チャノキイロアザミウマの全般的な知識
チャノキイロアザミウマの特徴と生態
幼虫の体長は0.3~0.8mm程度で黄色や黄白色をしています。成虫の体長は0.7~0.9mm程度で黄色や淡褐色をしています。成虫は翅が黒味を帯びていて重なった部分が筋のように見えるという特徴があります。成虫は葉裏の組織内に1粒ずつ産卵します。卵→幼虫→蛹→成虫といったサイクルを繰り返し、秋期は約25日、夏期は約15日で1世代が終わります。施設栽培のおいては高温の影響で世代のサイクルはさらに短くなります。落ち葉の下や樹皮の隙間、土の中などで蛹や成虫の状態で越冬することができます。
病害虫としてのチャノキイロアザミウマ
バラ科・ブドウ科・ミカン科・マキ科・ツバキ科などの木本植物に寄生します。植物の新葉が展開し始めると葉裏を吸汁し加害します。名前の通り「チャ」の害虫として古くから知られています。摂食刺激を感知すると口針が露出して植物の表面に穴をあけて吸汁します。口針は短いため奥深くまで刺すことができず表面細胞のみを加害するため、被害の面積が広がりやすいといった傾向があります。
チャノキイロアザミウマによるぶどう園の被害
1960年代になり福岡県のぶどう園において被害が問題になり始めました。チャノキイロアザミウマは日本に古くから生息する果樹の害虫のため、消費者が品質を重視するようになった時代の流れにより急速に認知されるようになったのかもしれません。幼虫・成虫ともにぶどうの新梢・葉・穂軸・果粒などを加害します。新梢の発育が旺盛な時期に発生が多発する傾向があります。ぶどう品種による発生差はあまり見られないとされています。
新梢(ツル)
新梢の先端の葉や茎が加害されると、表面が黒色や茶褐色に変色し、被害が進行すると割れ目が生じます。また節間が短くなります。
葉
葉裏がコルク状となり奇形葉となるため、光合成が円滑に行えず果樹の生長が低下します。加害が激しい場合は葉が裏側に向かって湾曲します。最初は主に成虫による被害で、葉の葉脈付近に加害されることが多いようです。
穂軸
加害された場所は緑色から薄い褐色となりコルク化し、果実肥大や着色が阻害されたり、果粒が落ちやすくなったりします。
果房(果粒)
開花前の花穂を加害されると茶褐色となり開花が阻害され結実しなくなります。幼果は果粒の表面がザラザラになり褐色に変化し、肥大するにつれて灰褐色となります。加害された幼果の果粒は肥大しにくくなり、表面がコルク化し果汁が少なくなります。成熟果では被害は軽度ですが雲紋状の斑点が生じ、商品価値が低下します。特に緑色系の品種では斑点が目立ちやすく、より被害が大きくなるといえます。着色系品種における着色後の加害はブルームにも影響が及ぶため光沢を失った果粒となります。
ぶどう栽培におけるチャノキイロアザミウマの発生条件
空梅雨などで春から夏にかけて降水量が少なく、乾燥するシーズンに多発する傾向があります。一般に、年間の発生回数は5~6回程度で、乾燥や高温が重なる7月・8月が発生ピークになることが多いようです。1月~6月にかけて暖冬だった年に発生が増える傾向があり成虫や蛹が越冬しやすいことが影響しているのかもしれません。また新梢の発育が旺盛な品種では発生数が多くなると考えられています。
ぶどう栽培におけるチャノキイロアザミウマの防除策
薬剤(殺虫剤)の散布
新梢期から袋掛け前後にかけて系統の異なる薬剤(殺虫剤)をローテーションさせながら散布する方法が一般的です。新梢や葉裏に生息していることが多いため、新梢の先端や葉裏まで薬剤をしっかりとかける必要があります。葉の中に産み付けられた卵や土の中の蛹には薬剤が接触しにくいため、あまり効果が期待できません。散布から袋掛けまでの期間が空いてしまうと果実が被害を受けるリスクが高くなるため、散布後はできるだけ迅速に袋掛けを実施するほうが良いとされています。
薬剤散布の実施により、等級を決めるブルームが落ちたりノリが悪くなったりすることがあり、散布のタイミングはブルームとの関係性についても良く検討する必要があります。また、アザミウマ類は薬剤抵抗性が発達しやすいことから同一系統の薬剤の連用は避けたほうが良いと考えられています。系統の確認には薬剤の有効成分を調べて、RACコード(農薬の作用機構分類)を参照してください。殺虫剤の使用に関して、使用時期や散布回数が農薬取締法により決まっていますので、製品ラベルに記載されている使用上の注意や、地域の病害虫防除暦を確認し散布するようにしましょう。
薬剤(殺虫剤)が適切に作用しているかどうかを確認するには、薬剤散布を実施した3~7日後に枝を叩いてチャノキイロアザミウマを白い紙の上へ落とし、ルーペなどで生死を観察します。
赤色LEDを利用する
アザミウマ類は、葉っぱの緑色に反応してぶどうに集まってきます。赤色の光を照射することで緑色を認識しなくなり、葉への誘引を防止すると考えられています。ただし、すでにぶどうの樹に定着しているアザミウマ類には効果がありません。チャノキイロアザミウマは、薬剤(殺虫剤)に対する抵抗性を発達させやすいという特徴がありますが、赤色LED光を利用した防除方法はアザミウマ類の習性を利用しているため、継続利用しても抵抗性には関与しないという利点があります。
光反射シートを施設する
ぶどうの樹の列の両側に光反射シートを施設して防除する方法です。開花の1カ月ほど前に施設すると、第1世代の成虫飛来時期の防除効果が期待できます。この方法は広島県の「シャインマスカット」垣根栽培における結果です。他の緑色系品種についても適用できると考えられています。第2世代の成虫飛来時期には寄生が増え始めるため、このタイミングで薬剤防除を実施し、第3世代が飛来する前に袋掛けを行うと、シーズン中に3回薬剤散布する慣行の防除方法と同程度の効果が期待できるとされています。
チャノキイロアザミウマの防除におすすめの資材1|虫ブロッカ―赤
虫ブロッカ―赤は、チャノキイロアザミウマの密度を低下させる効果が期待できる赤色LED防虫灯です。アザミウマ類は植物の緑色に誘引されて集まってきますが、日中に赤色のLED光を照射させると緑色を認識しづらくなり誘引を防止すると考えられています。虫ブロッカ―赤でチャノキイロアザミウマの密度を低下させることができれば、薬剤(殺虫剤)の使用頻度を減らすことにつながります。また、同一系統の薬剤(殺虫剤)の連用による、薬剤抵抗性を発達させた個体の出現リスクを抑えることができます。
チャノキイロアザミウマの防除におすすめの資材2|てるてる
てるてるは、高度な反射性能と赤外線遮蔽効果を実現した乱反射型の光反射シートです。アザミウマ類は太陽の光に対して一定の角度を保ちながら移動するという性質があります。てるてるを設置することで太陽の光を乱反射させて、チャノキイロアザミウマの背光反応を攪乱させて移動を抑制する効果が期待できます。乱反射させる機能により、太陽光の照射角度に関わらず光を拡散することができ、ぶどうの着色を助けるといったメリットもあります。虫ブロッカ―赤と併用していただくと、より強力にチャノキイロアザミウマを防除することができるかもしれません。
複合的な防除策でぶどうをチャノキイロアザミウマから守りましょう
チャノキイロアザミウマは、一度発生すると急激に増殖し、かつ薬剤抵抗性を発達させやすいといった厄介な性質をもった重要害虫です。一つの防除策では効果が期待できませんから、複合的な対策を実施する必要があります。薬剤(殺虫剤)に頼りすぎてしまうと、農作業者の身体的な負担が増えたり、いざという時の手だてが無くなってしまったりします。今回のコラムでご紹介した殺虫剤以外の対策も同時に実施して、薬剤散布の回数をなるべく減らすという方法が理想的ではないでしょうか。
関連コラム:チャノキイロアザミウマとは?|被害を抑える方法を解説
参考資料:
・ブドウのチャノキイロアザミウマの薬剤感受性
(岡山県農林水産総合センター農業研究所)
・山梨県におけるブドウのチャノキイロアザミウマの発生とその対策
(山梨県果樹試験場)
・チャノキイロアザミウマの越冬と行動
(農林水産省農林水産技術会)
・チャノキイロアザミウマ越冬成虫の産卵時期
(日本応用動物昆虫学会)
・ブドウ‘シャインマスカット’におけるチャノキイロアザミウマの発生消長と光反射シートマルチを利用した減農薬防除の検討
(農研機構)
コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。
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・虫ブロッカー赤との相乗効果
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