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ブドウを着色不良から守れ!その原因と対策について解説
公開日2023.01.05
更新日2023.01.05

ブドウを着色不良から守れ!その原因と対策について解説

ブドウの栽培は古代エジプトの壁画にも描かれており、古来ワインの原料として栽培されていました。日本では明治以降に多くのブドウ品種が導入され、当時は日本の気候に合わず失敗が続きましたが、その後の品種改良や栽培方法の研究が成果を上げたことで、現在では欧州系・米国系・欧米雑種系のさまざまなブドウが生産されています。昔からなじみのある巨峰やピオーネ、近年では皮ごと食べられるシャインマスカットやナガノパープルなどを中心に人気がありますね。

本コラムではブドウの着色不良に関する情報を執筆しています。後半では着色不良対策におすすめの資材をご紹介しますので最後までご覧ください。

ブドウが着色するメカニズム

ブドウは、光合成によりつくりだしたエネルギーを使い、糖とアントシアニンを蓄積させます。このアントシアニン色素の果皮に蓄積することでブドウの果皮は赤や黒に着色します。着色を誘導する遺伝子の種類の違いにより、数種類のアントシアニン色素の組成が決まっていて、それぞれの品種の果皮の色が決まると考えられています。アントシアニンの含有量が多いほど果粒は黒色に近づいていきます。アントシアニンを蓄積しない品種の果粒は黄緑色になります。黒色系や赤色系の品種において、収穫時にアントシアニンの蓄積量が少ないと色づきが十分ではなくなり着色不良果とみなされてしまいます。

ブドウの着色不良の原因

古くから高温地域ではブドウの着色不良が起こりやすいことが知られています。果実が熟成する時期(ベレーゾン期)に光が不足したり、夜間に高温にさらされたりすると着色不良が発生しやすい原因の一つになります。ブドウは、日中に光合成で作られたエネルギー(糖)を使って夜の間に果皮を着色させます。夜の温度が高いとエネルギーの多くを呼吸活動に使用することになります。すると着色に使うエネルギーが低下することになり色づきが悪くなると考えられています。天候不順や新梢の過剰な繁殖により日影が増加して日光が当たりにくくなると、そもそも光合成によるエネルギーが不十分になるため着色不良が発生します。

ただし、高温環境や日照不足だけが着色不良の原因ではありません。それ以外にも一本の樹木の果房数(着果過多)や土壌環境(窒素過多)なども着色不良に影響を与えると考えられ、原因は複雑です。高温が原因の着色不良は糖度には影響を与えないこともあるようですが、問題は色むらが悪いと等級が下がることです。たとえ食味の品質が十分でも商品価値(等級)が下がり収益に影響してしまいます。

ブドウの着色不良を発生させないための対策

夕方に潅水作業を行う

高温乾燥期にマイクロスプリンクラー灌水や点滴潅水などを夕方に実施し、夜間の気温上昇を抑える方法です。無潅水のブドウと比較して、着色が促進されたとの研究報告があります。ただし、潅水しすぎると裂果を引き起こすことがありますので注意しましょう。

日当たりを良くして光合成を促す

葉っぱが茂りすぎると効率的に光合成を行うことができなくなります。このような日照不足を予防するため不要な枝葉を剪定し、日当たりが悪くなる部分を減らします。また、光反射シートを地面に敷いて、太陽の反射光を使い光合成を促す方法もあります。

1本の樹木の着果量を減らす

適切に芽かきや摘芯などの選定作業を行い、1本あたりの着果量を減らすことにより、光合成で作られた栄養分を残った果実に集中させることができます。

環状剥皮処理を行う

環状剥皮処理とは枝や主幹の樹皮を、5mm程度を環状に剥ぎ取る栽培技術です。葉で作られた光合成産物が地下部へ移動することを抑制し、環状剥皮した部分より上部で循環させます。これにより果皮の着色を促進したり、糖度を向上させたりすることができます。ただし、環状剥皮の幅が広すぎると癒合できなくなったり、根の伸長活動が鈍化することから樹体を衰弱させたりするなど、リスクもありますので注意が必要です。また、環状剥皮処理だけでは着色改善の効果は低いため、着果量を減らした上で実施することが望ましいとされています。

関連コラム:ブドウの剪定方法を解説!ポイントまとめ

成熟のシーズンを前進させる(促成栽培を行う)

加温装置やビニールハウスなどの被覆資材を使い、生育初期に保温しやや涼しい時期にブドウの着色時期が来るようにコントロールする方法です。

高温耐性のある品種を栽培する

高温でも着色不良の起こりにくい品種を栽培する方法です。ブラックビート・ダークリッジ・紫玉・陽峰などは高温下においても着色しやすい品種です。圃場環境との相性がありますので導入にあたっては、品種特性を確認するなど十分に検討する必要があります。

ブドウの着色不良対策におすすめの資材

ブドウの着色不良対策におすすめしたいのが乱反射型光拡散シートてるてるです。特殊な繊維構造により太陽の光を乱反射させブドウの色付けを促進する効果が期待できます。乱反射機能により、太陽の照射角度が変わっても光は拡散されます。葉裏や樹の陰面に太陽の光を届けてブドウの光合成を促します。紫外線と可視光線の反射率は85%を超えており、天候不順のシーズンの色付け促進の補助にもなります。てるてるは赤外線の透過率が低いためシルバーマルチに匹敵するほどの反射効果があり、夏場に収穫シーズンを迎えるブドウでは地温抑制効果も期待できます。

着色不良の原因をつきとめて品質の良いブドウを育てましょう

黒系や赤系のブドウにおいては、着色不良が起こると等級が下がるため、直接的に収益が減少するリスクになります。色づきの良いブドウを栽培するためには、適切に着色不良対策を行い管理することが重要ですね。また、今後は高温環境においても着色不良を起こさない品種の開発も望まれます。今回のコラムを皆様のブドウづくりにお役立ていただければ幸いです。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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