LEDで野菜が育つ仕組み|なぜLEDで野菜が育つのか?

太陽光は通常、可視光線・紫外線・赤外線が一緒になった状態で地上に降り注ぎます。この中で植物の生長に必要なのは可視光線と呼ばれる目に見える光です。可視光線の色には紫・青・水色・緑・黄・橙・赤などがあり、近年の研究では青や赤の光が植物の生長には欠かせない光合成や葉と実の形成にかかわっていることが解明されています。
波長が植物に及ぼす作用
| 波長 | 作用 | 人の目に見える色 |
|---|---|---|
| 400~470nm | 形態形成 | 青色 |
| 640~700nm | 光合成 | 赤色 |
| 650~740nm | 発芽・花芽形成 | 赤色 |
少し驚くかもしれませんが、実はこのような植物の生長に欠かせない波長の光をLEDで補うことができるのです。LEDでなくても家庭向けの白熱灯や蛍光灯の光でも一定の効果があり、農家さんでは1950年ごろから生産性向上を目的に人工の光を使用してきました。従来の電球や電灯に比べてLEDは照射する波長のコントロールがしやすいため、植物に適した波長の光を作りやすいという特長があります。その性質を利用して作物に適した波長の光を当てることで、太陽の光が不足した環境でも効率的に作物を育てることができます。
LED栽培で野菜を生産するメリット
作物の生長を早め生産量を増やせる

品質が均一になり管理が楽になる
ハウスなど施設の立地が影響し、同じ圃場でも自然光の当たり方にばらつきが生じることがあります。日当たりの良い場所と比べて、日が当たりにくい場所では成長速度や味などに違いが出るため品質が揃わなくなります。すると収穫や管理に時間がとられたり、せっかく育てた作物を販売できず減収につながったりするなどのデメリットが発生します。LEDを用いて光を均一に電照することで、品質が一定の基準内で収まるようになり生産管理が安定しやすくなります。
長寿命でランニングコストが安い
白熱灯や蛍光灯でも光合成を促す働きはありますが消費電力が大きく、維持する費用が負担になります。電気代がかかりすぎることは農業を持続的に経営していくにはデメリットです。LEDは導入費用は高くなりがちですが、長寿命で消費電力が少ないため、低コストで維持ができ費用を抑えることになります。育てる野菜の種類にもよりますが、完全密閉型の植物工場においても生育環境をきちんと整えれば、露地栽培と同様に栄養価や機能性成分の高い野菜が育てられるといわれています。
病害虫にかかりにくい
必要な光が十分にあり野菜が健康に育つと、病気や害虫に対する抵抗性が向上するとされていますので、LEDで不足する光を補えば病害虫のリスクが低減すると考えることができます。完全密閉型の水耕栽培(いわゆる植物工場での栽培)では、無農薬栽培や減農薬栽培ができる可能性もあります。というのも農作物の病気は土を介して発症することが多いため、水の衛生管理が適切に行われた水耕栽培では病害虫の発生を抑えることができ、その分農薬も使用せずに栽培を行えるというわけです。しかし、水耕栽培は水を常に循環させているため、一度病気が発生すると水を通じて被害がすぐに広がってしまうというデメリットがあり、十分な注意が必要です。
LED栽培で野菜を生産するデメリット
導入費用(イニシャルコスト)が高額になる
一般的な白熱電球や蛍光灯に比べて、LEDの価格は高いです。電球を例にとると、1球200~400円程度のものがLEDだと2,000~4,000円程度と10倍ほどの価格です。また施設内に配線が無い場合は、配線工事を実施する必要が出てきます。LEDは消費電力が1/5程度ですが、完全密閉型の植物工場では、電照時間が長くなるため電気代が値上がりしている昨今ではランニングコストの負担も大きくなります。一方、太陽光を活用しながら補光で利用する場合には、電照時間は少なくなるため初期投資を回収するまでの期間は短くなりメリットのほうが大きいと捉えることもできます。
作業効率が低下する恐れがある
一般に農業で利用されるLEDは赤色のチップが組み込まれており、農作業をする際(特に夜間)に作物が見えにくく作業がしづらくなる可能性があります。見え方が気になったり、作業を進めていくうえで目が疲れてしまったりする場合には、赤色チップだけでなく白色チップも組み込んだ製品を選ぶと良いでしょう。
LED栽培が活用できる圃場の種類
太陽光利用型|ビニールハウスやガラスハウス

完全密閉型|植物工場

「きのこ」「リーフレタス」「スプラウト」といった植物では栽培事例が多く生産現場では既に普及し始めていて、近年ではベンチャー企業も参入し各企業は植物工場の競争優位性を争っています。ただし、初期投資やランニングコストが大きくなるため導入のハードルは高く、市場価格に耐えうる価格設定が難しいという問題点があります。
LED栽培が活用できる作物の種類
ほとんどの植物が太陽の光を利用して生長しているため、LEDを利用できない作物はないと考えることができます。あとはコストと販売価格の関係で、付加価値がつきやすい作物は導入しやすいという傾向があります。果菜類ではイチゴ・トマト・キュウリ、花き類ではバラやキク(抑制栽培)、葉菜類では植物工場においてコマツナ・サニーレタス・ベビーリーフなどでLED栽培が用いられています。
福島県農業総合センター「可視光域LEDを用いた高品質野菜苗の生産」によると、光合成に有効な赤色を多く含む電球色LEDを用いることで、トマトやキュウリ苗の成長速度を速め、高品質苗を省エネで生産できると報告されています。また、さいたまの花普及促進協議会「ばら切花の生産性向上に向けたLED補光活用マニュアル」では、LED補光により大幅な収量増加及び品質向上(上位等級増)の効果がみられたと報告されています。
LEDで野菜を栽培するときにおすすめしたい製品①
ハレルヤ|高いPPFDを実現‼植物育成用LED
植物育成専用に開発されたLEDです。非常に高いPPFD(光合成光量子束密度)が特徴ですので植物工場での活躍が期待できます。中継コードを使用することで、一つのコンセントから最大20台を連結*することが可能です。1台からご注文いただけますので、小規模~大規模の幅広い栽培面積までカバーすることができます。120Wタイプでは120Wタイプなら550 μmol m-2s-1以上1)、60Wタイプなら250 μmol m-2s-1以上の性能があり、曇天・ハウス内の日当たりの悪い場所・室内などの環境でも補光を強力にサポートします。トマトなどの葉が混みあい光の届きにくい作物においても、群生内補光で生育促進の効果が期待できます。ハレルヤは安定した野菜の栽培に貢献します。防水等級はIP67と、ハウスで滴下する水滴や、薬散時にかかる霧に対して防水性能を発揮します。
*60Wタイプ、AC200Vの場合
LEDで野菜を栽培するときにおすすめしたい製品②
アグリランプFR|イチゴと花き向けの遠赤LED
イチゴの光合成促進や花き類の開花促進の効果があるとされる白色光・赤色光・遠赤色光の光を含んだLEDです。栽培期間中に補光を行うことで、品質や収量を向上させる効果が期待できます。IP67準拠の完全防水性能を備えており施設栽培だけでなく露地栽培でも使用することができます。
LEDを活用して、より良い作物の栽培しよう
LEDを活用した野菜の栽培方法にメリットを感じていただけましたでしょうか。LEDの登場により植物が必要としている波長の光を効率的に電照できるようになりました。導入費用の負担はありますが、消費電力が少なくランニングコストが抑えられることは大きなメリットです。LED自体も普及が広がるにつれて安くなっていくことが予想されます。今回のコラムを活用していただきより良い作物の栽培にお役立ていただければ幸いです。
参考資料:
・LEDで育てる野菜
(渡辺博之|照明学会誌 第85巻 第3号 平成13年)
・可視光域LEDを用いた高品質野菜苗の生産
(福島県農業総合センター)
・ばら切花の生産性向上に向けたLED補光活用マニュアル
(さいたまの花普及促進協議会)
ご興味ありましたらぜひ以下のコラムもご一読ください
LED照明を活用した室内栽培
コラム著者
セイコーステラ 代表取締役 武藤 俊平
株式会社セイコーステラ 代表取締役。農家さんのお困りごとに関するコラムを定期的に配信しています。取り上げて欲しいテーマやトピックがありましたら、お知らせください。


