古くからこれを補うため肥料を土壌に混ぜ込み地力を維持してきました。肥料には様々な種類があり、無機物由来・有機物由来・自然界に存在するもの・工業的に作られたもの、とさまざまです。今回は化成肥料にスポットを当てて基本的な使い方をお伝えしたいと思います。
肥料の基礎知識
肥料の変遷|進化する肥料
農作物に必要な三大栄養素
農作物に必要な3つの栄養素は、窒素・リン酸・カリウム(三大栄養素)といわれ、植物の成長に大きく影響を与えるため、バランスよく土の中に存在してもらう必要があります。肥料とは、この三大栄養素のどれかを農作物が吸収しやすい形で含むものを指します。
植物由来の肥料しかなかった昔の農業
日本の農業の肥料は植物由来の堆肥(落ち葉・ワラ・樹皮など)や動物由来の肥料(イワシ・小鰺・鶏ふん・牛ふん・人糞など)が多く使われていました。昭和30年代には東京でも下水道整備が十分ではなかったことと、食料増産の必要から農業生産地への鉄道による糞尿輸送が行われていた時代もありました。
ボカシ・堆肥・腐葉土などと呼ばれ即効性はありませんが、通気性・保水性・排水性等の土壌改善効果が高く、肥料もちが良い特徴があり、有機由来の肥料は土づくりの観点からは土中微生物が活性化し、通気性の改善に役立ちますが、三大栄養素といわれる窒素・リン酸・カリウムが安定しておらず、長年の経験と勘を頼りに配合量を決めなければならないデメリットがあります。
化学肥料が発展した現代の農業
現代では、産業革命以降、化学産業が発展したおかげで工業的に大量生産できるようになり、用途に応じて三大栄養素の比率を自由に調整することが可能な化学肥料が出現しました。天然の鉱物などの無機質を原料にして工業的に作る肥料で、含まれる成分と重量当たりの有効含有量がはっきりしており、肥料を利かせる時期の調整もしやすく適当な効果が期待できます。
窒素系では硝石から、カリウムはカリ鉱物(岩塩)から、リンはリン鉱物(リン灰石・リン灰土)から工業的に作られています。メリットとしては、肥料の化学式がわかり重量当たりの肥料の割合がわかること、いつ作っても品質が安定していること、などがあります。
さらに進化した化成肥料
化成肥料は原料である無機質に化学的な操作を加えて製造される肥料のことです。化学反応層・造粒機・乾燥機といった大型の設備が必要です。複数の要素を均一な粒に閉じ込めたり、溶け出す割合が均一になるようにしたり、即効性が期待できるようにしたりと色々な工夫が凝らされています。
過去 → 現在 | ||
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有機肥料 | ||
化学肥料(無機肥料) | ||
化成肥料(無機肥料) |
主な肥料の種類について
肥料には原料や作り方による分類と、含まれる成分による分類で区別されることがあります。
原料や作り方による分類
有機肥料 | 動物由来の肥料 |
化学肥料 | 無機質を原料にして工業的に作る肥料 |
化成肥料 | 無機質に化学的な操作を加えて製造する肥料 |
含まれる成分による分類
単肥 | 窒素・リン酸・カリウムを1成分以上含まれる肥料 |
複合肥料 | 窒素・リン酸・カリウムを2成分以上混合した肥料 |
普通化成肥料 | 窒素・リン酸・カリウムの3成分の合計が30%未満含まれる化成肥料 |
高度化成肥料 | 窒素・リン酸・カリウムの3成分の合計が30%以上含まれる化成肥料 |
堆肥と肥料、違いはあるの?
堆肥はワラ・落ち葉・籾殻・樹皮などの植物由来の有機物と、鶏ふん・牛ふんなどの動物由来の有機物を混ぜ合わせ、適度な湿度と温度を維持し微生物の働きを利用して発酵させ、有機物を構成していたタンパク質・セルロース・微量要素を分解し有用な形で使えるようにしたものです。肥料は、三大栄養素の窒素・リン酸・カリウムの割合が吸収しやすい形で含まれているものを指しますので、堆肥でも肥料に分類されることがあります。
化成肥料で補える栄養素の役割
それでは化成肥料で補える三大栄養素について少し詳しく見ていきましょう。
窒素(N)
葉や茎の生育に必要不可欠な成分で植物を大きく生長させる役割があります。植物の細胞をつくるタンパク質や光合成に欠かせない葉緑素の元になる元素です。不足すると葉に含まれているタンパク質や葉緑素が旺盛に成長している株先に送られるため、葉の色が薄く生育不良となります。その影響は葉が小さい、分枝しないといった症状に出ることがあります。反対に窒素が過剰になると栄養が行き過ぎてしまい、葉や茎ばかりが成長して花や実が付きにくくなり、肥満化の影響で植物が軟弱になるため病害虫の被害を受けやすくになってしまいます。
リン酸(P)
花や実の生育を活性化させる機能を持っています。エネルギー代謝に影響を及ぼす重要な元素であるため不足すると花の数が減り、開花や結実が遅れるなどの生長不良が発生することがあります。過剰に与えても影響は出にくいと考えられていますが、極端な場合には草丈が伸びないといった生育不良や土壌病害を招くおそれがあります。
カリウム(K)
カリウムは植物体内の様々な化学反応を促進します。葉で作られた炭水化物を根に送り根の張りを良くして発育を促す効果があると言われています。植物を丈夫にして、害虫と病気や気候の変化への抵抗力を高める作用もあります。カリウムが不足すると、下葉の先端や縁から葉が黄色くなって葉が枯れ始め、果実の品質も低下します。リン酸と同様に過剰摂取による影響はほとんどないと考えられていますがカルシウムやマグネシウムが欠乏しやすくなる場合があります。
栄養素 | 役割 | 過剰摂取による影響 |
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窒素(N) | 葉や茎の生育に必要不可欠な成分 | 植物が軟弱になるため病害虫の被害を受けやすくなる |
リン酸(P) | 花や実の生育を活性化 | 草丈が伸びないといった生育不良や土壌病害を招く |
カリウム(K) | の張りを良くして発育を促す | カルシウムやマグネシウムが欠乏しやすくなる |
化成肥料のメリット・デメリットと使い方
従来は有機肥料だけでしたが、農業の進化により化学肥料や化成肥料が出現してきました。名前だけ聞くと人工的で良くないのかなという印象を受けてしまいますが、原料は空気中に存在する窒素やリンやカリウムの鉱石などの天然成分です。ですが与えすぎると悪い影響も出てきますので施用方法には注意が必要です。
メリット
成分量がパッケージに記載されていて散布量を把握できます。投入した施肥量を記録しておけば、次回施肥する際の参考値として活用することができ、植物の成長度合いに応じて量を調節することが可能です。必要な成分を人工的に詰め込んでいますので栄養の成分量が多く、素早く植物に栄養が届き速効性が高いというメリットがあります。市場で安定的に供給されているため簡単に入手できます。有機肥料に比べるとニオイやガスが発生することも少ないといわれています。また、粒状で軽量なため施肥の手間が少なく手軽に施肥することができます。
デメリット
無機肥料である化成肥料は、有機肥料とは違い土の中の微生物に分解されることなく、植物に吸収されるため土に含まれる有機物が減ってしまいます。そのため過剰に施肥すると微生物は死滅してしまいます。微生物のいない土壌では病原菌や病害虫が発生しやすく、農作物にとって大切な土が悪化して結果的にマイナスとなることもあります。保水力が弱く雨が降っても圃場からすぐ排水されてしまうような土地は、保肥力も弱く植物が吸収する前に流されてしまうかもしれません。遅効性の有機肥料とのバランスをみて使用し土壌改良を行い、保肥力改善をはかりましょう。また成分が強いため肥料を株元にあたえると根を傷める原因になりますので注意が必要です。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
有機肥料 | ・土壌改善効果が高い ・肥料もちが良い |
・ニオイやガスが発生する ・配合量は経験と勘が必要 ・入手しにくい |
化学肥料 | ・散布した成分量を把握できる ・素早く栄養が届き速効性が高い ・簡単に入手でる |
・過剰な施肥は土壌環境が悪化する ・過剰な施肥は病害虫が発生する ・作物を傷めることがある |
化成肥料 | (上記のメリットに加えて) ・粒状でムラなく施肥しやすい ・施肥回数が少なく省力的 |
効率的な使い方
化成肥料を効果的に使用することで収穫量の増加が見込めます。種まき後や移植後に野菜の成長に必要な肥料を追加で与える追肥で主に用いると良いでしょう。不足しがちな栄養分を補い農作物の成長をサポートします。元肥としても使用できますが、有機肥と組み合わせて施肥するのが一般的です。施肥する際は根から少し離れた場所に撒くようにしましょう。植物が根を伸ばす過程で肥料成分を探し当て植物が根を広く深く伸ばせるためです。肥料を与えすぎると、農作物が軟弱化する可能性があるので注意しましょう。
化成肥料の効果を高めるおすすめの商品①
元気な野菜を育てるには化成肥料を有効活用して施肥する必要があります。そこでお勧めするのが「ナノバブル植物活性水根活です。根活は栄養を吸収しやすくするための手助けをする水です。マイナス電荷を帯びている性質がプラスイオンの栄養を引き寄せますので、通常の水よりも多くの栄養素を持った状態になります。加えて直径が1㎛以下の非常に小さな気泡は細胞より小さいため植物の細胞内に浸透しやすく植物を元気にすると考えられています。化成肥料を施肥する際に「ナノバブル植物活性水」を混合してすることで化成肥料に含まれている三大栄養素を効率的に植物に届けます。
ナノバブルに関するコラムはこちら:
化成肥料の効果を高めるおすすめの商品②
地力の素 カナディアンフミンはカナディアンロッキー産の天然腐植質で、カナディアンフミン原鉱を粉砕した高純度フルボ酸・100%有機質土壌改良材です。土壌に混和することにより連作で崩れた微生物のバランスを整え、健全な土を取り戻します。また高純度フルボ酸が植物に必要なミネラルや微量要素をキレート化(吸収されにくい養分を吸収しやすくする)し細胞内に届けるはたらきをします。光合成を活性化し、窒素分を効果的に葉や茎の組織に変えたり、根にはたらきかけて根量を増やします。
化成肥料を有効活用!元気な野菜を育てましょう
最近では巣ごもり需要の増加により家庭菜園が注目を浴びています。自宅でプランター等を使用して気軽に野菜を栽培したり芝生や庭木の手入れに力をかけることが増えてきました。
肥料の使い方一つをとっても、さまざまなコツやポイントがあります。施肥する成分が偏ってしまうと、生育不良や病害虫が発生しやすくなりますので、植物の成長に必要といわれる三大栄養素を多く含む化成肥料を有効活用し今回の情報を少しでも栽培のご参考にしていただけると幸いです。
コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。