収穫した果実と一緒に貯蔵してしまうと、貯蔵中に混ざって腐敗の原因になることがあります。

●ハマキムシの種類と好む植物

ハマキムシには日本だけで500以上の種類が存在するとされています。代表的なハマキムシの種類はチャハマキ・チャノコカクモンハマキ・リンゴコカクモンハマキなどです。

主なハマキムシの種類 好む作物
チャハマキ サクラ・リンゴ・ウメ・ツツジ・ツバキなど
チャノコカクモンハマキ チャ・ブドウ・カキ・カンキツなど
リンゴコカクモンハマキ リンゴ・ナシ・クリなど

※このほかブルーベリーやオリーブやバラなどにも大量発生することがあります。

ハマキムシの駆除・予防方法

●駆除方法

卵が産み付けられた葉、もしくは住処となっている葉ごと摘み取ります(通称:テデトール)。できればその周辺の葉や枝も切り落としビニール袋などに密閉して廃棄しましょう。発生時は放置せずにすぐに対処してください。幼虫は巻かれた葉の中で越冬しますので、春に入り活動を開始する前にテデトールで駆除しましょう。殺虫剤を使用する方法を用いる場合は、浸透タイプの殺虫剤(浸透性薬剤)がおすすめです。薬剤は幼虫の発生初期が効果的です。散布タイプの殺虫剤は葉の中にいる幼虫に薬剤がかからず駆除できないこともあります。

JAS法に適合し農薬散布回数にはカウントされないウイルス製剤もあり、人や天敵昆虫に対しては無害と考えられており有機栽培でも使うことができます。感染した幼虫の体内で、ウイルスが増殖しサナギになる前に死亡します。次世代の感染源となるウイルスは死亡した幼虫から流れ出します。

●予防方法

成虫が葉に卵を産み付けないように防虫ネットを使用します。風通しの悪い部分を好む傾向があるので、風通しが悪い部分は選定して風通りを良くしておきましょう。葉を密生させないように工夫すると良いと思います。ハマキムシの成虫(ハマキガ)の大部分は夜行性で、光に誘われる特徴があるので、照明付近に集まり産卵場所になりやすいといわれています。夜間は消灯しておいたほうが良いでしょう。ハマキムシの天敵はクモやハチ、カマキリ、カエルなどです。無農薬で栽培をしている場合、このような天敵がハマキムシを駆除してくれるケースもあるようです。ハマキムシの被害はあっという間に広がりますので、水やりなどメンテナンスをあまり行わなくても維持しやすい作物の場合でもこまめに葉の状態をチェックする必要があります。

国と都道府県が協力し病害虫の蔓延を防ぐために農林水産省が「病害虫発生予報」を定期的に発表しています。農林水産省のホームページで確認できますので、今年はどのような病害虫が発生しやすいのかチェックして事前に備えるのも一つの手ですね。

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ハマキムシの成虫ハマキガの行動抑制に役立つ農業資材①

虫ブロッカー黄

虫ブロッカー黄は夜蛾の明反応の習性を利用して行動を抑制させることができるLED防虫灯です。黄色の光は果樹園を中心に導入が進められています。虫ブロッカー黄はLEDを採用しているため電気料金を抑えつつ、さらに、夜蛾を忌避するピーク波長を選択してLEDチップが搭載されているため従来光源よりも効果的に夜蛾を抑制できます。虫ブロッカー黄は本体と本体を専用中継コードで連結できるため少ないコンセント数で設置できます。また常設灯ではなく取り外しも容易なため点灯しない時期は取り外すことで盗難を防ぐことができます。

ハマキムシの成虫ハマキガの行動抑制に役立つ農業資材②

てるてる

本来は太陽の光を反射させることを想定して開発されましたが、近年のLEDによる害虫忌避技術が発展したことから活躍の幅が広がりました。「てるてる」は特殊繊維で織り込まれているため一方向の反射ではなく拡散反射を実現しましたが、さらに特殊繊維は白色をしているため地面に敷くと地温抑制効果も期待することができます。
てるてる」は害虫忌避、地温抑制効果、果実の色付効果が期待でき一者三役をこなします。施設栽培でも露地栽培でも使用できます。

ハマキムシの発生を抑えて健康な植物を育てましょう

ハマキムシは発生期間が長く、また一度発生し始めると被害がすぐに拡大してしまう上に対策に時間が取られてしまいます。農林水産省が発表する情報を事前に調べたり、防虫ネットや防虫ライトを用意したりするなど、前もって予防の準備をしておくことが大切ですね。いろいろな方法がありますので、今回のコラムを皆さんの圃場にあわせた予防と対策にお役立ていただければ幸いです。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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