コラム
植物栽培における光合成光量子束密度とは|かみ砕いて解説します!!
公開日2022.11.14
更新日2022.11.14

植物栽培における光合成光量子束密度とは|かみ砕いて解説します!!

経営的農業生産における補光を目的とした電照を照射する考え方が普及してきており、例えば、キク・イチゴ・トマトなどでは電照栽培を行うことは一般的になってきました。一方で、太陽光から隔離した完全閉鎖型栽培を試みる方が増えてきており、セイコーエコロジアでも相談が多くなっています。背景には、「農業参入を推進する企業の増加」や「土地を確保できないけれど倉庫や空き部屋を確保できる方」などが植物に良好な光環境を探し求めているのだろうと推測できます。
ただ光を当てれば植物は元気に育つというわけではありません。それぞれの植物に適した日長時間、光強度、波長など考慮される要素はたくさんあります。今回のコラムでは光合成光量子束密度(PPFD)について説明したいと思います。

植物栽培では「ルクス」の表現は使わない!?

明るさを示す指標であるルクス(lux、lx)は、例えば、自宅の電球や蛍光灯を取り換える時に見聞きするかと思いますが、どちらかと言えば聞き慣れた単語と言えるでしょう。ルクスの数値が大きいほど電気の明るさが強く(照度が大きく)、活用するシーンにおいてその数値は大事な指標になってきます。
この聞き慣れた又は使い慣れた「ルクス」という単位を農学の世界で用いようとするケースがしばしば見られます。実は農学でルクスを用いることは適切ではないということをご存じでしょうか。良くみられる表現を下記に並べてみます。

「イチゴの電球は○○ルクスを使用すれば良いですか?」
「○○ルクスの植物生育用ライトを探しています」
「○○ルクスのライトは<植物名>に有効ですか」

このような表現に対して回答をするのはちょっと困難です。
イメージとしては、ルクスは家庭用など日常生活で多く用いられる単位で、農学では使用しません。農学では主に「光合成光量子束密度(PPFD)」を用います。ルクスをPPFDに変換することが困難であるため、少なくともセイコーエコロジアでは上記の様なご質問には「回答は難しい」という考え方で対応しています。
ルクスの定義:単位面積1㎡あたり1ルーメンの光束で照らされる時の照度

こちらのコラムも是非ご覧ください
>>>LED照明を活用した室内栽培

「色」と「波長」の違いは何ですか?

植物用ライトを話題に取り上げるとき、何色の光を植物に照射するべきか考えてしまうことがあります。このような考えは発光ダイオード(light-emitting diode:LED)が農業にも普及してきたことが要因として挙げられます。通称LEDは植物生育用ライトとして農業に普及しており、主にイチゴやキクなどの電照栽培で導入が進んでいます。各々の植物には生育に適した光の色があるようで、その評価のため農学分野では古くから研究が進められています。

一方で波長とは何か。
あえて定義っぽくないように説明するならば、「それぞれの色は数値で表され、nm(ナノメートル)の単位で示すことができる」というものです。つまり色と波長はニアリーイコールであり、波長(nm)で示した方がより具体的に色を示せるということです。
例えば、630nmの波長は凡そ赤色として見られます。或いは520nmの波長は凡そ緑色として見ることができます。また、460nmの波長は凡そ青色として見ることができます。

農学分野の研究において光を扱う場合は波長(nm)を表記します。論文を読んで、自分が育成したい植物に適した波長が解るならば、この数値を参考にして植物用のLEDライトを探すと良いでしょう。

「光合成光量子束密度(PPFD)」と「光量子束密度(PFD)」

効率的な農業生産を目指した技術が発展してくると共に、「どのくらいの強さの光を植物に照射すれば良いのか」ということにも目が向けられるようになりました。このような背景から、光の強さの解決を求める農業に関わる方が前述したルクスを用いて植物用のライトを探しているケースがしばしば見られます。
農学(農業)では光合成光量子束密度(photosynthetic photon flux density:PPFD)を用いて、植物に適していると考えられる数値の光を植物に照射します。通称PPFDは「植物のクロロフィル(葉緑素)光合成に作用する400~700nmの波長範囲の光の量」を表し、 μmol・m-2・s-1 という単位で示されます。人間の目には見えないですが、光の粒(粒子、光子)が降り注いでいるのです。PPFD値が大きいほど光が強いと考えていただければ差し支えありません。

一方で、光量子束密度(photon flux density:PFD)という単語もあり、しばしばPPFDと混同されています。単位もPPFDと同じμmol・m-2・s-1 です。一体なにが違うのでしょうか?下記にPPEDとPFDを省略せず英語で表記してみます。

光合成光量子束密度(PPFD)
photosynthetic photon flux density

光量子束密度(PFD)
photon flux density

photosyntheticの有無による違いが見られますが、photosyntheticは「光合成の」という形容詞です。これがある場合がPPFD、ない場合がPFD。つまりPFDは植物の光合成に適していない*とされている赤外線や紫外線の光の量も数値として含まれるということです。そのため、同じ条件でPPFDとPFDを測定した場合はPPFD≦PFDという関係になります。
*実際には遠赤色と言われる波長領域はいくつかの植物の生育に有効的であることが研究でわかっています。PPFDの定義的には400~700nmの範囲が光合成に作用しているとされているため、本コラムでは一部矛盾が生じる波長範囲が発生しています。

植物に適したPPFDの値

それぞれの植物に最適なPPFD値についてはわからないことが多いようですが、電照を用いて植物に照射する場合は、ざっくりと100μmol・m-2・s-1 が目安になりそうです。
実際の植物栽培現場で一定のPPFD値を維持することは困難です。そもそもPPFDは光の量であって、発光源のPPFDを計測するには完全な暗闇で発光源を光らせて計測器で測定することになります。つまり、実験的には明期と暗期を完全に分離した条件で植物を育てればよいので、あるいは植物に最適なPPFD値がわかるかもしれません。ところが、太陽光も取り入れて栽培する施設栽培の場合は、雨の日でも曇り空の日でも日中は常に植物に光が降り注ぎます。この光の量は一定ではなくある程度の範囲で常に変化します(雲の陰や、樹木やハウスの柱の陰でも瞬間的なPPFD値は変化します)。この+αの光の量を考慮すると植物に最適なPPFD値を推測するのもなかなか難しいと思います。
LEDを利用した植物への光照射は、現代人でいうサプリメントのようなイメージです。私たちもビタミン剤やDHAなど足りない栄養素をサプリメントで補給するように、植物にも足りない光を追加してあげることで良好な生育を維持・改善することができます。

植物に適したLEDライトの選び方

まずはLEDライトの色と波長を確認しましょう。
植物育成用のLEDライトには複数の色が混合されていることが多いため、どのような配色になっているかを確認することに注意が必要です。このとき波長(nm)がわかれば、よりフォーカスした電照効果が検証できそうです。
次に大体どのくらいのPPFD値であるかを確認しましょう。
実際にLEDライトを用いた施設栽培において植物付近でPPFD値を計測すると数~数十μmol・m-2・s-1 程度が多いと思います。LEDライトの性能によっては100~200μmol・m-2・s-1 以上を確保することができます。例えば施設イチゴの電照栽培では数~数十μmol・m-2・s-1 程度のケースが多いと思いますが、日長をコントロールする目的では十分なPPFD値と言えそうです。

関連するコラムはこちら
>>>植物実験向けのLED電球をご紹介!!|赤色光、青色光、遠赤色光が植物に及ぼす影響

農業用LED電球

青色(460nm)、赤色(630nm)、遠赤色(735nm)の単色波長のLED電球のほかに複数の波長を含んだ菊・大葉・シソ用、トルコギキョウ用のLED電球を用意しています。口金はE26のため汎用性の高い規格を採用しています。いずれも9Wの消費電力のため経済的な運用が可能です。配光角度が120℃のため、照射対象と電球の距離がわかれば、電球の照射範囲が計算できます。

 

いちご用LED電球

青色(460nm)、赤色(630nm)、遠赤色(735nm)の波長を含んだイチゴの生育に適したLED電球です。消費電力9W、口金はE26、配光角度120℃と非常に経済的で汎用性のあるLED電球です。例えば通路の真上に電照列を設置すると、左右の畝(高設ベンチ)に光が届きやすい設計です。ハウスに複数の電照列を設置する場合は、千鳥状に配置することをオススメしております。千鳥状に配置することで、より広い範囲のイチゴ株にLED電照を配光することができます。

トマト用LED電球

青色(460nm)と赤色(630nm)の波長を含んだLED電球です。20Wと40Wの2つをラインナップしているためご利用シーンにあわせてご選択ください。20Wの方の口金は汎用しやすいE26の規格です。40Wの方の口金はE39と少し大きめの規格のため、必要に応じて変換ソケットを使用してください(お客様でご準備)。また40Wの電球はサイズも大きく重量も1.1kgと重いため、設置には補強対策が必要になる場合があります。

まとめ

今回のコラムでは光合成光量子束密度について解説をさせていただきました。敢えてかみ砕いて解説をしたため、本来の定義より物足りない内容になっていると思います。
セイコーエコロジアではこの一年間で光合成光量子束密度に関する観点でのお問い合わせが増加したと実感しています。また、研究機関からの単色波長LED電球のお問い合わせもとても増えました。肥料価格高騰や円安による農業生産の逼迫などを背景により効率的な植物の育成技術に注目が集まっているのでしょうか。
このコラムが皆様のお役に立つならば幸いです。

LED光を利用した害虫対策のコラムはこちら
>>>やっかいなコナジラミの対策方法|被害の軽減を目指して
>>>マンゴー栽培で発生する害虫|効果的な対策方法を解説

おすすめ記事
Tweets by SEIKO_ECOLOGIA
youtube
セイコーエコロジアのソリューション
ご注文
見積依頼
お問合せ