芝の種類について
芝の種類は様々なものがありますが、大きくは暖地型と寒地型という2種類に分けられます。ノシバは踏圧に強いため、公園の広場やゴルフ場のラフに使われています。コウライシバは葉が細く、密生させると見た目が美しいため、家庭の庭で最も一般的に使われています。
芝の種類 | ||
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暖地型 | 日本芝(ノシバ、コウライシバ、ビロードシバ)、西洋芝(バミューダグラス類) | |
寒地型 | 西洋芝(ペントグラス類、ブルーグラス類、フェスク類、ライグラス類) |
芝生の手入れ|季節ごとの作業
春の手入れ
春(3~5月)に行う作業として最も大切なことは病害虫の予防です。梅雨になると病気が蔓延し、夏には害虫が繁殖するため、その前にしっかりと対策をしましょう。
また冬の間にところどころ枯れた芝の部分に植え付けを行うことで、梅雨に根が張り、夏に生長します。美しい芝を復活させるために大切な作業です。
夏の手入れ
夏(6月~8月)は、梅雨による雨と暑さによって芝が旺盛に生長します。そのためこの時期は1週間に1度の頻度で芝刈りが必要になることが多いです。この時期に芝刈りを怠ると芝が伸びて密集し風通しが悪くなり、病害虫の発生を助長するため注意が必要です。雑草も旺盛に伸びてくるため、こまめに除草するように心がけましょう。また梅雨明け後は、暑さで水不足になりがちです。土中深くまでしっかりと水がいきわたるようにこまめに灌水を行いましょう。
秋の手入れ
秋(9~11月)は、冬の休眠前のため施肥や芝刈りの回数を減らします。9月~10月の中旬頃にリン酸とカリウムの多い肥料を施します。
冬の手入れ
冬(12月~2月)は、休眠期のため手入れは不要です。草刈り、施肥、目土入れを行う必要はありません。ただし冬場は乾燥しやすいため水やりに注意しましょう。月に1~2回ほど晴れた暖かい日に水やりを行います。
芝生の手入れに必要な道具
芝刈り機
主に芝生の面積によって、芝刈り機の種類を変える必要があります。リール式、ロータリー式、バリカン式、ロボット芝刈り機等の機械があります。
リール式
らせん状に回転する刃(リールカッターと呼ばれる)と固定刃(ベッドナイフと呼ばれる)ではさみ切る方式です。電動と手動のものがあります。古くから一般的に広く使われており、家庭の小さな庭や小規模の芝でおすすめの芝刈り機です。
ロータリー式
1枚の刃が高速回転して刈る方式です。電動とエンジン式のものがあります。リール式よりもパワーがあるため、伸びすぎた芝を刈る時に便利です。
バリカン式
電動で、固定された下の受け刃と左右に動く上の刃が芝を刈ります。大型の芝刈り機が入れない場所、飛び石の間といった狭いスペースの芝を刈るのに重宝します。
ロボット芝刈り機
近年のトレンドで、ハスクバーナ、ハイガー、本田技研工業、マキタ、和同産業といったメーカーから販売されています。大半の機種は芝の刈りたい場所に境界ワイヤーを敷設し、境界内でロボット芝刈り機を稼働させることが多いようです。芝の刈った場所を自動で学習し、毎日勝手に芝刈りをしてくれるため、体力の消耗する芝刈り作業から解放されます。充電ステーションに自動で戻る機能もあるようです。ロボット芝刈り機は高価という印象がありましたが、最近では10万円程度から購入できる芝刈り機が登場したことで、個人ユーザーでも導入しやすくなってきました。
芝刈りばさみ、植木ばさみ
芝刈り機が入れない狭い場所や端っこ等を刈る時に必要になる道具です。各メーカーから様々な特徴を持つ製品が発売されています。長時間握っても疲れにくいもの、切れ味の良いもの、刃がさびにくいもの、複数の刈り方(斜め切り、水平切り、垂直切り)ができるタイプのものを選ぶと良いでしょう。
ローンスパイク
先端に複数の刃がついた金属製の道具です。2,000円~3,000円程度で購入することができます。足を使って芝生の上で踏み込むことで穴を開けます。芝生の古くなった根を切り、水・空気・肥料の浸透を良好にします。またエアレーションをする際に役立ちます。
熊手、竹ぼうき、レーキ
枯葉、雑草、芝を集める時に必要になる道具です。レーキは目土(めつち)入れの時に土を平らにならす時に重宝します。
ジョレン
芝生の張り替え、除草、土をならす時に必要となる道具です。
こうがい板
芝を張る時に敷地の角を土で均すのに便利となる板です。「かき板」あるいは「手板」とも呼ばれます。
ふるい
目土を芝生にまく時に必要になる道具です。網目の目合のサイズを変更できるタイプが便利でおすすめです。
芝刈りのポイント
美しい芝を保つためには日頃からまめに行う芝刈りがとても大切です。芝は芝刈りによって適度に刺激を受けることできれいに育ちます。芝刈りを怠ると。下葉が枯れたり、蒸れて病害虫が発生しやすくなるといった様々な障害が発生するため定期的に行いましょう。芝刈りは生育期には月に2~3回行います。特に暖地型芝は夏場の生育が旺盛ですので、大胆に芝刈りできます。芝の刈り高の目安は3~5cmです。芝刈り機で刈る際は、1/3くらいは刈った部分に重ねて刈ることがきれいに仕上がるポイントです。
伸びすぎた芝を刈る際は一気にバサッと刈ってしまうと、「軸刈り*」になるため注意しましょう。その場合は芝刈りばさみ等で大まかに刈り込み、日をあけて芝の状態を確認しながら少しずつ刈り高を低く刈っていきます。
*生長点が刈られることで、茶色い茎が残った状態。新しい芽が出づらくなるため、最悪の場合は回復しない(枯死する)ことも。
芝生の施肥のポイント
芝生の施肥量は年間10~15g/㎡窒素を5~8回/年に分けて施すと良いとされています。リン酸とカリについては窒素と同量もしくは少なくて大丈夫です。施肥のポイントは均一に散布することです。肥料を手でまく場合は少量を握り、左右に振りながらまき重ねるように施します。肥料のまきムラがあると、肥料が多いところは濃い緑色になり徒長するため、色むらができてしまいますので注意しましょう。
芝生の水やりのポイント
芝生の水やりのポイントは少ない回数で1回にたっぷりと水を与えることです。ホースで散水する場合はシャワーヘッドをつけ、芝に均一に水がかかるようにします。春~秋は三日~五日に一回を、真夏は1日~二日に一回が水やりの目安です。
芝生は乾燥に強い植物ですが、水やりを怠ると水不足がストレスとなり元気がなくなってきます。元気がなくなった芝はなかなか元に戻らないため、日々の状態を確認ししっかりと水やりを行いましょう。
水やりが面倒な場合は、自動散水機(スプリンクラー)を利用することもおすすめです。ホームセンターの園芸コーナー等で入手することができます。タイマーで制御できる製品であれば、真夏の外出時も安心して出かけることができます。スプリンクラーにはジェットノズル式、アシレイティング式、回転式スプリンクラーといった種類がありますので、予算や芝面積を考慮し、選択すると良いでしょう。
芝生管理に関する除草の方法とおすすめの除草剤
芝生の維持管理で手間となるのが雑草です。生える雑草にはオオバコ、エノコログサ、スギナ、オヒシバ、カヤツリグサ等がありますが、どの種類もこまめに除草することがポイントです。
密で健全な芝生を維持する
雑草も芝と同様に発芽するためには光が必要です。この時、芝にスペースがあると(芝が密ではない)、雑草が生える環境を与えることになります。芝刈り、水やり、施肥等の管理作業をしっかりと行うことで、密で健全な芝生を維持することが大切です。
施肥前に除草する
雑草に肥料(栄養)を与えても意味がありませんので、施肥前にパトロールして雑草を除草しましょう。
雑草が大きくなる前に除草する
雑草は大きくなると根が地中深くまで張り、抜くことが困難になります。また放置すると種子をまくため、余計に雑草の範囲が広がってしまいます。定期的に除草しましょう。
最終手段は除草剤
雑草の生育が旺盛な時や除草が面倒な時は除草剤に頼ることも最終手段です。ホームセンターで芝用薬剤が販売されています。スプレータイプですぐに散布できるもの、規定倍率で薄めて使用するもの、粒状で散布するものがありますので、使いやすいものを選択しましょう。シバニードグリーン粒剤、MCPP液剤、シバキープエースシャワー、ガーデンアージラン液剤、シバキープ3 粒剤といった除草剤がおすすめです。
芝生の病気や害虫の対策
芝生は正常の生育環境であれば、剛健な植物のため、病気や害虫の大きな影響は受けないとされています。そのため、まずは人間と同じで健康な芝を育てることが非常に大切です。
芝生の病気
芝生の主な病気はダラースポット病、葉腐病、春ハゲ病、シバホコリカビ病、サビ病です。イプロジオン水和剤、ポリオキシン水和剤、ミクロブタミル水和剤、イオプロジオン水和剤、といった成分の殺菌剤を散布することが防除法になります。
芝生の害虫
芝生のエアレーションのポイント
エアレーションは少なくとも年に一回は行うことがポイントです。鉢植えの植物は根がたくさん出ると根詰まりを起こすため植え替えをしますが、芝も同様に芝生の土壌に穴を開ける(エアレーション)ことで土壌の通気性と透水性を改善し、芝生の発根を促します。これにより、芝生の老朽化を防ぐことができます。
エアレーションは生育期に行います。目土入れとセットで行うことがおすすめです。エアレーションによってできた穴に、肥料入りの目土をふるってすきこみましょう。
目土(めつち)入れのポイント
芝を張り終わった後の目土入れ
スクエア型の芝を張った後に行う作業です。目土入れをして足で踏んだ後に水をやり、芝の葉が見える程度が目土の量の目安になります。水が染み込んだら再度たっぷりと水やりを行うことがポイントです。
定期的に行う目土入れ
芝は新しい根が張れる環境を必要なため、定期的な目土は効果的です。少なくとも年に1回は目土入れを行うと良いでしょう。暖地型の芝であれば春~初夏、寒地型の芝であれば春~秋に行います。目土入れを行う前は芝を刈り、刈った芝を取り除き、3~5mm程度の厚さで目土を施し、最後に水やりをします。前述していますが、目土に肥料を入れておくと施肥の手間が省けます。
庭の芝刈りに最適なロボット芝刈機|DROP & MOW
DROP & MOWは庭などのコンパクトなエリアに最適なロボット芝刈り機です。価格は10万円前後とリーズナブル。機器本体の前面のカメラが緑色の芝を自動で認識し刈るため、境界ワイヤーの設置工事が必要ありません。芝刈りエリアをランダムに動き、100㎡の面積を約3時間程度で刈ることが可能です。家庭の庭、保育施設、サーキット場、倉庫といった様々な環境での販売実績があります。面倒な芝刈りから解放される今までにない画期的なロボット芝刈機です。
まとめ
今回のコラムでは庭の芝生の手入れについて解説しました。芝の種類によっても管理の仕方は変わりますので、参考資料としていただけますと幸いです。芝生は手間をかけた分、美しい状態を維持することができますのでぜひ芝庭づくりにチャレンジしてみてください。
関連コラム:
・美しい芝生を保つメンテナンス方法と年間スケジュール
・完全ガイド|庭の芝刈りのすべて
参考資料:
・やさしくわかる芝庭の手入れと育て方
・家庭でできる!芝生とグラウンドカバー
・NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月 芝生
・かんたん ずっと楽しむ 芝庭つくり コツのコツ
コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。