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海藻を畑で使用することによるメリットとは?詳しく解説
公開日2022.01.28
更新日2022.11.28

海藻を畑で使用することによるメリットとは?詳しく解説

海藻を肥料として畑に使用したことはありますでしょうか。海藻は古来では大切な肥料源として野菜をはじめとする農作物の生育に欠かせないものでした。近来は化学肥料の登場により使用されることが少なくはなってきましたが、化学肥料のみに頼らない農業のあり方が見直されつつあり再び注目され始めています。今回のコラムでは海藻を畑で使用することによるメリットを解説していきます。プロの農家さん、家庭菜園をされている方などにお役に立てれば幸いです。

海藻とは

現在、地球上には約2万5千種程度の海藻が生息していると推定され、それは全植物の5%程度ということになります。そのうち褐藻は240属1,500種、緑藻は125属6,500種、紅藻は400属4,000種という内訳です。

よく「海藻」と「海草」が混在して使われることがありますが、両者には明確な違いがあります。海草は英語だとsea glassといいますが、海藻は英語だとsea algae,seaweedあるいはmarine algaeといいます。海草は海産顕花植物のことで、根・茎・葉のという組織の分化がはっきりしており、一般に知られている種類ではアマモやスガモなどが該当します。一方で海藻は藻類のことで、根・茎・葉のという組織の分化がはっきりしていません。一般に知られている種類ではヒジキ、アオノリなどが該当します。

海藻肥料が利用されてきた歴史

海藻が畑で肥料として利用されたのはいつ頃からでしょうか。日本での古い記録だと1800年代に伊豆で採取されたテングサが肥料として使われてきたようです。また静岡県の生産者さんが夏にオオバモクなどのホンダワラ類を海から採取してサツマイモ畑に敷き、肥料として使用したという記録もあります。海藻は明治時代に化学肥料が登場する前の江戸時代までは大切な肥料として利用されてきました。

国外では世界各地の沿岸を中心に海藻が肥料として利用されてきたようです。特にヨーロッパ諸国では酸性の土壌を改良するという目的があったことから、12世紀頃から海藻が肥料として盛んに利用されてきました。フランス西海岸では肥料用の海藻が養殖されていたほどです。またアメリカやニュージーランドでも盛んに利用されてきました。

肥料としての海藻

肥料の原料となる海藻にはアスコフィルム、マクロキスティス、カジメ属、コンブ属、ホンダワラ属等があります。日本では主にアラメ、カジメ、ホンダワラ類が利用されていますが、アオサが利用されることもあります。現在、各メーカーが様々な海藻を原料とした肥料を製造販売していますが、原料となる海藻は海外産がほとんどです。海に囲まれた日本は海藻資源に恵まれていますが、日本産の海藻を大量に採取してしまうと海藻を食料としているアワビなどに影響したり、魚類の産卵場所や幼魚の隠れ場所を奪うことになってしまうためです。

海藻肥料の成分と効果

海藻肥料には農作物に必要なミネラルや、成長・成熟に欠かすことのできないオーキシン、サイトカイニン、ジベレリン等の植物ホルモンが含まれていることが分かっています。例えばノルウェー等の干満の差が大きい海岸の浅瀬に生息しているアスコフィラム・ノドサムという海藻には、アルギニン等の天然アミノ酸、アルギン酸、ラミラナン、マンニトール、フコイダン等の多糖類、各種ビタミン、オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン等の天然の植物ホルモンが含有されています。

海藻肥料の効果としてはトマト、ジャガイモ、バナナ、オレンジ、ミカン等による効果が報告されています。具体的にはトマトでは葉面散布をすることで根・茎・葉・果実の生体重が増加したり、ミカンへの葉面散布では幼木の生育促進や養分欠乏症の回復や新梢の発育促進や果実肥大・収穫増といった効果が報告されています。また農作物の霜に対する耐性向上・果実の貯蔵寿命延長・種子の発芽を改善・病害や食害への抵抗性向上などにも効果があるようです。

効果のメカニズムとしては、海藻肥料を葉面散布することで、補充された窒素化合物が光合成能力の高い葉緑体を作り出すため、光合成により多量の同化デンプン粒を葉緑体内に集積することで、それらの炭水化物を使い樹勢・生育・品質・収量の向上になっていると考えられています。

海藻肥料の効果に関してはぜひ以下のコラムもご一読いただければと思います。
海藻肥料の効果とは?-藻類の基礎知識及び海藻資材の農業利用と畜産利用に関して

海藻肥料の使い方

海藻肥料には粉末と液体の2種類がありますのでそれぞれの使い方をご説明いたします。前者はペレット状といった固形状に加工される場合が多いので土づくりの際の元肥として使われます。土壌改良材という位置付けで、有機微生物が増殖することで団粒構造化を促進。土壌環境の改善に貢献します。後者は液肥として、シーズン中の追肥として使用します。葉面散布や灌注することで葉や根にダイレクトに栄養素を届けます。比較的即効性があることが特徴です。

おすすめの海藻肥料粉末「海藻のエキス

そこでご紹介したいのが、セイコーエコロジアで取り扱っている海藻のエキスです。原料のノルウェーで採取された「アスコフィルム・ノドサム(学名:Ascophyllum nodosum)」は自然環境豊かな北大西洋海流域に繁茂する海藻で、河川から流入した豊富な栄養分を蓄積しているという特徴があります。加工し製造した粉末は水にサッと溶けるため、灌水・潅注・葉面散布の際に簡単に混用することができます。農薬と混用することができることも大きなメリットです。追加の散布作業が必要ありません。アルギン酸・ラミナリン・マンニット・フコイダンなどの多糖類、各種ミネラル・ビタミン・アミノ酸・微量要素などの60種類以上の栄養素や植物ホルモンの作用により、植物の成長促進・品質向上・連作障害の軽減・作物貯蔵期間の延長といった効果が期待できます。

海藻のエキスの解説動画はこちら▶【解説】海藻のエキスの特徴・メリット・使用する際の注意点を6分で徹底解説

導入により期待されるメリット

1.農作物に対するメリット

成長の改善 :発根・発芽・光合成・養分吸収の向上
品質の向上 :増糖・食味アップ・着色増進・果実肥大
微量要素過剰症・欠乏症の軽減:化学肥料常用等による微量要素バランスの乱れを改善
連作障害の軽減 :連作による土壌の養分欠乏に対する補給
作物貯蔵期間の伸長 :日持ちする栄養バランスのとれた健康な作物が育つ

2.農作業従事者に対してのメリット

作業の省力化:水に溶けやすく混合に時間がとられない、農薬と混用可能で追加の散布作業が必要ない
低コスト:液体状海藻肥料よりもコストが安く農業経営の経費を軽減する

海藻を活用して環境に優しい農業を

今回のコラムでは海藻を畑で使用することによるメリットを詳しく記載してきました。食の安全が取り上げられることも多くなっている現在、化学肥料のみに頼らない農法として、海藻に着目してみてはいかがでしょうか。また最近ではバイオスティミュラントとしても大きく注目されているのでぜひ以下のコラムもあわせてご覧いただけますと幸いです。

バイオスティミュラントに関するコラムはこちら
バイオスティミュラントとは?|農作物の生産を向上する資材

海藻を畑で使用することによるメリットとは?詳しく解説

コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Twitterを更新していますのでぜひご覧ください。

 

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