なお、バットグアノに関する情報はインターネットに溢れていますので、今回セイコーエコロジアが解説するコラムでは、土壌学の基礎的な部分を交えながら弊社が取り扱うバットグアノ「リンサングアノ」を参考にして、その魅力をお伝えしたいと思います。
バットグアノに含まれる成分
バットグアノ(bat guano)には植物の栄養となる肥料成分が含まれていますが、含有量が多い主要な成分は「リン酸」「腐植酸」「石灰」です。本章では、バットグアノに含まれるこれらの成分の役割について解説したいと思います。
リン酸
バットグアノのリン酸含有量は25%程度であり高い含有率を示しています。リン酸は根や花などに影響して植物の生長や収穫量に影響を与える肥料要素で、肥料三要素のうち窒素肥料に次いで影響力が強いと言われています。
バットグアノに多く含まれているリン酸の性質は「く溶性」です。く溶性リン酸とはクエン酸で溶解するリン酸のことですが、農業とクエン酸を結び付けるにはイメージがちょっと難しいと思います。
く溶性リン酸をかみ砕いて説明するならば、植物の根から分泌される有機酸*によって溶けるリン酸で、ゆっくり土壌に溶け、持続性が高い性質を持つリン酸といったところでしょうか。
*有機酸:植物の根から分泌される物質でクエン酸やリンゴ酸などがあります。根酸とも呼ばれます。
腐植酸(フミン酸)
バットグアノの腐植酸含有量は10%程度です。政令指定土壌改良資材に腐植酸質資材という分類がありますが、バットグアノはこれに該当せず、特殊肥料に登録があります。腐植酸質資材の腐植酸含量は約50~70%なので、腐植酸含有量が10%程度のバットグアノは該当しないというわけです。
腐植酸はフミン酸とも呼ばれます。土壌に含まれるアルミニウムや鉄は植物に悪影響を及ぼすとされていますが、腐植酸はアルミニウムや鉄と結合する性質があり、植物の成長を良好にする働きがあります。詳しくは次章で解説したいと思います。
石灰(カルシウム)
バットグアノの石灰含量は40%程度であり高い含有率を示しています。石灰は土壌pHを上げる性質があり、肥料としても根の生育効果があるとされています。バットグアノはコウモリの死骸や糞などが堆積し化石になったものなので、石灰質が多く含まれる特徴があります。
腐植酸(フミン酸)に関するコラムはこちら
>>>フミン酸とは?肥料として用いる場合の植物への直接的・間接的な効果
リン酸と腐植酸の相性
リン酸と腐植酸のコンビネーションは非常に良いです。
腐植酸は土壌中に存在する鉄やアルミニウムと結合しやすいといわれています。鉄は微量要素ですが多量に存在すると植物に生理障害を及ぼします。また、可給態リン酸と結合して不可給態リン酸(リン酸鉄)になりやすく、植物のリン酸吸収を阻害します。アルミニウムは植物の栄養素にはならず、土壌中では植物に悪影響を及ぼす存在です。アルミニウムは鉄と同じく可給態リン酸と結合してリン酸を不可給化(リン酸アルミニウム)します。
これらの反応は酸性土壌で発生しやすいです。
そのため酸性土壌の場合は土壌pHを上げる必要がありますが*、土壌pHを上げるためには例えば、石灰の施用が一般的です。石灰はアルカリ性なので適量の投入で土壌pHが上がるというわけです。
これら一連の土壌と肥料成分の関係をみるとリンサングアノは非常に合理的な肥料成分配合になっていると思います。注意点としては、もともと土壌pHが高めの圃場ではリンサングアノの石灰によってアルカリに傾き過ぎないようにすることです。
*植物の適正土壌pHによります。
バットグアノによる土壌pH緩衝能
バットグアノに含まれる腐植酸には土壌pH緩衝能があるといえます。
土壌pH緩衝能とは、土壌pHが大きく上がったり下がったりしないように調整する機能のことをいいます。通常土壌は電気的にマイナスの電荷を帯びています。このマイナス荷電にプラス荷電の栄養素(K⁺(カリウム)、Ca²⁺(カルシウム)、Mg²⁺(マグネシウム)、H⁺(水素)など)が引き付けられて土壌中に肥料分として保持され、また、土壌中にH⁺が多くなると土壌pHは酸性になります。一方で土壌中にOH⁻(水酸化物イオン)が多くなると土壌pHはアルカリになります。
腐植酸はというと、プラスにもマイナスにも荷電しているためH⁺もOH⁻も土壌中に偏りができないようにする働きがあると捉えることができます。そのためリンサングアノを土壌に施用すると、腐植酸の効果によって土壌pHが大きく振れなくなる効果が期待できます。
土壌pHに関連するコラムはこちら
>>>酸性土壌で大丈夫?酸性度の高い土壌のデメリットと改良方法について
こんな方におすすめ!!バットグアノの上手な使い方
ここまでバットグアノの肥料成分や土壌への影響について解説してきました。
その上でどのような方にバットグアノがオススメかを説明したいと思います。
おすすめシーン① 痩せた土壌を復活させたい
耕作放棄地など長年作付けをしていなかった土地へのリンサングアノの施用は最適です。
このような土地の土壌はカチカチになっていたり、サラサラになっていたりと農作物が生育するには不向きな場合が多くなっています。リンサングアノへの期待は肥料成分的なこと以外にも団粒構造の形成にも及びます。リンサングアノの形状は「粒形」です。粒形なので土壌に施用すると、土壌に隙間ができて気相の確保が期待できます。気相には水分が入ることができるので液相になります。したがって孔隙率が向上し土壌の物理性が改善されます。農作物の健全な生育に肥料の投入は欠かせませんが、肥料と同じくらい重要なことは団粒構造を形成して農作物の根がしっかり張れるようにすること、または根が酸素や水分を確保できるようにすることです。
粘土質土壌の改善に関するコラムはこちら
>>>困った!土壌がカチカチに|粘土質土壌の改良方法
おすすめシーン② 果菜類や花卉を栽培している
果菜類や花卉は栽培期間が長くなる品目が多いと思います。また果菜類においては花を咲かせてから果実を結実させます。リン酸は花を咲かせること、果実を結実させることに関与する肥料要素です。
つまり、長い栽培期間においてリン酸を切れさせると収穫量に影響します。リンサングアノに含まれるリン酸は緩効性(く溶性)なので、ゆっくり土壌に分解されて農作物に対して長く効き目を持続させ、生育促進の期待ができます。
おすすめシーン③ 有機質な肥料を探している
リンサングアノはコウモリ由来の純天然肥料です。
化学的なものは含有されていないので化学肥料の施用を敬遠する方には最良の資材です。リンサングアノに含まれる腐植は土壌微生物の多様性に関与します。土壌微生物は堆肥のような有機物をエサにして活動を行いますが、リンサングアノはコウモリ由来の有機質な肥料なので土壌微生物のエサとして有効的に利用できる期待があります。
おすすめシーン④ 腐植酸を追肥したい
例えば、普段は牛糞堆肥や豚糞堆肥を施肥している場合、元肥として活用することが多いと思います。土づくりでは化成肥料だけではなく堆肥も施用した方が土壌の物理性や生物性などを良好にしてくれるため堆肥施用は推奨されます。
ところが堆肥調達難や施用労力などの理由から元肥で堆肥をできない場合があります。このような場合、堆肥に含まれる腐植酸の土壌含量が少なくなるため農作物にとって良好な土壌環境ではなくなってしまいます。
リンサングアノは腐植酸だけではなくリン酸も一緒に含まれているため、リン酸肥料として果菜類などの追肥に適しています。追肥のやり方は畝の肩にスジ状に撒くと良いです。使用量に決まりはありませんが三角ホ―でスジを作ってから撒くと便利なので大体そのくらいの量です。リンサングアノと形状が似ている鶏ふんでも同じように追肥することがあります。
インドネシア産バットグアノのご紹介
リンサングアノはコウモリの死骸や糞が数百年以上の時間をかけて完全に発酵、化石化した純天然肥料で、野菜、果樹、花卉など様々な品目の農作物に施用できます。リン酸、腐植酸、石灰の栄養成分をバランスよく豊富に含んだ特殊肥料で、特にリン酸は緩効性(く溶性)のため、土壌にゆっくり溶けて植物に長期間リン酸を効かせ根張りを良くします。使用方法は土づくりの元肥、リン酸や腐植酸の補給のための追肥で、家庭菜園、プランターや花壇でも使用できます。リンサングアノは粒形のため団粒構造の形成を期待でき土壌物理性の改善に効果的です。また、有機質な肥料のため土壌微生物の活性化に貢献し、土壌生物性の改善にも効果が期待できます。
まとめ
今回のコラムではバットグアノの効果について、土壌学の基礎的な部分に触れながら紹介をさせていただきました。
肥料の原料となる鉱石の採掘場所は世界各地に偏在しており、日本では採掘できないため肥料を自給できません。また、肥料を輸入せずに日本人口に対して必要な食糧を確保できるほどの農業生産活動を行うことは不可能です。国としては肥料の輸入ルートの多様化すること、農家としては肥料の入手口と施用する肥料の種類の多様化することでリスク管理ができると思います。
リンサングアノは例外なく輸入肥料ですが、栽培する農作物に有効効果(肥料効果)が得られるのか、あるいは肥料の選択肢として適切かどうかなど、チャレンジするには最良の条件を兼ね備えた肥料だと思います。
今回のコラムを参考にセイコーエコロジアが提案するリンサングアノを試してみては如何でしょうか。
コラム著者
小島 英幹
2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法など。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の研究に着手する。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。