コラム
サツマイモをコガネムシから守れ!
公開日2022.05.06
更新日2022.05.10

サツマイモをコガネムシから守れ!

コガネムシの見た目は、ずんぐりとして丸くかわいらしいのですが、サツマイモの根や根塊を加害する農業害虫として知られています。広範囲で継続的に発生し、幼虫は土の中で活動しているため、気が付かないうちに植物が加害されてしまうというやっかいな性質を持っています。根を食害することから「根切虫(ねきりむし)」と分類されることもあります。今回のコラムでは、食害を受けると商品として販売する部分に直接被害が生じ、製品価値が著しく低下するサツマイモに焦点を当てて、コガネムシの特徴や被害と防除方法についてお伝えしていきたいと思います。

コガネムシとは?特徴と生態について

甲虫目コガネムシ科のコガネムシ類に属する昆虫です。体色は黄金虫(コガネムシ)というように、金属が光っているような特徴があり、緑色系の種類が多いようですが青色系、赤色系の種類も存在しています。日本では450種類ほどが知られており、そのほとんどが夜行性だと考えられています。作物を加害する草食性の害虫以外にも、動物の糞や死骸を食べる糞虫(益虫)の種類も存在します。

羽化した成虫は餌となる植物体へ移動し、交尾をした後にサツマイモの圃場に戻り土の中に数粒ずつ産卵します。成虫の寿命はおよそ1年で、成虫では越冬できません。コガネムシの多くは夜行性で、成虫の糞が葉にくっついているとニオイに引き寄せられた別のコガネムシが飛来します。成虫は5~10月にかけて発生し、卵はおよそ10日程度で孵化して幼虫になります。幼虫は1~3年ほど土の中で活動し加害します。1齢幼虫は土の中の腐植物質や有機物を摂取し、2齢幼虫はサツマイモの根を食害します。そして2回脱皮して3齢幼虫となった後、3回目の脱皮を経て蛹になります。幼虫の体色は乳白、頭は茶褐色~黒色をしていて、体長は2~3cm ほどでU字型に体を丸めています。

コガネムシによるサツマイモの被害

サツマイモの被害の多くは、土壌中で生活をしている幼虫が原因です。成虫がサツマイモの葉を食害することは少なく(例外的にアカビロウドウガネは成虫も加害する)、幼虫は土の中でサツマイモの根や根塊を加害します。加害された部分は円形や線形の食害痕*が残ります。根塊は、収穫対象部分ですから、被害を受けたサツマイモは商品価値が著しく低下します。作物の生長の早い段階で加害を受けた場合、表面は回復するが食害痕が褐変し残ってしまいます。また加害された部分から黒斑病**などの病原菌やウイルスが侵入するリスクが高くなります。被害を受けたサツマイモは、根から栄養を吸収することができなくなり、葉の萎れや枯死を誘発し、枯死せずとも生長が悪くなり品質が低下します。土の中の幼虫の密度が高いと、圃場全体が壊滅する危険性もあります。スポットで枯れている株や、生長が思わしくない株を掘って根が少ない場合は食害を受けている可能性が高いため、付近を調べて幼虫を駆除する必要があります。早植栽培では越冬した幼虫が加害し、普通栽培では8月下旬以降に新しく生まれた幼虫が加害すると考えられています。

*円形や線形の食害痕:コガネムシの種類によって食害痕が異なることがあります。円形であればドウガネブイブイ、線形であればアカビロウドウガネであったりします。

**黒斑病:糸状菌(カビ)によって引き起こされ、黒褐色の病斑が生じて表面がくぼんだ円形となりカビが生じる病気です。

サツマイモを加害するコガネムシの種類

本章では、サツマイモに加害する可能性が高いとされているコガネムシの種類をご紹介いたします。コガネムシと一言でいっても種類がたくさんいることに驚かされます。コガネムシと似た昆虫にカナブンがいますが、カナブンの幼虫は土壌中にある堆肥などの有機物を分解し豊かな土壌生成に寄与していますので、一般的には益虫だと考えられています。カナブンの頭部は四角形で背中に大きな逆三角形がありますので、見分ける際のヒントにしてください。

アオドウガネ

本州西部・四国・九州・南西諸島などに生息しているとされていましたが、最近は生息範囲を北上させ、関東でも急速に勢力を伸ばしているようです。日本の在来種であるドウガネブイブイを駆逐しています。成虫の体長は17~22mm程度で鈍い光沢のある緑色をしています。

サクラコガネ

北海道~九州にかけて生息しています。成虫の体長は15~21mm程度で金属のような黄褐色や緑褐色です。

セマダラコガネ

北海道~沖縄にかけて生息しています。成虫の体長は8~14mm程度で薄い茶色や黒のまだら模様をしています。先端が3つに分かれているフォーク状の触覚がついています。1990年以降に発生量が増加し問題となっています。

ドウガネブイブイ

北海道~沖縄にかけて生息しています。成虫の体長は17~25mm程度で青銅色や緑銅色をしています。銅色をしたブンブンと飛ぶ虫ということでドウガネブイブイという名前がついたと考えられています。

マメコガネ

日本の在来種で北海道~九州にかけて生息しています。成虫の体長は9~13mm程度で胸部は金属系の緑色、前翅は黄褐色の体色をしています。アヤメの球根に紛れて日本から北アメリカにも進出し、ジャパニーズビートル(Japanese Beetle=日本のカブトムシ)と呼ばれています。昼行性のコガネムシです。

ヒメコガネ

北海道~九州および奄美地方で生息しています。成虫の体長は13~16mm程度で、金属のような緑色・茶色をしています。

<サツマイモを加害するコガネムシ(成虫)の特徴>

種類 成虫の体長 体色 分布
アオドウガネ 17~22mm 鈍い光沢のある緑色 関東~南西諸島
サクラコガネ 15~21mm 金属のような黄褐色・緑褐色 北海道~九州
セマダラコガネ  8~14mm 黒色・黒のまだら模様 北海道~沖縄
ドウガネブイブイ 17~25mm 青銅色・緑銅色 北海道~沖縄
ヒメコガネ 13~16mm 金属のような緑色・茶色 北海道~九州および奄美地方
マメコガネ  9~13mm 胸部は金属系の緑色、前翅は黄褐色 北海道~九州

コガネムシの被害を軽減する方法

窒素の過剰な施用を控える

窒素の過多はサツマイモに徒長を引き起こし病弱にします。葉・茎・根は長く伸びますが、薄くなったり細くなったりして貧弱になる傾向があり、コガネムシの被害を受けやすくなります。また窒素過多の根を食べた幼虫は羽化率が高くなるという見解もあるため、窒素の過剰な施用は控えた方が良いと考えられています。

有機質堆肥の施用に注意する

コガネムシの幼虫は有機物をエサにしているため、腐葉土など堆肥の多量な施用は、有機物の増加に伴いコガネムシの産卵数を増加させる可能性があります。植え付けの直前(3~4週間前)にすきこむことや、栽培直近の施用や十分に熟していない堆肥の利用を控えることが大切だとされています。

圃場周辺の雑草を除去する

コガネムシは広食性の害虫のため、圃場内や近隣の雑草を放置すると発生原因となる可能性がありますので、定期的に除去する必要があります。

地表面をマルチで覆う

成虫は卵を産み付けられないようになり、地中の幼虫は羽化しても地上に出ることが出来ないようになります。コガネムシ対策に加えて、地温の上昇による根塊の肥大や食味の向上も期待出来ます。

トラップを使いモニタリングを行う

雌の性フェロモンや、食べ物の匂い成分にひきよせられる習性を利用し、コガネムシを捕虫することで早期発見・早期対策に役立てることができます。フェロモントラップを使ったモニタリング資材として販売しておりオンラインなどで購入することができます。ペットボトルや牛乳パックにお酒・砂糖・米酢・きなこ・殺虫剤などを混ぜ合わせDIYで作ることも可能です。成虫が多くつかまる周辺は幼虫もいる可能性が高いです。

コンパニオンプランツ(赤シソ)を植え付ける

サツマイモの畝間に赤シソを植え付けます。コガネムシは赤い色の葉っぱを嫌う性質があり、赤シソを植え付けると、寄り付かなくなり産卵頻度を低下させる効果が期待できます。土中の肥料分を適当に吸収してくれますので、サツマイモの根は栄養分を吸収する能力が高いのですが、窒素過多により発生する「つるぼけ」が起こりにくくなります

土壌のpH値を管理する

サツマイモはpHに鈍感で、土壌が酸性に傾いていても品質や収量に影響はないとされていますが、コガネムシは酸性土壌に発生しやすいという研究報告もあるため、そのような観点からpH値の管理をしても良いのかもしれません。

コガネムシに使用する農薬

以前は有機塩素系農薬の施用により、コガネムシに対しての高い防除効果を発揮していましたが、これらの製造および使用の禁止や有機質肥料の使用増加といった背景から、被害が拡大するようになったとされています。現在では、有機塩素系にかわり有機リン系、カーバメート系の殺虫剤が良く使われているようです。

殺虫剤は使用基準を守れば、人や家畜・栽培している作物・周辺の動植物などに、毒性や残留性といった影響がないか試験が行われた上で認可されますが、化学の進化は日進月歩ですから当時影響がないと判断され現在使用されている殺虫剤でも、将来的には使用ができなくなる可能性があると筆者は考えます。

同じ系統=作用機序(薬剤が効果を発揮する作用)の殺虫剤を連続して使用し続けると、その作用に鈍感なコガネムシばかりが残り、効果が期待できなくなります。また、コガネムシは成虫が発生する期間が長かったり、幼虫は土中深く活動したりするため、薬剤が利きにくいと考えられています。

有機リン系殺虫剤

リン酸エステル化合物で、昆虫の神経細胞同士の伝達物質「アセチルコリンエステラーゼ」に影響し、伝達を阻害することで、神経伝達が行われなくなり中毒症状を引き起こします。ダイアジノンやオルトランなどがこれにあたります。

カーバメート系殺虫剤

有機リン系の殺虫剤と同様に「アセチルコリンエステラーゼ」の働きを阻害する殺虫剤です。有機リン系よりも阻害力が強いとされています。西アフリカ原産のカラバル豆に含まれる毒成分をヒントに作り出されたものです。

ネオニコチノイド系(クロロニコチニル系)

中枢神経に作用する有効成分「イミダクロプリド」が含まれている殺虫剤です。コガネムシの体内に容易に取りこまれ、神経伝達を遮断します。幼虫は足や口が動かせなくなるなどエサが食べられなくなり餓死します。残効性があり高い安定した殺虫力を示すとされ、致死濃度以下の低濃度でも運動能力を低下させます。近年、ミツバチの大量死や脊椎動物の免疫および生殖機能の低下といった慢性毒性が報告されるようになり、ヨーロッパでは使用規制され、日本でも使用について規制が厳しくなる可能性が示唆され始めています。

土壌燻蒸剤(クロルピクリン)

有効成分のクロルピクリンが土中でガス化して拡散します。土の上を厚さが0.03mm以上ある被覆資材や、難透過性のシートなどで被覆する必要があり、使用方法を間違えると大気中に大量の燻蒸剤が放出されてしまうので注意しましょう。住宅や畜舎などに隣接している圃場で実施する際は、近隣に被害が生じないように、周辺住民へ説明するなど周知が必要です。被覆をしても臭いが流れ苦情が出る可能性があるため、実施日の風の強さや風向きにも留意するようにしましょう。

生物農薬

昆虫の病原菌性センチュウ「スタイナーネマ・グラセライ」を有効成分とする生物農薬です。スタイナーネマ・グラセライは運動能力が高く、宿主のコガネムシを動き回って探すセンチュウです。コガネムシの幼虫の体へ侵入し死にいたらせます。人畜や土壌への悪影響はないとされています。活動の温度範囲が15~30℃と広いため、春~秋にかけての散布でも効果が期待できます。化学農薬のように薬剤抵抗性種が発生するリスクはありません。圃場で白色や緑色のカビが生えて死んでいる幼虫は、病原菌に感染している可能性が高く土に戻した方が感染は広がりやすいようです。

農薬の実際の使用に際しては、マスクやゴーグルなど防護用具を着用するなど、各薬剤の登録内容を確認の上ご利用ください。

コガネムシの防除におすすめの資材

コガネムシの発生予察におすすめの資材がニューウインズパックです。性フェロモンや植物誘引物質が含まれているルアーでコガネムシをおびき寄せ、効率的に捕虫することができます。13種類のコガネムシに適した誘引剤を用意しており、ルアーを取り換えることによって、それぞれのコガネムシの捕虫が可能です。およそ600g程度の軽量ボディで組み立ても簡単ですから、誰でも気軽に設置することができます。2~3ヵ月程度でルアーを交換しながら本体は繰り返し使えるため経済的です。圃場に毎回、同じ種類のコガネムシが発生するとは限りませんので、その際はルアーを交換することで対応が可能です。

コガネムシ対策を実施しサツマイモを守ろう

サツマイモを守るための、いろいろなコガネムシ対策をご紹介してきました。圃場の環境によって対策は異なってくるかとは思いますが、いずれにしてもコガネムシの発生状況や実施した対策を定期的に記録し、情報として残しておくことが早期発見・早期対応を実現し、より良いコガネムシ対策につながるのではないでしょうか。今回のコラムを皆様のコガネムシ対策にお役立ていただければ幸いです。

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