今回のコラムは土壌物理性を話題にして、土壌の三相分布について解説したいと思います。
土壌の種類
土壌にはそれぞれに備わった特徴があります。保水性の良い土壌、排水性が悪い土壌、通気性が悪い土壌、粘土質の土壌などがあり農作物の栽培に適不適があります。本章では日本に分布する代表的な土壌をいくつかピックアップして紹介したいと思います。
黒ボク土
黒ボク土は火山灰由来の土壌で表層50cm以内に25cm以上の層がある場合をいいます。リン酸吸収係数がほかの種類の土壌よりも飛びぬけて高いことが特徴で、黒ボク土でリン酸を効かせたい場合は多めのリン酸肥料を施用しないと農作物への影響が小さくなる場合があります。黒ボク土は5つに分けられており黒ボク土、非アロフェン質黒ボク土、森林黒ボク土、多湿黒ボク土、黒ボクグライ土と呼ばれています。例えば黒ボク土は畑や樹園地に向いており水田には不向きな土壌といわれています。また、多湿黒ボク土と黒ボクグライ土は水田に向いており樹園地には向いていない土壌となっています。
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グライ土
グライ土は比較的標高の低い低地に分布しています。グライ土の土層は地下水が常に停滞しているため酸素不足によって含有する鉄分が還元状態になり青灰色を呈することが知られています。グライ土の農地の殆んどが水田利用されており畑や樹園地には向いていません。また、黒ボク土とグライ土が混じった黒ボクグライ土も殆どが水田利用されています。
灰色低地土
灰色低地土は比較的標高の低い低地に分布しています。特徴の一つに扇状地に分布していることが挙げられますが、扇状地は川が山から下りてきて平坦地に扇形に広がった地形のことで、灰色低地土は沖積堆積物が表層50cm以内に25cm以上の層がある場合をいいます。灰色低地土の殆んどは水田利用されていますが、畑や樹園地の利用も少なくないです。
サラサラでもガチガチでも駄目|土づくりの数値目安
多くの農作物の場合、播種や定植をする土壌状態が乾燥しすぎてサラサラでも、人間の足や農業機械で踏みしめたガチガチでも、発芽も発根も悪くなり健全な生育が期待できません。
有効土層とは、作物根がかなり自由に貫入できる土層のことです。また類似した用語に作土層がありますが、作土とは、耕運、施肥、かん水など作物生産のため人間が土層に影響を強く与えている土層のことを言います。作土についてはそれぞれの農作物で数値目安が設けられており野菜と花卉の場合だと下表のようになっています。
また、土壌がある程度フカフカということはそこに隙間があるということです。隙間には空気や液体(水)が入り込むことができ、その隙間に植物は根を張り、根から水を吸い上げます(水と一緒に肥料も吸い上げます)。この隙間のことを孔隙といい、土壌中の孔隙の占める割合を孔隙率といいます。この孔隙率も農作物ごとに数値目安が設けられていますので下表に示したいと思います。
農作物 | 作土の厚さ(cm) | 孔隙率(%) |
---|---|---|
イチゴ | 20以上 | 60以上 |
トマト | 25以上 | 50以上 |
キュウリ | 30以上 | 55以上 |
レタス | 25以上 | 50以上 |
キャベツ | 25以上 | 50以上 |
タマネギ | 25以上 | 50以上 |
バラ | 30以上 | 50以上 |
キク | 20以上 | 50以上 |
カーネーション | 25以上 | 50以上 |
本章は農林水産省の「土づくりの手引き」を参考に作成しております。
土壌の三相分布とは
土壌がサラサラ、ガチガチ、フカフカという表現については、なんとなく土壌状態が解かるものの余りにも曖昧な表現なので土壌学ではしっかりと定義された固相、液相、気相という用語で土壌状態を説明しています。これらのバランスによって土壌状態を表すことができ、固相、液相、気相の各容積の割合を三相分布といいます。前章で示した孔隙率は液相率と気相率の和で示すことができます。
固相:土壌の粒子、落ち葉*、植物の根*、土壌動物や土壌動物の死骸*など
液相:土壌中の水分
気相:土壌中の空気
*所謂、腐植
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地力の素カナディアンフミン
地力の素カナディアンフミンはカナダに自生していた大昔の植物に由来した腐植物質です。細粒タイプ、粗粒タイプ、ペレットタイプ、リキッド(液体)タイプの4種があり、土壌状態や利便性などでそれぞれの農地に合ったタイプを選択できます。とりわけペレットは機械散布に向いており省力化に貢献できる資材として農林水産省も推奨しています。また、ペレットは土壌物理性改善に大いに役立てることができ孔隙率改善に期待ができます。地力の素カナディアンフミンのペレットタイプは牛ふん堆肥とおが屑の有機物が含まれており、臭いがキツくて堆肥が撒けなかった、重労働で堆肥が撒けなかったといった事情の方でも非常に便利に使用できます。
リンサングアノ
リンサングアノはコウモリ由来の動物性特殊肥料です。リン酸、腐植酸(フミン酸)、石灰を豊富に含んでおり、とりわけリン酸はく溶性の性質のため分解が遅く、ゆっくり土壌に溶けて長期間効果を効かせます。また、石灰の効果で低下した土壌pHを上げることができます。これらリンサングアノの特徴は果菜類や花卉のほか、レタスやタマネギなどにも有効的に効果を発揮します。また、リンサングアノは粒状であるため土壌物理性改善に貢献し土壌をフカフカにできる期待ができます。リン酸吸収係数が高い黒ボク土への対策にも効果的に施用できます。
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スミちゃん
スミちゃんは籾殻連続炭化装置で、籾殻をはじめ木質ペレットや竹チップなどを600~700℃の高温で燃焼して炭化します。炭を土壌に施すことは孔隙率改善だけではなく微生物性も改善することが期待でき、たとえば炭とアーバスキュラー菌根菌の良好な関係は古くから知られています。スミちゃんは煙と臭いを殆んど発生させないことが特徴の一つで、これにより多少住宅が点在する場所でも設置することができます。燃焼熱を無駄にしない発想から開発された温水発生器と温風発生器は、ハウスの暖房燃料を節約することに貢献します。環境保全を目指した地域資源の有効活用や土壌改良および肥料の節約に興味がある方は是非ご検討下さい。必要に応じたアドバイスをさせていただきます。
根活
根活は水に小さな気泡含むナノバブル水で、研究機関との共同開発で誕生しました。気液二相流高速旋回方式により高濃度なナノバブル水を製造して植物に効果を出します。ナノバブル水に含まれる気泡は肥料分を引き付ける性質があり、ナノバブル水にのってカリウム、マグネシウム、カルシウムなどプラス電荷の肥料分が効率良く植物の根に運ばれ吸収し、植物の生育促進や生育改善に貢献します。これにより例えばイチゴのチップバーンが減少した事例が多く認められています。
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理想的な土づくりを目指して
そこにある農地の土を交換することは困難なことです。その土壌に適した農作物を選ぶことが農業を円滑に行う一つの方法だと思いますが、多くの農作物では適切な土壌の物理性でないと健全な生育は難しいのではないでしょうか。
今回のコラムでは土壌物理性について解説しましたが、他にも土壌の化学性や生物性への意識は農業を行う上で重要な要素になります。土づくりに興味のある方は是非下記タイトルのコラムも読んでみてください。
コラム著者
小島 英幹
2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法など。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の研究に着手する。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。
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