コラム
マンゴー栽培の実際|育て方と害虫対策を解説!
公開日2022.08.04
更新日2023.06.08

マンゴー栽培の実際|育て方と害虫対策を解説!

南国果実の代表格マンゴー。生食用の国内産は値段がお高く食べる機会が少ないかもしれませんが、外国産を加工調理したマンゴーのスイーツやお菓子を食べる機会は少なくないと思います。少し前までは、国産マンゴーといえば沖縄地域や九州地方に限られていましたが、最近は北海道や関東でも栽培が広がっており(温暖化による気温上昇も関係があるのでしょうか…)、少しずつ身近なフルーツになってきました。
今回のコラムは、熱帯果樹マンゴーの栽培方法について紹介したいと思います。また本執筆内容は主にアーウィン種の栽培について記載しております。

マンゴーとは

マンゴー(ウルシ科マンゴー属)

マンゴーの原産地はインド~マレーシア或いはインドシナ半島周辺と推定されています。熱帯果樹であるマンゴーに耐寒性は無く、露地栽培の場合は北緯30℃~南緯30℃の間とされており、沖縄県は露地栽培できる北限ギリギリに位置しています。つまり、コラム冒頭で「関東でも栽培が広がっており」とありましたが、冬期でも5℃以上に加温できる施設栽培に限り、という条件が付随しています。常緑高木の樹で放っておくと20m以上の高さになるとされていますが、栽培目的の場合はせいぜい背丈位の樹高までで管理します。これは農薬散布や収穫などの作業性が考慮されており、また、果実の色付きには日当たりが良いことが必須なため受光態勢を良くする目的があります。さらに最も重要な理由に、新梢が3回伸長してしまうと花芽が分化しないため樹が暴れないように水平に誘引するということが挙げられます。

マンゴーの品種

国内で栽培・流通しているマンゴーの殆どは「アーウィン」という品種です。別名アップルマンゴーとも呼ばれる人気品種です。マンゴー生産に力を入れる宮崎県の「太陽のタマゴ」もアーウィン種で、県内のマンゴー農園から集められたマンゴーのなかでも、大きさと糖度が規定値以上のものに与えられる呼び名です。アーウィン以外にもかなり少数ですがキーツ、マハチャノック、トミーアトキンス、キンコウなどの種類も栽培・流通しています。マンゴー農園でこれらの希少品種が栽培される理由の一つに、受粉率向上の目的が挙げられます。アーウィンのみで構成された農園よりもアーウィン以外の品種を入れると、受粉率が数十%高まるといわれています。筆者はマンゴー農園に訪れる機会が度々ありますが、九州でも関東でもアーウィン以外の品種を栽培しているマンゴー農家さんは少なくない印象です。

マンゴーの収穫は3年目から

マンゴーは比較的樹勢の良い果樹とされています。そのため栽培管理をせず放っておくと香りも豊潤な深紅で大きな果実が収穫できません。マンゴーはタネを発芽させて成長させるよりも苗から栽培をスタートさせる方が効率が良く、苗も苗業者から購入するケースが多くなっています。定植2年目から収穫できる栽培方法もありますが、本章ではマンゴー果実の収穫には3年かかるという前提で紹介したいと思います。

1~2年目の管理

マンゴー栽培は接木苗を購入して始めることが一般的で、幹が太い大苗ほど高価になります。苗は地植え或いはポット植え(鉢植え)になり、ポット植えの場合はマンゴー専用の培養土を使用すると良いでしょう。ポット植えであれば日当たりの良い場所を選んでのポジショニングが可能で、乾燥気味に管理することによる高糖度果実の収穫ポイントともいえます。定植は4月前後の温度と地温が高い時期が良いです。マンゴーは直根性で、直根を複数本伸長させます。地植えすると数mの深さまで伸長し、細い根は少ないです。地中深くまで根が伸長するため水分ストレス(乾燥)には非常に強いとされていますが、一年目は発根と活着を促すために乾燥は避けます。熱帯果樹であるため高温には強く、30℃ほどで管理すると生育が促されます。

3年目以降

3年目になるとようやく着果・結実させられる樹にまで成長します。これ以降に順調に生育していくと収穫量は、「4年目は3年目の2倍」「5年目は4年目の2倍」に増加していきます。しかし、マンゴー栽培では多くの病害虫との戦いが待っているため一筋縄ではいかないことも現実のようです。

3年目以降のマンゴーの管理は後述の文章をご参考ください。

マンゴーの新梢誘引と結実および摘果

マンゴーは誘引をしなければ十分な収穫が望めない果樹なので、新梢が伸びてきたら誘引を行います。また、新梢誘引後に新梢先端から発生する花房は特徴的で、とても大きく成長して1,000~1,500の小花をつけます。
本章では、マンゴーの新梢誘引~摘果までの作業について紹介したいと思います。

マンゴーの新梢と花房の誘引

マンゴーは6月~8月に行われる収穫の約1か月後に剪定を行います。剪定を行うと新梢が伸びてきて、葉の展開とともに2回新梢が伸びます。1回目は7月~9月に、2回目は10月~11月に伸長します。もし3回目の伸長が発生してしまうと花芽は分化せず収穫ができなくなってしまいます。新梢誘引は水平(横)方向に行います。水平方向に新梢を伸ばしていくと、花芽分化した新梢が2月~3月頃に花房を伸ばして開花していきます。マンゴーの花房は「総状花序」と呼ばれたくさんの小花を付けます。マンゴーの花房はとても大きく、成長してくると花序の重みで自立できなくなり時には折れてしまうので、上から吊り上げてやります。

マンゴーの結実および摘果

日本のマンゴー農家では基本的に一つの花房から一つの果実を収穫できるように管理しますが、これによって栄養が分散せず一つの果実に栄養集約できるので果重と糖度が高いマンゴーを収穫できるようになります。総状花序には数えられないほど多くの小花が付きますが、ここに両性花と雄花が付きます。ミツバチやギンバエの受粉によって両性花に結実し30cm位の花房だと20幼果ほど残りますが、有望な幼果を残しつつ少しずつ摘果して最終的に一つの花房に一つ(或いは二つ)の果実が残るようにします。目安としては2~3日ごとに幼果を半数ずつ落としていきます。この摘果の過程で収穫できるのが、所謂ミニマンゴーです。これがとても美味で甘みも濃厚で果肉も滑らか、筆者は沖縄県、宮崎県、鹿児島県、神奈川県、埼玉県、静岡県と各地のマンゴー産地に訪れましたが、一般人でもミニマンゴーを購入できたのは鹿児島県の道の駅とマンゴー農園だけです(地元の方はいつでも買えるのでしょうか…?)。
果実が肥大してくると、果梗だけでは果実の重みを支えることができなくなるので紐やクリップを利用して果実を支えてやります(玉吊り)。玉吊りには果実に日光を当たりやすくして着色を促す効果もあります。この後果実が紫色に変色してきたらネットを掛けて果実の落下防止を行います。

マンゴーの収穫と果実の扱い

マンゴーの品種にもよりますが、アーウィンの場合は完熟すると自然に果梗から果実が落下します。そのため、果実が肥大し紫色に色味がかって来たらネットを掛けてやります。落果した果実から出荷していけば良いので、その点ではアーウィンは収穫が楽ちんな品種といえます(しかしアーウィンは病害虫発生が多い品種です)。アーウィン以外の多くの品種は、落下は過熟のサインなので自分の目で収穫期を見極めなければいけません。
収穫後の果実の扱いには、産地によって二分されているように思えます。マンゴーは表面にブルームを分泌する果実で、鮮度の良い果実の証とされるブルームの有無によってマンゴー果実の商品価値や扱われ方が異なってくるようです。宮崎県の場合ブルームの欠落には非常に敏感で、ブルームを落としてしまうと果実価値が下がってしまうようです。筆者は宮崎県の多くのマンゴー農園に訪れましたが、農園に入るときも収穫果実を取り扱うときもブルームの欠落には注意します。一方、例えば鹿児島県ではブルームの欠落にはあまり敏感ではありませんでした。寧ろ、ブルームが無い方が光沢があって見栄えが良いとの理由で、タオルでキレイに磨いてから出荷していました。

出荷後に気を付けるべき病気|マンゴー炭疽病とマンゴー軸腐病

マンゴーに発生する病気には灰色かび病やすす病などがありますが、マンゴー栽培で最も懸念すべき病害は糸状菌(カビ)が原因のマンゴー炭疽病とマンゴー軸腐病です。これらの病害は最初圃場で発生し、菌の持ち込みによって出荷後の市場やスーパーマーケットでも発生します。出荷のときには全く病斑が認められないにも関わらず、温度と湿度条件が整うと発病し、次第に病斑が拡大します。スーパーマーケットではクレームや商品落ちの対象となってしまい、産地と出荷先との間で大きな問題となっています。先ほど、果実をタオルで拭くことを話題にしましたが、これには果皮に付着しているマンゴー炭疽病菌とマンゴー軸腐病菌を取り除く効果も見込まれています。

マンゴー栽培で発生する病気については以下のコラムで詳しく解説しています。
>>>マンゴー栽培で発生する病気|発生の仕組みと防除対策をご紹介

剪定後に気を付けるべき害虫|チャノキイロアザミウマ

マンゴー栽培では多くの難防除害虫が発生しカイガラムシ、ハダニ、コガネムシ、アザミウマが代表的です。とりわけ大きな問題になる害虫はチャノキイロアザミウマです。チャノキイロアザミウマは新梢や小花などのマンゴーの若い部位を好んで吸汁し被害を与えます。新梢が伸びてくる頃に発生するチャノキイロアザミウマが非常に問題となっています。新梢をチャノキイロアザミウマに吸汁されると、新梢が潰れてしまい花芽が分化しなくなるので、つまり翌年の収穫ができなくなる被害につながってしまうわけです。この時期のチャノキイロアザミウマ防除が非常に重要なため万全の対策をしなければなりません。スワルスキーカブリダニを使用してアザミウマを駆除することもできるようですが、とても小さい天敵のため確認がしづらく、効果がイマイチとの声も少なからず聞こえてきます。

マンゴー栽培で発生する害虫については以下のコラムで詳しく解説しています。
>>>マンゴー栽培で発生する害虫|効果的な対策方法を解説

マンゴー栽培とチャノキイロアザミウマ対策に効果的な農業資材

虫ブロッカー赤

数百品目を超える植物に深刻な被害を与えるアザミウマ。殺虫剤の耐性を獲得して化学的防除が困難になってきました。虫ブロッカー赤アザミウマ対策ができる赤色LED防虫灯です。赤色LEDはアザミウマの抵抗性を発達させず密度を低下させることに貢献します。

虫ブロッカー赤の設置目安(1機あたり)の推奨ピッチは10m~20m(短いほど効果あり)。赤色LED(ピーク波長657nm)を日中に十数時間程度(日の出1時間前~日の入り1時間後までの点灯を推奨します)照射するとアザミウマの成虫は植物体の緑色の識別が困難になり、ハウスへの誘引を防止すると考えられています。その他、殺虫剤の散布回数減・散布労力減といった効果も期待できます。

てるてる

てるてるは光を拡散的に反射させる光反射シートで、果樹園や野菜の農家さまに評価していただいております。てるてるの光拡散反射効果は虫ブロッカー赤と相性が非常に良く、効率的なアザミウマ類の忌避を実現します。アザミウマ類は背光反応といって、背側から光を受けて姿勢を保持していますが、腹側からも光を照射されると行動に混乱が生じて吸汁や繁殖に悪影響を及ぼします。
また、てるてるはマンゴー果実の色付促進にも効果を発揮するため、虫ブロッカー赤とあわせてチャノキイロアザミウマ防除+色付促進のダブル効果が期待できます。

ドクターカット

ドクターカットは手指の負担を最大75%軽減できる医師監修で製作された農業用ハサミです。用途にあわせて刃の形状が異なっており、マンゴー栽培では摘花や剪定に活用できるSENTEI B インディゴブルーとBONSAIブルーマーブルがおすすめです。安心の日本製でプレゼントにも最適なワンランク上の農業用ハサミです。

日本のマンゴー農家さんに感謝しよう!!

青年海外協力隊でアフリカに派遣された知人によると、「マンゴーなんてそこら中になっていていくらでも食べられるよ!」なんて返ってきます。「じゃあ○○さんはマンゴーはもう要らないね」というと、「味は圧倒的に日本のが美味しいから要らなくない」と。
おそらくアフリカで自生しているマンゴーと日本で栽培されている品種が異なると思いますが、それだけが美味しさの違いとはいえないと思います。日本のマンゴーは甘くなるよう徹底して管理されているし、ポット栽培による水切りはその最たる例です。日本人に好まれるアーウィンは病気にとても弱いですが、マンゴー農家さんのおかげで夏になれば当たり前のようにマンゴーを購入することができます。
今回のコラムでマンゴー栽培が少しでも知っていただければ幸いです。

マンゴー栽培の実際|育て方と害虫対策を解説!

コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の実践を始める。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

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