ヨトウムシとハスモンヨトウとは~特徴と生態~
いちごに寄生する主なヨトウムシ類は、ヨトウムシとハスモンヨトウの2種類と言われています。本章では特徴と生態を解説します。
ヨトウムシ
アジアとヨーロッパに広く分布し、日本でも全国的に発生するやっかいな重要害虫として知られています。基本的な発生は春(4月~6月頃)と秋(9月~11月頃)の年2回です。老齢幼虫が昼間は土中に潜み、夜間に活動するという生態を持つため、「夜盗虫(よとうむし)」という名前がつきました。成虫は体長20mm程度です。雌成虫は4月~5月と9月頃に葉裏に直径0.6mm程度の卵を数十個~数百個程度産みます。雌成虫1匹で生涯1,000個~1,500個の卵を産むと言われています。若齢幼虫の体色は淡い緑色で集団生活をします。成長して中齢幼虫になると徐々に分散して単独行動をとるようになります。成熟幼虫の体色は灰緑色~暗褐色で体長は4cm程度です。
ハスモンヨトウ
アジアに広く分布し、日本では関東以西で発生が多い害虫です。西日本では4月下旬頃から発生しますが、発生のピークは夏(7月~10月頃)です。成虫は体長15mm~20mm程度でヨトウムシよりも少し小さいです。雌成虫は卵を地上10cm~1m程度の高さに数十個~数百個程度産みます。雌成虫1匹で生涯1,000個~3,000個の卵を産むと言われています。卵はタマゴバチ類の寄生から守るため雌成虫の腹部の褐色の鱗毛で覆います。若齢幼虫の体色は黄緑色で集団生活をします。成長して中齢幼虫以降になると背中に黒い模様が出現します。
ヨトウムシとハスモンヨトウの被害
新葉や花を食べる被害を出します。新葉が食害されると新しい葉が出なくなるため、生育を阻害します。そして特にやっかいなのは頂花の食害です。収穫できるはずだったイチゴが収穫できなくなるため、経済的損失が発生してしまいます。
関連コラム:
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ヨトウムシとハスモンヨトウの対策~予防と防除方法~
雑草を刈る
圃場周辺の雑草は発生源となります。定期的に雑草が生えているか確認を行い、生えている場合は早めに刈り取りましょう。
防虫ネットを張る
施設の開口部や入口に目合い0.4mm以下の防虫ネットを展張することで成虫の侵入を予防することができます。
フェロモントラップを設置する
「フェロディンSL」という製品名でフェロモントラップが販売されています。フェロモン剤をプラスチック製のトラップにセットするだけで、ハスモンヨトウの雄成虫を誘引し捕殺することができます。
手で捕殺する(テデトール)
卵や集団生活を送る若齢幼虫を見つけ次第捕獲し、手でつぶします(捕殺)。発生初期に有効な方法で、発生の広がりを抑えることができます。老齢幼虫は夕方以降に現れるので、その頃に見回りもすると効率的です。ただし、手間がかかるため、圃場の面積が狭い場合や家庭菜園といった小規模菜園向きの方法かもしれません。
薬剤散布する
幼虫は齢期が進むにつれて、昼間は土中や地際に隠れるため、昼間に薬剤散布しても薬剤がかからない(=死ににくい)ため注意しましょう。そのため、薬剤散布は発生初期の若齢幼虫のうちに行うことがポイントです。
超音波装置で飛来を防ぐ
2022年10月に情報公開された新技術です。ハスモンヨトウの天敵であるコウモリの超音波を圃場周囲に照射することで、成虫の飛来を未然に防ぐ効果があります。
ヨトウムシとハスモンヨトウの対策におすすめの殺虫剤
農業
「アファーム乳剤」「グレーシア乳剤」「ディアナSC」「フェニックス顆粒水和剤」といった商品名の薬剤がヨトウムシ類に効きます。
家庭菜園
「ベニカXネクストスプレー」「オルトラン粒剤」「デナポン5%ベイト」「スミチオン乳剤」「ベニカS乳剤」「ベニカベジフル乳剤」「オルトラン水和剤」「ゼンターリ顆粒水和剤」といった商品名の薬剤がヨトウムシ類に効きます。
ヨトウムシとハスモンヨトウ対策におすすめの製品
スマートキャッチャーⅡ
ビニールハウス専用のLED捕虫器です。2種類のLED(緑色LED:525nm、紫外線LED:375nm)がヨトウムシ類の成虫を誘引し、専用捕虫袋に捕虫します。ヨトウムシ類以外もコナジラミ類・アザミウマ類・キノコバエ類・ハモグリバエ類・ヤガ類を捕虫できる優れものです。設置が簡単でメンテナンスも楽です。イニシャルコストも安いため、イチゴ、キュウリ、トマト等といった農作物の生産者様にご愛用いただいています。
いちご栽培における導入事例:
ヨトウムシがすごく捕れて助かりました!スマートキャッチャーの効果を実感|いちごブラザーズなかじま農園
虫ブロッカ―黄緑・虫ブロッカ―緑
「虫ブロッカ―黄緑・虫ブロッカ―緑」は露地・ビニールハウス向けのLED防虫灯です。LEDの光がヨトウムシの行動を抑制し拡散を防止します。ヨトウムシの生息密度を低下させ、繁殖を一世代で止めることで果実・野菜・花の被害が減少します。また薬剤散布のコストや労力削減、天敵昆虫のコスト削減に貢献します。
ヨトウムシとハスモンヨトウの被害を軽減しましょう
ヨトウムシとハスモンヨトウの被害を軽減するためには施設への侵入防止と卵~若齢幼虫の時の防除がとても重要です。必要な対策方法を取り入れて、大切ないちごを守っていきましょう。今回のコラムの内容をお役立ていただけますと幸いです。
コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。