葉面散布の基礎知識
●葉面散布とは
作物の葉面に養分が含まれた溶液を散布し、吸収させる施肥の方法です。進化する前の植物は水中で表面全体を使い養分を吸収していました。そのため、植物体は根だけでなく葉の表面からも養分を吸収する性質が残っており、この性質を利用しています。海外では1920年頃から微量要素欠乏対策として使われるようになり、日本では1955年頃から施用されるようになったと言われています。
●葉面散布のメリット
葉に直接養分を液肥で施肥するため、栄養吸収に即効性があります。また、根や株元が弱っている状態でも葉から栄養補給を行うことが可能です。植物が必要としている栄養分を最適なタイミングで与えることができます。栄養周期にあったタイミングで養分の散布が可能なため作物の品質向上に期待ができます。
葉面散布の効果的なやり方
●葉面散布の方法
希釈した液体肥料を霧吹きや散布機械で直接葉にかけます。進化の過程で体全体から養分を吸収していたと推測されていますので、葉の表面だけでなく、裏面にも散布したほうが望ましいとの意見と、反対に葉を必要以上に濡らすことは灰色カビを誘発する原因になるため、樹勢を整えるのであれば表面だけで十分との意見もあり、生産者によって見解が異なるようです。
葉面散布する際には濃度に気を付ける必要があります。散布液が適正濃度でない場合や、強い日射や乾燥により日中に急速に乾燥する場合は、高濃度になりやすく葉焼けなどの障害が発生する可能性があります。一方、降雨により成分が流れてしまうこともあり、散布時の天候に気を付けて散布する必要があります。液肥の濃度は、規定より薄めたほうが安全と言われています。若い葉の方が吸収力があるため高濃度障害を受けやすいので注意してください。上から作物全体にかけると、土にこぼれた分は根から吸収されるため無駄がありません。
葉面散布を行う時間帯は、潅水と同様に植物の活動が活発になる朝が効果的と言われています。朝露が残っている場合は散布した養分が浸透しにくくなりますので、乾くまで待ってから散布しましょう。ただし、夏場は乾燥を防ぐために植物が気孔を閉じており、活動が弱くなりがちです。そのため朝散布すると葉面の液肥が吸収されず、気温上昇にともない水分が蒸発することで、濃度障害が発生する可能性が高くなります。夕方はハウス内が湿っているため、葉面散布すると乾かずに病気を助長する可能性がありますので注意が必要です。
ハウスの温度が30度を超えている場合、植物の葉が弱っている可能性が高く、また散布液が高濃度になるため、薬害が発生する危険性が高くなります。高温時には散布をしないように気を付けてください。
●葉面散布が必要な場面
土壌がアルカリ化しているとき
肥料は土壌が弱酸性だと土に溶け出すものが多いと言われており、土壌がアルカリ化していると、肥料が十分に溶けださず根が土から養分を吸い上げにくい状態になります。長期的には土壌を改善することが大切ですが、土壌改良には時間がかかりますので、短期的な対応としては葉面散布の施肥は効果的との意見があります。
肥料やけや過湿で根が弱っているとき
肥料やけや過湿で根が弱っているときは土中に栄養があっても根からの栄養補給ができません。葉面散布を行い、樹勢を維持させる必要があります。ただし、あくまでも一時的な措置になりますので、根を改善させない限り、長期的な樹勢の回復(草勢維持や収量確保)にはつながりませんので注意が必要です。
冬場の気温が低い時
冬場に気温が低い時は、低地温になり根の活動がにぶくなります。根からの肥料分の吸収が期待できないため、葉面散布は効果的と言われています。
曇天が続いているとき
曇天が続いていると、作物の活動が鈍くなり土壌の肥料成分を吸い上げていない場合があり、栄養を補うために葉面散布を行うことが良いと言われています。曇天に鈍る樹勢を回復させるために行うことがあるようです。
葉面散布におすすめな機器
葉裏への薬液付着率が向上|静電噴口
静電噴口は静電気の力で薬液を対象物に付着させる静電機能付噴霧口です。通常では付着しにくい葉裏への薬液付着率が向上するのでヒラズハナアザミウマといった害虫類に殺虫剤がかかりやすくなることが期待できます。また約30%の農薬使用量削減が期待できます。
手軽に葉面散布ができる|モーターフォグ
特殊なノズルで細かい粒子を噴霧することができ、葉面散布剤をまんべんなく作物の葉っぱに噴霧することができます。一般的な動力噴霧器に比べて、コンパクトで使いやすく継続的に行うと良いといわれている葉面散布の作業を短時間で気軽に行うことができます。
おすすめの葉面散布肥料
良質な天然アミノ酸肥料|オルガミン
オルガミンは天然アミノ酸葉面散布肥料(液体肥料)です。魚をまるごと糖蜜と一緒に発酵させて作っています。化学処理をせずに天然発酵によって分解された約18種類のアミノ酸が含まれた液肥です。さらに植物が必要とする微量要素も加えられています。窒素・リン・カリがほとんど含まれていないため、作物の生育ステージを問わず安心して使用することができます。1,000倍に希釈し農薬と混合で葉面散布剤として利用できます。天然のアミノ酸は植物への吸収が早く、速効性が高いと考えられています。低温・高温・霜・乾燥・日照不足・長雨・病害虫などの障害が発生した際の回復促進や、作物の抵抗力の増加の効果が見込めます。有機JAS資材登録に登録されていますので有機栽培でも使用することができます。果樹(ぶどう・桃・リンゴ・さくらんぼなど)、野菜(トマト・イチゴ・キャベツ・レタス・ブロッコリーなど)といった様々な作物で活用されています。
海藻から抽出した葉面散布材|海藻のエキス
ノルウェー産の高品質な海藻からエキスを抽出した粉末の栄養剤です。ミネラル・ビタミン・アミノ酸・微量要素など60種類以上の栄養素や植物ホルモンが含まれ、農作物の品質を向上させます。100%水溶性の粉末でサッと水に溶かして手軽に噴霧することができます。
生長を助ける葉面散布を上手く活用し収量アップを目指しましょう!
元肥・土づくりは大変重要な要素ですから、この基本的な要素をおろそかにしてしまうと、葉面散布のような追肥が効果的ではなくなってしまいます。基本をしっかりとおさえながら、樹勢が弱ってきた際の補助的な施肥方法として活用するようにしましょう。継続的な利用が作物の健康的な状態を維持し、品質を向上させます。尿素・窒素・リン酸・ホウ素などの成分が入った活力剤を野菜・果物・花など様々な作物にあわせて上手に利用し収量アップを目指しましょう。また、肥料取締法で規定されている肥料成分が記載された保証票が添付されたものか、きちんと確認し安心安全な資材を選ぶように心がけましょう。
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コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。
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