ビニールハウス栽培における湿度管理の重要性
作物の成長と湿度の関係性
湿度は植物の光合成や呼吸量に影響すると言われています。葉の表皮には気孔と呼ばれる非常に小さな穴が存在し、周辺環境の湿度により、穴の大きさを調整する作用があるためです。作物にとって適切な湿度になると、穴を開き葉から水分を蒸発されることで、根からの水・養分などの吸収を促進し、同時に光合成に必要な二酸化炭素を取り込みます。反対に乾燥状態になると、作物は水の蒸発を防ぐため気孔を閉じますが、この状態では養分や水を吸収できず、光合成も進まなくなることから作物にとっては成長しにくい状態であると言えます。気孔は植物が成長する上で大変に重要な役割を担っていますので、気孔の開閉をコントロールできると、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みを促し作物の生産量をあげる可能が高くなります。
ビニールハウス栽培で湿度管理が必要な理由
ビニールハウス内では、空気が循環しにくく、作物からの蒸発散や土壌表面からの水分蒸発があるため、室外に比べて湿度が偏りがちです。夏場の暑い日には高温乾燥状態が発生し、このような環境下では高温障害が起りやすくなりますので、温度計・サーモ計などを設置するといった適切な湿度管理が必要になります。ビニールハウス内の環境管理がうまくいかないと、作物が育ちにくくなり収量の削減につながります。
ビニールハウスの湿度管理の方法
遮光材を活用する
ビニールハウス内に入ってくる直射日光の量を調整することで湿度を調整します。遮光率は作物の成長に影響を与えるため、開閉できるタイプのものを選ぶのがポイントです。遮光することで温度も調節することができます。通気・遮光・遮熱といった色々な機能性を持つ遮光材が各メーカーより販売されていますので環境にあったものを利用しましょう。ただし、成長に必要な日光量を下回らないように注意してください。
換気扇を付ける
密閉状態のビニールハウスは、太陽の光の影響で高温多湿になることもあり、適度に換気して湿度を下げることが大切です。天窓換気装置・妻面換気装置・循環扇などを設置し空気を循環するのも効果的ですが、過度に行うと土壌・作物から水分を余計に奪ってしまう場合があり注意が必要です。外の気温との温度差を解消し、太陽の光を妨げる結露を防止し光合成を促進させるという効果も期待できます。
環境管理システムを導入する
環境管理システムを導入すれば、ハウス内に設置する各種制御装置を活用し、作物が成長するための最適なハウス環境を管理することができます。湿度センサーなどから現在の環境と過去の情報を計測し、湿度管理を行うことが可能です。クラウドサービスにより遠隔地からでもインターネット経由で状況を把握でき、換気装置・暖房器・給水装置などをコントロールすることができます。データを蓄積し生育状況の管理や環境改善に役立てることもできます。気候によって変化しやすいビニールハウスを環境制御システムのようなIoTを導入し、最適な状態に保つことにより高品質・効率的・安定的に植物を栽培します。
ビニールハウスの湿度管理に便利な設備
空動扇|ビニールハウスの換気扇
無動力全自動換気扇空動扇は、設定温度に応じてオートマチックに換気しますので、手動による窓の開閉作業から解放されます。急な温度変化にも自動でゆるやかに作動するため過度な湿潤や乾燥を防ぐことができます。
ビニールハウス内の温度に応じて、空動扇の温度調節器に内蔵された形状記憶スプリングが膨張または収縮するしくみにより、内部の換気弁が自動で開閉します。弁の開閉の程度により換気する空気量が決まり、弁が閉じた状態では換気は停止します。温度は0℃から40℃の範囲で設定が可能ですので、作物毎の栽培に適切な温度に設定してお使いいただけます。簡単な技術で動く空動扇は無電源で動作するのでエコなうえランニングコストゼロです。
ビニールハウスの換気には、天窓換気装置・妻面換気装置・循環扇などがありますが、高額なものが多く、電気配線を新たに引き込む場合はコストが余計にかかる可能性もあります。空動扇は無動力で既存のハウスにも簡単に設置ができ、故障も少なく定期的なメンテナンスもほとんど必要がありません。
換気を円滑に行い温度や湿度を適切に保つことで作物の樹勢が良くなります。手動換気のような時間がとられる作業時間を軽減し、設定温度に応じて自動で換気をしてくれます。天候の変化に対応が遅れ、作物を傷めてしまうことから防ぎます。ビニールハウスのサイド巻上部分を開ければ、新しい空気が入り天頂部から排出されるルートによりハウス全体を換気することができます。
最近の事例では、空動扇を設置したビニールハウスでネギの育苗を行ったところ、温度上昇を抑えながら適切な環境を整えたため、効率的に作業をすることができたとの声がありました。
実際に導入されたお客様の声はこちら:
・8℃下がった!?空動扇はハウス強度を落としません!|磯川さんのコーヒー農園
・ハウス内が涼しくなった!空動扇SOLARの効果を実感|苺絵
・夏場のハウス内温度が低下!湿度対策や耐久性向上にも効果を実感
適切な湿度管理で収量アップを目指しましょう
植物の気孔の開閉と湿度が深い関係にあるということを理解し、作物が光合成を行いやすい環境を整えることが収量アップにつながると言えます。ビニールハウスでの栽培には多くのメリットが存在しますが、気を付けなければいけない注意点もありますので、施設栽培のデメリットを抑え、利点を最大限に生かし収量をアップするために、ビニールハウスの湿度管理確実に行いましょう。
コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。