コラム
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!
公開日2022.07.14
更新日2022.08.08

チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!

イチゴ栽培においてのチビクロバネキノコバエは、生育に重要なクラウンや花托を食害します。大量発生させてしまうと圃場全体に被害が広がり、農業経営に大打撃を与えるため注意が必要です。今回のコラムではチビクロバネキノコバエの発生原因と駆除方法についてご紹介したいと思います。

チビクロバネキノコバエ(Bradysia difformis Frey)とは?

ハエ目クロバネキノコバエ科の農業害虫です。日本のほとんどの地域で発生が確認されています。ビニールハウス栽培で発生しやすく、温度の上昇により発生数が増加します。成虫の体長は1.8mm程度、体色は黒色で翅は褐色を帯びた透明をしています。腐敗した植物のくぼみや表面に60~80個程度の黄白色の卵を産み付けます。幼虫の体長は4mm前後、体色は乳白色(頭部のみ黒色)で、地際部に生息していることが多いようです。

チビクロバネキノコバエによるイチゴの被害

成虫は人を刺したりイチゴを加害したりすることはありませんが、幼虫はイチゴのクラウンや花托*や根などを食害し、新芽の伸長停滞や奇形果の発生などが起こり、作物の減収につながります。さらに被害が進むと葉が萎れて最終的には株は枯死します。育苗期では発生は見られるが苗自体への被害は少ないため油断していると、定植後の本圃においてイチゴの株に被害が発生するといったケースが多いようです。
また、コバエ類は不快害虫であるため、イチゴ狩りを実施している農家さんにおいては、お客さんが不快に感じ、評判を落としてしまうというリスクがあります。粘着シートに付着しているコバエでも、一般の方は見慣れていないため印象を悪くしてしまうことになりかねません。

*花托(花葉が着床する部分)が幼虫に食害されると、黒くなり肥大しなくなります。

イチゴにチビクロバネキノコバエが発生する原因

未成熟な堆肥が土壌に含まれていると、産卵のために成虫が集まりやすくなります。孵化した幼虫は、土の中の腐敗した有機物を食べます。成虫は幼虫が良く育つように、未熟な有機質堆肥に誘引されて集まり産卵します。これらの堆肥には幼虫の食べ物が豊富で、チビクロバネキノコバエが増殖する発生源となります。多湿な環境を好み特に水分を含んでいる堆肥や鶏糞堆肥などに発生しやすいとされています。窒素を多く含む油かす肥料や、魚を原料として作った肥料(魚肥)にも誘引されるので注意が必要です。

イチゴに使用できる登録農薬が極めて限られているため、防除方法が確立されていないということや、チビクロバネキノコバエが生息するクラウンには薬剤がかかりにくいことが防除のハードルを上げています。

イチゴに発生するチビクロキノコバエの防除方法

堆肥の使い方や管理方法に気を付ける

未成熟の堆肥に集まってくる性質がありますので、完熟した堆肥を施用すること、また多量の施用は控えること、そして有機質堆肥を利用する場合は施用した後に十分に混和することを心掛けましょう。堆肥を保管する場合は、ビニールで隙間なく被覆する、肥料袋に入れて封をするなど、成虫が産卵できないように対策をすることが大切です。

残渣を圃場に残さない

古株や廃棄株の残渣にも成虫が産卵しますので、圃場内に放置せず適切に処分しましょう。チビクロバネキノコバエだけでなく、他の病害虫を発生させる原因にもなります。幼虫に寄生された花や株は除去して圃場から持出し処分しましょう。

薬剤はローテーション散布を

登録農薬が少ないため難しいかもしれませんが、チビクロバネキノコバエの薬剤抵抗性が発達するのを防ぐため、同一系統の薬剤散布は控え、ローテーション散布するようにします。一般的に薬剤はミツバチへの影響があるため、使用上の注意をよく読み散布を行うようにしましょう

粘着シートや捕虫器を設置する

チビクロバネキノコバエの成虫が持っている黄色い対象物や電灯などの光に誘引される性質を利用し捕虫する方法です。黄色の粘着シートや光を使った捕虫器は、これだけあれば防除できるという絶対的なものではありませんが、設置をしておくことで発生時期や増え方を予測することができます。発生の傾向を把握し薬剤防除のタイミングを計画することが大切です。予察に関しては農林水産省が発表している病害虫発生予察情報も参考にすると良いでしょう。

チビクロバネキノコバエを捕虫するLED捕虫器

セイコーエコロジアがおすすめする商品は、LEDでチビクロバネキノコバエなどの飛翔害虫を誘引し強力なファンで捕虫するスマートキャッチャーⅡです。1台あたり500㎡の効果範囲があるため広範囲での捕虫効果が期待できます。電源が取れる場所にS字フックなどで簡単に吊るすことができ、すぐに設置することができます。付属パーツのハチ防護ネットが付いているので授粉用のハチが吸引される心配ありません。6Wと低消費電力のため24時間点灯させても電気代を抑えられるため出費をできるだけ小さくできます。

チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
【スマートキャッチャーⅡ(吸引式)】本体
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
【スマートキャッチャーⅡ(吸引式)】反射板が害虫を誘因する光をパノラマ状に照射
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
【スマートキャッチャーⅡ(吸引式)】防護ネットでハチの吸引を防止
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
【スマートキャッチャーⅡ(吸引式)】S字フックなどで簡単に設置することが可能です(S字フックは付属していません)
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
【スマートキャッチャー(イルミ型)】カゴに粘着シートをセットします。
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
【スマートキャッチャー(イルミ型)】カゴに粘着シートをセットします。
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
【スマートキャッチャー(イルミ型)】LEDに誘引されて捕獲量が増加します。粘着シートの色は捕獲したい害虫にあわせて選択します。
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
【スマートキャッチャー(イルミ型)】設置風景
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)
チビクロバネキノコバエからイチゴを守れ!(イメージ)

イチゴをチビクロバネキノコバエから守り健全な農業経営を

手をかけて育てたイチゴが害虫の被害で商品価値を失ってしまうことは、農業経営にとって大きな打撃であり、農家さんの精神的なショックも大きくなります。今回ご紹介した内容が、チビクロキノコバエから大切なイチゴを守る対策にお役立ていただければ幸いです。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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