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チャノキイロアザミウマとは?|被害を抑える方法を解説
公開日2023.01.11
更新日2024.10.04

チャノキイロアザミウマとは?|被害を抑える方法を解説

チャノキイロアザミウマは作物に寄生して吸汁し、生育不良や収穫物の品質を低下させるやっかいな病害虫として知られています。今回のコラムではチャノキイロアザミウマの基礎知識と被害を抑える方法に関して解説していきたいと思います。お困りごとを解決するためのヒントとなれば幸いです。

チャノキイロアザミウマとは?

チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis Hood)(以下「チャノキイロ」という)はアザミウマ目アザミウマ科に分類される農業害虫です。古くは1915年にチャへの被害が記録されており、“害虫”として一般に広く知られるようになったのは1960年代前後と言われています。

チャノキイロの体長はオスもメスも同様に1mm以下です。ミカンキイロアザミウマは1.3mmから1.7mm程度ですので、チャノキイロはアザミウマ類の中でも小さい部類に入ります。成虫も幼虫も体色は黄色です。黄色に誘引される性質があるため、黄色粘着シートを設置すると発生数や発生場所の把握に役立ちます。

チャノキイロアザミウマの発生

産卵

チャノキイロの雌は腹部の先端にある毛で産卵に好ましい場所を探しあてると、産卵弁という器官を垂直にかつ斜めに指し込み、産卵します。この作業を雌は一つの卵あたり15分から30分もかけるようです。雌一匹は生涯で50個程度の卵を25日間かけて(温度25度条件下)産卵していきます。卵は乳白色で、長さは0.2mm程度、幅は0.08mmから0.12mm程度です。

孵化

卵は成熟すると、体長0.3mm程度の幼虫が孵化します。その後、温度25℃条件下において2日程度で体長が0.5mm程度になり、二齢幼虫に脱皮します。

二齢幼虫

チャノキイロによる被害が最も多いのはこの二齢幼虫のステージと言われています。この時期は食べ物がある限りはあまり移動をせずにひたすら加害します。その後、温度25℃条件下において3日程度で体長は0.8mm程度になり、蛹に蛹化します。

チャノキイロの蛹は動く足があり、少しの距離なら移動することが可能です。蛹で生活する場所はカキの場合は樹皮の間、カンキツやチャの場合は葉や地表に落ちた枯れ葉等の陰という狭い場所を好みます。温度25℃条件下において2日から3日程度で羽化します。

羽化

成虫は羽化すると、翅が乾いて硬くなるまで待った後、ターゲットの植物に向けて飛び立ちます。

成虫

成虫の寿命は比較的長く、雌の場合、温度14.5℃条件下において50日以上も生きます。また冬場は成虫もしくは蛹で越冬し、活動を「休止」します。越冬場所は先述した蛹のステージと同様にチャの場合は葉や地表に落ちた枯れ葉等の下等の陰、ブドウやカキの場合は樹皮の間や地表面近くです。

チャノキイロアザミウマの被害と対策

チャ、カキ、ブドウ、カンキツ、マンゴー、イヌマキ、イチゴ等の広範囲の農作物へ寄生し被害を及ぼす害虫として知られ、今まで被害が確認されている植物は50科140種類にのぼると言われています。チャノキイロは口針の長さが短い為、主に柔らかい新芽や新葉や新梢等をターゲットとして吸汁します。

本章では特に被害のある作物をピックアップしてご紹介いたします。

チャ

新芽が加害されると褐変し、枯死します。また展葉直後の若葉が加害されると、加害箇所が褐色になり発育が停止し、最悪の場合は落葉します。展葉後の被害は葉の裏面が加害され、葉脈に沿う形で縦に傷が入ります。チャノキイロの発生密度は5月頃までは低いので、一番茶に被害が出ることはあまりありません。二番茶以降に被害が出ます。

農薬に頼らない防除方法として効果的なのは越冬中の蛹を中耕で埋没させることです。茶園では土壌改善を図り、施肥後に中耕を行うことがありますが、その時に深さ5cmから10cmをしっかりと中耕しましょう。農薬を散布する場合は、カスケード乳剤、コテツフロアブル、ガンバ水和剤、モスピラン水溶剤、ダントツ水和剤、アクタラ水和剤等が使用できます。

カキ

果実に被害を与えます。花弁と子房が接した部分やガクと子房の間を加害します。加害箇所はカスリ状になります。

農薬に頼らない防除方法として効果的なのは冬場の粗皮けずりと落葉の処分と徒長枝の整理です。農薬を散布する場合は、マシン油乳剤等が使用できます。

ブドウ

新梢と果実等を加害します。果粒の表面や穂軸に褐色のかすり状の傷を発生させるため、果実の品質を大きく低下させます。

農薬に頼らない防除方法として効果的なのは、副梢の摘芯、落葉の処分、粗皮削り、下草処理です。チャノキイロが繁殖しやすい場所や越冬しやすい場所を入念に整理しましょう。農薬を散布する場合は、コテツフロアブル、モスピラン水和剤等が使用できます。

カンキツ

主に果実への被害です。果実のヘタを中心にリング状のカスリ状なる被害(果梗部の被害)、果実のお尻の部分がカスリ状になったり黒点が発生する被害(果頂部の被害)があります。

農薬に頼らない防除方法として効果的なのは光反射シートの敷設です。光の反射によってチャノキイロの行動を攪乱します。農業用として販売されている製品もありますので活用してみると良いでしょう。農薬を散布する場合は、マシン油乳剤、ジマンダイセン水和剤、コテツフロアブル、ガンバ水和剤、モスピラン水溶液等が使用できます。

マンゴー

主に新芽を加害し、新芽が変色して生長がとまります。また幼果の柔らかい組織を加害し、果実の商品価値を低下させます。

農薬を散布する場合は、マシン油乳剤、スプラサイド乳剤、ロディー乳剤、コテツフロアブル、スピノエース顆粒水和剤等が使用できます。

関連コラム:マンゴー栽培で発生する害虫|効果的な対策方法を解説

チャノキイロアザミウマの防除

チャノキイロの防除は薬剤散布が一般的です。トルフェンピラド水和剤やクロルフェナピル水和剤等が効果的のようです。散布する際のポイントは、“散布時期”と“散布場所”です。薬液がかかりやすい幼虫や成虫の発生時期を狙って散布しましょう。葉の中に産み付けられた卵や、土中の蛹には薬剤がかかりにくいため散布効果が低下してしまいます。またチャでは新芽の場所になりますが、チャノキイロがいる場所めがけてしっかりと散布することが大切です。なお日頃から黄色粘着シート等を活用しながら幼虫や成虫の発生をモニタリングし、多発する前に薬剤散布をするように努めましょう。

チャノキイロアザミウマに有効な資材

虫ブロッカー赤

数百品目を超える植物に深刻な被害を与えるアザミウマ。殺虫剤の耐性を獲得して化学的防除が困難になってきました。虫ブロッカー赤アザミウマ対策ができる赤色LED防虫灯です。赤色LEDはアザミウマの抵抗性を発達させず密度を低下させることに貢献します。

虫ブロッカー赤の設置目安(1機あたり)の推奨ピッチは10m~20m(短いほど効果あり)。赤色LED(ピーク波長657nm)を日中に十数時間程度(日の出1時間前~日の入り1時間後までの点灯を推奨します)照射するとアザミウマの成虫は植物体の緑色の識別が困難になり、ハウスへの誘引を防止すると考えられています。その他、殺虫剤の散布回数減・散布労力減といった効果も期待できます。

てるてる

特殊な繊維構造で作り上げることで高い反射性能と赤外線遮蔽効果を実現した高性能乱反射型光反射シートです。太陽光を嫌うアザミウマに対して高い忌避効果を期待できます。虫ブロッカー赤と併用していただくことで相乗効果が得られます。ぶどうやいちご等に導入実績があります。

品質の良い農作物を収穫するために

今回のコラムでは農業害虫であるチャノキイロの特長と対策を記載してきました。非常にやっかいな害虫ですが、予防と防除のポイントをおさえていただき、対策の立案にご活用いただけますと幸いです。病害虫の被害を減らして品質の高い農作物を収穫しましょう。

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コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。

 

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