コラム
日本の農業問題を最新技術で解消するスマート農業とは?
公開日2020.06.12
更新日2022.06.09

日本の農業問題を最新技術で解消するスマート農業とは?

日本の農業は諸外国と比較すると野菜・果樹・花卉など多種多様に富んでおり、一年を通して生産される各種の農産物は非常に貴重な国内財産です。しかし農業従事者の高齢化が問題視されており、今後多数の方が離農すると考えられています。また若い農業従事者の数も少ないため後継者不足や技術継承の遅れといった問題が深刻です。そのような問題を解決するために「スマート農業」を推進していく動きが増えています。

日本の農業が抱える問題と今後

まずは日本の農業界が抱える具体的な問題と今後の展望に関して記載していきたいと思います。

●日本の農業の問題

近年、農業人口の減少と高齢化が問題視されています。

平成22年の農業従事者:260.6万人 | 平均年齢:65.8歳
平成31年の農業従事者:168.1万人 | 平均年齢:67.0歳

また、耕地面積の減少も止まらない状況です。

昭和36年の田畑計:608.6万ha
令和2年の田畑計:437.2万ha

若い農業従事者が減少し、農業技術が継承されないという事態が生じています。農業従事者は他産業の従事者と比べて所得が低い傾向があるためと考えられています。労働時間に対して得られる所得が少なく新規就農をしても、十分な所得が得られず定着しにくいからです。また耕作面積も昭和36年をピークに減少傾向にあります。

参考:農業労働力に関する統計(農林水産省)
参考:令和2年耕地面積(7月15日現在)(農林水産省)

●日本の農業の未来

今後も農業人口の減少や高齢化が見込まれるため、農業の大規模化や最新技術を駆使した生産性の向上などが求められます。少ない労働力で高い生産性を期待できる農業の新しいモデルとして「スマート農業」が注目されています。農業関係に従事されている方は耳にしたことがあるのではないでしょうか。次の見出しで詳しく見ていきたいと思います。

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最新技術を活用したスマート農業とは

●スマート農業の基礎知識

日本の農業は強みとして①熟練した匠の技術力②豊富で美味しい作物(品種)③安心安全の三つが挙げられます。また各メーカーさんの高い技術力によりロボットトラクタやアシストスーツやドローンなどの先端技術が確立されています。これらの“強み×技術”のことを「スマート農業」と呼んでいます。

スマート農業とは「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」を意味します(農林水産省HPより引用)。スマート農業の実現によって、人が行っていた作業を農業機械に代替させます。例えば農薬散布やトラクターの操作、ビニールハウス内の環境調整、収穫、選果などです。肉体労働が少なくなり、体力に自信のない人でも農業に従事できるようになりす。また熟練した技術がなくとも、一定の品質の作物を育てられるようになることもメリットの一つです。

参考:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/

●スマート農業の事例

農林水産省のHPでは国とメーカーと農業者が連携し研究開発しているスマート農業の事例の詳細が公開されていますのでその一部をご紹介致します。

・ICT制御によるキュウリの安定生産と軽労化
福島県できゅうり栽培されている伊達地域協議会さんの事例です。データに基づいて培養液を自動供給する溶液土耕栽培システムを導入することで、窒素使用量や肥料代が40%削減、潅水にかかる時間や労働費が90%以上削減、システム導入により収量・品質が向上といった実績を上げています。

参考:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/jirei/PDF/2019jirei_body_Part40.pdf

・環境制御装置の導入によるいちごの品質・収量向上実現
埼玉県のいちご農業生産法人、株式会社秩父ファームさんの事例です。環境制御装置の導入前はデータの蓄積、業務内容の省力化、自動化が課題でした。導入後は温度と湿度の管理が低いことが見える化できたことにより、課題が明白になりました。行政の普及指導により、カーテンの開閉温度設定を見直すことと、天窓開閉時に急激な湿度の低下を防ぐと同時に温度を下げる対策を実施しました。課題が改善できたことでいちごの品質・収量向上を実現しました。

参考:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/jirei/PDF/2019jirei_body_Part44.pdf

・ほ場管理システム等の導入による水稲栽培経営の効率化
宮城県で水稲と露地栽培をされている農業組合法人井土生産組合さんの事例です。経営面積の拡大によって作業の効率化が課題でした。そのため下記の3つの技術を導入しました。

導入技術 結果
ほ場管理システム 稲作の労働力軽減、余剰労力を他作物の栽培に配分が可能に、GAPの取得
ドローンによる可変施肥技術 生育ムラを見える化
水田の水管理システム 水位確認のためのほ場見回り回数減少、水稲減数分裂期の低温対策の実施可否に活用

参考:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/jirei/PDF/2019jirei_body_Part5.pdf

●その他のスマート農業関連を推進している組織

・スマート農業実証プロジェクト
農研機構が推進しているプロジェクトです。令和7年までに担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践することを目標に活動しています。全国の実証先の情報や動画を公開しており、役に立つ情報が掲載されていますので見てみてはいかがでしょうか。またセミナーや研修等も開催しているようです。新型コロナウイルスの感染症による影響で開催の有無が変更になっている場合もありますので電話などで問合せすると良いでしょう。

スマート農業実証プロジェクト

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スマート農業で新しい農業の未来を

今回は農作業を効率化するための考え方「スマート農業」に関して記載してきました。今ある課題の中で、解決に向けて参考になる方法が見つかれば嬉しいです。新しい農業の考え方を取り入れて少しずつでもスマート農業を普及させていきたいですね。安定した生産技術・農業経営を獲得して農業の未来をつくっていきましょう。

日本の農業問題を最新技術で解消するスマート農業とは?

コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Twitterを更新していますのでぜひご覧ください。

 

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