コラム
LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説
公開日2021.01.07
更新日2024.04.09

LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説

天候不良による作物の生育不良は品質の低下や価格高騰につながり、生産者にとっても消費者にとっても悩みの種です。このような問題を解決するために、農業分野では天候に左右されにくい人工の光を生かした栽培を増やしていくことが重要視されています。人工の光を利用する方法は一つではなく、簡易的なパイプハウスで導入する場合と、外とは完全に遮断された室内空間で導入する場合では光の強さや使用方法が大きく異なります。今回のコラムではLEDで野菜が育つ仕組みと、LED栽培のメリットやデメリットについて解説したいと思います。

LEDで野菜が育つ仕組み|なぜLEDで野菜が育つのか?

日照不足の時期や日陰などの太陽の光が当たらない場所がある場合は、野菜の育ちが悪くなります。これは太陽光を利用して行われる光合成の活動が低下するためで、曇天続きのシーズンに野菜の生産が不良でスーパーでの価格が高騰しているといったニュースを耳にすることがあるのではないでしょうか。

>>>野菜の日照不足による影響とは|生育不良を軽減する方法

太陽光は通常、可視光線・紫外線・赤外線が一緒になった状態で地上に降り注ぎます。この中で植物の生長に必要なのは可視光線と呼ばれる目に見える光です。可視光線の色には紫・青・水色・緑・黄・橙・赤などがあり、近年の研究では青や赤の光が植物の生長には欠かせない光合成や葉と実の形成にかかわっていることが解明されています。

波長が植物に及ぼす作用

波長 作用 人の目に見える色
400~470nm 形態形成 青色
640~700nm 光合成 赤色
650~740nm 発芽・花芽形成 赤色

少し驚くかもしれませんが、実はこのような植物の生長に欠かせない波長の光をLEDで補うことができるのです。LEDでなくても家庭向けの白熱灯や蛍光灯の光でも一定の効果があり、農家さんでは1950年ごろから生産性向上を目的に人工の光を使用してきました。従来の電球や電灯に比べてLEDは照射する波長のコントロールがしやすいため、植物に適した波長の光を作りやすいという特長があります。その性質を利用して作物に適した波長の光を当てることで、太陽の光が不足した環境でも効率的に作物を育てることができます。

LED栽培で野菜を生産するメリット

作物の生長を早め生産量を増やせる

天候は毎年大きく変化し、太陽が多く降り注ぐ年もあれば曇天続きの年もあるため、生長の速度が遅くなってしまったり、上手に光合成が行えず生育不良につながったりします。日照不足の時期に、LEDで電照をすると作物の生長を助け、効率的に生産することが可能となります。日照量に左右されず、かつ栽培する野菜に適した波長の光をダイレクトに電照できるので、光合成が順調に行われ、植物は栄養素を効率的に吸収します。その結果、生長がスムーズになり生産量の増加や品質の向上につながります。

品質が均一になり管理が楽になる

ハウスなど施設の立地が影響し、同じ圃場でも自然光の当たり方にばらつきが生じることがあります。日当たりの良い場所と比べて、日が当たりにくい場所では成長速度や味などに違いが出るため品質が揃わなくなります。すると収穫や管理に時間がとられたり、せっかく育てた作物を販売できず減収につながったりするなどのデメリットが発生します。LEDを用いて光を均一に電照することで、品質が一定の基準内で収まるようになり生産管理が安定しやすくなります。

長寿命でランニングコストが安い

白熱灯や蛍光灯でも光合成を促す働きはありますが消費電力が大きく、維持する費用が負担になります。電気代がかかりすぎることは農業を持続的に経営していくにはデメリットです。LEDは導入費用は高くなりがちですが、長寿命で消費電力が少ないため、低コストで維持ができ費用を抑えることになります。育てる野菜の種類にもよりますが、完全密閉型の植物工場においても生育環境をきちんと整えれば、露地栽培と同様に栄養価や機能性成分の高い野菜が育てられるといわれています。

病害虫にかかりにくい

必要な光が十分にあり野菜が健康に育つと、病気や害虫に対する抵抗性が向上するとされていますので、LEDで不足する光を補えば病害虫のリスクが低減すると考えることができます。完全密閉型の水耕栽培(いわゆる植物工場での栽培)では、無農薬栽培や減農薬栽培ができる可能性もあります。というのも農作物の病気は土を介して発症することが多いため、水の衛生管理が適切に行われた水耕栽培では病害虫の発生を抑えることができ、その分農薬も使用せずに栽培を行えるというわけです。しかし、水耕栽培は水を常に循環させているため、一度病気が発生すると水を通じて被害がすぐに広がってしまうというデメリットがあり、十分な注意が必要です。

>>>LEDが光合成を促す理由は?メリット・デメリットと導入時のポイント

LED栽培で野菜を生産するデメリット

導入費用(イニシャルコスト)が高額になる

一般的な白熱電球や蛍光灯に比べて、LEDの価格は高いです。電球を例にとると、1球200~400円程度のものがLEDだと2,000~4,000円程度と10倍ほどの価格です。また施設内に配線が無い場合は、配線工事を実施する必要が出てきます。LEDは消費電力が1/5程度ですが、完全密閉型の植物工場では、電照時間が長くなるため電気代が値上がりしている昨今ではランニングコストの負担も大きくなります。一方、太陽光を活用しながら補光で利用する場合には、電照時間は少なくなるため初期投資を回収するまでの期間は短くなりメリットのほうが大きいと捉えることもできます。

作業効率が低下する恐れがある

一般に農業で利用されるLEDは赤色のチップが組み込まれており、農作業をする際(特に夜間)に作物が見えにくく作業がしづらくなる可能性があります。見え方が気になったり、作業を進めていくうえで目が疲れてしまったりする場合には、赤色チップだけでなく白色チップも組み込んだ製品を選ぶと良いでしょう。

LED栽培が活用できる圃場の種類

太陽光利用型|ビニールハウスやガラスハウス

ビニールハウスやガラスハウスといった温室の環境で、太陽光の利用を基本として温湿度を調節しながら栽培する方法です。太陽の光を上手に利用しながら施設内の環境をコントロールします。植物工場と同様に加温機や細霧冷房を用いて環境を整えます。日照が不足した場合に補光としてナトリウムランプ・蛍光灯・LEDなどで電照を行い、植物の生長を促進したり抑制したりします。例えばイチゴ栽培では成長促進用として用いられ、キク栽培では開花を抑制するために用いられます。完全に閉鎖された環境ではないため病気や害虫の侵入は一定程度発生するため病害虫対策が必要ですが、完全密閉型の植物工場に比べると初期投資費用やランニングコストは抑えられます。

完全密閉型|植物工場

「植物工場」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。植物工場とは植物生育に最適な環境を人工的に作り、計画的に栽培する施設やシステムのことです。太陽光の代わりにナトリウムランプ・蛍光灯・LED照明などを使い作物を電照したり、温度を適切にたもつために暖房機で加温したりします。温湿度・光・二酸化炭素・養液といった植物に影響を与えるエレメントを自動制御で最適な状態に保ち、日照不足や台風といった自然環境に左右されず計画的に作物を育成します。冷暖房・保温装置・給排水・変温装置など省力化のためのさまざまな装備を備え、コンピュータ制御を行いシステム化したものが「植物工場」です。管理が行き届いているため天候の影響(とりわけ日射量の減少)を受けにくく、作物を計画的に収穫できるという特徴があります。また完全密閉型の植物工場で育成した作物は菌の数が少ないため日持ちが良く、水っぽくないため純粋な味を楽しめるといわれています。

「きのこ」「リーフレタス」「スプラウト」といった植物では栽培事例が多く生産現場では既に普及し始めていて、近年ではベンチャー企業も参入し各企業は植物工場の競争優位性を争っています。ただし、初期投資やランニングコストが大きくなるため導入のハードルは高く、市場価格に耐えうる価格設定が難しいという問題点があります。

LED栽培が活用できる作物の種類

ほとんどの植物が太陽の光を利用して生長しているため、LEDを利用できない作物はないと考えることができます。あとはコストと販売価格の関係で、付加価値がつきやすい作物は導入しやすいという傾向があります。果菜類ではイチゴ・トマト・キュウリ、花き類ではバラやキク(抑制栽培)、葉菜類では植物工場においてコマツナ・サニーレタス・ベビーリーフなどでLED栽培が用いられています。

福島県農業総合センター「可視光域LEDを用いた高品質野菜苗の生産」によると、光合成に有効な赤色を多く含む電球色LEDを用いることで、トマトやキュウリ苗の成長速度を速め、高品質苗を省エネで生産できると報告されています。また、さいたまの花普及促進協議会「ばら切花の生産性向上に向けたLED補光活用マニュアル」では、LED補光により大幅な収量増加及び品質向上(上位等級増)の効果がみられたと報告されています。

LEDで野菜を栽培するときにおすすめしたい製品①

ハレルヤ|高いPPFDを実現‼植物育成用LED

植物育成専用に開発されたLEDです。非常に高いPPFD(光合成光量子束密度)が特徴ですので植物工場での活躍が期待できます。中継コードを使用することで、一つのコンセントから最大20台を連結*することが可能です。1台からご注文いただけますので、小規模~大規模の幅広い栽培面積までカバーすることができます。120Wタイプでは120Wタイプなら550 μmol m-2s-1以上1)、60Wタイプなら250 μmol m-2s-1以上の性能があり、曇天・ハウス内の日当たりの悪い場所・室内などの環境でも補光を強力にサポートします。トマトなどの葉が混みあい光の届きにくい作物においても、群生内補光で生育促進の効果が期待できます。ハレルヤは安定した野菜の栽培に貢献します。防水等級はIP67と、ハウスで滴下する水滴や、薬散時にかかる霧に対して防水性能を発揮します。

*60Wタイプ、AC200Vの場合

LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説(イメージ)
60Wタイプ
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30W両面発光タイプ
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本体と本体を連結する専用の「中継コード」
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中継コードの接続部分は防水性です。
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100Vあるいは200Vからお選びいただけます。
LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説(イメージ)
200Vタイプは単相200VのACプラグ(接地極付、250V、15A)です。別タイプのACプラグをご希望の場合はお問い合わせください。
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本体連結の様子(中継コードなし)
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30W両面発光タイプの発光の様子
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30W両面発光タイプ
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LEDで野菜を栽培するときにおすすめしたい製品②

アグリランプFR|イチゴと花き向けの遠赤LED

イチゴの光合成促進や花き類の開花促進の効果があるとされる白色光・赤色光・遠赤色光の光を含んだLEDです。栽培期間中に補光を行うことで、品質や収量を向上させる効果が期待できます。IP67準拠の完全防水性能を備えており施設栽培だけでなく露地栽培でも使用することができます。

LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説(イメージ)
FR-HP(ハイパワー)
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FR-HP(ハイパワー)
LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説(イメージ)
FR-HP(ハイパワー)
LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説(イメージ)
FR-MP(ミドルパワー)
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FR-MP(ミドルパワー)
LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説(イメージ)
FR-MP(ミドルパワー)
LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説(イメージ)
左:ミドルパワー 右:ハイパワー
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左:ミドルパワー 右:ハイパワー
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LEDで野菜が育つ仕組み|LED栽培のメリットとデメリットを解説(イメージ)
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LEDを活用して、より良い作物の栽培しよう

LEDを活用した野菜の栽培方法にメリットを感じていただけましたでしょうか。LEDの登場により植物が必要としている波長の光を効率的に電照できるようになりました。導入費用の負担はありますが、消費電力が少なくランニングコストが抑えられることは大きなメリットです。LED自体も普及が広がるにつれて安くなっていくことが予想されます。今回のコラムを活用していただきより良い作物の栽培にお役立ていただければ幸いです。

参考資料:
・LEDで育てる野菜
(渡辺博之|照明学会誌 第85巻 第3号 平成13年)
可視光域LEDを用いた高品質野菜苗の生産
(福島県農業総合センター)
ばら切花の生産性向上に向けたLED補光活用マニュアル
(さいたまの花普及促進協議会)

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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